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2話 由紀 13歳②

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映画を見たあの日から、私は考え込むようになった。

あとあとも兄は優しくて、ずっと心配してくれてた。

私は兄に思いきって聞いてみた。

「お兄ちゃん、彼女欲しい?」

兄は驚いた顔をした。

「由紀!何に言ってんの!お兄ちゃんは彼女はいらないの!私達だけで十分だよね?お兄ちゃん!」

そんなことを言うお姉ちゃんもお兄ちゃんの邪魔してるね。

兄は
「そうだよ。由紀。彼女はいらない訳じゃないけど、今はお前たちで十分だよ。」

笑顔で言ってくれた。

でも兄は高校生。やっぱり彼女欲しいよね。

「お兄ちゃん、私の相手は土日のどっちかでいいよ。だから1日は自分の時間で自由にして。」


···1日だけでごめんね。やっぱり急には無理だから。

兄は急に真顔になり

「誰かに何か言われた?」

「えっ?···言われた訳じゃないけど···」

本当は言われたけど、言えないよ。

「本当に?なら何でそんなことを···映画から後、元気無かったけど、あの二人に何か言われたんじゃないのか?」

兄は真っ直ぐ私を見て聞いてくる。

「別に····」

目を反らしてしまった。

「僕は、別に自分の時間が欲しいなんて思わないよ。それよりも僕が由紀に相手をして欲しいと思っているよ。」

···お兄ちゃんは優し過ぎるよ···。

兄は私のそばきて、俯いている私に

「お兄ちゃんは誰よりもお前達の方が大事だよ。昔も今も。」

そう言い、私の頭を撫でた。

「お兄ちゃん大好き!」

お姉ちゃんの方が兄に抱きついた。
そして兄が手を伸ばしてきて私も抱きしめてきた。


····まだお兄ちゃんっ子でいさせてね···


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ある日、部活が終わり家に帰っている途中に後ろから呼び止められた。

「妹ちゃん!」

後ろを振り向くと、女子高校生が二人立っていた。

····見たことあるなあ。お兄ちゃんの高校の制服だ。

と思ってたら

「うちらだよ。佐藤と小阪」

えっ!?あの二人?全然パッと見ではわからないよ!

佐藤さんも小阪さんも黒髪になっていて、小阪さんなんか付け睫毛ないから余計に分からないし、佐藤さんは2つ括りの三つ編みだし!

変わりすぎでしょ!
お化粧の力って凄いわ!

とりあえず気を取り直して

「佐藤さんと小阪さんですね。覚えてます。」

「妹ちゃんさあ、香川君に何か言ったでしょ?」

佐藤さんが言ってくる。

はあ?いきなりなんなの。

「何のことですか?」

「香川君に前、私達が言ったこと、チクったでしょ!」

「知りませんよ。兄にもあの時のこと何も言ってないし。変な言いがかり止めてくれます?」

ムカつくわ!

「なら何で私達を無視するのよ!」

「そうよ!挨拶はしてくれるけど、話かけても返事もしてくれない!」

そんなこと知らないし!

「今日どうしてって聞いたら、自分の胸にきいてよって!」

「うっ···うっ··香川君に嫌われちゃったよ···」

佐藤さんが泣き始めた。

「うえっ···うっ···うっ!」

小阪さんまで泣き始めた。

そんなこと言われても、私はどうすればいいか分からない。
そっちの問題だもん!

「とりあえず、私は知りませんから!」

そう言って去ろうとしたら、佐藤さんにガシッと腕を掴まれて

「なら香川君に何か言ってよ!」

「はあ?」

「佐藤さんたちは良い人だとかさ!」

都合のいい人たちね!

「私、貴女たちのこと良い人だなんて思ってないし。反対に不愉快なことしか言われてないから私にとっては嫌な人だわ。自分で何とかしてください!」

私は腕を振り払って走って逃げた!


私は帰ってからやはり気になったので、さりげなく兄に彼女達のことを聞いてみた。


「お兄ちゃん、前、一緒に食事をした佐藤さんと小阪さんは、元気?」

兄はピクッと眉を動かし

「元気じゃないかな。特に仲が良いわけじゃないし知らない。」

何か冷たい言い方···。

「そっ、そうか···」

「どうして彼女達のこと聞くの?」

「うーん。別に気になっただけ!気にしないで!」

私は笑顔で答えた。

「そうか···僕達、兄妹のことを口出しするやつは、誰であろうと許さない。」

お兄ちゃんはご立腹でした。
てか、やっぱり私が何か言われたの気付かれたみたい。

まあ、彼女たちが色々言ってきたのは間違いないから、自分達の責任だよね。
もう知らないっと!




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「ねえ、お姉ちゃん。」

「うん?」

「お姉ちゃん、最近下着とか盗られてない?」

「えー?盗られてないよ。由紀は盗られたの?」

そうなんだ···。
私のだけ盗られてるのかな。

「うん。中学に入ってからパンツ三枚とブラ1枚無くなってるの···。」

「えー!マジ?私の方が胸あるし、パンツもセクシーだと思うけどなあ。」

たっ、確かに···。

私のパンツなんて色気とかないと思うけどなあ。

今回は気に入ってた猫のイラストが盗られた···がっかり。

「どうかしたのか?」

「お兄ちゃん、私、また下着を盗られたよ···。」

「そうか···。土日なら監視出来るんだけどな。警察に言うか···」

兄は考え込んでいる。

でも!

「気持ち悪いけど、高い物じゃないしいいよ!警察に言うほどじゃないよ!」

近所でも下着泥棒の被害にあったって聞かないし。

「ならもう少し様子を見るか?」

「うん!」

「今度は土曜日にでも下着を買いに行く?」

うーん。お兄ちゃんとは恥ずかしいなあ。

「友達と行こうかな!」

私がそう言うと

「ダメ!お兄ちゃんと買いに行くんだ!」

兄は一度言い出すと聞かないところがあるあから。

私は諦めて頷いた。



今日はショッピングモールの下着専門店に連れて来てもらった。
お兄ちゃん良くこんなところ知ってたね···。

兄も一緒に入ると言ったけど、絶対ダメ!ついて来たら嫌いなる!と言ったら諦めてくれた。


兄が外で待ってくれてる。
早く買わなくちゃ!
兄から一万円渡された。これで数枚買ってこいと言われた。

店に入ると大人の下着ばかりだった。
私には早いような気がするけど、思いきって選ぶ。

店員さんが来て

「パンティとブラジャーをセットで買うと可愛いですよー。」
と言われてセット物を購入することにした。

まだ中学生だと言うと、可愛い柄のを持って来てくれた。私にはそれでも十分大人の下着に見えた。

ブラジャーも恥ずかしかったけど合わせて貰った。

合わせたらサイズはBだった。今のは多分Aだからサイズは小さいと言われてしまった。

セット下着は2セット購入した。可愛い水色の水玉模様と、ピンクのリボン柄と。それとは別にパンティを単品1枚購入したのだった。


買って店を出ると、兄は女性と話をしていた。

逆ナンね···。

私は一息付き、走って兄の元へ向かった。

「お兄ちゃん!お待たせ!」

「由紀、ちゃんと買えた?」

「もちろん!」

「それは良かった。それじゃお姉さんさようなら。」

兄は話していた女性に手を振り別れを告げる。

「君!絶対に連絡ちょうだいね!」

どうやら兄はあの人の連絡先をゲットしたらしい···。

兄は何も答えず私と手を繋いで歩いて去った。


「お兄ちゃん、やっぱりモテるね!」

と私が言うと

「好きな人にモテないと意味ないね。」
と笑顔で答えた。

お兄ちゃんは好きな人いるの?

私はその言葉が出なかった。




ある日の夜、私は最近、下着だけは夜に洗うようにしていた。

そしてベランダに干して寝ていた。

その日はなかなか寝付けなかった。
すると、ベランダの方からガタガタと音がした。

えっ!?何?今の音。

しばらく様子を伺った。

ガタッ!コツコツと足音が聞こえ始めた。

やだ!怖い!泥棒?

心臓がドキドキして爆発しそうだった。

どうしよう、部屋に入ってきたら!

私は布団の中に潜りこみ、息を潜める。

すると、ガラッ!

ベランダの窓が開く音がした。

「うわ!」

男の人の声が聞こえ

ドスッ!バンッ!ドサッ!

「誰か起きてるか?」

お兄ちゃんの声が聞こえた。

私はガバッと起きて

「私、起きてる!」

と返事した。

「下着泥棒を捕まえた!お父さんと、お母さんを起こして警察に連絡して!」

兄に言われて

「分かった!」

すぐに一階に行き、お父さんとお母さんを起こした。
お母さんはすぐに警察に連絡し、お父さんは二階へ上がった。

20分くらいして警察が来て、下着泥棒を引き渡した。

下着泥棒は、お兄ちゃんに殴られて気絶をしていた。
見たらまだ20代の男の人だった。

私はその騒動で寝付けないまま、朝学校へ向かった。
授業中に寝ちゃったけどね!へへへ。

家に帰ったら珍しくお母さんがいた。どうやら会社は休んだらしかった。

下着泥棒は初犯だったらしい。
この家にも初めて侵入したとのことだった。

···なら昨日の下着泥棒が私の下着を盗んだ訳じゃなかったんだ···

私の下着を盗んだ泥棒さんは、まだ捕まってないってことよね···。

早く太陽の下で乾かしたいのに!

下着泥棒を捕まえた兄は警察にお礼を言われて、勇気ある行動をしたということで表彰されることになった。

当然新聞にも載り、一躍人気者になってしまい大変だった。
またお兄ちゃんのファンが増えたよ。
お姉ちゃんが家に来たファンを蹴散らしたのは言うまででもない。



それから8ヶ月後、私と兄の間に異変が訪れる出来事が起きる。


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