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14話 フローラとガストンの出会い
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「今日もいい天気だわ!」
空は雲も一つもない晴天だった。
私は約束しているマリアのお迎えを待っていた。
「しかし、昨日は嬉しかったわ!」
昨日のことを思い出す。ダン様から素敵な花束を貰ったのを2つの花瓶に入れて食卓と自分の部屋に飾った。
ダン様からクールミパンのお礼に貰ったの、と帰ってきたお父様とお母様に言うととても驚いてたわ。
当たり前ね。ふふふ。
ただ、お兄様だけが「プッ!」と笑ってたのが気になるのだけれど。
そう言えば、夕食のスープを作っているとお兄様が横に来て·······。
「ミチルダ、お前、ダンの奴に何かに誘われなかったのか?」
あら、お兄様、よくご存知で!
クールミパンを詰めて急いでダン様の元に戻るとお兄様は居なかったと思いますが·····。
「はい。食事に誘われました。」
「何故受けなかった?別に俺たちの夕食なんて良かったんだぞ?どうにでもなるんだから。」
「だってケージーお兄様、たかがクールミパンのお礼に素敵な花束も貰ったのに、お食事までなんてご馳走になるなんて恐れ多いですわ!」
私が真剣な顔つきで言うとケージーお兄様は大声で笑った。
「アーハハハッ!そっか·····クックック!花束はともかく、食事のお誘いもお前はそう捉えたのか!」
ケージーお兄様はクックックッ!とずっと笑っています。
「何がそんなにおかしいのですの?」
ケージーお兄様はポンポンと私の頭を叩き言った。
「お前は学校の勉強だけじゃなくて、違うことの勉強もしないとな!プッ!」
と言って去って行った。去り際に
「ダンのやつ何て誘ったんだ?ミチルダが天然なだけか?」
とボソッと言ったのは勿論ミチルダに聞こえることはなかった。
ミチルダは
学校の勉強の他に何のお勉強をするんでしょう?
頭に「?」マークを作りながらスープを作ったのだった。
それに今朝は、土曜日なので学校がお休みです。それなのに、いつもは起きるのが遅いケージーお兄様が起きてきて······。
「公爵家の屋敷へ行くのだ、粗相のないようにな。手土産は決めているのか?」
お父様は土曜日だと言うのにお仕事に出かけるようでバタバタとしています。
「はい!お父様!お見舞いにお花を買って行こうと思います。」
お父様は「そうか」と言い、
「あまり貧相な花束を買うなよ。これで買えるだけ買いなさい。」
とお金をくれてお仕事に向かった。
その時にケージーお兄様が顔を覗かせたのだ。
「ミチルダ、花束を買うってどこに行くんだ?」
「ケージーお兄様、おはようございます。フローラが3日間ほど学校をお休みをしていまして、お見舞いにマリアと行くのです。その時に花を買って行こうかと思いまして。」
朝の挨拶はきちんと言わないといけません!
昨日、ダン様からあの素敵な花束をどこの花屋さんで買われたのか聞いたのだ。
そこの花屋さんで買うつもりなのです。
「フローラって、ゴールデン公爵家のご令嬢の?」
「ええ、そうよ。」
「そうか······」
ケージーお兄様は少し考え込んで、バタバタと着替えて出かけられたのだ。
何なのでしょう?ケージーお兄様の行動は昨日からよくわからないわ·······。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
時間通りにマリアがお迎えに来たので、早速馬車に乗り込み、花束が買いたいから花屋さんに寄って欲しいと頼んだ。
そのお店の名前を言うと、マリアは驚きの声を出した。
「そこは王家御用達の所よ!しかも一見さんはお断りの所だから、買うのは無理だと思うわ!」
マリアが言うには、そのお店は王家御用達や高位の貴族しか買えないのだそうだ。
多くは輸入品で、一般ではなかなか手に入らないものばかりを扱っているのだという。
王城の王族の部屋とかの飾ってあるお花は、全てそのお店が卸しているらしい。
しかもそんなお店だから知っている人は貴族でも少ないという。
マリアは伯爵家だが、ある伝で知ったと言う。勿論、普通なら買えないのだが、とある公爵の方に声をかけてもらい一度だけ購入したことがあった。
「もう凄く高かったってお父様が言ってたわ!」
私は顔面蒼白になった。ダン様がくれたお花は、見たこともない品種がいっぱいあり、しかもかなり大きな花束だった·····。
クールミパンのお礼には高過ぎですわ!ダン様!
