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8話 舞踏会①
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王宮の門の前には舞踏会に参加する貴族で行列ができていた。
早めに出て着たはずなのに······。
「お父様、お母様、凄い馬車の数ですわ。」
私は見たこともない馬車の数に驚いていた。
まあ、国中の貴族が集まっているのだから仕方がないのだけれど。
「そうだな。」
お父様は目を閉じたまま一言。
「これでしたらミチルダにもいい縁談が必ずあるはずだわ!」
お母様は目を輝かせて並んでいる馬車を見ている。
「ミチルダ、俺が見極めてやるから心配するな。」
······ケージーお兄様·····。
舞踏会には関係ないはずのケージーお兄様も一緒に馬車に乗っていた。
それは一時間ほど前に遡る。
舞踏会前日にマリアから届けられたドレスを着た。
そのドレスは薄い黄色の布地をベースにし、レースをふんだんに使っていて可愛いドレスだった。
元のドレスの型を変えて、ほとんど手直ししたそう。最後の辺は間に合わなくなりメイド達にも手伝って貰ったみたいだけれど。
胸の真ん中にはマリアが一番こだわって作ったいうお花がドーンとある。とても可愛い!とても可愛いくて気に入ったのだけれど、胸が大きく開きすぎているのでは?と思うほど胸が強調されているドレスだった。
しかも·····
「あら?おかしいわね。胸の辺りが小さかったようね!ミチルダのおっぱいが盛り上がってるわ!!」
あっはははっ!とマリアは伯爵令嬢らしからぬ笑いをして「ミチルダ胸が大きくなりすぎ!」と、笑い涙を出す始末。
「もう!他人事だと思って!!恥ずかしいわ!マリア悪いけど明日、このドレスを着ていくのは······」
私がそういうと、こんなこともあろうかとちゃんと予備の布地を用意していたの!と自慢気に言って、その場でササッと縫ってくれた。
それはレースで胸を隠すように縫ってくれた。
そう·····胸を隠すようにしてくれたのはありがたいけれど、レースなので隠れていないのだ。素肌は隠れいるかもしれないけれど······。
もっと違う布地で補修して貰いたかったけれど、お母様がそれを気に入ってしまい断念をした。
それに私の家では到底買えないであろう高級な布地のドレス。これ以上のわがままは言えなかった。
そして、そのドレスを着てメイドに薄く化粧をしてもらい、髪の毛も結って貰った。
ただ残念だったのは、可愛いドレス着てお化粧しても、本人は可愛く成らなかったこと。
いざ出掛ける!というときに、ケージーお兄様が正装をして部屋から降りてきた。
「俺も行くから。」
「え?ケージーお兄様も?」
「そうだよ。」
「ケージー、今回呼ばれているのは伯爵家以上の嫡子だぞ?」
「父上、そうなんですが私はちゃんと皇太子から招待状が着ました。」
ケージーお兄様は上着の内ポケットから招待状を出してお父様に見せた。
私も横から拝見させて貰ったけれど、確かに国印もあり、皇太子の名前ガストン様のサインもあった。
今日の主役で今はまだ皇太子で在られるガストン様はケージーお兄様達と同級生で仲良しだった·····らしい。
考えてみれば、ケージーお兄様も国を救った一人だもの。爵位は関係なしに呼ばれてもおかしくはないわ。
と、言うことでケージーお兄様も舞踏会の参加者になる。
馬車の行列に並んでから30分で、門の所で身分証明と招待状を見せて入門できた。
馬車から降りてお父様はお母様をエスコートしながら歩く。私はケージーお兄様が左腕を出してきたので軽く腕を組み、ケージーお兄様にエスコートされながらお父様の後を歩いた。
会場に着くときらびやかに光るシャンデリア。そして沢山の参加者がいた。
圧倒された。
初めての経験だし、見渡したら同級生もちらほら居た。そしてお化粧もバッチリして余りにも綺麗になっており、学園とでは全く違う人を見えた。
「ではご令嬢様は此方に。」
