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29話 ルイス王子とローゼンリタそして新たな.....

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私はルイス王子に連れられて廊下を歩いている。
どこに向かっているのでしょう。
もう宮に帰ってもいいのかしら·····。

「ルイス殿下、どちらに向かってますの?」

「私の部屋へ向かっているよ。」

え?
ルイス王子の部屋?

「何故ルイス殿下の部屋へ?」

「うん?私の部屋にくるのに何か問題でもあるのかい?」

「·····いいえ。」

私は黙ってルイス王子の後をついて行った。

しばらくして階段を登り二階へとやってきた。階段を上がって2つ目の部屋の前でルイス王子が止まった。
他の部屋のドアよりも大きくかなり豪華に造られていて、とても頑丈そうだった。
もう少し奥の方を見ると、ルイス殿下の部屋から2つ目の部屋も同じように豪華で頑丈なドアが見えた。よく見るとドアの上にルイス王子の紋章であるブルーのユリが刻まれている。向こうのドアの上にはピンクのユリが刻まれていた。

私がそちらの方を見ていると、ルイス王子が気付き説明してくれた。

「あっちの部屋は正妃であるアリアの部屋の予定だったんだ。」

あら·······。

「婚礼が済んだらこっちに来て欲しい······。考えといてくれ。」

即効で「嫌です」とは言えないので、当たり障りない返答をした。

「······はい。」

私は手を引かれてルイス王子の部屋と入って行った。

「うわっ!広っ!」
思わず声を出してしまった。
私の部屋の1.5倍はある広さだ。ゆったり座れるソファーや白をベースにした六人くらいは座れるであろうテーブル。軸の部分にはユリの紋章が彫られている。よく見たらソファーから椅子、戸棚などにはユリの紋章が彫られたり、描かれていた。
全てがオーダーメイドで造られているようだった。

部屋の中を見て驚いている私をルイス王子はクスリと笑い、私をテーブルのある椅子へ座るように言ってきたので椅子に座った。

「アリアの部屋も同じような感じだよ。クローゼットからベッドまでユリの紋章が入っている。見に行くかい?」

私はぶるぶると首を横に振った。
行ったら住みたくなるかも!!

正直、私の好きな感じの部屋だった。

「ちなみに私達の間の部屋は私達の寝室だよ。」

そんなことを聞くとルイス王子と夫婦になる·····と実感と言うか現実なんだと突き付けられた気がした。

侍女が紅茶と茶菓子を持ってきてテーブルの上に置く。
私は少し自分を落ち着かせる為、紅茶を飲んだ。

ルイス王子は侍女に「もういいから下がれ」と指示した。

ルイス王子も紅茶を飲み。そしていきなり謝ってきた。

「アリア、不愉快な思いをさせてすまない。」

「·····いえ····」

「ローゼンリタを始め、側妃達には既に正妃は決まっており、サマヌーン国のアリア姫だと何回も言ってはいたんだが·····。それでもいいならと····側妃になる条件でもあった。」

それでも実はローゼンリタだけが納得してなかったと·····。

「ローゼンリタはルイス殿下の一番の寵妃だったのでしょう?あんな厳しい処分でよろしかったのですか?」

ルイス王子はそっと紅茶カップを受け皿に置き

「別に構わないさ。先ほども言ったが軽いくらいだと思うよ。それに寵妃というほどでもない。」

「え?」

でも寵愛していた訳でないの?他の側妃達も寵妃と認めていた気がするけど。

「アリアに似てたんだ····」

「はっ?」

どこが!?全然似てませんが!!

「六才の時にアリアに一目惚れして即婚約して凄く嬉しかったけどそばに居なくて····会いたくて何度もサマヌーン国へ行きたいと父上に言って困らせていたよ。」

ルイス王子は当時を思い出しているのか少し苦笑しながら話す。

「八才の時に学校に進学した時にローゼンリタと初めて会ったんだ。その時は今みたいな感じではなくて当時は大人しくてアリアに雰囲気と髪色が似てたんだ。」

「髪色ですか?」

ローゼンリタの髪の色は朱色だったはず。

「うん。その時は白銀色だったんだ。」

えーー!そうなのーー!?

「まあ、染めていただけなんだけどね。」

おいおい。私に髪の毛の色は偽物と言ったのは自分がしていたからなのね!

「当時は顔はともかく雰囲気と髪の色でアリアがそばに居るような感じがして····私のそばに居ることを許したんだ。それで寂しさも半減したのも事実。」

私は黙ってルイス王子の顔を見ながら話しを聞いた。

「次第に私と一緒にいることが多くなり、周りから特別扱いをうけるようになっていったんだ。そうしていくうちにどんどんとローゼンリタは悪い方へと変わっていった·······」

ルイス王子はそこで言葉を一旦きり、紅茶を飲む。

「周りからどんなに悪いことをしていると聞いても聞く耳を持たなかった。私はアリアがそんなことをする訳がないとね。当時の私はローゼンリタをアリアだと自分の頭に置き換えていたんだ。そう思い込むことで自分を慰めていた···。ローゼンリタは12才まで白銀色に髪の毛を染めていたよ。13才の誕生日と同時に地毛は朱色と判明したんだ。そこで現実に戻ったんだけどね。その時にはもう取り返しがつかないくらいに傲慢な女となっていた······と、周りは言っていたのだが、私には一切そんなところは見せなかった。」

ああ。ローゼンリタは自惚れてたのね。自分は何をしても咎められないと······。今までがそうだったから。

「イーサにはローゼンリタとは距離を置けと何度も言われてはいたんだ。ローゼンリタは私に近づいてくる女性はあらゆる手で排除をしてきたようだった。イーサはアリアがリンカーヌ王国にきたら危険な目に合うかもしれないと言うので、本人にアリアが本命だと告げた。それでもいいからそばにいたいと。側妃になりたいと言ってきたので監視をする為にも娶ったんだ。アリアに何かあったらいけないからね。」

はあ····何と言うか······

「そこに愛はなかったのですか?ですが側妃達はローゼンリタを寵妃と認めてましたよ。」

「愛か·····長く付き合ってきたから情はあるがな。愛とは違う。愛しているのはアリアだけだ。それにローゼンリタを見張って置かないと、他の側妃達にも何をしでかすかわからない。実際にほぼ同時期に娶ったナタリアは何者かに背中を押されて階段から転げ落ちてケガをしたこともあった。他の側妃達を守る為になるべくローゼンリタの元へ通った。」


ローゼンリタ·····恐るべし!これぞ小説「悪役令嬢のハチャメチャな恋」に出てくる悪役令嬢そのものだわ!

「それも少し裏目に出たようで態度が尚更大きくなった·····と聞いている。私の前ではそんな素振りを見せなかったから分からなかったが。」

ローゼンリタ、猫を被っていた時にはルイス王子の前では完璧にこなしていたのね!
尊敬に値するわ!

「イーサにはローゼンリタはダメだと危険な人物だと昔から言われていたのにな·····寂しくてアリアとずっと居たくてアリアの替わりにして何も視えてなかったんだ。実際に周りから言われていても私の前ではか弱い女性でしかなかったから。」

まあ、ルイス王子が悪いわね。
ローゼンリタもある意味被害者かもね。

「本当にすまない!」

ルイス王子はいきなりまた謝り頭を下げてきた。
あわわっ!

「殿下!頭を上げてください!ルイス殿下が頭を下げることはありませんわ。」

私は急いで頭を上げるように言った。

「もう過ぎたことですわ。これからはきっと大丈夫だと思いますもの。」

私は笑顔で言った。
ルイス王子はホッとしような顔になり

「良かった。」

ルイス王子も笑顔になった。

「もう側妃達のことは受け入れてくれたんだね?」

······嫌だけど受け入れるしかないじゃない。婚約破棄できないんだもん。

「·····そうですね·····側妃達は私を受け入れてくれたようなので私も受け入れないといけないと思っております。」

そこてまたルイス王子はホッとした顔になり、次に発した言葉に私は驚愕した。

「実は六人目の側妃の輿入れが決まったんだ。」


「はいぃぃぃー!」

何ですって!?六人目!?

このリンカーヌ王国では側妃は10人まで娶れることになっている。ちなみにヘルデス国王は五人の側妃を娶っている。

ルイス王子は焦ったようにフォローをする。
「大丈夫だよ!六人目はアリアとの婚礼後の2ヶ月後に娶る予定だから!」

そんなの嬉しくないわ!
さっきの行動や発言で、私のことをそんなに愛してくれてるんだ、ほだされてもう、ルイス王子の隣で頑張ってもいいかも、って思ってたところなのに!
やっぱり婚礼後に離縁計画は発動しなくちゃいけないわ!
再度認識した私だった。

私が怒っているのか分かったのか、何故娶るのか説明をしてくる。

「仕方がないんだ。今度はモッコロ帝国の皇女で、和解協定で娶ることになったんだよ!アリアも知っているだろう?モッコロ帝国とリンカーヌ王国は長年戦争をしてきたことを。私がモッコロ帝国の皇女を娶ることで戦争が終わるんだよ?」

正直、そんなことどうでもいいわっ!·····等と思ってはいけないわよね·····。

皇太子妃になるんだもの。国民の為にここは堪えないと。

「·····分かりました。」

底から絞り出すような声で了承をする。

ルイス王子はホッと胸から手を撫で下ろし·····

「良かった。分かってくれたんたね····。私も心苦しいだよ。」

······怪しい。
いつかのかっぷくのいい女性がルイス王子は女好きと言っていたのが頭をよぎる。

そして私の手を取り笑顔で一言

「今夜、アリアの元へ行くよ?いいでしょ?」

いいわけないでしょーーーっ!
それってムニャムニャをするってことよね!?

「ダメです!」

私が断ると思わなかったのだろう。驚いた顔をしている。

「えー?何で?私達は婚礼はまだだけど婚約者だよ。アリアがやっとリンカーヌ王国に来たのに·····」

「だからです!私は純潔のまま婚礼を迎えたいのです!」

「·····だが····」

「純潔のまま初夜を迎えて、婚礼の日に名実とともにルイス殿下のものになるのです。」

少しやけ気味で言ってしまった。
ルイス王子は私の「初夜」と「ルイス殿下のものになる」の言葉に反応し

「初夜····私のものになる·····純潔·····」

何やらブツブツ言い始めて、ちょっと気持ち悪い。

「そういうことです!」

そのあとは少しお茶菓子を頂き自分の宮へと帰っていった·····が、その際にルイス王子が部屋まで送ってくれたのだけれど、しつこく「やっぱりダメ?」「アリアと一緒に寝たい」等とほざいていたけれど無視をした。

部屋に前に着いた私は

「送ってくださりありがとうございました。ではお気をつけて宮にお戻りください」

と言ってルイス王子を部屋に入れることをなく笑顔でドアを閉めた。

全くもう!どいつもこいつも!
昨日からさんざんな目にあっているアリアであった。
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