そして食事のお誘いは断って良かったと心底思ったミチルダだった。
仕方がないので、フローラの好きなケーキを買っていくことにした。
フローラの屋敷に着き、門番に取り次ぎを頼む。
いつ来ても凄いわ······。
流石は公爵家というか·······門番も門の前に二人、門を入った所に二人と、合わせて四人の門番がいる。
うちなんて1人も居ないわ。強いて言うならば、庭師のタマリが兼ねている。
マリアの家の門番は二人らしい。
話しは通ってたのか、すぐに通された。
屋敷に入り、うちとは比較にならないほどの豪華な玄関を見ながら、メイドのハーマニーにフローラの部屋へ案内された。
ハーマニーがドアとコンコンとノックをする。
「フローラお嬢様、マリア様とミチルダ様が来られました。」
「入って。」
中からフローラの声がした。
ハーマニーは「失礼します」と一言いい、ドアを開ける。
部屋の中には少し顔が青白い、フローラが椅子に座っていた。
「二人ともよく来てくれたわね。さあ、入ってちょうだい。」
私とマリアは「お邪魔します」と言って部屋に入った。
フローラはハーマニーに目配せをしたら、ハーマニーは「失礼します」と部屋から出て行った。
私達はハーマニーが出ていくのを見届けてから·····質問の嵐!
「フローラ、3日間も休んでどうしたの?」
「そうよ!心配したのよ?」
「何かあったの?」
「助けてって?」
等々。
フローラは私達にまず落ち着いて、と言って·······
「助けて欲しいの!」
と言ってきた。
「助けてって?」
「わ、私、皇太子と婚約させられるかもしれない!!」
「「え?ええぇぇぇぇー!」」
私とマリアはフローラの言葉に絶叫してしまった。
何事かとメイドが来てしまい、フローラが「何でもないわ」と追い返した。
「そ、それはどういうこと!?」
マリアは気を取り直し聞いた。
「私もよくわからないのだけれど·····」
事の起こりは舞踏会に遡る。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
無理やりダンスをしている時のこと。
「フローラ、君と話しをしてみたかったんだ。ちょっと無理やりだったかな?」
ええ!!
とは言えないので
「そんなことはごさいませんわ。光栄でございます。」
ととりあえず言っておく。一曲が終わったらソッコー離脱せねば!!と決意をする。
「ふふふ。どっちが本当の君かな?」
「???」
「一年ほど前に父上と御披露目に夜会に来たよね?」
あっ!と思った。
そう、一年前に私は社交デビューしたのだ。本来なら大々的に貴族たちの年頃の子供の舞踏会や夜会を開くのだが、前王の喪中だったこともあり、自重していたのだが一部の有力な貴族はちょっとした夜会でしていたのだ。
大体は10歳くらいから社交デビューなのだが、フローラは断固して断っていたのだ。一年前は痺れを切らした父が私を騙して夜会に参加させたのだ。
二人で食事をしようと誘われたので、「忙しいお父様が誘ってくれた!」と大はしゃぎをして、目一杯おしゃれをして出かけたのだが王城が近づくのを見て、騙されたことに気づいたのだ。
夜会に着いたときは既に踊りなどが始まっていた。
そして色んな貴族に挨拶回りをさせられ、相手に舐めるように品定めされたのは覚えている。
「殿下にも挨拶をしたいが·····」
父の目線を辿ると人だかりが出来ている一角があった。
「無理そうだな」
と言って、挨拶回りを続けた。
『早く帰りたい!』
そう思っていた。ある程度の挨拶回りが済んだら今度は大人の腹の探り合いが始まったので、お酒の匂いもきつく嫌だったので外に出たのだ。
その時にいじめに遭遇したのだ。
「ちょっと、伯爵家のくせに、私よりも早く挨拶するなんてあり得ないわ!」
グリーン色の髪の毛に綺麗に縦ロールをしてリボンで結んでいて、いかにも私は「高位貴族!」てな感じの人が偉そうに言っている。年齢は二歳くらい上かしら?
