上 下
83 / 743
第3話 葛藤

転機 Episode:03

しおりを挟む
「じゃぁそしたら、次の授業からやってみよっかー」

 次の授業っていったら、午後の実技だ。内容はたしか、自衛のための格闘技。

「なにを……するの?」
「んー、要するにこういうのって、勢力図がが変わればいいんだよね」

 ミルがちょっと考え込みながら言う。
「どう説明すればいいか」を考えてるみたいだ。

「えーっとだからね……こういうのって誰か、中心になってるのがいるでしょ?」

 イマドたちがうなずいた。
 あたしは気づかなかったけど、みんな分かってたらしい。

「じゃぁさ、どうしてこういうふつうじゃダメなこと、やれちゃうか分かる?」
「本人が、そういう性格だからじゃ?」

 ヴィオレイの答えに、ミルは首を振った。

「それもあるけどね、それだけじゃできないよ。
 ひとりでやってたら、その人のほうが“おかしい人”になっちゃうから」

「――そういうことか!」

 納得がいった顔で、イマドが声を上げる。

「けど、どうやるつもりだ? 切り崩すったって、ちょっとやそっとじゃできねぇだろ」
「女子はねー。でもさ、今回って男子は日和見だから~」
「そりゃそうだけどよ、だからってすぐ、どうにかなるもんじゃねぇぞ?」

 二人の話に、ついていけない。

「あのな……オマイら二人、何の話してんだ?」

 イマドの友だちがそう言って、ちょっとほっとする。
 分からなかったのは、あたしだけじゃなかったみたいだ。

「えー、こんなに説明してんのにー?」
「してないしてない」

 たいへんな話のはずなのに、なんだか笑ってしまうようなやり取り。

「だからね、切り崩す話なんだってば~」

 ミルは自信満々だけど、あたしたちは顔を見合わせるばかりだった。

「ワケわかんね……」
「というか、ミルの言うことだから、最初から理解とか無理だってば」

 ひどい言われようだ。
 だけどこれがふつうなんだろうか? イマドは当たり前って顔をしてるし、ミルのほうは完全受け流しだ。

 ――彼女、強いな。

 そう思った。
 周りを気にしないで、自分のスタイルを貫けてる。

「ともかくさー、やってみようよ? おもしろそうだし。
 それにもう、毒流してきちゃったーし。上手くいったらいまごろ、仲間割れかも?」

 楽しそうに、くすくすと笑うミル。

「――しゃぁねーな。
 ほかに選択肢、いまんとこねぇし。やるだけやってみっか」

「そだな。このまま何もしないじゃ、ルーちゃんいつまでもこのままだし」

 みんなの意見がだいたい一致した。

「じゃぁ決まりね!
 そしたらさっきも言ったけど、次の授業からやってみよ!」

「だからさっきも聞いたけど、何すんだよ」

「んー、わかんなーい。でもそのときになったら、ヒラメくと思うんだ。
 ともかくお昼お昼!」

 ミルの言うことはなんだかいい加減で、ちょっと不安な気はする。
 でも、何かが少しだけ動くかもしれない、そんな感じがした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル
ファンタジー
旧題:私は『聖女ではない』ですか。そうですか。帰ることも出来ませんか。じゃあ『勝手にする』ので放っといて下さい。 【 聖女?そんなもん知るか。報復?復讐?しますよ。当たり前でしょう?当然の権利です! 】 地震を知らせるアラームがなると同時に知らない世界の床に座り込んでいた。 同じ状況の少女と共に。 そして現れた『オレ様』な青年が、この国の第二王子!? 怯える少女と睨みつける私。 オレ様王子は少女を『聖女』として選び、私の存在を拒否して城から追い出した。 だったら『勝手にする』から放っておいて! 同時公開 ☆カクヨム さん ✻アルファポリスさんにて書籍化されました🎉 タイトルは【 私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください 】です。 そして番外編もはじめました。 相変わらず不定期です。 皆さんのおかげです。 本当にありがとうございます🙇💕 これからもよろしくお願いします。

神は人間界の存続を認めません。

加藤 佑一
ファンタジー
神は自然からエネルギーを取り込んでいるため、自然界を汚す人間を嫌う。 神の力は絶大すぎるので、神罰が発動してしまえば人間では止められない。 人間を無慈悲に抹殺してしまう神を憂いだ神、天神ゼウスは神を止めることのできる能力を人間に与える。 それを見た地獄神タルタロスは人間を惑わせるため、汚れた魂を持つ者を人間界に送り込む。 有史以来、人間界不要論を唱える神々から人間界を維持するために奮闘する人達のお話です。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

