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第4話 温もり

神話 Episode:04

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「そのとき、始祖メイアは亡くなって……その子供たちが、シュマー家を作ったの。
 ――いつか帰りし神を、倒すために」

「なんか、やたら壮大な話だな。
 けど、ずっと昔のことだろ? どうだっていいんじゃねぇのか?」

 イマドの言葉に首を振る。

「ううん、違うの。昔のことじゃ、ないの……」

 シュマー家にとってこの話は、「昔のこと」じゃない。

「“神”は封じられただけ。だから今も……復活のチャンスを狙ってる。
 そしてシュマー家には、稀に産まれるの。始祖メイアと同じ――ううん、それ以上の力を持った、子供が」

「――それがお前ってワケか」

 何も言えなくなってしまったあたしを見て、イマドがひとつ、ため息をつく。

「じゃぁ……学院なんか連れてきちまって、悪かったな。
 昼間のヤツも言ってたけどお前、自分ちだったら大事にされそうだし。
 ――帰ったほうが、いいんじゃないのか?」

「それはイヤ」

 自分でも驚くくらい間髪いれずに、答えてしまった。

「なんでだ?」

 不思議そうな顔で、イマドが聞く。

「だって、特別扱い……されるから」

 いきなり彼がお腹を抱えて笑い出した。

「――はは、あはは、ははっ、お、お前らしいや」
「そんなに……笑わなくたって……」

 なんだか妙に悔しい。

「いや、悪りぃ悪りぃ。でもよ、普通は特別扱いされたくて、みんないろいろやるんだぜ?
 それをお前ときたら、あっさりヤダって言い切るから」

 イマドはまだ笑い転げてる。

「みんなはそうでも、あたしはいや……」

 つい、いろいろなことを思い出して悲しくなる。

 あたしは……普通がよかった。
 普通の女の子みたいにとまでは言わない。
 でもせめて、他のシュマーの子供たちと同じくらいでいたかった。
 けどそれは、到底ムリな話で……。

 3歳の時に「グレイス」の名を継ぐ――始祖とあたしを含めても七人しかいない――と分かってから、ずっとあたしは特別扱いだった。
 次期総領の座を得、絶大な権力を得て……もしあたしが死ねと言えば、うちの人間はためらわずに自殺するだろう。

 総勢で数百人にのぼるシュマー家。
 そしてそこから分かれて、後方支援的なことや様々な研究をするようになった、ロシュマー家の数万人。

 それだけの人間の命運が、あたしみたいな小娘の手に握られてしまっている。
 こんな、右も左も分からないような小娘に。
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