「そうよ!そうよ!」
その周りには二人くらい取り巻きがいた。
「こちらは有力な貴族のゴリャーヤ公爵家のご令嬢のセリーナ様よ!ゴリャーヤ家を差し置いて、殿下に挨拶するなんて!貴方のお父様も判ってないようね!」
「そ、それは·····すみません。初めてて····」
標的にされている子は可哀想に震えている。
·····あの子は確か、私と同じで今日が社交デビューってお父様が言ってた子だわ。
今日、社交デビューしたのは五人くらいいたはず。いじめている三人と、いじめられている子、そして私。
ゴリャーヤ家ね·····確かに有力の貴族ね。前は·····。前当主が横領などの不正が発覚したとかで、今は前当主は牢屋に入って処分待ち。爵位剥奪の危機と聞いているけれど。今も現当主は必死に周りにアピールしていたわね。
などと考えていたら、三人はいつの間にかエキサイトしていた。
「目障りだからさっさと帰りなさいよ!」
セリーナという女の子が持っていたジュースを相手にぶっかけてた。それを見た他の二人も同じようにジュースをかける。
かけられた女の子は涙ぐんでいる。
私、プツン!
ささっとその子の前に立ちはだかった。
「ちょっと!貴女は誰ですの?!」
「そうよ!そうよ!邪魔しないで!」
キャンキャンとうるさい。
「そこを退きなさいよ!貴女も同じようにされたい?」
セリーナはニヤリとした。
「ちょっと見させて貰ったけれど、そんなことで文句を言うのはどうかしら?」
「え?」
「たかが挨拶の順番でくらいでばからしいですわ。爵位とかは夜会では関係ないのではなくて?しかも社交デビューでしょう?殿下もお忙しい方ですもの。順番が関係あるとしたら大人達だけで、子供達はそれに従うだけで関係ないわ。それなのに自分より小さい子を責めるなんて、何て心が狭いご令嬢なんでしょう。」
心が狭いと言う言葉を強調して言った。
「まあ!貴女も貴族としてなってないですわ!身分はとても大事でしてよ!格差を付けるのは当然ですわ!」
身分と格差?心が腐ってるわね。
身分は確かに必要だとは思うわ。でも国をよくするため、国民、領民を守る為、纏めるためにある身分だと思う。だって私達は領民、国民があってこそ成り立っているのだから。
私達貴族は切磋琢磨して、助け合って国王や民衆の為に動かなければならない。
こんな身分に拘っているような人々は貴族の中には沢山いる。
心から身分に物を言うセリーナがこの国の母妃にならないことを願った。
「そうよ!この方を誰だがご存知?」
取り巻きAが得意気に言ってくるので答えてやった。
「ゴリャーヤ公爵のご令嬢のセリーナ様ですよね?」
「は?え、ええそうよ!ご存知のようね!この国の有力な貴族な方よ!それもご存知ですわね?」
私が答えたのに少し驚いている取り巻きA。それにしても「そうよ!」が多いわよ!
「····そうですわね····先ほど知りましたが。私の名前はフローラ・ハナフ・ゴールデンですわ。」
「ゴールデン·····?ゴールデン公爵の····?」
私の名前を聞いた三人は顔色が青くなった。ついでにいじめられていた子も。
ゴールデン公爵家はこの国でも有力貴族の三番内にはいる公爵家の一つ。一番はアンドリエ公爵家。(大公爵家は覗く!)
私にとっては面倒くさい家名だが、今は感謝しなくてはね。目には目を?歯には歯をってね!
今こそ「ゴールデン」という家名に役に立って貰うことにした。
「そうですわ。一応ゴールデンも有力貴族の一員だと思いますが····。セリーナさん、有力な公爵令嬢は気に入らないに方にはこんなことをしてもいいのですわね。」
私は近くの噴水に行き、近くにあったバケツで噴水の水をすくい上げ、その水をおもいっきり三人にかけた。
「「「きゃー!」」」
三人はびしょ濡れになり悲鳴を上げた。
私ったら優しいわ!水なんて!乾けば元通り!(多分)
「ひどいですわ!」
「そうですわ!ひどいすぎます!」
「お、お父様になんて言えば·····ヒック」
1人は泣き始めてしまった。
「あら、そう?でも貴女達は色のついたジュースをこの子にかけていたわ。それに比べれば大したなくて?」
フンッと鼻鳴らして言う。
三人はメソメソしながら去って行った。
「いい気味ね!バーカ!」
私は去る三人に向かって叫んで、あっかんべーをした。
それをやり取りを木陰から見ていた人物がいた······。
それがこの国の皇太子のガストンだった。
空は雲も一つもない晴天だった。
私は約束しているマリアのお迎えを待っていた。
「しかし、昨日は嬉しかったわ!」
昨日のことを思い出す。ダン様から素敵な花束を貰ったのを2つの花瓶に入れて食卓と自分の部屋に飾った。
ダン様からクールミパンのお礼に貰ったの、と帰ってきたお父様とお母様に言うととても驚いてたわ。
当たり前ね。ふふふ。
ただ、お兄様だけが「プッ!」と笑ってたのが気になるのだけれど。
そう言えば、夕食のスープを作っているとお兄様が横に来て·······。
「ミチルダ、お前、ダンの奴に何かに誘われなかったのか?」
あら、お兄様、よくご存知で!