部屋の中で案内係がおり、私は家族とは別の場所に案内をされた。勿論公爵家、伯爵家の嫡子達とも分離されている。
不安そうにケージーお兄様を見ると、ケージーお兄様は軽くポンポンと頭を叩いてくれた。
「後でな。」
ケージーお兄様はそう言うと案内係の後を付いて行ってしまった。
既に大分の人が集まってきていた。
私は今にも人酔いしそうになり、隅の方でジュースを飲んでいた。
そこにマリアが来てくれた。
「いたいた!ミチルダったらそんな隅の方にいるから見つけるの大変だったわ!」
「ごめんなさい。人に圧倒されちゃって。」
「まあ、確かにね。皆、いい獲物をいないかと物色してて目をギラギラさせてるもんね。」
獲物って·······。
「見て、サバラリンなんか皇太子狙いみたいで他の子を牽制してるわよ。」
マリアの目線を辿ると確かに同級生のサバラリンがいた。公爵令嬢で、他の子に何か話しかけている。話しかけられている子は怯えたような目をしていた。
私はそれを見てサバラリンには近づかないことにした。
気を取り直しマリアに聞く。
「フローラは?」
「フローラはご両親に掴まって挨拶回りしてるわ。」
「あっ!そうね!マリアはしなくていいの?」
「私は逃げてきたの。親はここまでは来れないから良かったわ。フローラは有力な公爵家のご令嬢だからね。皇太子には御姉様を紹介するからフローラは他の貴族の挨拶に連れ回されているみたい。」
身分が高いとそれなりに大変なのね。などとしみじみ思ってしまった。
私が思いに耽っているといきなりマリアが髪の毛を触ってきて誉めてくれる。
「ミチルダ!お化粧して、髪の毛を結ってるからドレスもいい感じに似合ってるわ!」
「·····ありがとう。マリアの方こそ凄く可愛いわ。」
「ミチルダありがとう♪」
マリアはピンク色をメインとしたドレスだった。腰には大きなリボンがありマリアの可愛さをますます引き出していた。
髪の毛にもピンクの布地を使って結っている。
マリアと二人でたわいもない話しをしていると、走ってこちらにくる人影が見えた。
「フローラ!」
フローラは、息を切らしてやってきて私の飲んでいたジュースを奪い一気に飲んだ。
フローラはフーと満足したようにひと息を入れ
「面倒だから逃げてきちゃった。」
とウィンクをした。
確かに後ろの方から「フローラ!こちらに来なさい!」とか声が聞こえる。
私達三人はお互いに見合い、ふふふと笑った。
それから私は料理のある窓際の端に移動した。
「どうしてここなの?」
フローラが聞いてきたので説明をする。
「ケージーお兄様がここにいた方が目立たたないからって言ってたので。」
「ケージー様が?そうなの?」
「ええ。」
舞踏会が始まったら、顔合わせで中央に行くらしいくそこでいろんな人と挨拶をし、相手を吟味するらしい。
壇上の向かい側と窓際に料理が置いてあるのだが、基本は壇上側の方の料理を取る人が多いそう。
窓際のしかも端っこにいる人は、誰も声をかけないでね!のアピールの場所らしい。なので声を掛けてくる人はいないそうだ。
「そうなんだー。知らなかったわ。確かに両親には窓際の端には行かないようにとは言われてだけれど。」
「そうね。私も集まりなどがあったら常に挨拶をして回り、中央に常に居なさいと言われてたから。」
公爵家と伯爵家は早々にそんなことはできないでしょうね。
私達はそんな話しをしながらジュースを飲んでいた。
因みに料理は舞踏会が始まらないと食べれない。
カーンカーンカーン
17時の知らせる鐘が鳴り響いた。
それと同時にパッパッパーン!とラッパの音が鳴る。
そして従者が
「皇太子で在られるガストン様がご入場されます!」
と大声を上げると控えていた者がバーンと上座のドアを開けた。
そして正装した少し緊張した面持ちの男性が入ってくる。
明るいグレー色の髪色をしすっきりとした短髪。目元もきりっとした切れ長の目をしている。
皇太子の姿を見たご令嬢方からは黄色いため息が聞こえた。
「ガストン様、なんて素敵なんでしょう。」
「側妃で構わないのでお側に居させて欲しいですわね。」