ロイヤル・タッチ ~婚約破棄されスラムに追放された鉄仮面の元王子は、ならず者達に慕われ反乱の兵を挙げる~

牧神堂
ファンタジー
先王の遺児タピオンは、いずれは現女王の娘ジュスティーヌと結婚して王位を継ぐはずだった。 ところが、女王による突然の婚約破棄宣言。それは正統王家乗っ取りの為に周到に仕組まれたシナリオだったのだ。 全てを失い幽閉されたタピオンは、下人達によって無惨にいたぶられる月日を過ごす。 数年後、ボロボロになって貧民街に捨てられた元王子タピオン。そこでの様々な人達との出会い。 そうして徐々に人望を得ていったタピオンにやがて驚愕の力が目覚める。 それは運命。女王の酷政によって疲弊した領民達を救うべくタピオンは立ち上がった。 怒り狂う女王が差し向けるは錬金術によって生み出された恐るべき超常の兵。 対するタピオンを支えるのは無頼の徒と貧民達。両者の国を賭けた壮絶な戦いが始まる。 たぶん勝つのはタピオンだけど、とにかく負けるなタピオン! それ行けタピオン! なにげにモテるぞ!

聖女なので公爵子息と結婚しました。でも彼には好きな人がいるそうです。

MIRICO
恋愛
癒しの力を持つ聖女、エヴリーヌ。彼女は聖女の嫁ぎ制度により、公爵子息であるカリス・ヴォルテールに嫁ぐことになった。しかしカリスは、ブラシェーロ公爵子息に嫁ぐ聖女、アティを愛していたのだ。 カリスはエヴリーヌに二年後の離婚を願う。王の命令で結婚することになったが、愛する人がいるためエヴリーヌを幸せにできないからだ。  勝手に決められた結婚なのに、二年で離婚!?  アティを愛していても、他の公爵子息の妻となったアティと結婚するわけにもいかない。離婚した後は独身のまま、後継者も親戚の子に渡すことを辞さない。そんなカリスの切実な純情の前に、エヴリーヌは二年後の離婚を承諾した。 なんてやつ。そうは思ったけれど、カリスは心優しく、二年後の離婚が決まってもエヴリーヌを蔑ろにしない、誠実な男だった。 やめて、優しくしないで。私が好きになっちゃうから!! ブックマーク・いいね・ご感想等、ありがとうございます。誤字もお知らせくださりありがとうございます。修正します。ご感想お返事ネタバレになりそうなので控えさせていただきます。

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

逆ハーレムエンドは凡人には無理なので、主人公の座は喜んで、お渡しします

猿喰 森繁 (さるばみ もりしげ)
ファンタジー
青柳千智は、神様が趣味で作った乙女ゲームの主人公として、無理やり転生させられてしまう。 元の生活に戻るには、逆ハーレムエンドを迎えなくてはいけないと言われる。 そして、何度もループを繰り返すうちに、ついに千智の心は完全に折れてしまい、廃人一歩手前までいってしまった。 そこで、神様は今までループのたびにリセットしていたレベルの経験値を渡し、最強状態にするが、もうすでに心が折れている千智は、やる気がなかった。

「サボってるだろう?」と追い出された最強の龍脈衆~救ってくれた幼馴染と一緒に実力主義の帝国へ行き、実力が認められて龍騎士に~

土偶の友
ファンタジー
 龍を狩る者、龍脈衆のセレットは危険な龍が湧く場所――龍脈で毎日何十体と龍を狩り、国と城の安全を守っていた。  しかし「サボっているのだろう?」と彼は私利私欲のために龍脈を利用したい者達に無実の罪を着せられて追放されてしまう。  絶望に暮れて追放されている時に助けてくれたのは幼馴染のアイシャだった。「私と一緒に帝国に亡命しない?」彼女に助けられ請われる形で実力主義の帝国に行く。  今まで人前に晒されていなかったセレットの力が人の目に見られ、その実力が評価される。何十人と集まり、連携を深め、時間をかけて倒す龍を一撃で切り裂いていくセレットの実力は規格外だった。  亡命初日に上級騎士、そして、彼のために作られた龍騎士という称号も得て人々から頼りにされていく。  その一方でセレットを追放した前の国は、龍脈から龍が溢れて大事件に。首謀者たちはその責任を取らされて落ちぶれていくのだった。  これはいいように使われていた最強の龍脈衆が、最高最強の龍騎士になる物語。  小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...