クールミパンを詰めて急いでダン様の元に戻るとお兄様は居なかったと思いますが·····。
「はい。食事に誘われました。」
「何故受けなかった?別に俺たちの夕食なんて良かったんだぞ?どうにでもなるんだから。」
「だってケージーお兄様、たかがクールミパンのお礼に素敵な花束も貰ったのに、お食事までなんてご馳走になるなんて恐れ多いですわ!」
私が真剣な顔つきで言うとケージーお兄様は大声で笑った。
「アーハハハッ!そっか·····クックック!花束はともかく、食事のお誘いもお前はそう捉えたのか!」
ケージーお兄様はクックックッ!とずっと笑っています。
「何がそんなにおかしいのですの?」
ケージーお兄様はポンポンと私の頭を叩き言った。
「お前は学校の勉強だけじゃなくて、違うことの勉強もしないとな!プッ!」
と言って去って行った。去り際に
「ダンのやつ何て誘ったんだ?ミチルダが天然なだけか?」
とボソッと言ったのは勿論ミチルダに聞こえることはなかった。
ミチルダは
学校の勉強の他に何のお勉強をするんでしょう?
頭に「?」マークを作りながらスープを作ったのだった。
それに今朝は、土曜日なので学校がお休みです。それなのに、いつもは起きるのが遅いケージーお兄様が起きてきて······。
「公爵家の屋敷へ行くのだ、粗相のないようにな。手土産は決めているのか?」
お父様は土曜日だと言うのにお仕事に出かけるようでバタバタとしています。
「はい!お父様!お見舞いにお花を買って行こうと思います。」
お父様は「そうか」と言い、
「あまり貧相な花束を買うなよ。これで買えるだけ買いなさい。」
とお金をくれてお仕事に向かった。
その時にケージーお兄様が顔を覗かせたのだ。
「ミチルダ、花束を買うってどこに行くんだ?」
「ケージーお兄様、おはようございます。フローラが3日間ほど学校をお休みをしていまして、お見舞いにマリアと行くのです。その時に花を買って行こうかと思いまして。」
朝の挨拶はきちんと言わないといけません!
昨日、ダン様からあの素敵な花束をどこの花屋さんで買われたのか聞いたのだ。
そこの花屋さんで買うつもりなのです。
「フローラって、ゴールデン公爵家のご令嬢の?」
「ええ、そうよ。」
「そうか······」
ケージーお兄様は少し考え込んで、バタバタと着替えて出かけられたのだ。
何なのでしょう?ケージーお兄様の行動は昨日からよくわからないわ·······。
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時間通りにマリアがお迎えに来たので、早速馬車に乗り込み、花束が買いたいから花屋さんに寄って欲しいと頼んだ。
そのお店の名前を言うと、マリアは驚きの声を出した。
「そこは王家御用達の所よ!しかも一見さんはお断りの所だから、買うのは無理だと思うわ!」
マリアが言うには、そのお店は王家御用達や高位の貴族しか買えないのだそうだ。
多くは輸入品で、一般ではなかなか手に入らないものばかりを扱っているのだという。
王城の王族の部屋とかの飾ってあるお花は、全てそのお店が卸しているらしい。
しかもそんなお店だから知っている人は貴族でも少ないという。
マリアは伯爵家だが、ある伝で知ったと言う。勿論、普通なら買えないのだが、とある公爵の方に声をかけてもらい一度だけ購入したことがあった。
「もう凄く高かったってお父様が言ってたわ!」
私は顔面蒼白になった。ダン様がくれたお花は、見たこともない品種がいっぱいあり、しかもかなり大きな花束だった·····。
クールミパンのお礼には高過ぎですわ!ダン様!