皇太子が壇上に上がると盛大な拍手が鳴り響いた。
皇太子からのご挨拶······ではなく、今回の舞踏会を仕切っている現在の宰相であるラーマル様より長いご挨拶の後、会場の中央のホールにガストン様が妹君で在られるエンジェレ様の手を引き、ホールの中央で踊り始めた。
周りの皆が見とれている内に一曲があっという間に終わり、そこからぞろぞろと動き始め、早い者はすぐにカップルになり踊り始めた。
私たちは皇太子を見る為少し中央に移動していたが、皇太子が踊るのが終わったら窓際の隅っこの方に避難し、料理を食べることにした。
「何から食べるー?」
マリアがわくわくしながら料理を吟味をしていた時に
「「「きゃーー!!!」」」
ひときわ大きな黄色い声が聞こえた。
私達は何事かと声のする方へ見ると、なにやら人だかりができていた。
そこからかき分けて出てきたのは·····ダン様だった。
白色の制服を着ており、左胸には勲章がいくつか付いていて歩く度に揺れている。誰かを探しているのかキョロキョロとしていた。
「あれは、我が国の英雄のダン公爵様ね。」
フローラはさすがにダン様の顔を知っているようだ。
「あれがダン様!?本当に格好いいわねー!皆が騒ぐのも無理ないわ!」
マリアは初めて見るようでなにやらウンウンと頷いている。
「しかし相変わらず凄いわね。周りの女性があの方をほっとかないから常に女の闘いが繰り広げられているわ。」
フローラはそう言うと料理の吟味を始めた。
「女の闘い?」
私が不思議に思って聞くと簡単に教えてくれた。
「そうよ。誰がダン様と一夜を共にするのかって」
え?え?え?
一夜の共にって·······
私が想像してオロオロしていると、フローラはニヤリとして
「ミチルダが想像通りよ。閨を共にするの。たまに2、3人いっぺんに相手してるとか·······」
「まあぁぁ!」
私が驚きの声を上げるよりも先に、マリアは何故が歓喜をあげる。
私は信じられなかった。ダン様は先日会ったときにはあまり人を寄せ付けなさそうな方だったから······。
この国は性に対してはかなり寛容なのだ。快楽に弱い人種なのかもしれない。結婚しても伴侶以外の人と関係も持つのは当たり前。勿論避妊は必須。
公爵家の夫人ともなると、愛人がいるのは当たり前なのだ。因みに公爵家当主などは妻の他に愛人も数人囲っているのも当たり前の国なのだ。
あのダン様も!?
私が信じられない思いでダン様を見ていると、キョロキョロしていたダン様と目が合った。
そしてダン様は一瞬驚いたような顔になり、すぐに私を睨むようにして真っ直ぐと私を見つめる。
ダン様と私はしばらく見つめ合っていたが、ダン様が先に目を逸らし一度目をギュッと目を閉じてからもう一度こちらを見て、こちらに向かって歩き始めた······。
◆○◆○◆○◆○○◆○◆○◆○◆○◆○
《おまけ》
ケージー君の苦悩①
それは戦争に旅立つ日でミチルダが見送りに来てくれた後のこと。
「妹ちゃん、本当に可愛いよね!」
うるさいぞ、カールマイヤー!確かにミチルダは可愛いがな!
「本当だね。僕、ご令嬢の手作り弁当とか貰ったこともないし食べたこともないよ。」
それは残念だな。ジューデス。
「ムシャムシャ····このカップケーキマジ美味しいぞ!」
だろ!ミチルダは何を作らしても美味しいのだ!特にクールミパンは絶品だ!有りがたく思えアーサー!てか、食べるの早いぞ!ミチルダと別れてから10分も経ってない!!
「実は妹ちゃん、狙ってるんだよな。」
「何!?聞き捨てならんなカールマイヤー!」
「だって妹ちゃん、発育いいよね。絶対ボインちゃんになるよ!」
「お、お前·····人の妹をそんないやらしい目で見ていたのかー!!」
俺はカールマイヤーを首を絞めガクガクと振る。
マジ殺す!カールマイヤー!!
「カールマイヤー!女にだらしないお前なんぞにミチルダはやらん!」
カールマイヤーには常に恋人!?は2、3人はいるのを知っているんだぞ!
ミチルダがそんなやつの毒牙にかかる前に天国へ送ってやるよ!カールマイヤー!
「うわぁ!それは不味いってケージー!!」
ジューデスとアーサーが必死に止めに入るのであった。
ケージーの苦悩はここから始まるのだった。
ーつづくー
早めに出て着たはずなのに······。
「お父様、お母様、凄い馬車の数ですわ。」
私は見たこともない馬車の数に驚いていた。
まあ、国中の貴族が集まっているのだから仕方がないのだけれど。
「そうだな。」
お父様は目を閉じたまま一言。
「これでしたらミチルダにもいい縁談が必ずあるはずだわ!」
お母様は目を輝かせて並んでいる馬車を見ている。
「ミチルダ、俺が見極めてやるから心配するな。」
······ケージーお兄様·····。
舞踏会には関係ないはずのケージーお兄様も一緒に馬車に乗っていた。
それは一時間ほど前に遡る。
舞踏会前日にマリアから届けられたドレスを着た。
そのドレスは薄い黄色の布地をベースにし、レースをふんだんに使っていて可愛いドレスだった。
元のドレスの型を変えて、ほとんど手直ししたそう。最後の辺は間に合わなくなりメイド達にも手伝って貰ったみたいだけれど。
胸の真ん中にはマリアが一番こだわって作ったいうお花がドーンとある。とても可愛い!とても可愛いくて気に入ったのだけれど、胸が大きく開きすぎているのでは?と思うほど胸が強調されているドレスだった。
しかも·····
「あら?おかしいわね。胸の辺りが小さかったようね!ミチルダのおっぱいが盛り上がってるわ!!」
あっはははっ!とマリアは伯爵令嬢らしからぬ笑いをして「ミチルダ胸が大きくなりすぎ!」と、笑い涙を出す始末。
「もう!他人事だと思って!!恥ずかしいわ!マリア悪いけど明日、このドレスを着ていくのは······」
私がそういうと、こんなこともあろうかとちゃんと予備の布地を用意していたの!と自慢気に言って、その場でササッと縫ってくれた。
それはレースで胸を隠すように縫ってくれた。
そう·····胸を隠すようにしてくれたのはありがたいけれど、レースなので隠れていないのだ。素肌は隠れいるかもしれないけれど······。
もっと違う布地で補修して貰いたかったけれど、お母様がそれを気に入ってしまい断念をした。
それに私の家では到底買えないであろう高級な布地のドレス。これ以上のわがままは言えなかった。
そして、そのドレスを着てメイドに薄く化粧をしてもらい、髪の毛も結って貰った。
ただ残念だったのは、可愛いドレス着てお化粧しても、本人は可愛く成らなかったこと。
いざ出掛ける!というときに、ケージーお兄様が正装をして部屋から降りてきた。
「俺も行くから。」
「え?ケージーお兄様も?」
「そうだよ。」
「ケージー、今回呼ばれているのは伯爵家以上の嫡子だぞ?」
「父上、そうなんですが私はちゃんと皇太子から招待状が着ました。」
ケージーお兄様は上着の内ポケットから招待状を出してお父様に見せた。
私も横から拝見させて貰ったけれど、確かに国印もあり、皇太子の名前ガストン様のサインもあった。
今日の主役で今はまだ皇太子で在られるガストン様はケージーお兄様達と同級生で仲良しだった·····らしい。
考えてみれば、ケージーお兄様も国を救った一人だもの。爵位は関係なしに呼ばれてもおかしくはないわ。
と、言うことでケージーお兄様も舞踏会の参加者になる。
馬車の行列に並んでから30分で、門の所で身分証明と招待状を見せて入門できた。
馬車から降りてお父様はお母様をエスコートしながら歩く。私はケージーお兄様が左腕を出してきたので軽く腕を組み、ケージーお兄様にエスコートされながらお父様の後を歩いた。
会場に着くときらびやかに光るシャンデリア。そして沢山の参加者がいた。
圧倒された。
初めての経験だし、見渡したら同級生もちらほら居た。そしてお化粧もバッチリして余りにも綺麗になっており、学園とでは全く違う人を見えた。
「ではご令嬢様は此方に。」
部屋の中で案内係がおり、私は家族とは別の場所に案内をされた。勿論公爵家、伯爵家の嫡子達とも分離されている。
不安そうにケージーお兄様を見ると、ケージーお兄様は軽くポンポンと頭を叩いてくれた。
