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エヴァ・レイスとマァンファイと

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エヴァ・レイスは魔物に驚かされてばかりいた。

そして王城は流石に大国だと思わせる程に壮大で大きい。

中には女と子供が多いが子供は王族では無いのは不思議に感じた。

そして四肢を切断され、全裸で首輪を着けられて鎖で繋がれて移動散歩させられている。

背中には家名と位、名前が彫られている。

エヴァ「女王陛下は恐ろしい方なのですね」

賢人「あー……立場ある人には容赦しません。でも真面目にしていれば多少の失敗には怒りませんよ。それに子供には優しい人です」

エヴァ「……」

残虐性と善人の両立など可能なのだろうかとエヴァは思う。

そしてキュアノと対面した。

かなり気の強さと気性の激しさを併せ持っている様に見えるが、謁見の間にさえ子供がいて遊んでいる。

キュアノ「お前がエヴァ・レイスか。私がキュアノ・オー・ロンギアルである」

エヴァ「はい。陛下にはお初にお目にかかります」

キュアノ「うむ、お前には辺境伯の称号を与える。結婚し子を産んで上手く統治出来ればマァンファイの復興もあり得る。大いに励め」

エヴァ「真にございますか!?」

キュアノ「真だ。さあ、お前にも祝福を与える。こちらへ」

キュアノは右手を出した。

エヴァは近づき、跪いて手の甲にキスをした。

キュアノ「お前の能力は創造としよう。さあ、会議室へ向かうぞ」

賢人「会議室? どうしてですか?」
キュアノ「国が相手であるからだ。さあ行くぞ」

またしても来たドーム状の部屋。
そして埋め尽くされた人。

ミリアやミリ男、リリアやノウに結城都市の幹部も来ていた。

そして大陸の地図から始まった。

ほぼ四角の形をした大陸の北に位置するマァンファイ。

フビランは南半分を治めていた様で徐々に侵攻を始め、残すは海沿いの国3国のみである。

その3つは隣接しており、フビランに対抗する為に同盟を結んでいる状態である。

北に位置するマァンファイに対して3国は東にある。

次にフビランの兵器である。
曲刀に複合弓、軽装の鎧と馬、そして銃に大砲。

エヴァ「彼等は多数の馬を所有していて馬に乗りながら弓を射て、筒を撃ちます。そして射程も他国の弓より長く、歯が立ちません」

キュアノ「そうか。奴等の人口はどれ程か?」
エヴァ「4億を超えていると聞きます」

そして途端に喧騒が始まった。

「4億超え!? 我等よりも多いぞ!!」
「負けるとは言わんが損害が大きいだろうな」
「そうなると大陸北進と魔物退治に影響が出る!」

コムド「しかし、勝てば大きいな。何せ4億人が暮らせる広さと肥えた大地。資源も多いだろう」

ダーデ「レイス殿。攻城兵器等も持っておりますか?」

エヴァ「はい。これです」

岩や石を放り投げる兵器に巨大な弓矢を撃ち出す兵器、そして門を壊す為に車輪が装着され屋根のある手押し車には丸太が着けられ、先は鉄で覆われている。

ダーデ「ふむ。軍としては魔物がいない状況で戦ってみたい相手だな」

「しかしやはり被害が大きくなるのは……それに取った領土の防衛も厳しいのでは?」

「しかしこの大陸は賢人王子が貿易しているのでしょう? この大陸と取引できないとなるとロンギアルが享受する富が減りますぞ。ここから木材を買っていたのでしょう?」

賢人「その通り。ここから買ってるよ。まだロンギアル内の森や禿山の再生も始まったばかり。まだまだ木は欲しい」

「そもそも何故我々は攻撃を受けたのか分かりません。いったい何が原因なのでしょうか?」

エヴァ「心当たりはございます。フビランは海軍を海賊に偽装して他国の輸送船を襲っているという噂を聞いた事がございます」

「海賊……国が海賊行為だと?」