そして食事のお誘いは断って良かったと心底思ったミチルダだった。
仕方がないので、フローラの好きなケーキを買っていくことにした。
フローラの屋敷に着き、門番に取り次ぎを頼む。
いつ来ても凄いわ······。
流石は公爵家というか·······門番も門の前に二人、門を入った所に二人と、合わせて四人の門番がいる。
うちなんて1人も居ないわ。強いて言うならば、庭師のタマリが兼ねている。
マリアの家の門番は二人らしい。
話しは通ってたのか、すぐに通された。
屋敷に入り、うちとは比較にならないほどの豪華な玄関を見ながら、メイドのハーマニーにフローラの部屋へ案内された。
ハーマニーがドアとコンコンとノックをする。
「フローラお嬢様、マリア様とミチルダ様が来られました。」
「入って。」
中からフローラの声がした。
ハーマニーは「失礼します」と一言いい、ドアを開ける。
部屋の中には少し顔が青白い、フローラが椅子に座っていた。
「二人ともよく来てくれたわね。さあ、入ってちょうだい。」
私とマリアは「お邪魔します」と言って部屋に入った。
フローラはハーマニーに目配せをしたら、ハーマニーは「失礼します」と部屋から出て行った。
私達はハーマニーが出ていくのを見届けてから·····質問の嵐!
「フローラ、3日間も休んでどうしたの?」
「そうよ!心配したのよ?」
「何かあったの?」
「助けてって?」
等々。
フローラは私達にまず落ち着いて、と言って·······
「助けて欲しいの!」
と言ってきた。
「助けてって?」
「わ、私、皇太子と婚約させられるかもしれない!!」
「「え?ええぇぇぇぇー!」」
私とマリアはフローラの言葉に絶叫してしまった。
何事かとメイドが来てしまい、フローラが「何でもないわ」と追い返した。
「そ、それはどういうこと!?」
マリアは気を取り直し聞いた。
「私もよくわからないのだけれど·····」
事の起こりは舞踏会に遡る。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
無理やりダンスをしている時のこと。
「フローラ、君と話しをしてみたかったんだ。ちょっと無理やりだったかな?」
ええ!!
とは言えないので
「そんなことはごさいませんわ。光栄でございます。」
ととりあえず言っておく。一曲が終わったらソッコー離脱せねば!!と決意をする。
「ふふふ。どっちが本当の君かな?」
「???」
「一年ほど前に父上と御披露目に夜会に来たよね?」
あっ!と思った。
そう、一年前に私は社交デビューしたのだ。本来なら大々的に貴族たちの年頃の子供の舞踏会や夜会を開くのだが、前王の喪中だったこともあり、自重していたのだが一部の有力な貴族はちょっとした夜会でしていたのだ。
大体は10歳くらいから社交デビューなのだが、フローラは断固して断っていたのだ。一年前は痺れを切らした父が私を騙して夜会に参加させたのだ。
二人で食事をしようと誘われたので、「忙しいお父様が誘ってくれた!」と大はしゃぎをして、目一杯おしゃれをして出かけたのだが王城が近づくのを見て、騙されたことに気づいたのだ。
夜会に着いたときは既に踊りなどが始まっていた。
そして色んな貴族に挨拶回りをさせられ、相手に舐めるように品定めされたのは覚えている。
「殿下にも挨拶をしたいが·····」
父の目線を辿ると人だかりが出来ている一角があった。
「無理そうだな」
と言って、挨拶回りを続けた。
『早く帰りたい!』
そう思っていた。ある程度の挨拶回りが済んだら今度は大人の腹の探り合いが始まったので、お酒の匂いもきつく嫌だったので外に出たのだ。
その時にいじめに遭遇したのだ。
「ちょっと、伯爵家のくせに、私よりも早く挨拶するなんてあり得ないわ!」
グリーン色の髪の毛に綺麗に縦ロールをしてリボンで結んでいて、いかにも私は「高位貴族!」てな感じの人が偉そうに言っている。年齢は二歳くらい上かしら?
