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3章、ハッピーエンドは譲れない。

61、生涯、あなただけ★

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音繰オンソウ……私以外の名は呼ばないでくれないか」

 戸惑いながら衣服を乱される音繰オンソウの目の前で、興奮に尻尾をはしゃがせた憂炎ユーエンがうっとりとしながら自身もばさりと服を脱いでいる。
 がっしりとした骨格に筋肉が逞しくついている均整取れた肉体には、男の色気が充ちていた。
 
「ただでさえ抑えが利かないのに……嫉妬してしまう」
 ぐっと体が抱き寄せられたかと思えば唇の隙間をこじ開けるようにしてぬるりと熱い異物が入り込んでくる。

「っ、ン」
 舌だ。
 ざらりと意志持ちうごめく舌が憂炎ユーエンのものだと気付いたのはどれくらい口腔を蹂躙じゅうりんされてからだろう。

「ふ、ぁ……っ」
 こじ開けられた口に相手の吐息がからむ。
 熱い目を開けるとすぐ近くに精悍せいかん憂炎ユーエンの顔があった。
 
 眉根を寄せ、切羽詰せっぱつまったような顔で音繰オンソウの身体を掻き抱き、明確な意思を感じさせる手付きが肩や腰を余裕なく撫でて――肌が撫でられたところから甘い欲を掻き立てられるようで、音繰オンソウは腰を揺らして憂炎ユーエンの腕にすがり、切ない吐息を繰り返した。

(あ――は、発情している。……これ、すごい……っ、おかしくなっちゃいそうだ……っ)
「は、……ぁ」

 部屋中に甘ったるく欲を煽る香りが充ちている。
 
 息が苦しい。
 それに、吸うたびに愛しい雄の香りに情欲をあおられて、体がじんじんと火照っていく。

「ここの果実は見るたびに熟れて甘く色づいて……私に摘んでほしいと訴えかけているようだ」
 憂炎ユーエンが陶然と呟いて、乳輪をくるくると指先で愛でている。

「あ、あ……っ」 
 音繰オンソウの内部が妖しく官能の波を立てる。肌が粟立って、深いところの熱がじわりじわりと上がって切なくなる。

「触れて構わないか、音繰オンソウ
 意図してか無自覚かは知らないが焦らすように周囲を責めながら、憂炎ユーエンが息を吹きかける。
 ぞくりぞくりと身を震わせ、首をのけ反らすようにして悶えながら、音繰オンソウは必死に頷いた。
 
「あ、あ、いい、……ぁう……あ、ん……」
 乳首に唇の濡れた感触を与えられると、音繰オンソウの脚ががくがくと震えた。
「……っン、は、……ぁっ……」

 柔らかな唇で啄まれるようにされると、胸を反らして喘いでしまう。
 股間がふっくらとして、後孔に濡れるような感覚を覚えた。

(あ、やだ、濡れて……っ!? やっぱり、本当に、今の私は……)

 ――
 
 認識した瞬間、発情が加速するような錯覚を覚える。
「や、や、――やだ、うそ、や」
 憂炎ユーエンの与える刺激で頭の芯が痺れて思考が麻痺していくようだ。
「あ、あ、あ」
 背筋をぞくりぞくりと電流のような快感が過ぎて腰のあたりに血が集まっていく。

(この、薫り)
 ――気がおかしくなってしまいそう。

 ずんずんと昂る体は抱きしめられているから身動きがとれずひどくもどかしい。
 放ちたいという欲求をはっきりと抱き始めていて、けれど自らは憂炎ユーエンに抑えられていて自由が利かない。

 そして、なにより恐ろしいのが――自分が覚えている欲求は、『放ちたい』だけではないのだ。

 ――中に欲しい。


 ――この雄の熱を自分に挿入して欲しい。

「や、あ……や、ぁ! ん、ン……!」

 ――奥に精を注いでほしい!!
 その獣めいた欲求が強くなっていき、切なくて堪らなくなる……!

「なぜそんなに『やだ』と仰る? そんなに、そんなに乱れながら――」
「あ……ち、ちがぅっ、」 
 
 余裕を与えず荒い息で口付けを繰り返す憂炎ユーエンが、普段見慣れている男とは別の存在に変わったようだった。
 自分もまた、別種の生き物になっていく――外側に影響を受けて、内側が応えて。
 
「私を受け入れてくれるのではなかったのか、師よ」
 憂炎ユーエンの手が腰から下に滑り落ちて音繰オンソウの内股を軽々と持ち上げて開く。勃ちあがった雄蕊を慈しむように撫で上げられれば、切羽詰まった感覚が強くなる。
 
「あ! あ、あ……っ! そ、そ、そうだよ、そう……っ、ッぁ……」
 ――必死で繰り出した言葉が、はしたない嬌声に変わってしまう。
 
 憂炎ユーエンのもう片方の手は胸元をさすり、とうに立っていた小さな胸の飾りをやわらかく感触を確かめるように弄んだ。
 じわりとこそばゆいような感覚が、そこから甘く広がって官能の熱を生む。
 
「あ、あんっ、あぅ……っ」 
 
 腰の当たりが落ち着かない。
 ふしだらに腰を揺らして、もどかしさに震えてしまう。
 
「い、嫌なときは仰ってほしい……頼む……頼むから……」
 発情の気を漲らせた憂炎ユーエンに懇願するように言われると、音繰オンソウは顔を真っ赤にして頷くことしかできなかった。
「い、……いい……っ」
「本当に? 本当に……っ?」
  
 はぁはぁと息を乱し、体温をゆっくりと剥がすようにして音繰オンソウの顔を覗き込む憂炎ユーエンは、懸命な気配を纏っていた。
 
「綺麗で……可愛い……私の愛しい人リィェン レン。あなたが嫌なら、私はやめる。いくらでも耐える……っ」
 
「い、――いや。……嫌じゃ、な……いっ」
 音繰オンソウは横向きに丸まるようになってぎゅっと目を閉じ、必死に声をあげた。
「き、気持ちい――よすぎて、……それだけだから――や、やめなくて、いい……っ」

 頭の中で、ふわふわと夢みるような想いが巡る。

 愛しているんだ。
 いいんだ。
 好きにしてほしいんだ……っ!

音繰オンソウ……!」
 感極まったようにうなじに噛みつかれるような感覚を覚えた瞬間、強い電流が駆け抜けたような刺激に音繰オンソウの全身がガクガクと震えた。

「ン、はぅ、あ!!」

 角度を変えて口付けされながら自分のものとは思えないような甘い声が、熱い吐息交じりに鼻を抜けるように漏れる。

「ッ、音繰オンソウ……ッ、……たまらなくなる……っ」

 口を解放した憂炎ユーエンが辛そうな顔でようやくそう言って、しかし我慢が効かない様子で音繰オンソウに腰を押し付ける。

「ハァッ、ハァッ」
 押し付けられた剛直を感じて、音繰オンソウは興奮した。

 ――勃っている。
 私に発情してくれている……!

「ああ、憂炎ユーエン……っ! あ、熱い……っ、す、すごい、身体が……」
 
 どこもかしこも、発情している。どんどん煽られ、昂っていく。
 少し触れられただけで、とろとろに蕩けてしまいそうだ。
 
「ちょっと、これ、やばぃ……っ」 
 
 たまらず首を振って泣きべそをかけば、その艶姿に理性をぐずぐずに陥落させられた様子で憂炎ユーエンが吐息を奪い、舌で口腔を犯す。
 荒々しく、乱暴にされればされるほど、その興奮が伝播でんぱして胸がいっぱいになる。
 
「あ、や、やだ、やだッ……んぅ!」
 大きな手が胸元をまさぐり、快感をこねまわして増幅させていく。
 乳輪をくるくると弄られ、刺激されて、ぷくりと立ち上がった乳頭を掠めて、くにくにと愛でられると、全身が反応して、活き魚のように身をくねらせて善がってしまう。

音繰オンソウ、そんな蕩けた顔をして……っ!」 
憂炎ユーエン……憂炎ユーエンも……っ! そんな、そんな顔をして……っ」
 
 肚がきゅんきゅんと疼いて、切なくて、幸せで、わけがわからない。
 憂炎ユーエンが自分に興奮を押し付けて欲情をこらえきれずにいる――そんな現実が、嬉しくてたまらないのだ。

「――愛してる……っ!」

 この雄を独り占めしたい。
 誰にも渡したくない――そんな思いが湧くのだ。
 
 ――挿れてほしい。
 
 熱に浮かされたように請えば、憂炎ユーエンの手が音繰オンソウの後ろを探る。

「優しくする……」
 夢の中に誘うような憂炎ユーエンの声が熱を吐き、丁寧に紡がれた術が受け入れる準備をするようで――、

「……濡れている……これは……」
 一瞬呟いてから、憂炎ユーエンは雑念を払うように首を振って行為を続けた。

(き、気付いた? さては今気づいたね、憂炎ユーエン? なぜ私がさっき戸惑って焦っていたかわかったね……っ?) 
 
 ――けれど、やめないのだね……。今「気付かなかったフリしよう」みたいな顔したね……?

 そんな憂炎ユーエンに、音繰オンソウは愛しく微笑んだ。
 後孔を暴く性急に過ぎる手付きはいかにも余裕が無くて、それがまた愛しくなるのが不思議だった。

 慣れないそこに無骨な指が無遠慮に侵入すれば異物感は不快な波となるはずだが、変容した体は刺激を受け入れ、悦んでしまう。
 奥から蜜を溢れさせて、ひくひくと内壁を震わせ、欲しがっている――、

「ッア! あ、あ、アアッ、そ、そこ……!」
 好いところをコリコリと愛でられれば、甲高い悲鳴をあげて喘いでしまう。
「……ああ、そんなに善がって、可愛い顔をして……とろとろになって――」
「ひぅ、あ、あん……っ! そこばっか……っ! やだ、」
 
(ほしい、ほしい)
 音繰オンソウは、ぎゅっと腕をまわして愛しい身体にしがみついた。
 発情した獣の目をしている憂炎ユーエンが指を増やしていく。
 
「は……っ、ん、ぅ。もぅ、ほ、ほしぃ……っ、ゆう、えん……っ!」
 舌足らずに繰り返しながら必死に憂炎ユーエンを求めてねだってしまう。
 理性も何もかもを発情の津波に攫われていくようだった。

 いいんだ、して。
 していい。
 ―――してほしいんだ。

 そんな思いが脳を支配して、瞳の奥が熱くてたまらない。

 気付けば音繰オンソウはうわ言のように意味をなさない鳴き声を繰り返し、待ち焦がれるように腰を揺らし、股を自ら開いて誘っていた。

「……っ、私も、欲しい。貴方が」
 憂炎ユーエンの額から汗が滴る。

「あ、あ、もう、だめ。はやく……っ」
 奥から溢れる愛液が抜かれる指を寂しがるように後孔から垂れて、入り口がひくひくと震える。

「きて……」 
 喘ぎながら懇願すれば、興奮した雄の剛直がぐっと押し当てられる。

 反り返り、脈打つそれは大きくて、それが中に貰えるのだと思うとたまらなくなる。
 
 ――想像と期待で濡れた蕾をひくつかせ、あられもない声で促してしまう自分が、どうしようもなく破廉恥だ。淫らだ。

 唇が首筋に降りて、吸い付かれた体がびくっとしなる。
 マーキングされているようで、音繰オンソウはぶるぶると震えて興奮した。

 
「か、か、噛んで。噛んでほし、」
 上擦る声に興奮したように荒い吐息がして、濡れた牙が立てられる。
「――!!」 
 ガリッと立てられた牙を感じた瞬間、全身が電撃に打たれたようにびくびくと震えた。 

 
 ぬるりと中に挿入される剛直は、中からどんどん溢れる愛液と、呑み込もうと蠢くいやらしい内壁に導かれるように奥へと進む。
 中で一層膨張し、指とは比較できない圧倒的な質量に育つのを感じると、「これが欲しかったんだ」という思いが頭を支配する。
「あ――ハァッ……、」
 息が詰まって――心の内に幸福感が咲いて溢れる。
 
 少しずつ太い雄が進んでくる。
 ぐちゃり、ぐちょりと濡れた音をたてて、溢れ出る歓びの蜜液を溢れさせて。
 
「ここに、挿っている」
 愛し気に肚が撫でられる。 
「あ、あっ」 
 内と外に番を感じて、音繰オンソウはひくひくと肚を震わせて善がった。
 
「……っ、その声、……興奮する……っ」
 憂炎ユーエンがハァハァと荒い吐息で呟いて、腰を揺らして刺激を足した。 
 ひっきりなしに興奮を煽る発情の香りが体内に入ってきて、腰の熱が加速する。

 ――きっと、憂炎ユーエンも私の香りに昂っている。
 それを思うと興奮して、嬉しくなってしまう。

「……ああ、……たまらない……」
 愛し気に憂炎ユーエンが眉を寄せ、切ない顔で呟く。
 それが音繰オンソウには幸せに感じられて、たまらない。
 
「……音繰オンソウは、つらくないか」
 心配そうに問われると、音繰オンソウは逆にもどかしく焦れったく思って腰を揺らしてしまった。
 
「私は……今、君に発情していて、気持ち良くてたまらない……っ」
 恍惚とした声でとろりと笑み、唇を舌で舐めれば憂炎ユーエンの喉ぼとけが上下する。
「もっとシて……憂炎ユーエン。気持ちよくなって。私と」
 
「――音繰オンソウ……っ!」
「あ、ああっ!」
 情熱のままに奥を穿たれて、音繰オンソウは背を限界までのけぞらせた。
 
 雄に貫かれる悦び――征服される喜びを感じて、目の端から透明な涙がはらりと零れた。
 
「愛してる……愛してる、――私の音繰オンソウ……っ」
「は、ぁ……っ!」
 
 きゅうきゅうと中を締めつけて、善がってしまう。
 甘く蕩けるような声で、嬉しいのだ、感じているのだといて悦んでしまう。
 
 後ろに穿うがてられた熱い剛直がぐちぐちと水音を立てながら、情熱的に中を蹂躙する。
「あ、あ、あんっ、あ――っ」
 
 本能的な恐怖が脳裏を過る――中に出されたら、孕んでしまうかもしれない。
 それは、未知の感覚だった。

「や、やー! やっ、ア! あ、ぁあ……っ!」
 
 怖い。
 欲しい。
 怖い。
 欲しい……!
 
 抗う鳴き声に煽られたように雄の動きが激しくなり、犯されている感覚が全身を支配する。
 とてつもない快感が全身を跳ねらせて、あられもない声が止まらない。

「ッ、あ!?」
「は、……」

 生理的な涙が零れて止まらない。
 口の端からも自身の芯からもとろとろと液が滴り。

「そ、そ、そこ。そこ、そこ」

 発情している。
 こんなにも、発情して――身体が子種を欲している……!!
 
「悦いか」
 支配者の声が耳をも犯すように囁かれて、ぞくぞくと背が震える。
「そ、」
 
 首を反り、喘ぐ。
 は、は、と落ち着かない速い呼吸を繰り返して、腰が揺れるのが止まらない――悦い。
 
 悦いのだ。
 ……たまらないのだ――、
 
……」
「アッ、……、」

 欲でぎらぎらとした眼をした男が興奮した息を吐き、足を荒くもちあげて奥に腰を打つ。
 奥へ。奥へ。
 子種を欲する、その場所へ。

「ひっ」
「、音繰オンソウ
 
 熱に浮かされた声に名を呼ばれれば、はらの奥がきゅんと切なくうずくのだ。


「……ゆ、」
 
 ぐっ、ぐっと腰を送られてそのたびにあられもない声があがる。
 はしたなく尾が揺れて、股をひらいて悦んでしまう。
 
「わ、私は、男なのに……男、なのに……っ、こんな……」 
 
 危機感が、背徳感がその熱にますます拍車をかけていた。
 何かが身体の奥底から込み上げて来て、口から出てくるのは自分のものとは思えない甘い声ばかりで。
 止め処なく襲い来る甘い熱の波に、切実さがなにもかもがわからなくなっていく。

「欲しくて、たまらない……っ!!」
 
 声が、欲望が、想いが、抑えられない。
 ぼろぼろと涙を零しながら、音繰オンソウは泣きじゃくるように喘いだ。

「出して、憂炎ユーエン、私に、奥に――あ、うぁ!」
 
 もう、やめられない。
 深い底へと引きずり込まれる。
 激しい波に浚われ、高みに引き上げられる。
 
「や、あぁぁッ、あ、あ――イイ――もう、あぁっ、」

「……音繰オンソウ……」

 耳元で低く掠れた声が残酷に笑む。
 凄絶な色香を漂わせ、牙を覗かせて――命令するように吐き捨てる。
 



 
「あ、ああああっ!!」

 奥を突かれるのが、嬉しくて堪らない。
 もうすぐ注いでもらえる――嬉しい――嬉しい! 欲しい……!

「や、やあああああっ!」
 
 ガツガツと衝動に動かされるがまま乱暴に揺さぶられて、感じる部分がごつごつと刺激される。

 ぐちゅぐちゅと水音がして隙間からぬるりと愛液が溢れて零れる感覚までもが、さらなる欲をそそって――たまらない。

 憂炎ユーエンの唇が首筋に降りて、吸い付かれた体が震える。
 ああ、雄の香りに包まれている。
 自分のものだと主張するような気配が、嬉しいのだ。
 興奮した荒くて熱い息が、愛しい。
 理性を失ったように狂おしく甘噛みして肌に痕を刻む彼が、愛しくてたまらないのだ。
 
 奥に注いで、はやく――種を。ちょうだい。ほしい。くれ。犯して、犯して、めちゃめちゃにして――、

「あ! そこ、やあッ、も、あ、ああああっ」

 強すぎる快感から逃れようとする腰が押さえられて脚が抱え直され、上から抑え込むように犯される。
 激しく突かれ、角度をグリグリと変えて抉られ刺激されて音繰オンソウは喉を仰け反らせた。

 息ができない。
 ガクガクと体が震えた。
 口の端からたらたらと、透明なよだれが垂れている。

「あ、ん、んん! んあ、あ、あぅあ! ……ああっ――、」

 触れられていない音繰オンソウの雄蕊がだらだらと先走りの蜜を流してはしたなくびくびく痙攣けいれんしている。
  
 後ろも突かれる度ひくひくと内側の肉が悦び、震えて体がガクガクしながら快感に支配されていく。

「――っ」

 動きが容赦なく早まって、律動の快感が意識を追い詰める。
 期待で肚の奥が震えて、待ちわびている。

「ひ、あ、あ!! やああぁっ!! きちゃう、きちゃう――い゛、あ、ああ!!」
 理性が吹き飛んで馬鹿になってしまいそうで、繋がった部分がとろけてしまいそう。
 
「ふ、あああっ!」

 ぐつぐつと煮立って身の内で荒れ狂い、出口を求めて殺到した熱が、高波の中で階を一気にかけあがった。
 限界を迎えて、絶頂に至る。

「あああぁあぁ――!!」 
 目の前に白い火花が散る。
 
 ――意識が登り詰めて弾ける。

 弾ける瞬間も身体は捕まえられたままで、どこへも逃がしてもらえない。

 抑え込まれるようにされて、腰を押し込まれて、どぷり、と、奥に勢いよく飛沫を感じた。
「……っ」
 熱く、たっぷりと流し込んで、逃がさないというようにぎゅっと抱きしめられると、全身ががくがくと震えた。

音繰オンソウ……」
 繋がったまま、互いの境界がわからなくなりそうなほど肌と肌を密着させて、ほとんど呻くように名前を呼ばれる。
 それだけで中が悦びにひくついて、心の底から多幸感が溢れ出してくる。

「私は生涯あなただけを――」
 ――頭の芯まで甘くとろけてしまう。

 そのセリフは、むしろ自分が言うべきではないか。
 自分こそが言わないといけないのではないか――、

 音繰オンソウは愛しい人に体温を寄せ、甘い吐息を重ねるように鼻を擦りつけて幸せに微笑んだ。
 
 
「愛してる。大切な私の憂炎ユーエン
 
 神聖な誓いのように、大切に愛しく言葉を紡ぐ。たっぷり、心を籠めて。
 
「私も『生涯あなただけ』憂炎ユーエンだけ……」


 可惜夜あたらよ照らす花雪洞はなぼんぼりに、二人の影が優しく踊る。
 
 影も光も混ざり合い溶け合うこの夜、心を満たす幸せが部屋を浸していた。

 触れ合う肌の温もりは愛しくて、大切で――かけがえのない存在なのだった。










***

 ここまでで本編は完結です。
 読んでくださって、ありがとうございました!

 このあと数本番外編と外伝を投稿してエンディングの補足を予定しています。
 もしよければ、最後までお付き合いくださると嬉しいです。
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