「それが本当なら恥を恥と思わない連中だな」

エヴァ「ロンギアルは度々海賊退治をしていると聞きます。似たような武器が完成したので報復に出たのかも知れません」

キュアノ「賢人、お前がやらせてるのか?」

賢人「海に出るようになった当初はそうですけど。ラグマン、最近はどうなの?」

ラグマン「半分殺しては住処まで案内させて財宝を奪い取って開放しております」

「信憑性が上がったな」
「それも糧として拡大してきたのだろう」

キュアノ「全員聞け。今のところフビランへの軍事衝突に反対の者は手を上げろ」

すると、半数が手を上げた。

キュアノ「何故反対か?」
「勝っても利益と釣り合うか分かりません」

「そうですな。兵を失い、資材を失い、金を失いではいつ利益が出るか分かりません」

「私はこの大陸手を領土を拡大すべきだと思います」

「兵を損なって魔物退治に支障が出るならば賛成できません」

反対派には説得力があった。

キュアノ「賢人、何か案はあるか?」
賢人「塹壕を掘れば良いと思います」

キュアノ「塹壕?」

賢人「要は人がすっぽり入れるぐらいの溝です。そこに人が入って、銃を撃てば身体を晒す面積が少なくて死亡者も減るかと思います。それなら近づかれませんし弓や鉄砲も当て辛いはずです。岩を放り投げられたら伏せれば大丈夫だし相手には手榴弾も無いからそうそう死なないと思います」

キュアノ「なるほどな。軍部、どうか?」

ダーデ「良いと思います。相手も真似をしたところで開拓の魔法使いに前に掘らせて手榴弾を投げ込めば対処は可能です。更に塹壕前に鉄条網を張ればかなりの有利でしょう」

キュアノ「そうか。兵の損失は抑えられるぞ。まだ反対の者はいるなら手を上げろ」

反対は無し。

キュアノ「では反対無しとしてフビラン攻略を決定する。3国には同盟の打診を行い、まずはヨークから3国までの領地を奪って繋げよ」

賢人は手を上げた。

キュアノ「まだ何かあるのか?」

賢人「はい。魔物を大勢手懐けてフビラン軍に突撃させれば更に消耗を減らせます」

キュアノ「お前は恐ろしい事を考えるな。では賢人は魔物の捕獲を進めろ」

賢人「分かりました」

キュアノ「うん。では、各自はフビランを泣かせる準備に取り掛かれ。エヴァは1週間滞在して創造のか練習をせよ。解散!」

一同立ち上がってキュアノに一礼して退出を始めた。

あの恐ろしいフビランに負けるという可能性も出なかった会議にエヴァはあ然とした。

賢人は結城兵を引き連れてテスカーナ王城付近にて魔物の手懐けに入った。

2月掛けて590匹の大小様々な魔物を手懐けてようやく出発した。

結城兵も連れていき、ヨークは騒々しい雰囲気となる。

魔物がいれば当たり前で、ロンギアル兵士でさえ少し驚いた。

賢人「将軍も腰軽いねー。わざわざ来るなんて」

ダーデ「国相手だし塹壕が本当に威力を発揮するか見ないといかんからな。それで、壁の上に大砲の設置は完了したのか?」

賢人「したよ。これでヨークの外に塹壕が掘れる」
ダーデ「そうか。外に出てとりあえず掘らせよう」

魔法使いや銃兵を伴って、ヨークを出る。

30歩程進んだ地点で塹壕の作成が行われた。

賢人「うーん。雨降ったら水溜まるからなあ。もう少し深く掘って、足場作ろう」

試作した1人分の塹壕が完成して兵が1人入った。

ダーデ「足場をもう少し高くして前に土嚢を置こう。それならば弾の貫通も弓やも貫通しないだろう」

試行錯誤して、ようやく完成した。

ダーデ「よし、これを20M先で作ろう」
賢人「はいよ」

そして塹壕の作成が開始された。

馬車に積んである木材で崩れる事を防ぎ、延ばしていく。

1日でヨークを大きく囲む事に成功した。

と言っても、道は確保する必要があるので繋げてはいない。


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