「そうよ!そうよ!」
その周りには二人くらい取り巻きがいた。
「こちらは有力な貴族のゴリャーヤ公爵家のご令嬢のセリーナ様よ!ゴリャーヤ家を差し置いて、殿下に挨拶するなんて!貴方のお父様も判ってないようね!」
「そ、それは·····すみません。初めてて····」
標的にされている子は可哀想に震えている。
·····あの子は確か、私と同じで今日が社交デビューってお父様が言ってた子だわ。
今日、社交デビューしたのは五人くらいいたはず。いじめている三人と、いじめられている子、そして私。
ゴリャーヤ家ね·····確かに有力の貴族ね。前は·····。前当主が横領などの不正が発覚したとかで、今は前当主は牢屋に入って処分待ち。爵位剥奪の危機と聞いているけれど。今も現当主は必死に周りにアピールしていたわね。
などと考えていたら、三人はいつの間にかエキサイトしていた。
「目障りだからさっさと帰りなさいよ!」
セリーナという女の子が持っていたジュースを相手にぶっかけてた。それを見た他の二人も同じようにジュースをかける。
かけられた女の子は涙ぐんでいる。
私、プツン!
ささっとその子の前に立ちはだかった。
「ちょっと!貴女は誰ですの?!」
「そうよ!そうよ!邪魔しないで!」
キャンキャンとうるさい。
「そこを退きなさいよ!貴女も同じようにされたい?」
セリーナはニヤリとした。
「ちょっと見させて貰ったけれど、そんなことで文句を言うのはどうかしら?」
「え?」
「たかが挨拶の順番でくらいでばからしいですわ。爵位とかは夜会では関係ないのではなくて?しかも社交デビューでしょう?殿下もお忙しい方ですもの。順番が関係あるとしたら大人達だけで、子供達はそれに従うだけで関係ないわ。それなのに自分より小さい子を責めるなんて、何て心が狭いご令嬢なんでしょう。」
心が狭いと言う言葉を強調して言った。
「まあ!貴女も貴族としてなってないですわ!身分はとても大事でしてよ!格差を付けるのは当然ですわ!」
身分と格差?心が腐ってるわね。
身分は確かに必要だとは思うわ。でも国をよくするため、国民、領民を守る為、纏めるためにある身分だと思う。だって私達は領民、国民があってこそ成り立っているのだから。
私達貴族は切磋琢磨して、助け合って国王や民衆の為に動かなければならない。
こんな身分に拘っているような人々は貴族の中には沢山いる。
心から身分に物を言うセリーナがこの国の母妃にならないことを願った。
「そうよ!この方を誰だがご存知?」
取り巻きAが得意気に言ってくるので答えてやった。
「ゴリャーヤ公爵のご令嬢のセリーナ様ですよね?」
「は?え、ええそうよ!ご存知のようね!この国の有力な貴族な方よ!それもご存知ですわね?」
私が答えたのに少し驚いている取り巻きA。それにしても「そうよ!」が多いわよ!
「····そうですわね····先ほど知りましたが。私の名前はフローラ・ハナフ・ゴールデンですわ。」
「ゴールデン·····?ゴールデン公爵の····?」
私の名前を聞いた三人は顔色が青くなった。ついでにいじめられていた子も。
ゴールデン公爵家はこの国でも有力貴族の三番内にはいる公爵家の一つ。一番はアンドリエ公爵家。(大公爵家は覗く!)
私にとっては面倒くさい家名だが、今は感謝しなくてはね。目には目を?歯には歯をってね!
今こそ「ゴールデン」という家名に役に立って貰うことにした。
「そうですわ。一応ゴールデンも有力貴族の一員だと思いますが····。セリーナさん、有力な公爵令嬢は気に入らないに方にはこんなことをしてもいいのですわね。」
私は近くの噴水に行き、近くにあったバケツで噴水の水をすくい上げ、その水をおもいっきり三人にかけた。
「「「きゃー!」」」
三人はびしょ濡れになり悲鳴を上げた。
私ったら優しいわ!水なんて!乾けば元通り!(多分)
「ひどいですわ!」
「そうですわ!ひどいすぎます!」
「お、お父様になんて言えば·····ヒック」
1人は泣き始めてしまった。
「あら、そう?でも貴女達は色のついたジュースをこの子にかけていたわ。それに比べれば大したなくて?」
フンッと鼻鳴らして言う。
三人はメソメソしながら去って行った。
「いい気味ね!バーカ!」
私は去る三人に向かって叫んで、あっかんべーをした。
それをやり取りを木陰から見ていた人物がいた······。
それがこの国の皇太子のガストンだった。
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