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第1話 憧憬
街角 Episode:05
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「おまえさ……どっかMeSの生徒?」
この年でこんな技術を身につけてるとか、やっぱそれ以外に考えつかない。
けどこいつ、不思議そうな顔をした。俺の質問が意外だったらしい。
「学院? 違いますけど……でも、どうしてですか?」
「いや、あっちこっちに凄いもの仕込んでっからさ……」
とたんに瞳が険しくなりやがった。
けっこう迫力がある。
「これが、分かるなんて――」
「そんな顔すんなよ」
なんか思わず慌てながら、ともかく俺は説明した。
「俺、シエラ学院の生徒だからさ。
んであの学校、そのくらい分かんなかったら、やってけないんだよ」
「シエラ学院……いちばん古いMeS、私設の傭兵学校?」
彼女は学院のことは良く知らないらしかった。まるでパンフレットでも読み上げてるみたいな言い方だ。
けどそれで、一応は納得したっぽかった。
「じゃぁ……わかっちゃいますね」
少しほっとしたような表情をみせる。
「でも、あの、このこと……誰にも言わないで、もらえますか?」
「言わない、約束する」
こんな美少女に頼まれて、約束を破れる男いるのか?
少なくとも俺にゃ、出来そうにない。
「すみません、ありがとうございます」
俺の約束に、少女が笑顔になった。大輪の花が咲き誇る感じだ。
そして、あ、と小さく声をあげる。
「あの店?」
『改造屋・バディエンの店』と書いてある小さな看板を、目ざとく見つけたらしい。
たたたっと走って、扉に手をかける。
――ってあの子、やたら素早いぞ?
俺も慌てて後を追っかけた。
「あの、すみません……」
「おっさん、お客だよ」
俺たち二人、店の奥に声をかける。
出てきたおっさんは逞しい体つきで、改造屋ってより鍛冶屋って風貌だ。
「なんだ、イマドか。お、今日はずいぶんかわいい連れがいるんだな?」
「おっさんがヘンなとこに店構えてるから、わかんなくて捜してたんだよ。だから案内してきたんだ」
このおっさん、なにかと絡む。
彼女の方は、俺らのやりとりを不思議そうに見てた。
けど途中で「そうだ」って小さく言って、おっさんの方に向き直る。
「あの、兄がお願いしてたの……出来てますか? 太刀、なんですけど」
「ん? ああ、出来てるよ。えーと……」
おっさんがごそごそ、その辺を探す。
「あぁ、これだろ?」
出てきたのは小太刀なんかじゃなくて、ホントにまともな太刀だった。
それをこいつ、受け取ってすらりと鞘を外す。
刃の重さなんて感じさせない動作。
そして一瞬、彼女の顔に嬉しそうな、なのに凄みのある微笑みが浮かんだ。
この年でこんな技術を身につけてるとか、やっぱそれ以外に考えつかない。
けどこいつ、不思議そうな顔をした。俺の質問が意外だったらしい。
「学院? 違いますけど……でも、どうしてですか?」
「いや、あっちこっちに凄いもの仕込んでっからさ……」
とたんに瞳が険しくなりやがった。
けっこう迫力がある。
「これが、分かるなんて――」
「そんな顔すんなよ」
なんか思わず慌てながら、ともかく俺は説明した。
「俺、シエラ学院の生徒だからさ。
んであの学校、そのくらい分かんなかったら、やってけないんだよ」
「シエラ学院……いちばん古いMeS、私設の傭兵学校?」
彼女は学院のことは良く知らないらしかった。まるでパンフレットでも読み上げてるみたいな言い方だ。
けどそれで、一応は納得したっぽかった。
「じゃぁ……わかっちゃいますね」
少しほっとしたような表情をみせる。
「でも、あの、このこと……誰にも言わないで、もらえますか?」
「言わない、約束する」
こんな美少女に頼まれて、約束を破れる男いるのか?
少なくとも俺にゃ、出来そうにない。
「すみません、ありがとうございます」
俺の約束に、少女が笑顔になった。大輪の花が咲き誇る感じだ。
そして、あ、と小さく声をあげる。
「あの店?」
『改造屋・バディエンの店』と書いてある小さな看板を、目ざとく見つけたらしい。
たたたっと走って、扉に手をかける。
――ってあの子、やたら素早いぞ?
俺も慌てて後を追っかけた。
「あの、すみません……」
「おっさん、お客だよ」
俺たち二人、店の奥に声をかける。
出てきたおっさんは逞しい体つきで、改造屋ってより鍛冶屋って風貌だ。
「なんだ、イマドか。お、今日はずいぶんかわいい連れがいるんだな?」
「おっさんがヘンなとこに店構えてるから、わかんなくて捜してたんだよ。だから案内してきたんだ」
このおっさん、なにかと絡む。
彼女の方は、俺らのやりとりを不思議そうに見てた。
けど途中で「そうだ」って小さく言って、おっさんの方に向き直る。
「あの、兄がお願いしてたの……出来てますか? 太刀、なんですけど」
「ん? ああ、出来てるよ。えーと……」
おっさんがごそごそ、その辺を探す。
「あぁ、これだろ?」
出てきたのは小太刀なんかじゃなくて、ホントにまともな太刀だった。
それをこいつ、受け取ってすらりと鞘を外す。
刃の重さなんて感じさせない動作。
そして一瞬、彼女の顔に嬉しそうな、なのに凄みのある微笑みが浮かんだ。
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