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37話 舞踏会の後に....

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ああしんどかった······。

舞踏会は滞りなく進み終わった。自分が!だけれど。
来賓客の相手は大変だった····とは言え、ほとんど相手をしていたのはルイス殿下だったけどね。

でも笑顔を絶やさずに保つのはかなりの労力を要したわ!
しかも側妃達の故郷である各国の兄、親戚達が来たものだからちょっと嫌だったわ·····。

ルイス殿下も色々と嫌みを言われていたけれど。(まあ、当然ですわね。)

私の方は値踏みするかのように見られて嫌だった。

第二側妃ナタリアの故郷マターナルヤ国から来たのは兄である皇太子。ナタリアが私のことをどう言っているのか分からないけれど、私を見る目付きが怖かったわ。
まあ、私がいなければナタリアは正妃になっていた可能性が一番高かっただろうから、邪魔と思っているのかもね。
後でルイス殿下に聞いた話しだけど、ナタリアとの結婚をめぐってひと悶着を起こしたのがこの皇太子だったらしい。

そして、第三側妃マリーベルの故郷ドゴランド王国からもマリーベルの兄の皇太子がお祝いにきてくれていた。こちらは舐めるような目付きで見てきていたわ。
「とてもお綺麗な皇太子妃様だ。私もこんな妃がいたらどんなにいいか·····」
と、言ってルイス殿下のご機嫌を少し損ねてたわね。

第四側妃のアナラーナの故郷はザンビア国。こちらは現国王の王弟が来られていた。40代くらいで、物腰は柔らかったけれどルイス殿下や私と話をしている時には常に笑顔だったけれど目が笑っていなくて怖かった。

第五側妃のララベルの故郷、ママイヤ国からも皇太子。今の寵愛はララベルだからそのことを私の目の前で話題にしていたわ。正直腹が立ったけれど笑顔で対応したわ。私って大人?

あとは貴族で祝辞を述べるというよりは媚びを売ってるって感じがした。
その時は身体より精神的に辛かったわ。
ちなみにローゼンリタの父親であるマイヤー公爵候は窶れていて前回に会った時とは全く違って低姿勢だった。ローゼンリタのせいでマイヤー公爵候の地位がかなり下がったようだ。


祝辞三昧が終わると、疲れているからと私は途中退場をした。蜜月だから成せる行為。勿論ルイス殿下はその場に残り対応しているはず。


私は少しベッドで横になって休んでいたけれど、ネネからピューマが寂しがってました。と聞いてピューマの所へ行くことにした。
歩くのもしんどい状態だったけれど、休憩をはさみつつ頑張って歩いた。

裏庭に着くと外は既に暗くなっていた。ピューマは私に気付き嬉しそうに私の元へやってきて頭をスリスリしてきた。

「ごめんね。ピューマ。」

私はピューマの頭を撫でて、お鼻にキスをした。
私は椅子に座り櫛でピューマをブラッシングをした。

「ピューマの散歩は?」

私が聞くとネネがすぐに答えてくれた。

「昨日はキースが連れて行きました。今日は····アリア様は無理そうなのでまたキースが連れて行くと思います。」

「そうね····ちょっとピューマの散歩は無理ね。キースお願いね。」

「はい。お任せください。」

キースは快く引き受けてくれた。それを聞いたピューマは「キュウ~」と鳴いてがっかりした表情を見せた。

「ごめんね。明日は行こうね。」

私はピューマを宥めた。
今日の閨は何とか、しないようにルイス殿下を説得しないとね!
そういえばピューマの散歩にも付いて来ると言っていたわね······。


私がピューマを甘やかして撫でたりしていると、ある人物がこちらに向かっているのが見えた。

·····誰?