「後でな。」
ケージーお兄様はそう言うと案内係の後を付いて行ってしまった。
既に大分の人が集まってきていた。
私は今にも人酔いしそうになり、隅の方でジュースを飲んでいた。
そこにマリアが来てくれた。
「いたいた!ミチルダったらそんな隅の方にいるから見つけるの大変だったわ!」
「ごめんなさい。人に圧倒されちゃって。」
「まあ、確かにね。皆、いい獲物をいないかと物色してて目をギラギラさせてるもんね。」
獲物って·······。
「見て、サバラリンなんか皇太子狙いみたいで他の子を牽制してるわよ。」
マリアの目線を辿ると確かに同級生のサバラリンがいた。公爵令嬢で、他の子に何か話しかけている。話しかけられている子は怯えたような目をしていた。
私はそれを見てサバラリンには近づかないことにした。
気を取り直しマリアに聞く。
「フローラは?」
「フローラはご両親に掴まって挨拶回りしてるわ。」
「あっ!そうね!マリアはしなくていいの?」
「私は逃げてきたの。親はここまでは来れないから良かったわ。フローラは有力な公爵家のご令嬢だからね。皇太子には御姉様を紹介するからフローラは他の貴族の挨拶に連れ回されているみたい。」
身分が高いとそれなりに大変なのね。などとしみじみ思ってしまった。
私が思いに耽っているといきなりマリアが髪の毛を触ってきて誉めてくれる。
「ミチルダ!お化粧して、髪の毛を結ってるからドレスもいい感じに似合ってるわ!」
「·····ありがとう。マリアの方こそ凄く可愛いわ。」
「ミチルダありがとう♪」
マリアはピンク色をメインとしたドレスだった。腰には大きなリボンがありマリアの可愛さをますます引き出していた。
髪の毛にもピンクの布地を使って結っている。
マリアと二人でたわいもない話しをしていると、走ってこちらにくる人影が見えた。
「フローラ!」
フローラは、息を切らしてやってきて私の飲んでいたジュースを奪い一気に飲んだ。
フローラはフーと満足したようにひと息を入れ
「面倒だから逃げてきちゃった。」
とウィンクをした。
確かに後ろの方から「フローラ!こちらに来なさい!」とか声が聞こえる。
私達三人はお互いに見合い、ふふふと笑った。
それから私は料理のある窓際の端に移動した。
「どうしてここなの?」
フローラが聞いてきたので説明をする。
「ケージーお兄様がここにいた方が目立たたないからって言ってたので。」
「ケージー様が?そうなの?」
「ええ。」
舞踏会が始まったら、顔合わせで中央に行くらしいくそこでいろんな人と挨拶をし、相手を吟味するらしい。
壇上の向かい側と窓際に料理が置いてあるのだが、基本は壇上側の方の料理を取る人が多いそう。
窓際のしかも端っこにいる人は、誰も声をかけないでね!のアピールの場所らしい。なので声を掛けてくる人はいないそうだ。
「そうなんだー。知らなかったわ。確かに両親には窓際の端には行かないようにとは言われてだけれど。」
「そうね。私も集まりなどがあったら常に挨拶をして回り、中央に常に居なさいと言われてたから。」
公爵家と伯爵家は早々にそんなことはできないでしょうね。
私達はそんな話しをしながらジュースを飲んでいた。
因みに料理は舞踏会が始まらないと食べれない。
カーンカーンカーン
17時の知らせる鐘が鳴り響いた。
それと同時にパッパッパーン!とラッパの音が鳴る。
そして従者が
「皇太子で在られるガストン様がご入場されます!」
と大声を上げると控えていた者がバーンと上座のドアを開けた。
そして正装した少し緊張した面持ちの男性が入ってくる。
明るいグレー色の髪色をしすっきりとした短髪。目元もきりっとした切れ長の目をしている。
皇太子の姿を見たご令嬢方からは黄色いため息が聞こえた。
「ガストン様、なんて素敵なんでしょう。」
「側妃で構わないのでお側に居させて欲しいですわね。」
皇太子が壇上に上がると盛大な拍手が鳴り響いた。
皇太子からのご挨拶······ではなく、今回の舞踏会を仕切っている現在の宰相であるラーマル様より長いご挨拶の後、会場の中央のホールにガストン様が妹君で在られるエンジェレ様の手を引き、ホールの中央で踊り始めた。
周りの皆が見とれている内に一曲があっという間に終わり、そこからぞろぞろと動き始め、早い者はすぐにカップルになり踊り始めた。
私たちは皇太子を見る為少し中央に移動していたが、皇太子が踊るのが終わったら窓際の隅っこの方に避難し、料理を食べることにした。
「何から食べるー?」
マリアがわくわくしながら料理を吟味をしていた時に
「「「きゃーー!!!」」」
ひときわ大きな黄色い声が聞こえた。
私達は何事かと声のする方へ見ると、なにやら人だかりができていた。
そこからかき分けて出てきたのは·····ダン様だった。
白色の制服を着ており、左胸には勲章がいくつか付いていて歩く度に揺れている。誰かを探しているのかキョロキョロとしていた。
「あれは、我が国の英雄のダン公爵様ね。」
フローラはさすがにダン様の顔を知っているようだ。
「あれがダン様!?本当に格好いいわねー!皆が騒ぐのも無理ないわ!」
マリアは初めて見るようでなにやらウンウンと頷いている。
「しかし相変わらず凄いわね。周りの女性があの方をほっとかないから常に女の闘いが繰り広げられているわ。」
フローラはそう言うと料理の吟味を始めた。
「女の闘い?」
私が不思議に思って聞くと簡単に教えてくれた。
「そうよ。誰がダン様と一夜を共にするのかって」
え?え?え?
一夜の共にって·······
私が想像してオロオロしていると、フローラはニヤリとして
「ミチルダが想像通りよ。閨を共にするの。たまに2、3人いっぺんに相手してるとか·······」
「まあぁぁ!」
私が驚きの声を上げるよりも先に、マリアは何故が歓喜をあげる。
私は信じられなかった。ダン様は先日会ったときにはあまり人を寄せ付けなさそうな方だったから······。
この国は性に対してはかなり寛容なのだ。快楽に弱い人種なのかもしれない。結婚しても伴侶以外の人と関係も持つのは当たり前。勿論避妊は必須。
公爵家の夫人ともなると、愛人がいるのは当たり前なのだ。因みに公爵家当主などは妻の他に愛人も数人囲っているのも当たり前の国なのだ。
あのダン様も!?
私が信じられない思いでダン様を見ていると、キョロキョロしていたダン様と目が合った。
そしてダン様は一瞬驚いたような顔になり、すぐに私を睨むようにして真っ直ぐと私を見つめる。
ダン様と私はしばらく見つめ合っていたが、ダン様が先に目を逸らし一度目をギュッと目を閉じてからもう一度こちらを見て、こちらに向かって歩き始めた······。
◆○◆○◆○◆○○◆○◆○◆○◆○◆○
《おまけ》
ケージー君の苦悩①
それは戦争に旅立つ日でミチルダが見送りに来てくれた後のこと。
「妹ちゃん、本当に可愛いよね!」
うるさいぞ、カールマイヤー!確かにミチルダは可愛いがな!
「本当だね。僕、ご令嬢の手作り弁当とか貰ったこともないし食べたこともないよ。」
それは残念だな。ジューデス。
「ムシャムシャ····このカップケーキマジ美味しいぞ!」
だろ!ミチルダは何を作らしても美味しいのだ!特にクールミパンは絶品だ!有りがたく思えアーサー!てか、食べるの早いぞ!ミチルダと別れてから10分も経ってない!!
「実は妹ちゃん、狙ってるんだよな。」
「何!?聞き捨てならんなカールマイヤー!」
「だって妹ちゃん、発育いいよね。絶対ボインちゃんになるよ!」
「お、お前·····人の妹をそんないやらしい目で見ていたのかー!!」
俺はカールマイヤーを首を絞めガクガクと振る。
マジ殺す!カールマイヤー!!
「カールマイヤー!女にだらしないお前なんぞにミチルダはやらん!」
カールマイヤーには常に恋人!?は2、3人はいるのを知っているんだぞ!
ミチルダがそんなやつの毒牙にかかる前に天国へ送ってやるよ!カールマイヤー!
「うわぁ!それは不味いってケージー!!」
ジューデスとアーサーが必死に止めに入るのであった。
ケージーの苦悩はここから始まるのだった。
ーつづくー
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