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第1話 憧憬
再会 Episode:10
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「いろいろやったけど、普通のところじゃダメだった。
いつもあなたは、あたしたちの想像を超えてて……」
良く似た碧い瞳が、こいつを見返した。
「けど彼の言うとおり、ああいうとこならあなたでも大丈夫だと思う」
「でも……」
まだ困惑するこいつに、両親がうなずいた。
「お前がそうしたいなら、行くといい」
親父さんが答える。
「Mesったらやっぱりシエラかしら? あそこの学院長は誰だったかしらね」
おふくろさん、すげー強引。もうカンペキに行かせる気でいる。
正直こゆタイプの親から、どうやってこゆ大人しい娘が生まれたんだか、かなり謎だ。
「シエラ学院ならついでに上級傭兵になっとけば、箔もつくから一石二鳥だし。
そういえばこの近くのアヴァンシティにも、シエラがあったわよね」
って、俺が言ってるのってそこじゃなくて……。
まぁ部外者にしてみりゃいくつかある学院のどれも、一緒なんだろうけど。
「えーと、分校じゃ上級傭兵、なれないですよ?」
「あら、そうなの?」
説明書があるわけじゃないから、一から説明する。
「あれ、本校の生徒だけなんですよ。
だから分校にいてなりたいヤツは、わざわざ本校に転校するんです」
「同じ学院なのに、複雑なのねぇ」
「俺に言われても」
なんでそうなってるかなんざ、知りゃしねぇし。
「で、あなたはどこの生徒なの?」
今度はいきなり話が飛んできた。
「あれ、言ってませんでしたっけ?」
「聞いてないわよ」
あっさり切り返される。
けど良く考えてみりゃ、そのとおりだ。
このペースに巻き込まれて忘れてたけど、この人と会ったの、ほんのちょい前だし。
「一応、本校ですけど」
「あら、そうなの? じゃぁそこでいいわね」
――いいのか?
なんかこの人、あんまりにもテキトーっつーか……。
「そこで、って、あそこ親いると、なかなか入れないですよ?」
「あらま、じゃぁ学院長にでも掛け合わなきゃだわね。あそこは学院長誰かしらねぇ」
「オーバル学院長ですけど?」
名前を聞いた途端に、おふくろさんがニヤリとした。
「あら、やぁね。オーバルって言ったら彼かしら? 最近音沙汰ないと思ったら、そんなところでそんなことやってたなんて、まったくあたしに黙ってそんなことして。
でも彼なら話が早いわね。すぐ連絡入れなきゃ」
会ったわけでもねーのに、うちの学院長を知り合いの誰かだって決め付けてるし。
てかとっとと話、進めちゃってるし。
ルーフェイアのヤツも話に置いてかれて、さすがに抗議する。
「母さん、そんな勝手に――!」
けど、おふくろさんのほうが二枚くらい上手だ。
「あらあなた、行きたくないの?」
「それは……」
「じゃぁ決まりね」
マジ、乱暴な人だし。
「でも、でも……」
「なーに躊躇ってんのよ。行きたかったんでしょ?」
頭ごしごし撫でられて、やっとこいつがうなずいた。
それから、訊ねる。
「……父さんと母さんは、それでいいの……?」
いつもあなたは、あたしたちの想像を超えてて……」
良く似た碧い瞳が、こいつを見返した。
「けど彼の言うとおり、ああいうとこならあなたでも大丈夫だと思う」
「でも……」
まだ困惑するこいつに、両親がうなずいた。
「お前がそうしたいなら、行くといい」
親父さんが答える。
「Mesったらやっぱりシエラかしら? あそこの学院長は誰だったかしらね」
おふくろさん、すげー強引。もうカンペキに行かせる気でいる。
正直こゆタイプの親から、どうやってこゆ大人しい娘が生まれたんだか、かなり謎だ。
「シエラ学院ならついでに上級傭兵になっとけば、箔もつくから一石二鳥だし。
そういえばこの近くのアヴァンシティにも、シエラがあったわよね」
って、俺が言ってるのってそこじゃなくて……。
まぁ部外者にしてみりゃいくつかある学院のどれも、一緒なんだろうけど。
「えーと、分校じゃ上級傭兵、なれないですよ?」
「あら、そうなの?」
説明書があるわけじゃないから、一から説明する。
「あれ、本校の生徒だけなんですよ。
だから分校にいてなりたいヤツは、わざわざ本校に転校するんです」
「同じ学院なのに、複雑なのねぇ」
「俺に言われても」
なんでそうなってるかなんざ、知りゃしねぇし。
「で、あなたはどこの生徒なの?」
今度はいきなり話が飛んできた。
「あれ、言ってませんでしたっけ?」
「聞いてないわよ」
あっさり切り返される。
けど良く考えてみりゃ、そのとおりだ。
このペースに巻き込まれて忘れてたけど、この人と会ったの、ほんのちょい前だし。
「一応、本校ですけど」
「あら、そうなの? じゃぁそこでいいわね」
――いいのか?
なんかこの人、あんまりにもテキトーっつーか……。
「そこで、って、あそこ親いると、なかなか入れないですよ?」
「あらま、じゃぁ学院長にでも掛け合わなきゃだわね。あそこは学院長誰かしらねぇ」
「オーバル学院長ですけど?」
名前を聞いた途端に、おふくろさんがニヤリとした。
「あら、やぁね。オーバルって言ったら彼かしら? 最近音沙汰ないと思ったら、そんなところでそんなことやってたなんて、まったくあたしに黙ってそんなことして。
でも彼なら話が早いわね。すぐ連絡入れなきゃ」
会ったわけでもねーのに、うちの学院長を知り合いの誰かだって決め付けてるし。
てかとっとと話、進めちゃってるし。
ルーフェイアのヤツも話に置いてかれて、さすがに抗議する。
「母さん、そんな勝手に――!」
けど、おふくろさんのほうが二枚くらい上手だ。
「あらあなた、行きたくないの?」
「それは……」
「じゃぁ決まりね」
マジ、乱暴な人だし。
「でも、でも……」
「なーに躊躇ってんのよ。行きたかったんでしょ?」
頭ごしごし撫でられて、やっとこいつがうなずいた。
それから、訊ねる。
「……父さんと母さんは、それでいいの……?」
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