だんだんと近づいて来た人物を見て驚いた。

「ランクス!」

「アリア様。」

ランクスは笑顔でこちらにやってきた。

どうしてランクスが!?ここは皇太子妃の離宮よ。普通は入れないはず。

そのことを聞くとキースがルイス殿下にお願いして許可をもらったということだった。よく許可を出したわね····。

許可が貰えた理由はキースがルイス殿下に一週間もアリア様にあまり会えないならピューマが暴走するかもしれない。それを止めるのは自分一人では無理だ、ランクスと一緒なら何とかなるだろうからと言って許可をもらったらしい。

確かにキースとランクスはピューマを拾ったときから一緒にいて、ランクスが私の近衛をしている時には常に散歩にもついて来ていた。キースとランクス、ネネの言うことなら聞くでしょうね。

実は昨日もピューマの散歩にランクスも一緒に行ったとのこと。

なるほどね。ピューマが暴走したら大変なことになるわ。私との蜜月を死守するために許可をしたのね。

「アリア様、隣に座っても宜しいでしょうか?」

「いいわよ。どうぞ。」

ランクスは私の隣に座りピューマを撫でる。

「これからは『アリア様』ではなく『アリア皇太子妃』と呼ばないといけないですね。」

ランクスは苦笑しながら言ってきた。

「あら、いいのよ。いつも通りに呼んでちょうだい。許可するわ。」

私はそう言うと、ふたりで顔を見合せぷっと笑い出した。

「そういえば、舞踏会はどうしたの?」
「途中で抜けて来ました。舞踏会にはギルバート様が居れば大丈夫ですから。私が居なくても何とでもなります。」

ランクス·····ギルバートお兄様を犠牲にして抜けてきましたね····。

「アリア様。」

今度はネネに呼ばれる。

「アリア様、キースと私はピューマの散歩に行って参りますわ。舞踏会がまだ終わりそうにないですし、今日は早めに行って参ります。」

そうね。きっと舞踏会が終わるのを待っていたら散歩に行くのは夜中になってしまうわね。

「お願いするわ。ピューマ行っていらっしゃい。」

ピューマのお鼻にチュッとキスをした。
キースはピューマにリードを着けて、裏門の方へと向かっていった。

「あら、ランクスは行かないの?」

「ええ。せっかくアリア様と会えたので。ピューマも昨日はイライラしていたようでしたが、今はそんな感じを受けませんでした。アリア様に会えたので落ち着いたのでしょう」

「そうなの?ならいいけれど。」

ランディは私から見えない位置で警備をしているようだ。
なので今は二人きり。

「アリア様····この一年で本当にますます綺麗なられましたね。」

「あら!ありがとう!」

身内からの誉め言葉は素直に受け取れるわね。
私は両手を顔に当てていやんいやんと頭を振った。

「早まりました。」

ランクスはいきなりそんな言葉を言うので、どうしたんだろうと思った。

「アリア様がサマヌーン国の為にその身を犠牲にして····私も何とかしなければと思い、強くて豊かな国にしたくて宰相になることを決め、手っ取り早いと思いバーバラ様と愛のない婚約をしました。」

あら、さらっバーバラ御姉様に愛がないって言ってるわ。

「自分でも驚きの早さで宰相になりました。まだ後五、六年はかかると思ってました。これもガライ様のおかげです。キツかったですがガライ様から色々と学ばして貰いました。今思うに、宰相になったらそこそこの地位ので、結婚とかそんなことは黙らせることもできる。一生涯独身でもいいという選択肢もあったと思います。」

「そんな!貴方みたいな有望な人が結婚しないだなんてダメよ!いくら宰相になったからと言っても周りが放って置かないわ!」

ランクスが結婚せず子孫を残さないなんてサマヌーン国にとっては大打撃だわ!そんなのダメよ!ダメ!

熱弁する私にランクスは一瞬苦笑し、真顔になりいきなり顔を近づけてくる。

「え!?」

そしてランクスの唇が私の唇に触れた。

えっ?!えっ?!えぇぇぇー!!
ランクスが私にキスしてるっ!!

私は驚き大きく目を開けて、間近にあるランクスの顔を見つめていたのだった。
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