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33話 再会
しおりを挟む部屋にはギルバードお兄様とランクスがいた。
ギルバードお兄様は分かるけれど何故ランクスが来ているのかしら。
「アリア様、お部屋にお入り下さい。」
ランディに言われて、まだ部屋の外にいたことに気付き入った。
ネネもキースも驚いているようだった。
だって本来なら宰相であるガライが来るはず·····
······まあ、今考えても仕方がないわね!
私は笑顔で二人に声をかけた。
「ギルバードお兄様、ご無沙汰しております。お元気そうで何よりですわ。わざわざ遠い所から私の婚礼にお越しくださいましてありがとうございます。」
「アリア、久しぶりだな。約一年間会わなかったが綺麗になった。明日の婚礼式が楽しみだ。」
「アリア様·····本当にお綺麗になられて····」
ランクスは目を細めて褒めてくれた。
ふふふ。
「お父様やお母様や他の方々はいかがですか?変わりはないでしょうか?」
「ああ、皆元気にしているよ。そうだ、カトリーヌも婚約をしたぞ。来年に結婚式を予定している。」
あのカトリーヌ御姉様が婚約!信じれませんが、輿入れ先が見つかり良かったですわ!
「まあ!カトリーヌ御姉様が!?おめでとうございます!」
「やっとだ·····降家になるがな。パウド伯爵家にな。」
伯爵家!?別に悪いことではないけれど普通は降家でも公爵家までのはず。よっぽど嫁ぎ先がなかったのかしら······。
サマヌーンは小国なので、他の国からの結婚の申し込みはほぼ皆無。王家は貴族から娶ったり、嫁いだりするので貴族との間はかなり深い繋がりになる。
だから本来なら私はランクスと婚約をする予定だったのだ。私が150年ぶりくらいに他の国の····しかも大国の皇太子に嫁ぐことになった。
「私も決まったよ。リスマラッカ公爵家のガーネット殿だ。」
リスマラッカ公爵家·····ランクスのグルブルス公爵家よりは劣るけれども我が国では有力な貴族の一つだ。
「ギルバードお兄様、ご婚約をおめでとうございます。ご結婚式の際はぜひお祝いに駆けつけますわ。」
ギルバードお兄様はにっこりと笑い「ありがとう」とお礼を言ってくれた。
ギルバードお兄様が笑った······ギルバードお兄様が笑う姿を見るのはほとんどない。いつも眉間にシワを寄せているイメージだったから。ちょっと驚いたけど、婚約をして少し丸くなっているのかもね。
「バーバラはランクスと婚約してからランクスにべったりでランクスは困るよな?」
ギルバードお兄様は茶化すようにランクスに話しかけた。
それまでニコニコして話しを聞いていたランクスは苦笑した。
そういえば····
「どうしてランクスが居るのかしら。ガライは調子悪いの?」
ランクスは首を振り否定をする。
「いいえ。」
ギルバードお兄様が説明をしてくれた。
「ランクスは宰相になったんだ。まだ公式には発表されてないからガライの代行として来ている。」
「え!?」
ランクスがもう宰相に!?
「お前の婚礼が終わってサマヌーン国に帰ったら、正式に宰相に任命され、任命式を行うことになっている。」
「まあ!ランクスおめでとう!こんなに早く宰相になるんてすごいじゃない!ましてや騎士からだもの·····大変だったでしょう。」
「いえ、騎士よりも文官の方が合っていたようです。ガライ様も一つ一つ丁寧に教えてくださいました。」
ランクスは照れたように頭をポリポリと人差し指で掻いていた。
そして真剣な顔になり
「アリア様に追い付く為に。」
私を見つめて言ってきた。
「うん?何のことだ?」
ギルバードお兄様はランクスの言葉の意味が分からないようだ。
·····当然でしょう。私たちだけが分かることだから······。
『アリア様がこの国の為にご結婚されるのなら、私も私なりにこの国を守っていきます。』
ランクスの言葉が頭を過る。
ああ、ランクスは本当に実行をしているのね。
私は有言実行をしているランクスに笑顔で見つめた。
「まあ、いい。ランクスは婚約して一年くらい経つのにまだバーバラと寝てないらしいんだ。」
ギルバードお兄様は笑いながらランクスをまた茶化し始めた。
「ギルバード様!辞めて下さい!」
「でもな男だろう?バーバラは積極的にお誘いをしているが応えてくれないと嘆いてたぞ?」
バーバラ御姉様······。
「バーバラ様とは結婚するまでそういうことをするつもりはありません!」
チラッと私を見てランクスは嫌そうに言う。
「でもなあ·····どう思う?」
ギルバードお兄様が話をこちらに振ってきた。
『どう思う?』って言われてもね······。
やはり婚約をしたらすぐにでも閨を共にするのは普通なのかしら·····。
ふと顔を上げるとランクスは真剣な眼差しでこちらの答えを待っていた。
しかしあのギルバードお兄様が下ネタをね·····。
ずっとお堅い方でそんな下ネタなんて言うイメージはなかったけれど、ギルバードお兄様もただの男でしたのね····。
「私はそれでいいと思いますわ。ランクスは誠実なのですわ。」
「アリア様·····」
ランクスは嬉しそうに微笑んでいる。
「アリア、お前はどうなんだ?」
ギルバードお兄様は当然、ルイス王子とは既に閨を共にしていると思っているのだろう。
私はギルバードお兄様にこめかみをピクピクさせながら笑顔で応えた。
「それは秘密ですわ。」
それからは少しサマヌーン国の様子を聞いて御暇をした。
長旅で疲れているだろうし、明日は婚礼式だもの。
そして夜。
お風呂に入り、さあ寝よう!と思っていた時にネネがやって来た。
「アリア様、ちょっといいですか?」
「なあに?」
「とうとう明日にはルイス殿下の花嫁····皇太子妃になられるのですね····」
ネネは涙目になっている。
もう!ネネ!涙目になるのは早いわよ!
私もうるっとしていたら
「と、いうことは明日はルイス殿下と初夜ですわね!」
うん?いきなり何を言うのネネは!思わず涙が引っ込んだ。
「今まで、アリア様はお子様でしたので」
またお子様って言った!!
「宣言通りに純潔を守られました。」
もちろんよ!断るのにどれだけ苦労したことか·····。
その時のことを思い出し、思わず遠い目をしてしまう。
「恥ずかしいですが無知のままではいけないと思いますので少しお教えしようと思います。」
「え!?」
それから、ネネは顔を赤くしながら閨のことを一時間ほど教えてくれた。
私はその話を聞いて初夜が恐ろしくなり、婚礼の緊張より閨のことを考えるとなかなか寝付けなかった。
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