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第2話 抱えきれぬ想い

新入生 Episode:02

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「名前は聞いたの?」

「いちおうルーフェイア=グレイスっていう女の子、までは聞いたんだけどね。
 でも、それだけ」

「ふぅん、そうなの」

 食堂の向こうのほうでは、なにやら食料の争奪戦が始まったようだが、二人は意に介さなかった。
 食べ盛りが多い学院では、この手のコトは日常風景だ。
 時には魔法や武器を使って、実戦さながらの奪い合いが起こることさえある。

「けどさ、いまさらチビの面倒見るなんて、思いっきりめんどくさくて。あーもうヤダヤダ」

「そうでもないわよ? けっこう可愛いんだから。
 まぁ確かに、その子の性格でかなり左右はされるけど――あ、外行かない?」

「――そうしよっか」

 二人はテーブルの上のトレイをそれぞれ手にとって、立ち上がった。
 後ろのほうで「バカやめろ」とか、「早く逃げろ」などといった声が聞こえてくる。

「まったく、昼食ごときで精霊呼びだすなんて」

 その時、見慣れない少女がすれ違った。

(うっわ……)

 金髪碧眼、華奢な雰囲気の、とびっきりの美少女だ。
 荒っぽいMeSより、どこかのお嬢様学校の方が、よほど似合うだろう。

「ちょっとあなた、やめなさい。今入ったら巻き込まれるわよ」

 エレニアが忠告したが、少女は気にしなかったようだ。
 無視して中へ入っていってしまう。

「ねぇロア、もしかして新入生って、あの子じゃないの?」
「そうかも」

 あれだけの美少女だ。在校生なら間違いなく、噂になっているだろう。

「――しょうがないなぁ。ちょっと助けに行ってくる」
「あたしも行くわ」

 今出てきたばかりの食堂へ、二人して戻る。

(えーと、あの子は……いた!)

 少女はほとんど騒ぎの中心部まで、入り込んでしまっていた。

「だめだよっ! 下がって!!」

 だが美少女は動かない。
 かすかに呪が聞こえた。

「荒れ狂う魔の流れよ、いまひとたび静寂のうちに、在るべき姿に戻れ……」

 たしか効果が不安定なために使う者が少ない、無効化魔法だ。

「――カーム・フィルド!」

 ほんのわずかな間、周囲の魔法がすべて無効化される。
 だが、それで十分だった。
 実体化したばかりの精霊が、出鼻をくじかれてふたたび霧散する。

(本校へ直接入学するのは、ダテじゃないってことか)

 おとなしそうな見かけによらず、かなり場数を踏んでいるのは間違いない。
 だいいちそうでなければ、この状況でパニックも起こさずに召喚を阻止するのは無理だろう。

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