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16話 妹よ!疎すぎるのも程がある!

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ガストン皇太子とフローラの婚約発表から一週間が経とうとしていた。
 発表から三日間はお祭り騒ぎで、各お店で安売りをしていた。
 それは街や国民の間のことで、王城はかなりバタバタしていたらしい。

 本来なら、まずは伯爵位以上の貴族を集め、婚約の報告と相手を御披露目してから、色んな準備をして大体1ヶ月後くらいに国民に発表するらしいのだが、ガストン皇太子は貴族御披露目をスッとばかして国民に発表をしたのだ。

 ······どうやらフローラに逃げられないように外壁を固めたらしい。

 一週間後の発表はかなり無理をしたらしく宰相様は、発表の次の日に過労で倒れられたとか······。

 今も近隣の国や友好国への報告の準備で忙しいらしい。

 脱出に失敗した日からフローラとは会えていない。

 フローラの様子は何故か、ケージーお兄様から教えてもらっていた。

 今はガストン皇太子がスッとばかしたせいで貴族達への挨拶などの対応をしているらしかった。

 また、皇太子の婚約が決まったことにより、皇太子妃としての教養もつけなくてはならなかった。公爵家は王族に嫁ぐ確率が高い為、もしもの時の為に家庭教師を付けて教養をするのだが、フローラ自身は三女なので、両親も自分も選ばれることはないだろうと、その授業を受けていなかったのだ。
 その為、今は婚約者としての対応に追われつつ王城に泊まり込み、教育を受けているとのことだった。

 ······もしかしたら、もう会えないのかも!?と思っていたが、

「ああ、それは大丈夫。落ち着いたら学校にも通うようになるさ。」

 と、ケージーお兄様が言った。

 何でもフローラが学校に行くと言い張り、何度か脱走を試みたらしかった。
 ガストン皇太子は学校は辞めて、王城にいてもらい普通の勉強に関しては花嫁修業も兼ねて家庭教師を付ける気でいたらしかった。
 ずっとは嫌だ!学校に行く!とフローラは言い張り、ガストン皇太子は根負けをして了承した。
 条件があって、「王城で暮らすこと」「脱走をしないこと」「学校に行くときは勿論、外出の際も護衛を付けること」など。

 フローラ自身は護衛はともかく、何故結婚もしていないのに王城で暮らす必要があるのか分からなかったが、その条件をのまないと、外出もさせないと言われたので渋々承諾したと······。

 皆がお祭り騒ぎの中、フローラは一人色々と大変だったもようです。

 フローラ、ごめんね。

 私たちはそのお祭り騒ぎの中の一人でした。
 だって色んな物が安かったのだもの!
 マリアとキャーキャー言いながら、ケーキを食べたり髪飾りを買ったりしました!


 今はそのお祭り騒ぎも落ち着いてきている。

 フローラは婚約はしたけど結婚まではあと三年先になる。

 早くフローラと会いたいな。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 それから1ヶ月くらい経ったある日の出来事。

 ダン様は度々、屋敷に来るようになった。

 最初はまた花束を持参。無言でスッと私に差し出したのだ。

 私はマリアに聞いたことを思いだし、

「ダン様、何もないのにこんな高いお花を貰うなんて出ませんわ!もうこういうことは止めて下さいませ!クールミパンはそんな価値もありませんし!」

 と断りを入れた。
 だって、高級な花束を貰うような家柄でもないですし!

 ダン様は無表情でしたが、私の言葉に少しショックを受けた感じでした。(ちょっと哀愁が漂っていた感じがした。)

 次に来たときは小鳥の形をした可愛い髪飾りをプレゼントをしてくれた。
 私は動物の形をした小物が大好きだったので、ものすごい感謝の気持ちを込めて
「ありがとうございます!大事にしますね!」
 とお礼を言った。

 その時は無表情のダン様がニッコリと笑った。あまりにも素敵な笑顔だったので少し見惚れてしまったのは秘密ですわ!

 後ろで「良かったな、ダン」というケージーお兄様の声が聞こえたような気がしましたが、気のせいでしょうか?

 それからは来る度に色々な物をくれました。帽子だったり、お出かけ用の手袋だったり·····やはりその中でも特に嬉しかったのは王族御用達のお菓子屋さんのクッキーでした!
 それはそれは美味しくて、頬っぺたがとろけそうでした。
 ですがそれは、やはりかなり有名人なお店の品物だったようで······。

 帽子は可愛いベージュ色でププレ草をモチーフにした造花が飾り付けであった。
 私は早速、学校へ被って行った。マリアをそれを見て驚いたように聞いてきた。

「その帽子、カランディーの帽子じゃない!どうしたの!?」
「実はダン様から頂いたの。」
「え?英雄ダン様から?」

 マリアは更に驚いたような顔をしたがすぐにニヤリとし、「やっぱりね」と呟いた。

「マリア、やっぱりとは?」

「ああ、気にしないで、独り言だから。そっかあ。ダン様から貰ったかあ。ダン様なら手に入るでしょうね。」

 ブランドに疎い私にマリアは説明してくれた。
 カランディーは基本、服のオーダーメイドのお店で質も良く人気店だそうだ。オーダーをしても今は半年待ちだとか。
 たまにお店独自で作った物を小物も売っているらしいのだが、本当にたまにで、出したらすぐに完売するらしい。勿論、それら小物の値段は他のお店の何倍もするそうだ。それならオーダーメイドの小物の注文も受ければいいのでは?と思うだろうが、オーダーメイドは服のみしか受け付けない徹底ぶりだそう。小物はあくまでも趣味で出品しているとのことだった。

 今までくれたプレゼントの髪飾りや手袋はすべてカランディーの商品と判明。全てマリアがチェックしてくれた。カランディーの商品と示すお花のマークがあったのだ。

 そんなものを平気で受け取ってたなんて·····。

 私はどうすればいいのかとケージーお兄様に相談した。ケージーお兄様は

「あいつが好きでお前にあげているのだから、素直に受けとればいい。断られるのは男としてだめ押しされているようなものだからな。」

 と言われたので、それからも受け取っている。

 それに······私が嬉しそうに受け取る度に、ダン様は満足したように引き込まれるような優しい目で私を見ているので、断れる雰囲気ではないものある。

 ·····しかし何故、こんなにプレゼントをくれるのでしょうか?
 私は「クールミパンやケーキなどのお礼は要りませんわ。」と言ったのですが、
「お礼ではない。ミチルダにプレゼントをしたいのだ。」
 と言われた。

 どういう意味でしょうか?不思議です。

 また後ろでいつも間にかケージーお兄様が居て
「これだけされてもプレゼントの意味が分からないのか!?」
 と、呆れたように言われましたが、私の頭は「?」マークですわ。

 ですが、私にプレゼントしたいだけなんて意味不明での高価なプレゼントを貰ってばかりは心苦しいので、貴族にしてはかなり質素で、公爵家ではきっと食卓に出ないようなご飯をご馳走するなどをしました。
 ダン様はその度に「ミチルダの作るご飯は」と言う。

 勿論、作りたてを出してますのでのは当たり前だと思いますが·····。

 それでも、ダン様から貰うプレゼントとは、かなり差がある気がするので、私からもプレゼントをすることにした。

 ある日の休日に、ダン様がケージーお兄様を訪ねて来られたので、ケージーお兄様の部屋にお茶を持って行った時に、直接本人に聞いてみた。


「ダン様、いつもプレゼントをくれるお礼に何かプレゼントをしたいのですが、どんな物がいいですか?·····あまり高価な物は買えませんけれど。」

 ダン様はこめかみをピクッと動かして答えてくれた。

「では、今日の夜に食事でも····二人で食べに行かないか?」

 まあ、夕御飯を二人で食べにですか!?

 でも、どこが食事が美味しいとか知りませんわ!

 と言うと

「大丈夫。私が連れていくから」

「ですが······」

 ちょっとお金が足りるか心配になりました。

「それに食事代とかはこちらで持つから心配しなくていい。」

「え?」

 それでは意味ないのでは?

 ·····とは言えない状況でした。
 だって、眩しくて御幸が指しているかのような満面な笑みでこちらを見ているんですもの!

 となりでお茶を飲んでいたケージーがボソッと「やっとかよ。」と言ったのはミチルダには聞こえていなかった。


 ともあれ、私は急いで自分の部屋に戻り、ダン様と出かけるドレス選びに取りかかった。そして不意に思った。

「これって、所謂デートってやつになるのかしら?」

 でも、普通はデートっていうものは恋人同士がするものですもの。違うわね。私はお友達の妹!それにこれはお礼?に食べに行くのだもの!デートとは言わないわね!

 私は一人で納得して、どのドレスにするか鏡とにらめっこしながら選び始めた······後日、大変なことに巻き込まれることになるとも知らずに····。


 ミチルダがドレス選びをしている時·····

 ケージーはため息を付き

「うちの妹はどれだけ疎いんだよ。ここまできたら将来が心配になってきたぞ······。」

 と、妹の恋愛音痴を案じていた。

 ダンは念願だったミチルダと二人で出かけられるのを喜んでいるのか、ずっと笑顔だった。

 めったに見れないダンの笑顔。いつもと違うダンにちょっぴり気持ち悪いと感じたケージーだった。
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