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11話 舞踏会が終わり......それぞれの想い(ミチルダ、マリア編)
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私は学校まで歩いて一時間くらいかけて登校している。
勿論馬車で登校しようと思えば登校できるが、ルーカス家には馬車は一台しかなくお父様がお仕事などで使っている。
馬車を使うとなると、朝早く出るか、お父様に便乗させて貰うかのどちらかになる。
朝食はほぼ私が作っている為、これ以上の早起きは正直ごめんだと思ったので、朝早く出るのは却下。当然お父様に合わせたら遅刻するので勿論これも却下。
必然的に徒歩での登校になったのだ。
でも私は歩くのは嫌いではないし、むしろ楽しかった。私は自然の風景が大好き。木々の匂いが好き。
街からは少し離れているので、畑が多くのどかな風景だけど、不思議と癒されているのだ。。
今日も私は新鮮な空気を吸いながら学校を目指して歩いた。
街に入り学校の建物が見えてきた。そんな時に声を掛けられた。
「ミチルダおはよう♪」
マリアが馬車の小窓から覗き朝の挨拶をしてきたのだ。
「マリアおはようございます。」
「ミチルダちょっと待って!」
マリアはそう言うと馬車を操縦している従者に停まるように声をかけて降りてきた。
「ここからは私も歩いていくわ。もう貴方は帰ってよくてよ。」
「本当によろしいのですか?」
従者は心配そうにしている。
「大丈夫よ。学校まであと少しだし。ミチルダと歩いて行くから。」
マリアの言葉で従者は私をチラッと見たが「かしこまりました。」と言ってお辞儀して馬車と供に帰って行った。
二人でたわいもない話をしながら学校へ行き門を入ると、私は一斉に注目を浴びた。
「あらら、昨日の舞踏会の出来事が噂になってるわね。」
マリアと私は顔を見合せため息を着いた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そんな状態なので、勿論教室でも注目の的になった。
「ちょっと、ミチルダさん、昨日のアレはどういうことですの?アンドリエ公爵とはお知り合いなのかしら?」
教室に入った途端に早速そう聞いてきたのは、一番舞踏会に気合いが入っていたサバラリンだった。
サバラリンは怖い顔してズイズイと寄ってくる。
私がその気迫に圧倒されて黙っていると、サバラリンはイライラしたように私を貶なすような言葉を言った。
「貴女みたいな男爵位の人が気軽に踊れる方ではなくってよ!何を考えているのかしら。ちゃんと自分の身の上を考えないていけなくてよ!」
そんなこと言われなくても分かってます。
自分でも気にはしていたが、フローラは勿論、マリアやカールマイヤー様も身分に関係なく接してくれるので、それが当たり前になり意識的に緩んでいたのかもしれない。やはり周りからはそう言う風に見られていたのだと改めて思いしらされた。
「あーら、ぶ····サバラリン様、昨日は舞踏会でしたのよ?誰と踊ってもよろしくては?」
助けて舟を出してくれたのはマリアだった。
いつもはサバラリンの事を少しぽっちゃりしているので「あの豚」とあだ名をつけている。さすがに爵位はサバラリンが上なので「様」をつけている。
マリアの横入りに、ますます不機嫌になるサバラリン。イラッとしたように言う。
「マリアさん、いくら舞踏会でも身分をわきまえないといけませんわ。」
「ですが、何の為の舞踏会開催でしたかしら?招待状ちゃんとお読みになって?一文に『爵位など関係なく』と書いていたではありませんか。」
「!!!」
サバラリンは悔しそうな顔をしている。
そう·····マリアのいう通りに『爵位に関係なく、まずは相手と交流すること』と書かれていたのだ。
昨日の舞踏会は皇太子のお見合いの場だったが、他の貴族もそうだったのだ。
今の皇太子、ガストン様は身分、爵位に関係なく相手を探すと明言されていた。
「それに·····アンドリエ公爵はミチルダのお兄様のご学友であり戦友なんですよの?ミチルダと交流があるのは当然ですし、アンドリエ公爵がミチルダをお誘いしてもおかしくないですわ。」
「「え!?」」
マリアの言葉に驚いて二人の言葉が重なった。
一人は私······。
私は最近までダン様とは、お話しをしたことものなければお会いしたこともなかった。勿論交流なんてしたことなかった。
·····などとは今は言えませんわね·····。
だってサバラリンの顔が·······私をすごい凝視しています。
声を上げたもう一人は勿論サバラリン。
「う····そ····よ·····。」
「嘘とは?どういう意味ですの?」
「ダン様とご学友ですって?戦友ですって?そんな訳はありませんわ!ダン様の戦友とはルカーソー男爵のアンサー様のはずよ!」
あれ?
