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第2話 抱えきれぬ想い
新入生 Episode:03
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この無効化魔法、普通の魔法が対象なら間に合わない。
気づいて唱えても、相手のほうが早く発動する。
が、精霊相手だと勝手が違う。
精霊は実体化したあと改めて力を開放するため、上手くそのタイムラグを狙えば、強制的に非実体化させることが理論上は可能だ。
とはいえ、術者同士にかなりの実力差がなければ簡単に力負けするし、タイミングも慣れていなければ狙えないシビアなものだ。
それを金髪の美少女は、やすやすとやってのけた。
つまり一瞬で相手との実力差を見抜き、確実にやれると判断したことになる。
「あの子、いったい何なのかしら? どうみても普通じゃないわ」
「ボクに言われても。本人に聞いてよ」
「それもそうね……」
面倒見のいいエレニアが、美少女に声をかけた。
「あなた、大丈夫?」
「はい」
澄んだ泉を思わせる声だ。
「それならよかったわ。
それであなた――新入生のルーフェイア=グレイス?」
「はい、そうです」
どうやら最初の予想は当たったらしい。
「ロア、手間が省けたわね。
ルーフェイアは聞いてるのかしら? 彼女――ロアがあなたと同室よ」
「そう、なんですか? えっと、先輩、よろしく……お願いします」
「……よろしく」
だが独り住まいに未練たらたらの彼女は、あまりいい顔をしない。
(――ロア!)
エレニアが、ロアの脇腹を肘で突付いた。
(え?)
(だめよ!)
(あっ!)
少女の不安げな面持ち。
これからどうなるのだろうと、半ばおびえているのが、その表情から読み取れた。
ふっと、昔母親を亡くした頃の自分が重なる。
この学院には孤児が多い。
もしかすると、彼女もそうなのだろうか?
「えっと……ごめん、ちょっと考え事してたから。
とりあえず部屋まで行こうか? 荷物、あるよね?」
「あ、はい」
やっと少女の顔から怯えが消える。
思わずほっとした。それほど落ちこんでいるわけではないようだ。
「そしたらロア、私は図書館寄ってくから」
「あ、そう? じゃぁまた後でね」
食堂を出たところでエレニアと分かれ、ロアは少女と二人になった。
こうして見てみると、なおさらその美少女ぶりが際立つ。
明日あたり――下手をすれば今日中か――には、男子生徒の間でウワサになること請け合いだろう。
事実こうして歩いているだけで、すれ違う生徒のほとんどが振り返っていくのだ。
(――世の中、絶対不公平だよね)
思わずひがみたくなる。
これだけの容姿に、この学院へ直接入学できるほどの能力と学力。
およそ普通の人間が欲しがるものは、ぜんぶ持っていると言っていい。
だがルーフェイアのほうは、あまりそう思っていないようだった。
気づいて唱えても、相手のほうが早く発動する。
が、精霊相手だと勝手が違う。
精霊は実体化したあと改めて力を開放するため、上手くそのタイムラグを狙えば、強制的に非実体化させることが理論上は可能だ。
とはいえ、術者同士にかなりの実力差がなければ簡単に力負けするし、タイミングも慣れていなければ狙えないシビアなものだ。
それを金髪の美少女は、やすやすとやってのけた。
つまり一瞬で相手との実力差を見抜き、確実にやれると判断したことになる。
「あの子、いったい何なのかしら? どうみても普通じゃないわ」
「ボクに言われても。本人に聞いてよ」
「それもそうね……」
面倒見のいいエレニアが、美少女に声をかけた。
「あなた、大丈夫?」
「はい」
澄んだ泉を思わせる声だ。
「それならよかったわ。
それであなた――新入生のルーフェイア=グレイス?」
「はい、そうです」
どうやら最初の予想は当たったらしい。
「ロア、手間が省けたわね。
ルーフェイアは聞いてるのかしら? 彼女――ロアがあなたと同室よ」
「そう、なんですか? えっと、先輩、よろしく……お願いします」
「……よろしく」
だが独り住まいに未練たらたらの彼女は、あまりいい顔をしない。
(――ロア!)
エレニアが、ロアの脇腹を肘で突付いた。
(え?)
(だめよ!)
(あっ!)
少女の不安げな面持ち。
これからどうなるのだろうと、半ばおびえているのが、その表情から読み取れた。
ふっと、昔母親を亡くした頃の自分が重なる。
この学院には孤児が多い。
もしかすると、彼女もそうなのだろうか?
「えっと……ごめん、ちょっと考え事してたから。
とりあえず部屋まで行こうか? 荷物、あるよね?」
「あ、はい」
やっと少女の顔から怯えが消える。
思わずほっとした。それほど落ちこんでいるわけではないようだ。
「そしたらロア、私は図書館寄ってくから」
「あ、そう? じゃぁまた後でね」
食堂を出たところでエレニアと分かれ、ロアは少女と二人になった。
こうして見てみると、なおさらその美少女ぶりが際立つ。
明日あたり――下手をすれば今日中か――には、男子生徒の間でウワサになること請け合いだろう。
事実こうして歩いているだけで、すれ違う生徒のほとんどが振り返っていくのだ。
(――世の中、絶対不公平だよね)
思わずひがみたくなる。
これだけの容姿に、この学院へ直接入学できるほどの能力と学力。
およそ普通の人間が欲しがるものは、ぜんぶ持っていると言っていい。
だがルーフェイアのほうは、あまりそう思っていないようだった。
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