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第5話 表と裏

遭遇 Episode:02

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「先輩、いいんです! ほんとにあたしが悪いんですから!」

 ルーフェイアがとっさに間に入らなかったら、またひと悶着あったかもしれない。

「けどねえ、ルーフェ!」
「ほんとなんです!

 あの、先輩、すみませんでした。こんどから……気をつけます」

 少女が丁寧に頭を下げる。
 だがタシュアはそれに答えるどころか、完全に無視して視線を本に戻しただけだ。

「――!」

 再び何事か言いかけたロアだが、今度もルーフェイアが止める。

「あたしが悪いんですから!」
「………」

 少女の必死の懇願に、ロアもようやく怒りの矛先を納めた。
 タシュアを睨みつけてから、ルーフェイアの手を引いて図書館を出て行く。

「ところでさ、なんだってあんなやつに、ちょっかいだしたわけ?」

 外へ出てから、ロアは少女に尋ねた。

「あの、本の詳しい題名……見たくて」
「だからって何も、あんなののそばに、わざわざ行かなくたって」

 ロアが呆れる。

「あの、そんなに……ダメないんですか?」
「いけないもなにも――って、そうか。ルーフェは知らなかったんだ」

 ロアはタシュアと同クラスだし、しかもほとんど同時に入学しているが、ルーフェイアはまだ学院に来て一年と経っていない。

 いくらタシュアが有名人とは言え、同級生でないのだから、知らないのもうなずけた。

「あいつさ、タシュア=リュウローンって言うんだよね。で、学年でもトップクラス。
 それにあの通り、外た目もまぁ、悪くないんだけどさ。けど中身がねー!」

 よほど腹に据えかねたのか、息つく間もなくロアが喋る。

「ったく、あの口の悪さだよ?!
 本人は『事実言ってるだけ』って言うけどさ、なんでも言やぁいいってもんじゃないっての!」

 ロアはまだ、怒りが収まりきっていないようだ。

「でも……あたしが……」
「ほんとにそうでも、普通ああは言わないよ!
 ――あ~もう! また腹立ってきた。ちょっとルーフェ、どっか行って憂さ晴らしっ!」

 ルーフェイアの手を強引に引いて、ロアは食堂へ向かった。


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