106 / 743
第4話 温もり
神話 Episode:01
しおりを挟む
◇Imad
「やっぱ昼間とは、雰囲気違うな」
「うん」
茜に染まった夕暮れン中、俺とルーフェイア、また港へ降りてきたところだ。
ちなみにシーモア他の連中は、気を利かせてちゃっちゃと学院へ戻ってる。
――けどなぁ。
気を利かせたのが悪いってこたねぇけど、ルーフェイアの場合はンなものどっかへ落としちまってるわけで。
「すごい、海が金色!」
なんせこの調子だ。
もっとも年より見かけが幼いから、これもけっこう似合っちゃいる。
しかもいつもと違って可愛らしいカッコしてるから、言うことナシだった。
「こんな色……初めて」
たしかにこいつの言うとおり、今日の海はきれいだった。
夕焼けに染まった海が、陽の光に煌めいて、文字通り金粉でも撒いたみたいだ。
「撮影機でも、持ってくりゃよかったな」
「ううん、いい」
写すと色が消えるっていうのが、こいつの言い分だった。
「それに戦場じゃ、そんなの写すヒマ、なかったし……」
「――そうだよな」
こいつの心から、やるせないほどの悲しさが伝わってくる。
優しくて泣き虫で――なのにこいつが育ったのは、地獄とも言える戦場だ。
その辺のことは、俺はこいつのお袋からある程度聞かされてた。
しかもついでに、保護者を頼み込まれてる。
ただ……昼間の騒ぎを見る限り、実際はもうちっと複雑らしかった。
少なくともでかいバックを持ってるのは、間違いない。
少しだけ迷って、俺は口を開いた。
「昼間のナティエスじゃねぇけど……お前って、ホントはなんなんだ?」
ルーフェイアのやつがうつむく。
「別に言いたくなきゃ、かまわねぇんだけどよ」
「――シュマーなの」
「はい?」
思わず妙な返事を返す。
っつーか、今とんでもないこと聞いた気が……。
「まさかとは思うけどよ、シュマーって――あのシュマーか?」
「イマドがどのシュマーを言ってるのか、わかんないけど……。でも多分、そうだと思う」
「――マジかよ」
ほかに言いようがなかった。
シュマーってのは、軍事関係者の間じゃ裏で有名ってやつだ。
っても実態はなんだかほどんど分かってなくて、代々傭兵をしてて、ガキを戦場で少年兵として育てちまうって話だけが知られてた。
けどまさか、この華奢なこいつが、その「シュマー」って……。
しかも昼間の様子じゃ、同じシュマーでもルーフェイアのヤツ、そうとう上のほうの身分(?)だろう。
ただどっか、俺は納得もしてた。
「どうりでお前、上級傭兵並みなワケだよな。つかシュマーなら、そうじゃないとダメなんだろうし」
こいつのバトルはたまに目にすっけど、はっきり言って上級の先輩たちをヘタすりゃ上回る。
だけど俺の一言に、こいつときたら、メチャクチャ悲しげな表情になった。
「それ……違うの」
「違う?」
泣き虫のこいつが泣かないのが、コトの重さを表してた。
「やっぱ昼間とは、雰囲気違うな」
「うん」
茜に染まった夕暮れン中、俺とルーフェイア、また港へ降りてきたところだ。
ちなみにシーモア他の連中は、気を利かせてちゃっちゃと学院へ戻ってる。
――けどなぁ。
気を利かせたのが悪いってこたねぇけど、ルーフェイアの場合はンなものどっかへ落としちまってるわけで。
「すごい、海が金色!」
なんせこの調子だ。
もっとも年より見かけが幼いから、これもけっこう似合っちゃいる。
しかもいつもと違って可愛らしいカッコしてるから、言うことナシだった。
「こんな色……初めて」
たしかにこいつの言うとおり、今日の海はきれいだった。
夕焼けに染まった海が、陽の光に煌めいて、文字通り金粉でも撒いたみたいだ。
「撮影機でも、持ってくりゃよかったな」
「ううん、いい」
写すと色が消えるっていうのが、こいつの言い分だった。
「それに戦場じゃ、そんなの写すヒマ、なかったし……」
「――そうだよな」
こいつの心から、やるせないほどの悲しさが伝わってくる。
優しくて泣き虫で――なのにこいつが育ったのは、地獄とも言える戦場だ。
その辺のことは、俺はこいつのお袋からある程度聞かされてた。
しかもついでに、保護者を頼み込まれてる。
ただ……昼間の騒ぎを見る限り、実際はもうちっと複雑らしかった。
少なくともでかいバックを持ってるのは、間違いない。
少しだけ迷って、俺は口を開いた。
「昼間のナティエスじゃねぇけど……お前って、ホントはなんなんだ?」
ルーフェイアのやつがうつむく。
「別に言いたくなきゃ、かまわねぇんだけどよ」
