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1話 プロローグ
しおりを挟む「アーアーウー」
赤ちゃんが手足をジタバタさせながらご機嫌な声を出す。
「もう!ダシャンったら可愛いんだから♪」
私に似た娘、四女のフレアが、歳の離れたもうすぐ8ヶ月になる弟を抱っこして頬っぺたをハグハグしている。
「ふぇっ、ふぇっ」
その後ろでは今にも泣きそうな声を出しているのが、二週間前に産まれたばかりの赤ちゃん。既に嫁いだ長女ノーレンの子供だ。
私にとっては孫に当たる。
今は実家であるアンドリエ家に帰ってきていた。
私の名前はミチルダ・フィン・アンドリエ。一応公爵夫人である。高位貴族では珍しく子沢山で、上の子が24歳で末の子は0歳の三男四女の七人の子宝に恵まれた。アンドリエ家はオーディフェンス王国で由緒ある家柄。今の当主であり私の夫であるダン・フィン・アンドリエは、この国を救った英雄と言われている。
オーディフェンス王国はヘーバンス大陸の中で一番大きい国となる。このヘーバンス大陸にはオーディフェンス王国、ローインデリア王国、ギィオリンク王国、カンチス王国の四つの国がある。
今は平和になったが、ほんの一年前までは戦争があった。
「お母様?」
私が思いに耽ふけっていると、フレアが話しをかけてきた。
私は、ハッとしフレアに笑顔で返す。
「フレアどうしたの?」
「ダシャンがお乳を欲しがっているみたいですわ。」
フレアの腕の中にいる、私にそっくりのダシャンを見ると、指をチュパチュパしていた。
私はクスリと笑い
「そうみたいね。フレアありがとう。」
そう言ってダシャンをフレアから受け取り、服のボタンを外しおっぱいをタワワンと出して乳首にダシャンの口に咥えさせた。
ダシャンはよっぽどお腹が空いていたのか勢いよくおっぱいに吸い付いている。
それを見ていたフレアは不意に遠慮がちに聞いてきた。
「お母様、お父様とはどうやって知り合ったのですか?」
あら?
「いきなりどうしたの?」
「······うん·····。前からどうやって知り合って結婚したのか知りたくて。だって最初から婚約が決まっていた訳ではないんでしょ?」
「······ええ。」
「お父様は格好いいし、かなりモテてたと思いますし。正直に申しますと、お父様ならもっと身分の上の女性と結婚するのが普通ですわ。お母様は男爵家出身で本来なら身分違いで結婚は難しいと思いますわ。」
フレアはずいずいと顔を近づけてくる。
するとノーレンも便乗するように赤ちゃんを抱いてそばに寄ってきた。
「私もお父様とお母様の馴れ初めを聞きたいですわ!」
ノーレンは目を輝かせながら興奮したように聞いてくる。
フレアはモジモジしながら続けて話す。
「お父様って·····その·····女性が沢山寄ってくるし、手当たり次第で誘われたら断らなかったと聞きましたから·····お母様はどうしてそんなモテる人と結婚したのか、結婚して不安はなかったのか聞きたいですわ。」
フレアには八歳の時から婚約者がいる。ローラン・サング・ギディングス。ギディングス公爵家の次男だった。本来なら跡継ぎではない為、公爵ではなく子男爵になる予定だったが、一年前の戦争で活躍し、国王より大公爵の称号を頂き、今はストローンを名乗りローラン・ファン・ストローン大公爵となっている。
フレアも13歳になりもうすぐ14歳になる。この国では16歳から結婚ができる。なので後二年後にはストローン家に嫁ぐことになる。ローランも昔からモテるらしく、フレアと婚約するまではかなり女性関係が激しかったと聞く。きっとフレアは女性関係で不安に思っているのかもしれないわね。
しかも長男の親友で歳も11歳も離れている。不安に思うのは仕方のないことだわ。
この国では貴族は一夫多妻が当たり前だから·····。
勿論、アンドリエ家も例外ではなかった。
しかし、ダンが手当たり次第に女性と関係を持っていたなんて余計なことを言うのは·····私の兄しかいないわね。きっと。
私は二人の娘を交互に見ると、あまりに真剣な顔つきで私を見ているので笑ってしまう。
「そうね。お父様とのことをお話しをしたことはないわね。いいわ。お父様との馴れ初めをお話ししましょう。」
いつの間にかお乳を飲んでいたダシャンがおっぱいに吸い付いたまま寝ていたのでベッドに寝かせ、お茶を飲みながら話しを始めた。
子供達に私達夫婦の馴れ初めをお話しをするなんて思いも寄らなかったわ。
少し恥ずかしい思いもあるが、20年以上の前の初めて夫であるダンに会ったことを思い出しながら、娘二人に語り始めた·······。
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