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第7話 力の行方
変化 Episode:07
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◇Sylpha
「ルーフェイア、これのどこが『大した量じゃない』のよ!」
届けられたものを見てのエレニアの一言は、あまりにももっともだった。
部屋が埋まっている。
おそらくクライアント側に頼んだとしても、これほどは用意できないだろう。
ナティエスが、やけに嬉しそうだった。
所狭しと下げられたドレスの間を縫うようにして、うろうろ物色している。
「すっごぉい、お金持ちって違うね~♪」
――そう、言うのだろうか?
詳しく知っているわけではないが、ルーフェイアの場合は、普通に言う上流階級とは何か違う気がする。
「ごめんね、みんな袖、通しちゃってて……。えっと、そっちのサイズ、ナティエスとミル……着られるかも。シーモアと先輩たちは……従姉と母のが、合うと思うんですけど」
いちおう母親などと共用しているようだが、それにしても半端な量ではない。
「ほんとうにいいの? どれも高い生地じゃない。汚したら申し訳ないわ」
エレニアが恐縮する。
「構いません。どうせ部屋で、場所ふさいでるだけで。もしよかったら、持って帰ってください」
「持って帰るって、あなたねぇ……」
どうもルーフェイアは、あまりこの類は好きではないようだ。
さっさと数着選び出して、終わりにしてしまっている。
「ねぇねぇシーモア、これ着てごらんよ~♪」
「あ、いい色。似合うわよ、きっと」
見れば下級生たちは、向こうで大騒ぎしていた。
エレニアも大人びたものを数着、選び始める。
「靴と装飾品も、使っちゃってるけど、これ……」
「ひゃ~、これホンモノじゃない★」
あのミルが驚いた。
だが、それも当然だろう。ルーフェイアがさりげなく差し出した装身具は、どれもかなりの大きさの宝石類を、あしらったものばかりだ。しかも手が込んでいる。
「ほんとうに……使っていいのね?」
エレニアが念を押す。
「はい。あと、持って帰っていいですから」
どうもルーフェイアの感覚はずれているようだ。
「持って帰らないわよ……。じゃぁレセプションなんかがけっこうあるから……3つ4つ借りるわ。これ、いいかしら?」
「あ、それ、似合いそうですね」
けっこう楽しそうではあるが。
しばらく私が眺めているあいだに、どうやらみんな決まったようだった。
「あとはアクセかぁ。なくさないようにしなくちゃ」
「別に……あげるけど?」
「え~、それはまずいよ。だってこれ、半端な額じゃないもん」
「え、そうなの?」
普通では考えられないような会話が続いている。どうも持ち主は、価値を知らないらしい。
と、ルーフェイアがこちらへ来た。
「シルファ先輩……試着、しないんですか?」
不思議、といった調子尋ねてくる。
「いや、その、私は……」
「……お気に、召さなかったですか?」
「そうじゃないんだが……」
思わず口篭もった。
実を言えば、スカートの類は苦手だ。制服でさえ着たくない。
いったいどう言い逃れたものか……。
「ルーフェイア、これのどこが『大した量じゃない』のよ!」
届けられたものを見てのエレニアの一言は、あまりにももっともだった。
部屋が埋まっている。
おそらくクライアント側に頼んだとしても、これほどは用意できないだろう。
ナティエスが、やけに嬉しそうだった。
所狭しと下げられたドレスの間を縫うようにして、うろうろ物色している。
「すっごぉい、お金持ちって違うね~♪」
――そう、言うのだろうか?
詳しく知っているわけではないが、ルーフェイアの場合は、普通に言う上流階級とは何か違う気がする。
「ごめんね、みんな袖、通しちゃってて……。えっと、そっちのサイズ、ナティエスとミル……着られるかも。シーモアと先輩たちは……従姉と母のが、合うと思うんですけど」
いちおう母親などと共用しているようだが、それにしても半端な量ではない。
「ほんとうにいいの? どれも高い生地じゃない。汚したら申し訳ないわ」
エレニアが恐縮する。
「構いません。どうせ部屋で、場所ふさいでるだけで。もしよかったら、持って帰ってください」
「持って帰るって、あなたねぇ……」
どうもルーフェイアは、あまりこの類は好きではないようだ。
さっさと数着選び出して、終わりにしてしまっている。
「ねぇねぇシーモア、これ着てごらんよ~♪」
「あ、いい色。似合うわよ、きっと」
見れば下級生たちは、向こうで大騒ぎしていた。
エレニアも大人びたものを数着、選び始める。
「靴と装飾品も、使っちゃってるけど、これ……」
「ひゃ~、これホンモノじゃない★」
あのミルが驚いた。
だが、それも当然だろう。ルーフェイアがさりげなく差し出した装身具は、どれもかなりの大きさの宝石類を、あしらったものばかりだ。しかも手が込んでいる。
「ほんとうに……使っていいのね?」
エレニアが念を押す。
「はい。あと、持って帰っていいですから」
どうもルーフェイアの感覚はずれているようだ。
「持って帰らないわよ……。じゃぁレセプションなんかがけっこうあるから……3つ4つ借りるわ。これ、いいかしら?」
「あ、それ、似合いそうですね」
けっこう楽しそうではあるが。
しばらく私が眺めているあいだに、どうやらみんな決まったようだった。
「あとはアクセかぁ。なくさないようにしなくちゃ」
「別に……あげるけど?」
「え~、それはまずいよ。だってこれ、半端な額じゃないもん」
「え、そうなの?」
普通では考えられないような会話が続いている。どうも持ち主は、価値を知らないらしい。
と、ルーフェイアがこちらへ来た。
「シルファ先輩……試着、しないんですか?」
不思議、といった調子尋ねてくる。
「いや、その、私は……」
「……お気に、召さなかったですか?」
「そうじゃないんだが……」
思わず口篭もった。
実を言えば、スカートの類は苦手だ。制服でさえ着たくない。
いったいどう言い逃れたものか……。
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