「???」
マリアと私の頭の上には「?」マークが浮かんでいる。
マリアはふぅと深いため息をつくと、勘違いしているサバラリンに訂正する。
「サバラリン様、何でそんな勘違いをなさったのか知りませんが、そもそも男爵のお名前が近いますわ。アンドリエ公爵の戦友は、ミチルダのお兄様のケージー・ハン・ルカーサー男爵ですわ。まだ家督は継がれておりませんが。」
マリアの言葉を聞き、真っ青になるサバラリン。
そんなサバラリンを放置をし、マリアは私の手を引いて席へと向かった。
そして小声で怒ったように言った。
「先の戦争の英雄である一人の名前を間違えて覚えてるなんてバカとしか言いようがないわ。あれでよく公爵のご令嬢なんてしてるわね。」
うん·····確かにね·····。
私もマリアの意見に同調したのだった。
席に着席して、前にあるフローラの席を見る。
「やっぱりフローラはお休みなのかしら?」
「そうね。昨日のことがあるから来づらいかもね。というか来たくないかもね。来たら絶対にミチルダよりも質問責めに合うだろうから。」
······そうかも。
私は昨日の出来事を思い出していた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
私は急いでマリアとケージーお兄様の所へと向かった。
そこには二人の他にカールマイヤー様もいらっしゃった。
「あ、ミチルダ!こっち!こっち!」
マリアが手を振って呼んでくれた。
私は小走りで行き、いきなり問いだ出した。
「アレはどういうこと!」
「アレとは?」
マリアは惚けている。
「フローラとガストン様のことよ!」
ああ、それね。と言い説明をしてくれた。
私とダン様がダンスホールに行った後、ケージーお兄様が心配だと言って私達の後を追って行った。フローラもマリアも「面白そう!」と思い、後に続いた。
面白そうって·····ひどいわ!二人とも!
結構端の方にいたが、私たちを見つける。そして私が真っ青になってダンスをしているのを見えた。しかもリズムが狂っている。その為か私の周りだけ空間ができていた。(だからすぐに見つけることができた。)
周りからは嫌なヒソヒソ話しが聞こえた。
空間があるから余計目立っていたのだ。しかもエンジェレ様は鬼の形相をして私達を見ていたそう·····。
その時にケージーお兄様が私達の様子を間近で見たいと言ったそうで、フローラ、マリアのどちらかが相手しくれないか?とお誘いがあったらしい。
二人は勿論、こんな面白い場面はなかなか見られない!だから見たい!と思い
「「私が行きます!」」
と、手を上げたそうで······。
·····本当にひどいわ。二人とも····。
お互いに『こんな好機絶対逃がさん!』と譲らず、じゃんけんをすることになったそうだ。
いざ、じゃんけんをしようとしたら、後ろから
「フローラ嬢のお相手は私がしよう」
と声を掛けられた。
振り向くとそこにはガストン皇太子様がいらっしゃったのだ。
フローラはアワアワ。すかさず断りを入れる。
「光栄ですが、今はケージー様のお相手を·····」
「え?でもマリア嬢とどちらかでいいんだよな?ケージー。」
「ああ。私はどっちでもいい。」
「だ、そうだ。ケージー、ダンの様子を見に行くんだろ?初めて見たよ。あんなダンは。」
「違う!ミチルダの様子を見に行くんだ!ダンは知らん!」
ガストン皇太子のお言葉にケージーお兄様はすかさず訂正を入れた。
ガストン皇太子は「相変わらずのシス····ごほん、妹思いだな。」
とクスリと笑う。そしてフローラの方に向かい言った。
「ずっと貴女とお話しをしてみたいと思っていたんだ。」
「え!?」
フローラはガストン皇太子の言葉に驚いた。それもそのはず、ガストン皇太子とは接点もなければ間近でお会いしたこともなかったのだ。
「やっとその機会がやってきた。一緒に踊ってくださいますね?貴女ことを色々と知りたいんだ。それにミチルダ嬢のことも心配なんだよね?彼女を安心させる為に一緒にダンの所で踊ろう。」
ガストン皇太子はそう言ってフローラへ手を差しのべた。
フローラのか顔は真っ青になりブンブンと頭を横に振り
「申し訳ございません!気分が悪くなりました!」
お辞儀をしてダッシュで逃げようとしたのだが、ガストン皇太子にガシッと腕を掴まれフローラをそのまま自分の方へ引き寄せ、フローラがその出来事に唖然としている間に、サッサとダンスホールの中央へと連れて行ってしまった。
ケージーお兄様もマリアもその光景を唖然として見ていたが、我に返り、ダンスホールへと入って行った······とのこと。
ガストン皇太子は私達と踊ると言ったそうですが、一度も来てなかったような?
