上 下
29 / 65

28話 いや、そこまでは望んでおりません!

しおりを挟む
ルイス王子は部屋に入り、部屋の雰囲気がおかしいと察したようで、私と側妃達を交互に見る。

「うん?どうしたんだ?まだ仲良くはなれてないのか?」

仲良くなんてなれる訳ないです!
最もルイス王子が抜けてなれば分かりませんでしたが····。

私はニッコリと笑いルイス王子に話しかけた。

「ルイス殿下、私は側妃達に正妃として認めては頂けないようですわ。」

「何だと!?」
ルイス王子は顔を険しくし、側妃達を見る。

ナタリアは急いで首を振り否定した。

「ルイス殿下、わたくし達は異論はありませんわ!」

「ええ!わたくし達は何も言っておりませんわ!」

マリーベルもそれに続いた。

ローゼンリタ以外はナタリアやマリーベルの言葉に頷く。

ルイス王子はそれを見て怪訝そうな顔をして私を見た。

「まあ!ローゼンリタ以外の方は認めてくださっていたのね。嬉しいわ。」

私はわざとらしくナタリア達に笑顔を向けた。
まっ、本当のところはどうだか······。

「ローゼンリタ?」

ルイス王子はローゼンリタの方を向く。

「そうですわ。ローゼンリタが私を正妃に認めてないとおっしゃっていますの。私の母が平民の出なので正妃になるには身分が低くく、ルイス殿下には相応しくないと·····」

ルイス王子は私の言葉を聞き、ローゼンリタに問いかけをする。

「ローゼンリタ、それは誠か?」

「········。」

ローゼンリタは俯いて黙ったままだ。

「ローゼンリタさんは先ほどの勢いはどこへ言ったのかしら?」

わざと「さん」付けにしてやったわ!
するとローゼンリタは顔を上げて潤目をしてルイス王子を見つめた。

「ルイス様!ローゼンリタはルイス様を愛しております!私は心配なのです!サマヌーン国のような小国の姫などルイス様の隣には相応しくないと·····国民が納得しないのではないかと思うのです!ですから私······」

ローゼンリタはボロボロと涙を流しルイス王子の胸に飛びこんだ。

······さっきの強気の態度と違いますわ。ルイス王子の前ではか弱い女性になっている。まさか、サマヌーンにいる姉達のように男性の前と同性の前とでは態度を変えてるのかしら?
しかも都合のいいように自分を正当化しようとしている。
そう思いチラッと他の側妃達を見るとローゼンリタの態度はいつものことなのか、またかみたいな顔をしている。

ローゼンリタは御姉様みたいに同性に嫌われているようね。

私はルイス王子を向き先ほどの続きを始めた。

「ルイス殿下、それからローゼンリタさんは私のことを「貴女」と何度も言っておりました。」

ルイス王子は驚いた顔をして自分の胸で泣いているローゼンリタを離す。

「誠なのか?」

ローゼンリタは首を振り「いえ·····」と否定しようとしたので私がローゼンリタの言葉を遮った。

「ローゼンリタさん、嘘は良くないと思いますわ。何でしたら周り聞いてみましょうか?ナタリア様、どうでしょうか?」

私はナタリアに応えを求めた。
ナタリアは頷き応えた。

「アリア様のおっしゃっていたことは本当ですわ。アリア様に「貴女」と連続しておっしゃっていたわ。私を含め他の者達も聞いております。」

他の側妃達も頷いて私の言葉を肯定してくれた。
ローゼンリタはナタリアを睨んでいる。

さて、ここから本題よ!

「ルイス殿下、ここではっきりさせたいと思うのです。」

「はっきり?何をだ。」

「私を正妃にするのか、ローゼンリタを正妃するのかと。あと、ローゼンリタは私の言うことは聞けないと言われましたわ。自分が一番の寵愛を受けているから自分は私より上だとおっしゃっていたわ。正直·····「何だと!」」

ルイス王子が話しをしている最中に割って入ってくる。

いやいやルイス王子、私の言葉を遮らないでください。続けさせてください!
私はまた言葉の続きを言おうとしたらが、そんな私を無視をしてルイス王子は凄い剣幕でローゼンリタに問う。

「何故そんなことを言ったりしたんだ!?」

「ルイス様私は······」

ルイス王子と凄い剣幕にローゼンリタもタジタジしている。

「ローゼンリタ、お前は勘違いをしている。あくまでも正妃はアリアであって、お前は側妃に過ぎない。そのアリアに敬称も付けないとは不敬罪に値するぞ。」

ローゼンリタはルイス王子の言葉に青い顔になる。
ルイス王子にはっきりと「不敬罪」と言われたのだ。当たり前ね。

「ローゼンリタにそんな思い違いを増長をさせたのは私の責任でもあるが·······。」

「ルイス殿下、確かにローゼンリタに言われた通りサマヌーン国は小国で国益にはそんなに貢献はしていないでしょう。」

「国益·····?ローゼンリタはそんなことも·····」

「ですからこの場ではっきりと誰が正妃が相応しいのか決めて頂きたいのです。ナタリア様でもマリーベル様でも側妃ですが一国の皇女です。側妃から正妃に昇格することもできますわ。たとえ誰を選んでも異論はしないと先ほど皆と決めたのです。」

ルイス王子は側妃達、そして私を見つめる。真剣な顔をした私たちを見て本気を感じ取ったようだ。

「私以外の方を選ばれるのなら、私は側妃は嫌と以前にルイス殿下に申したはずですので婚約破棄後、サマヌーンへ帰らせていだだきます。」

大事なこともきっちりと言っておく。
うん!これ一番大事なことだもの!
少し脅しに近いけれど!

ルイス王子は一つ息を吐き静かに言った。。

「側妃達にも何度も言っているが、正妃はアリアだ。アリアに従えない者はこの国には必要ない。」

側妃達は結果が分かっていたのか少し落胆は見せたけれどすぐに笑顔になった。

「ルイス様、分かっておりますわ。少し淡い期待を抱きましたけれど。元より私達は先ほども言いました通り、正妃はアリア様で納得しております。異論を唱え、アリア様を侮辱したのはローゼンリタのみですわ。」

マリーベルが私のことを認めるとはっきりと言ってくれたが最後の一言がマズかった。

「アリアを侮辱しただと!?」

ルイス王子はその一言に食いついてきた。
あっ!それはもういいですから!

「はい。あえて私からは言いませんが。」

マリーベルはローゼンリタを見て勝ち誇ったように言った。
ローゼンリタは今度はマリーベルを睨んでいた。お互いに嫌いみたいね。火花が見えるわ·····。

ルイス王子はローゼンリタから距離を取り、私の方へ来て腰を抱く。

「ローゼンリタ、そこまでアリアを嫌うのならマイヤー公爵家に帰るがいい。ここにいる必要はない。」

ルイス王子は冷たくいい放つ。

え!?え!?それって離縁ってこと?
そこまでは望んでないんですが!
ど、どうしよう!!
私はちょっと考えていた展開とは違うので、驚いてパニくる頭をフル回転させる。

ローゼンリタは再度青い顔をしてルイス王子にすがり付く。

「ルイス様!実家に帰れだなんて言わないでくださいませ!謝りますので!お慈悲を!」

ルイス王子はすがり付いてきたローゼンリタをぺっと剥がした。
そして冷たい視線でローゼンリタ見て、淡々と告げる。

「アリアを侮辱する者など要らぬ。それに不敬罪に値することをしたのだ。牢屋に·····と、言いたいところだが、側妃でもあったし、お主は実家へ帰るのだ。実家では謹慎2ヶ月とする。それがそなたに対する慈悲だ。」

ローゼンリタはその場で泣き崩れる。
仮にも一番の寵愛をしていた者にこんなに簡単と離せるのものなのかしら!?
他の側妃達も、まさか離縁するとは思わなかったのだろう。かなり驚いている。
ルイス王子の冷徹な一面をまた見た気がした。

ローゼンリタは泣きながら床を這ずり私の元へやってきて、床に頭を擦り付けて謝ってくる。

「アリア様!申し訳ございません!もう二度と歯向かうこともいたしません!勿論、アリア様が正妃になることも異論も唱えません!お許しください!」

先ほどの傲慢で自信を振る舞っていたのが嘘のような光景。
なんだが可哀想になってきた。
元々、ここまでの展開を望んでいた訳ではないですし。

「ルイス殿下、私はここまで処罰を求めていた訳ではございませんわ。側妃達が私を認めて頂いたのならそれでいいのです。ローゼンリタの処罰の離縁とは重すぎすると思いますわ。」

「········。」

ルイス王子はローゼンリタの冷たい目線を崩さず考え込んでいる。

「だが、アリアを侮辱したのだぞ?」

確かにそうですけど。
私は笑顔で応える。

「はい。かなり腹は立ちましたが、私は本人が謝ってくれたので今回だけは不問としたいと思っております。」

ローゼンリタは震えながらまだ床に頭をつけている。

「·····アリアがそういうのなら····だが、ローゼンリタの顔は今は見たくない。不敬罪も含め実家へ帰り、こちらが呼ぶまで戻ってくるとは許さない。マイヤー公爵家へ帰っても大人しくしているように。何かあったら·····分かっているな!」

「······はい。」

ローゼンリタはか細い声で返事をする。
離縁はなくなったけれど、やはり重い罰のような気がするわ。

そう思声をかけるが

「ルイス殿下、それでも処罰が重い気が······」

「アリア、これでも軽くした方だ。」

きっぱりと却下されてしまい、何も言えなくなった。
傲慢娘に少しお灸をすえるつもりが、思ってたより火傷以上のものになってしまったわ。
ローゼンリタはガックリと肩を落としている。

ルイス王子は側妃達にもう一度確認するように言った。

「アリアが正妃であり、決定事項だ。これを覆すことはない。」

そして私を部屋の外へと連れ出した。

心なしか、ルイス王子が私の腰を抱く手に力を込めた気がした。

この出来事でローゼンリタの寵愛はなくなったに等しい。
果たしてその状態で側妃として帰ってきても居場所があるのかしら······。
やはり却って離縁された方が良かったのかも·····。
自業自得とは言え、ローゼンリタの行く末を心配してしまう私であった。

ローゼンリタが王宮に呼び戻されるまでに半年を要した。

しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

後宮の棘

香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。 ☆完結しました☆ スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。 第13回ファンタジー大賞特別賞受賞! ありがとうございました!!

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

処理中です...