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24話 会議とランチ(ケージー視点)

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「やらんぞ!」


 ダンと俺は、いつも食べている食堂特別室ではなく、校舎とは別棟の総合会議室いる。

 勿論俺達二人だけではない。

 ミチルダ達には「先生」と言ったが、本当は魔術団総監督、副監督、騎士団の総監督と、普通の学生ではなかなかお目にかかれない雲の上人と一緒にいる。

 何故そんなお偉いさんが来ているのかと言うと、カンチス王国がまた不穏な動きを見せているからだ。かなり被害があって、戦争をまた仕掛けてくるほど余裕はないはずなのにご苦労なことだよ。全く。


 オーディフェンス王国とカンチス王国との国境にある村などが襲われたり、実は戦犯の幹部クラスがまだ数人見つかっておらず、そいつらが国境近くに潜伏していると報告が上がっているからだ。

 それに伴い、小規模ではあるが騎士団、魔術団を送っているのだ。この事も上層部しか知らない。先の戦争が終わって二年しか経っていない。まだ戦争の傷跡は残っている。その状態で領民たちに不安を増長させることはできないのだ。

 騎士団達は襲われた村に、それとは別行動で、戦犯の潜伏の方にジューデス、カールマイヤー、ラドラベルが隠密で動いている。

 俺達も居なくなると変な探りを入れられたらいけないので、残ってその報告を聞いたり、作戦などを話し合う為に集まっているのだ。


 何故俺とダンが残っているかというと、早い話が頭脳派だから。頭より身体が動くのがジューデス、ラドラベル、アーサーなのだが、そんなやつらしか居なかったら失敗するかもしれない。ストッパー役にカールマイヤーを入れてアーサーが残ることになったのだ.....と云うものあるがカールマイヤーが志願してきたのだ。

 カールマイヤーには妊娠したできちゃった嫁がいて、新婚のはずなんだが。

 うん?そういえば「婚姻を結んだ」とは聞いてないな。「責任を取る」と言っていたのにな。報告があってからお祝いを渡そう!と皆と話を合わせてるのに......。今度会ったら真相を聞かねば!


 カールマイヤーのことはもういい。目の前にはお昼ご飯には豪華過ぎる料理が並んでいる。


 だが俺の前にはミチルダが作ったお弁当がポツンとあるだけだ。ミチルダにはおやつといったが、俺の好きな食べ物ばかり入っているので食べることにしたのだ。


 俺の目の前にあるミチルダのお手製お弁当を隣にいるダンがじっと見ている。


「やらんぞ!」


「........」


 無言でじっと見つめるな!


 思わずサッと膝の上にお弁当を避難させてしまった。


「ではこれから会議を始める」


 騎士団の総監督の言葉で会議&憂鬱な食事会が始まった。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 会議は滞りなく進んだ。ついでに食事も進んだ。まあ俺だけだが。

 たまに騎士団の総監督と魔術団の総監督が言い争いをしていたが、それはいつもことだ。相変わらず仲はそんなに良くないらしい。


 たまに俺達に意見や考えなどを聞かれたが(主にダンが)、きっちりと意見と言わせてもらった。昔ながらに凝った考えをしていたからだ。これからは考えを新たに持たないといけない。色々と難色を示したが、ダンの一言で終わり!っていうパターンが多かった。


 その会議の途中でまた報告が入った。

 カールマイヤー達がどうやら潜伏していた戦犯の幹部クラスを捕らえたようだ。仕事が早いな!


 だが、襲われた村は当初は2つと聞いていたが、4つまで拡大しているとのことだった。小規模の隊では対応できないと援軍要請がきたみたいだった。


「うむ。追加の隊を送るか?」


「どれくらいの人数を送るかだな。」


 互いの総監督が話合っている。だが色々と意見が合わないようだ。


「アンドリエ公爵、どう思うかね?」


 騎士団の総監督が意見を求めきた。


「援軍を送るのは反対です。」


 ダンはきっぱりと言った。俺もそう思っていた。


「何故だね!?」


 ダンの意見が意外だったのか、魔術団の総監督が驚いている。


「確かに送り出した人数では厳しいかもしれませんが、近くにはカールマイヤー達がいる。」


「「!!!!」」


 ダンの言葉にハッとした顔をし、気づいたようだ。


 そうなのだ。残党を捕まえてもまだ残処理で国境近くには、カールマイヤー達はいるはずなのだ。今から援軍を送ると言っても、人選などで最低でも1日はかかる。招集をかけるにしてもその倍の日にちはかかるだろう。そんな事では到底間に合わない。向こうに着く頃には全滅....という最悪な事態になるかもしれない。それに人数がいればいいってことでもない。カールマイヤー達が合流すればすぐにでも鎮火するだろうと思う。ちょっと考えれば分かることだ。


 お偉いさん方もそれが分かったのだろう。納得したような顔で頷く。


 方向性が決まった所で食事に集中できるようになった。だが食事の時の談話みたいのはできる訳がない。お偉いさんのスケジュールに合わせないといけないにしても、何故わざわざ昼時に会議なんぞするんだ!


 で、冒頭に戻る。


「一口でいいんだが......」


 ダン!名残惜しそうにミチルダのお弁当を見ない!減るじゃないか!


「い・や・だ!」


 ダンの目の前にはあらゆる高品質の食材を作った料理が並べられている。勿論、俺用もある。ミチルダのお弁当を食べてからそちらの料理を食べるつもりだ!

 あまりにダンが「どうしてもか?」「一口でいいんだ」とかしつこく言ってくるものだから、お偉いさん方の興味を引いてしまったようで、「どこのレストランで取り寄せたんだい?」とか「有名な料理人が作ったのか?」とか聞かれる始末。

 最初は作り笑いをしながら誤魔化していたが、面倒になったので

「妹が作りました!そこら辺の料理人よりは凄く美味しいですよ!」

 と言っておいた。お偉いさん方に、え?って顔されてちょっと引かれてたが。



 え?お弁当はどうしたかって?

 あまりに何度も食べる手を止めてはチラチラとお弁当を見るから、仕方なしにミチルダの美味しい美味しい、俺の大好きなエッギー卵焼きを泣く泣く一つやったさ!

 ダンはそれを嬉しそうに、一口で食べれるのに三回くらいに分けて口に入れて「美味しいな」と食べていた。


 そんな感じで、楽しく?食事していた時に騎士団の者が総監督の元へとやってきて、何やらヒソヒソと耳打ちをしていたが、総監督がいきなり大声を出した。


「何!?姫様が?」


 うん?姫様?

 ダンも食事を止め騎士団総監督を見た。


 う~ん、う~んと唸っている。また何か問題も出たか?


「どうかされたのか?」


 その様子を見た魔術団総監督が聞いた。


「いや.....、どうやら、ガストン様とエンジェレ様が喧嘩したらしく、エンジェレ様が城を飛び出したそうだ。」


 そう言って騎士団総監督が頭を抱えた。

 それを聞いた魔術団の二人が慌てふためく。


「何!?それは大変ではないか!仲の良いご兄妹であられるのに何故喧嘩など?」


「それが分からぬ。近衛が言うには、ガストン様の部屋でエンジェレ様と二人きりでお話しをしていたと思ったら、エンジェレ様の怒鳴り声が聞こえて、ご本人が怒りながら飛び出してきたそうだ。」


「エンジェレ様は大丈夫なのか?ガストン様は何と申しておられる?」


「ガストン様はしばらく放っておけと.....。エンジェレ様が護衛にアンドリエ公爵の行く先を聞いたそうだから、どうやらこちらに向かっているようだ。」


「行き先が分かっているのなら良かったが....勿論護衛は付いているのだな?」


「ああ....」


 そう言ってお偉いさん方は揃って頭を抱えた。


 しかしエンジェレ様がこちらにね。何しに?ダンが絡んでいるようだが.......。


 チラっとダンを見ると、かなり険しい顔している。

 そしていきなり席を立った。


「ケージー、そろそろ時間だ。会議も終わりましたので私達はこれで失礼させて頂きます。」


 お偉いさん方に一言いって軽くお辞儀し、スタスタと一人でドアの方へ歩いて行く。


 お偉いさん方は、ダンに何か聞きたそうだったが何も言わなかった。


 ダンは颯爽と部屋から居なくなる。


 おい!俺を置いていくな!


 俺は急いでお弁当箱を持って、「失礼します!」と言ってお辞儀してダンの跡を追った。



 エンジェレ様が学園に来るか......。何かありそうだな......。


 俺は嫌な予感しかしなかった。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 俺達は無事にミチルダ達と合流した。

 見学会もあと少しというところで、予定通り?に招かれざるお方がやってきた。


 ここに来たということは、お偉いさん方はお姫様を止められなかったらしい。


 エンジェレ様が凄い勢いで護衛達を押し切ってやってきた。



 エンジェレ様はダンを見つけると走り寄ってガバッと抱きついた。



「ダン様!お会いしたかった!」


「「「!!!」」」


 いきなりのエンジェレ様の行動に身体が硬直する俺達。中等部の子達も騎士部のやつらも、突然のエンジェレ様の派手な登場に驚きを見せている。


 エンジェレ様は綺麗な瞳からヨヨヨと涙を流している。


 これは巷で有名な『あざとい』というやつじゃね?


「あれは演技ね。」


 フローラ壌、やはりそう思うか?

 鈍感なミチルダでも分かるらしく、首を捻っている。わざとらしさを感じるんだろう。



 抱きつかれているダンは、凄く冷めた目でエンジェレ様を見ていた。




「エンジェレ様、こんな所にまで来られてどうされたのですか?何かあっては大変です。早く城へお帰り下さい。」


 ダンの奴、無表情のまんまでかなり冷たいお言葉を言ってるな。。かなり怒ってるようだ。



「まあ、ダン様ったら冷たいんですの!」


 エンジェレ様は、先ほどまで流していた涙を引っ込め、頬を脹らませ、ドンドンとダンの胸を叩いた。


 そして強烈な言葉を発した。


「先ほど、お兄様から聞きましたわ!私との婚約を破棄するとはどういうことですの!?」



 エンジェレ様の言葉に俺達は驚愕した。


「は?」

「「え?」」

「はい?」

「あ゛あ゛ん?」


 エンジェレ様と婚約?

 どういうことだ?

 俺の顔が歪む。



 俺の嫌な予感は思いっきり的中したのだった。






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