マリアに確認すると、二人はずっと中央で踊っていたそうだ。
何度か「あちらに····」と言っているフローラの声が聞こえたが、それが実現されることはなかった。
ワルツの曲が終わっても、ガストン皇太子はフローラを離すことなく連続で後2曲は踊っていた。
それからはフローラの姿を見ていない。
はて?どこに行ったのでしょう?
フローラには悪いけれど、周りの視線が痛いので早々に帰りました。
両親は貴族の交流に忙しかったので、ケージーお兄様が一緒に帰る予定でしたが、帰り際にいろんなご令嬢にお誘いを受けてましたのでほっといて帰りました。
その日はケージーお兄様は朝帰りでした。
かなり窶れた顔をしていましたが、どうしたのでしょうか?
■□■□■■□■□■□■□■□■□■□■
「いいわねぇ。フローラもミチルダも!」
「何がですの?」
「だって、もうお相手がいるんだもの!しかも将来も安泰な所!羨ましいの言葉しかでないわ!」
あっ!マリアも勘違いしているわ!
「フローラはそうかもしれないけれど、私は違うわよ。」
「違う?」
「ええ。私は友達の妹で、ダン様は昨日は社交辞令でお誘い下さっただけだわ。友達の妹が誰にも誘われないのは可哀想だと思って下さったのよ。」
マリアは考えるようにして首を傾げた。
「そう?」
「そうよ。だから私もまだお相手はいないわ。」
「ふーん。」
マリアはもうこの話題に興味ないらしく、窓の外を向いた。
私も次の授業の用意をするために自分の席に戻った。
マリアはこちらをチラッと見て言った。
「ミチルダが違うと思うけどなあ。明らかにダン様はミチルダ狙いよ。·····まっ、フローラもミチルダもどっちにせよ前途多難だわ。と、いうか、ガストン皇太子とダン様が大変ね。この二人を攻略するのは······ふふふ。面白くなりそう♪」
マリアがそんなことを考えいるのも露知らず、今日の夕飯の献立を考えていた。
勿論馬車で登校しようと思えば登校できるが、ルーカス家には馬車は一台しかなくお父様がお仕事などで使っている。
馬車を使うとなると、朝早く出るか、お父様に便乗させて貰うかのどちらかになる。
朝食はほぼ私が作っている為、これ以上の早起きは正直ごめんだと思ったので、朝早く出るのは却下。当然お父様に合わせたら遅刻するので勿論これも却下。
必然的に徒歩での登校になったのだ。
でも私は歩くのは嫌いではないし、むしろ楽しかった。私は自然の風景が大好き。木々の匂いが好き。
街からは少し離れているので、畑が多くのどかな風景だけど、不思議と癒されているのだ。。
今日も私は新鮮な空気を吸いながら学校を目指して歩いた。
街に入り学校の建物が見えてきた。そんな時に声を掛けられた。
「ミチルダおはよう♪」
マリアが馬車の小窓から覗き朝の挨拶をしてきたのだ。
「マリアおはようございます。」
「ミチルダちょっと待って!」
マリアはそう言うと馬車を操縦している従者に停まるように声をかけて降りてきた。
「ここからは私も歩いていくわ。もう貴方は帰ってよくてよ。」
「本当によろしいのですか?」
従者は心配そうにしている。
「大丈夫よ。学校まであと少しだし。ミチルダと歩いて行くから。」
マリアの言葉で従者は私をチラッと見たが「かしこまりました。」と言ってお辞儀して馬車と供に帰って行った。
二人でたわいもない話をしながら学校へ行き門を入ると、私は一斉に注目を浴びた。
「あらら、昨日の舞踏会の出来事が噂になってるわね。」
マリアと私は顔を見合せため息を着いた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そんな状態なので、勿論教室でも注目の的になった。
「ちょっと、ミチルダさん、昨日のアレはどういうことですの?アンドリエ公爵とはお知り合いなのかしら?」
教室に入った途端に早速そう聞いてきたのは、一番舞踏会に気合いが入っていたサバラリンだった。
サバラリンは怖い顔してズイズイと寄ってくる。
私がその気迫に圧倒されて黙っていると、サバラリンはイライラしたように私を貶なすような言葉を言った。
「貴女みたいな男爵位の人が気軽に踊れる方ではなくってよ!何を考えているのかしら。ちゃんと自分の身の上を考えないていけなくてよ!」
そんなこと言われなくても分かってます。
自分でも気にはしていたが、フローラは勿論、マリアやカールマイヤー様も身分に関係なく接してくれるので、それが当たり前になり意識的に緩んでいたのかもしれない。やはり周りからはそう言う風に見られていたのだと改めて思いしらされた。
「あーら、ぶ····サバラリン様、昨日は舞踏会でしたのよ?誰と踊ってもよろしくては?」
助けて舟を出してくれたのはマリアだった。
いつもはサバラリンの事を少しぽっちゃりしているので「あの豚」とあだ名をつけている。さすがに爵位はサバラリンが上なので「様」をつけている。
マリアの横入りに、ますます不機嫌になるサバラリン。イラッとしたように言う。
「マリアさん、いくら舞踏会でも身分をわきまえないといけませんわ。」
「ですが、何の為の舞踏会開催でしたかしら?招待状ちゃんとお読みになって?一文に『爵位など関係なく』と書いていたではありませんか。」
「!!!」
サバラリンは悔しそうな顔をしている。
そう·····マリアのいう通りに『爵位に関係なく、まずは相手と交流すること』と書かれていたのだ。
昨日の舞踏会は皇太子のお見合いの場だったが、他の貴族もそうだったのだ。
今の皇太子、ガストン様は身分、爵位に関係なく相手を探すと明言されていた。
「それに·····アンドリエ公爵はミチルダのお兄様のご学友であり戦友なんですよの?ミチルダと交流があるのは当然ですし、アンドリエ公爵がミチルダをお誘いしてもおかしくないですわ。」
「「え!?」」
マリアの言葉に驚いて二人の言葉が重なった。
一人は私······。
私は最近までダン様とは、お話しをしたことものなければお会いしたこともなかった。勿論交流なんてしたことなかった。
·····などとは今は言えませんわね·····。
だってサバラリンの顔が·······私をすごい凝視しています。
声を上げたもう一人は勿論サバラリン。
「う····そ····よ·····。」
「嘘とは?どういう意味ですの?」
「ダン様とご学友ですって?戦友ですって?そんな訳はありませんわ!ダン様の戦友とはルカーソー男爵のアンサー様のはずよ!」
あれ?
「???」
マリアと私の頭の上には「?」マークが浮かんでいる。
マリアはふぅと深いため息をつくと、勘違いしているサバラリンに訂正する。
「サバラリン様、何でそんな勘違いをなさったのか知りませんが、そもそも男爵のお名前が近いますわ。アンドリエ公爵の戦友は、ミチルダのお兄様のケージー・ハン・ルカーサー男爵ですわ。まだ家督は継がれておりませんが。」
マリアの言葉を聞き、真っ青になるサバラリン。
そんなサバラリンを放置をし、マリアは私の手を引いて席へと向かった。
そして小声で怒ったように言った。
「先の戦争の英雄である一人の名前を間違えて覚えてるなんてバカとしか言いようがないわ。あれでよく公爵のご令嬢なんてしてるわね。」
うん·····確かにね·····。
私もマリアの意見に同調したのだった。
席に着席して、前にあるフローラの席を見る。
「やっぱりフローラはお休みなのかしら?」
「そうね。昨日のことがあるから来づらいかもね。というか来たくないかもね。来たら絶対にミチルダよりも質問責めに合うだろうから。」
······そうかも。
私は昨日の出来事を思い出していた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
私は急いでマリアとケージーお兄様の所へと向かった。
そこには二人の他にカールマイヤー様もいらっしゃった。
「あ、ミチルダ!こっち!こっち!」
マリアが手を振って呼んでくれた。
私は小走りで行き、いきなり問いだ出した。
「アレはどういうこと!」
「アレとは?」
マリアは惚けている。
「フローラとガストン様のことよ!」
ああ、それね。と言い説明をしてくれた。
私とダン様がダンスホールに行った後、ケージーお兄様が心配だと言って私達の後を追って行った。フローラもマリアも「面白そう!」と思い、後に続いた。
面白そうって·····ひどいわ!二人とも!
結構端の方にいたが、私たちを見つける。そして私が真っ青になってダンスをしているのを見えた。しかもリズムが狂っている。その為か私の周りだけ空間ができていた。(だからすぐに見つけることができた。)
周りからは嫌なヒソヒソ話しが聞こえた。
空間があるから余計目立っていたのだ。しかもエンジェレ様は鬼の形相をして私達を見ていたそう·····。
その時にケージーお兄様が私達の様子を間近で見たいと言ったそうで、フローラ、マリアのどちらかが相手しくれないか?とお誘いがあったらしい。
二人は勿論、こんな面白い場面はなかなか見られない!だから見たい!と思い
「「私が行きます!」」
と、手を上げたそうで······。
·····本当にひどいわ。二人とも····。
お互いに『こんな好機絶対逃がさん!』と譲らず、じゃんけんをすることになったそうだ。
いざ、じゃんけんをしようとしたら、後ろから
「フローラ嬢のお相手は私がしよう」
と声を掛けられた。
振り向くとそこにはガストン皇太子様がいらっしゃったのだ。
フローラはアワアワ。すかさず断りを入れる。
「光栄ですが、今はケージー様のお相手を·····」
「え?でもマリア嬢とどちらかでいいんだよな?ケージー。」
「ああ。私はどっちでもいい。」
「だ、そうだ。ケージー、ダンの様子を見に行くんだろ?初めて見たよ。あんなダンは。」
「違う!ミチルダの様子を見に行くんだ!ダンは知らん!」
ガストン皇太子のお言葉にケージーお兄様はすかさず訂正を入れた。
ガストン皇太子は「相変わらずのシス····ごほん、妹思いだな。」
とクスリと笑う。そしてフローラの方に向かい言った。
「ずっと貴女とお話しをしてみたいと思っていたんだ。」
「え!?」
フローラはガストン皇太子の言葉に驚いた。それもそのはず、ガストン皇太子とは接点もなければ間近でお会いしたこともなかったのだ。
「やっとその機会がやってきた。一緒に踊ってくださいますね?貴女ことを色々と知りたいんだ。それにミチルダ嬢のことも心配なんだよね?彼女を安心させる為に一緒にダンの所で踊ろう。」
ガストン皇太子はそう言ってフローラへ手を差しのべた。
フローラのか顔は真っ青になりブンブンと頭を横に振り
「申し訳ございません!気分が悪くなりました!」
お辞儀をしてダッシュで逃げようとしたのだが、ガストン皇太子にガシッと腕を掴まれフローラをそのまま自分の方へ引き寄せ、フローラがその出来事に唖然としている間に、サッサとダンスホールの中央へと連れて行ってしまった。
ケージーお兄様もマリアもその光景を唖然として見ていたが、我に返り、ダンスホールへと入って行った······とのこと。
ガストン皇太子は私達と踊ると言ったそうですが、一度も来てなかったような?
マリアに確認すると、二人はずっと中央で踊っていたそうだ。
何度か「あちらに····」と言っているフローラの声が聞こえたが、それが実現されることはなかった。
ワルツの曲が終わっても、ガストン皇太子はフローラを離すことなく連続で後2曲は踊っていた。
それからはフローラの姿を見ていない。
はて?どこに行ったのでしょう?
フローラには悪いけれど、周りの視線が痛いので早々に帰りました。
両親は貴族の交流に忙しかったので、ケージーお兄様が一緒に帰る予定でしたが、帰り際にいろんなご令嬢にお誘いを受けてましたのでほっといて帰りました。
その日はケージーお兄様は朝帰りでした。
かなり窶れた顔をしていましたが、どうしたのでしょうか?
■□■□■■□■□■□■□■□■□■□■
「いいわねぇ。フローラもミチルダも!」
「何がですの?」
「だって、もうお相手がいるんだもの!しかも将来も安泰な所!羨ましいの言葉しかでないわ!」
あっ!マリアも勘違いしているわ!
「フローラはそうかもしれないけれど、私は違うわよ。」
「違う?」
「ええ。私は友達の妹で、ダン様は昨日は社交辞令でお誘い下さっただけだわ。友達の妹が誰にも誘われないのは可哀想だと思って下さったのよ。」
マリアは考えるようにして首を傾げた。
「そう?」
「そうよ。だから私もまだお相手はいないわ。」
「ふーん。」
マリアはもうこの話題に興味ないらしく、窓の外を向いた。
私も次の授業の用意をするために自分の席に戻った。
マリアはこちらをチラッと見て言った。
「ミチルダが違うと思うけどなあ。明らかにダン様はミチルダ狙いよ。·····まっ、フローラもミチルダもどっちにせよ前途多難だわ。と、いうか、ガストン皇太子とダン様が大変ね。この二人を攻略するのは······ふふふ。面白くなりそう♪」
マリアがそんなことを考えいるのも露知らず、今日の夕飯の献立を考えていた。
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