「――シュマーなの」
「はい?」
思わず妙な返事を返す。
っつーか、今とんでもないこと聞いた気が……。
「まさかとは思うけどよ、シュマーって――あのシュマーか?」
「イマドがどのシュマーを言ってるのか、わかんないけど……。でも多分、そうだと思う」
「――マジかよ」
ほかに言いようがなかった。
シュマーってのは、軍事関係者の間じゃ裏で有名ってやつだ。
っても実態はなんだかほどんど分かってなくて、代々傭兵をしてて、ガキを戦場で少年兵として育てちまうって話だけが知られてた。
けどまさか、この華奢なこいつが、その「シュマー」って……。
しかも昼間の様子じゃ、同じシュマーでもルーフェイアのヤツ、そうとう上のほうの身分(?)だろう。
ただどっか、俺は納得もしてた。
「どうりでお前、上級傭兵並みなワケだよな。つかシュマーなら、そうじゃないとダメなんだろうし」
こいつのバトルはたまに目にすっけど、はっきり言って上級の先輩たちをヘタすりゃ上回る。
だけど俺の一言に、こいつときたら、メチャクチャ悲しげな表情になった。
「それ……違うの」
「違う?」
泣き虫のこいつが泣かないのが、コトの重さを表してた。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
さようなら、家族の皆さま~不要だと捨てられた妻は、精霊王の愛し子でした~
みなと
ファンタジー
目が覚めた私は、ぼんやりする頭で考えた。
生まれた息子は乳母と義母、父親である夫には懐いている。私のことは、無関心。むしろ馬鹿にする対象でしかない。
夫は、私の実家の資産にしか興味は無い。
なら、私は何に興味を持てばいいのかしら。
きっと、私が生きているのが邪魔な人がいるんでしょうね。
お生憎様、死んでやるつもりなんてないの。
やっと、私は『私』をやり直せる。
死の淵から舞い戻った私は、遅ればせながら『自分』をやり直して楽しく生きていきましょう。
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい
三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです
無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す!
無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!
魔術師セナリアンの憂いごと
野村にれ
ファンタジー
エメラルダ王国。優秀な魔術師が多く、大陸から少し離れた場所にある島国である。
偉大なる魔術師であったシャーロット・マクレガーが災い、争いを防ぎ、魔力による弊害を律し、国の礎を作ったとされている。
シャーロットは王家に忠誠を、王家はシャーロットに忠誠を誓い、この国は栄えていった。
現在は魔力が無い者でも、生活や移動するのに便利な魔道具もあり、移住したい国でも挙げられるほどになった。
ルージエ侯爵家の次女・セナリアンは恵まれた人生だと多くの人は言うだろう。
公爵家に嫁ぎ、あまり表舞台に出る質では無かったが、経営や商品開発にも尽力した。
魔術師としても優秀であったようだが、それはただの一端でしかなかったことは、没後に判明することになる。
厄介ごとに溜息を付き、憂鬱だと文句を言いながら、日々生きていたことをほとんど知ることのないままである。
悪女として処刑されたはずが、処刑前に戻っていたので処刑を回避するために頑張ります!
ゆずこしょう
恋愛
「フランチェスカ。お前を処刑する。精々あの世で悔いるが良い。」
特に何かした記憶は無いのにいつの間にか悪女としてのレッテルを貼られ処刑されたフランチェスカ・アマレッティ侯爵令嬢(18)
最後に見た光景は自分の婚約者であったはずのオルテンシア・パネットーネ王太子(23)と親友だったはずのカルミア・パンナコッタ(19)が寄り添っている姿だった。
そしてカルミアの口が動く。
「サヨナラ。かわいそうなフランチェスカ。」
オルテンシア王太子に見えないように笑った顔はまさしく悪女のようだった。
「生まれ変わるなら、自由気ままな猫になりたいわ。」
この物語は猫になりたいと願ったフランチェスカが本当に猫になって戻ってきてしまった物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる