41 / 65
39話 ランクス②
しおりを挟む「ランクス殿、アリア様から離れてもらおう。」
ランディ殿は私の首に剣の先を付きつけたまま言ってくる。
「······。」
「ランディ!お止めなさい!」
アリア様がランディ殿の腕を持つ。
「アリア様、これは罪になります。無理やりアリア様とキスを····」
ランディ殿は悔しそうに歯を食い縛りながら私を睨む。
罪か·····別に罪に問われても構わぬが。
「ランディ、このことは黙っておいてください!」
アリア様の言葉にランディ殿も驚いて、私に突きつけていた剣を下ろした。
「アリア様!?」
「ランクスとは何もなかった。私達は普通に話していただけです。」
「ですが!?」
「これは命令です。ランディ。」
ランディ殿は納得をしていないようだが、命令と言われたら何も言えなくなったようだ。
·····アリア様どうして·····。
かく言う私もアリア様がどうして私を庇うのか分からなかった。
「ランディ、私はランクスとまだ話すことがあります。元の位置へ戻って下さい。」
ランディ殿は私を一睨みをすると何にも言わずに元にいた場所にまで戻って行った。
それを見届けてアリア様は私に話かけてきた。
「ランクス·····」
「謝りませんよ。」
「······。」
「私はまだ貴女を愛しているから····」
アリア様は私の告白に困ったような顔をする。
「既にアリア様は人妻で、皇太子妃です。許させることではありませんが罪で牢獄に入られようが死罪になろうが構いません。」
私にはその覚悟がある。
「ランクス·····嬉しいけどそんなこと言わないで····貴方はサマヌーン国には居てくれないとならない人なんだから。」
「アリア様にそう言って頂けて幸栄ですが、自分の気持ちにはもう嘘を付きたくないのです。」
「ランクス私は····」
「今回は口づけを不問にしてくださりありがとうございます。でも謝りませんし後悔もしておりません。これだけは覚えておいて下さい。世界中の人々が敵に回ったとしても私はアリア様の味方です。もしリンカーヌ王国が嫌になったら一緒に逃亡し貴女と共に生きるつもりです。」
アリア様、貴女様を愛してます。
今すぐ抱きしめてその愛らしい唇にもう一度口づけをしたい。
だが、アリア様の困った顔を見ると····私はぐっと我慢をする。
私達はキース達が帰ってくるまでお互いに無言まま過ごした。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
それから2日間はアリア様と会うことが出来なかった。
避けられているのかと思ったが、どうやら違うらしい。ルイス殿下がアリア様を離さないようで、ネネ殿も会うことが出来ていないらしかった。
いくらアリア様に口止めされたとは言え、やはりルイス殿下の耳にキスの件が入っているとは思っていたが、拝めがないのでランディ殿はアリア様の言い付けを守ってくれているようだ。
ただ敵と認識されたらしく、キース殿に会いに行った時に睨まれる。まっ、仕方がないことだが。
私達の滞在期間は一週間。アリア様と再び会えたのは帰国する当日だった。
アリア様は少し青い顔をされていたが、見送りに来てくれた。その隣にはルイス殿下の姿はなかった。この日は何ヵ国かが帰国する為に対応しているからだとアリア様は言っていた。
ルイス殿下は他国にあまりアリア様を見せたくないらしく、謁見の間にも連れて行ってくれないそうだ。
今もプンプン怒っている。
·····怒っている姿も可愛いが。
「アリア、大丈夫か?」
「ええ、大丈夫よ。ギルバートお兄様。舞踏会の後に会いに行けなくてごめんなさい。」
アリア様がギルバート様に謝る。だがギルバート様はアリア様を少しからかうように言った。
「まあ、仕方がない。それだけルイス殿の愛情が深く、強く愛されて起き上がれなかったんだろう?はっはっはっ!」
ギルバート様は何気なくおっしゃっているだろうが、その言葉が胸に突き刺さり苦しくなる。
アリア様はただ苦笑するだけだった。そして私の方に向き笑顔でお別れの言葉を言う。
「ランクス、この度はわざわざ遠いとこから来てくれてありがとう。ギルバートお兄様も。」
「おい!アリア!私はついでにか!?普通反対だろ!」
アリア様ニッコリと笑い軽くギルバート様を無視をした。
強くなられましたね、アリア様。
「ランクス、私のことは大丈夫だから貴方自身の幸せを考えてね。」
アリア様は少し顔を歪ませて言ってきた。
「勿論です。私は自分の幸せを考えてますよ。そして行動もするつもりです。」
私も笑顔で応えた。
帰路の途中に馬車の中でギルバート様に本心を告げた。
「バーバラ様との婚約は白紙に戻そうと思っております。」
「おっ、お前今さらか?」
「はい。好きでもないですし、結婚しても愛せませんのでバーバラ様に失礼ですし。」
「····愛せないか。言い切ったな。だがバーバラはお前のことが大好きだぞ。納得しないと思うが。」
「バーバラ様が納得しようが納得しまいが、私には結婚する意思はありません。私が愛しているのはただ一人です。」
「······」
私のその言葉でギルバート様も察していたのか、それ以上何も言わなくなった。
サマヌーン国に帰国後、メンデル国王にもその旨を伝えた。
かなり激怒されて、処罰もすると言われたが、別に構いません。処罰も国外追放をお願いしますと申しあげると、私の意思が固いと感じ取ったのかおとがめなしとなった。只し、全くおとがめなしという訳にはいかないので1ヶ月の自宅謹慎と慰謝料を支払うことになった。
勿論バーバラ様はかなり荒れて暴れて、はたまた自殺騒動を巻き起こしたがそれでも私の心が動くことがないと解ると諦めたようで大人しくなった。
バーバラ様はその数ヵ月後、伯爵家に嫁いで行かれた。
私は今は宰相の任命式が行われ、宰相として日々頑張っている。
また近いうちに友好国の外交で宰相としてリンカーヌ王国に行くことになるだろう。
私はそれを励みに頑張っている。
積極的に他国と交流し、閉鎖的だったサマヌーン国に少しずつ他国の文化も取り入れている。
アリア様に胸を張って会うために。サマヌーン国を豊かにするために。
アリア様、遠く離れたこの地で貴女様の幸せを願ってます。
そして愛してます。誰よりも·····。
0
お気に入りに追加
1,651
あなたにおすすめの小説
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる