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僕たちはそれから、一緒に暮らすようになった。
僕は少しずつ彼の世界に慣れた。そこは、いわゆる「ファンタジー」な世界だった。
高層ビルはないし、ネットもないし、車もない。
王侯貴族が暮らすお城があって、馬車が行き来していて、ドラゴンが空を飛んでいたりする。
不便も多かったけれど、慣れれば居心地がいい。
そして、初々しく手を繋いだり、街を散策したり、ソファに座ってお互いの過去を語り合ったりしていた僕たちの仲は、少しずつ進展していった。
具体的に言うと、夜にひとつのベッドで眠るようになったり。眠るだけではなく、恋人としての軽いスキンシップをしてみたり。そして、ある日フェイトは「今日は最後までしていいか」と僕に尋ねたのだった。
「う……うん」
僕が頷くと、フェイトは嬉しそうに微笑んであっという間に僕をその腕に抱え上げた。
そして、厚い胸板に顔をつけて真っ赤になる僕をぎゅっと抱き締めたまま、ベッドに倒れ込んだ。
押し倒されるような姿勢で、ベッドに縫い付けるように抱きすくめられて。
どくん、と鼓動が跳ねる。
「……っ」
――ついに、ついに。
頭の中にフワフワとした思いが巡る。
そういうことをするのか、と。
緊張している僕の頬に人懐こい小鳥がたわむれかかるみたいにキスをして、フェイトは僕を安心させるように言った。
「優しくする」
切羽詰まった表情で愛しげに言われると、それだけで僕の腰はたまらずに揺れていた。
「……うん」
もっとマシな言葉が言えたらいいのに、僕ときたら、言葉を忘れたみたいに頷くばかりだった。
ギシ、とベッドが軋む音が、生々しい。
鼓動が高鳴る――心臓の音が騒がしい。はっ、と熱い息が漏れる。
唇が寄せられて、……唇が離れる時には想いをあふれさせるように息を吐き出す。
気付けば、僕たちはお互いに服を脱いで生まれたままの姿をさらけ出していた。いつ脱いだのか、記憶が飛んでいる。それくらい、緊張していた。
――見られてる。
他の誰にも見せたことがない恥ずかしい部分が無防備に晒されていて、隠したくなる。
でも、きっと大丈夫なんだという気持ちも強くて、僕はグッと羞恥心をこらえてフェイトを見た。
フェイトは僕を隅々まで見て、「綺麗だ」と言ってくれた。
「あ、……ありがと……」
文化の違い、みたいなものがあるのかもしれない。フェイトは恥ずかしがる様子もなく、いつも「誉めなければ損」とばかりに「日頃からよく手入れされているのがわかる」とか「傷ひとつなくて滑らか」とか「きっと大切に育てられてきたんだね」とか、賞賛してくれるのだ。
「僕は自分の体が貧相だと思うけどな。フェイトの逞しい体に憧れるよ。傷とかもあって、……」
そう。フェイトの体は筋骨隆々としていて、傷もいくつもあるのだ。
痛々しいと思う一方で、格好良いと憧れてしまうような、そんな体だ。
「……フェイトは、格好良い」
引き締まったフェイトの体をチラチラと見ていると、耳の下側から首筋にかけて手のひらで包み込むようにされて、顔が近づいてくる。
吐息を奪うようにキスをされると、蕩けてしまいそうだった。
――言葉よりも雄弁に、キスが気持ちを物語る。
ちゅ、ちゅ、と啄むようなキスが続いて、回数を重ねるごとに深めていく。
下唇に濡れた感触を覚えて、舌でぬるりと舐められたのだと気づいて。僕は恍惚と口を開いた。
口を開けると、舌が入ってきた。ぬるりと濡れた熱いフェイトの舌先が僕の舌先に挨拶するみたいに絡みついて、びくりと首筋が震える。
ディープキスだ。こんなことを誰かにされるのは、初めてだ。
「……んっ……」
僕の口の中でフェイトの舌があちこちを探って、濡れた音をぴちゃぴちゃと奏でる。
無防備で柔らかな粘膜をくすぐられて、ゾクゾクと僕の背筋に未知の感覚が走った。
――気持ち、いい。
口の中がこんなに気持ちいいなんて、知らなかった。
「ふぇ、ぃ……ん、んぅ……」
巧みな舌で翻弄されながら、僕は泣いてしまいそうになった。
嬉しくて。幸せで。緊張で。未知への不安で。
フェイトはそんな僕の首筋を優しく撫でさすり、ゆっくりとキスを繰り返しながら身体の線を確かめるみたいに手のひらを移動させていく。撫でられる感覚が、すごく心地よい。何もしないで感じていていいよって言ってもらっているみたいで、僕はつい甘えてしまった。
というより、自分からするとしても、何をすればいいのか、わからない。僕は元の世界にいたころ、草食系男子だったのだ。
「はぁっ、ン……んン……」
ぴちゃぴちゃと奏でられる水音が、いやらしい気分を煽っていく。
吐息が乱れて、じっとしていられなくなるような感じだ。体温が上がって、下半身に熱が集まる感じだ。
「……ソラ」
精悍な眉を寄せて、名前を呼ばれる。何度も、何度も。
切羽詰まったように眇められた彼の眦は赤く上気していて、凄絶な色香を放っている。
「君を、気持ちよくさせたい」
濡れた唇が動く。甘く囁く声が僕をときめかせる。
「あ……も、もう、きもち、いい……よ……」
「ははっ……もっと、気持ちよくさせたい」
くしゃりと屈託なく笑って、フェイトは僕に優しく触れた。丁寧に丁寧に、壊れものを扱うみたいに、まるで羽で触れるように、緩く優しく、体の線が撫でられる。あえかに欲を煽る指先の動きが、気持ちいい。触れられたところから生まれた微弱な快感がじんわりと全身に広がっていって。快楽を生むぬるま湯に浸されるみたいに少しずつ少しずつ、快感を教えられる。広がった快楽の熱が身体の内部に溜められていくみたいで、息があがる。
「あ――……、あぁ……っ」
僕が陶然と喘いでいると、コンプレックスである胸元に視線を感じた。
「あ! そ、そこは」
陥没してるんだ。気にしてるんだ。まじまじと見られるとやっぱり恥ずかしい。
僕が自分の手で胸元を隠すと、フェイトは「隠さないで」と手を退かして、震える胸元に唇を寄せた。
「奥ゆかしいんだな。可愛い」
「……!!」
片方をちゅくちゅくとついばまれながら逆側の乳輪を指先でくるくると擽るようにされると、火照った体はどんどん敏感になっていく。
「あ、フェイト……っ、それ、ちょっと。つら、い、」
意思に反して体がわななく。ちょっと刺激が強い気がする。
「感じるみたいだな」
フェイトはそう言って、いっそう丹念に乳首を愛でた。舌先を尖らせるようにして、くぼんだ先端にぬりぬりと刺激を送られると、感じたことのないような未知の感覚がザワリと湧く。
「ひ、ひっこんでるとこに舌を突っ込んじゃ、だめ」
「ん……」
先端でくりくりと擦られて、乳首を捏ねられて、甘い痺れが走る。じんじんとした熱い感覚が、強くなる。
「……!」
ビクッと肩が揺れる――ぞくぞくと身体の芯からこみ上げる何かが、僕の腰を落ち着きなくぴくんぴくんと揺らす。
あ、あ、やばい。
なんか、すごく感じている。
これだけで達してしまいそうだ。
「あ、……ああ、……ああ」
動揺が胸に湧く。
どうしてこんなに感じてしまうんだ、僕は。
おかしいんじゃないか。胸だぞ。感じるのか、自慰でも弄った事がないのに。
「う、うう~~っ」
ちゅくちゅくと舐められる音に、耳までも犯されているみたいだ。
羞恥心が煽られて、僕の足先がシーツを絡め取り暴れる。
指先は溺れかけみたいにシーツを乱したり、フェイトの身体に縋りついたりして。余裕がないのが、バレバレだ。
「大丈夫か、ソラ?」
「だ、だ、だいじょ、……じゃ、ないかも」
「気持ちよくて、つらい?」
「~~っ!!」
言葉に困る僕を宥めるようにフェイトは指の腹で胸粒を擦った。ちるちるとしゃぶられて吸われて、甘く痺れるような快楽の感覚がどんどん強くなる。
「……ほら、勃ってきた」
慈しむように爪の先でひっかかれると、ぷっくりと膨らんだ乳首がジンジンとした。
「勃っ……ほ、ほんとだ……」
達成感みたいなものを見せて笑うフェイトが突起に軽く歯を立てる。
「ア!」
油断していた僕がビクリと背を反らして喘ぐと、舌でよしよしと宥めるように舐められる。なんだか、弄ばれている気分だ。
舌で責められていない側の乳首を指先でふにふにと揉まれると、声が止まらなくなる。
腰が抜けてしまいそうなほど、下半身に甘い快楽の感があふれる。
「っ、ふぅぅ、あ、なんか、だめ」
おかしくなりそうだ。
「ああ――嬉しいな。そんなに気持ちよさそうにしてくれて」
心底嬉しそうにフェイトが言って、性感に慣れない体に覚えさせるみたいに逆側の乳首に舌の愛撫を移す。
粒を舌先で転がすようにして、飴を味わうみたいにされると、じんじんとした気持ちよさがどんどん敏感に感じられるようになっていって、体の奥がとろとろになっていくようだった。
いつの間にか、僕の性器は硬く勃起して、たらたらと先走りの透明な蜜を滴らせていた。
濡れた感触が幹を伝い落ちる刺激さえ敏感に感じ取ってしまって、僕は背筋を震わせた。
溺れるような快楽に腰砕けになった僕にキスを落として、フェイトはベッド脇の小さなテーブルから小瓶を取った。
「……我慢できなくなってしまいそうだ。君が……、可愛すぎて。ソラ、後ろを準備してもいいか?」
蓋をあけて手のひらに垂らし、あたためるようにするフェイトからは、甘ったるい匂いが漂ってくる。潤滑油という名前らしい。滑りをよくするためのオイルだ。
「じゅ、じゅんび」
「初めてなんだよな。……大丈夫、そんな顔をするな。じっくりほぐすから」
僕はカクカクと頷きつつ、視線をフェイトの下半身へと移した。
フェイトのペニスはガチガチにいきり勃っていた。大きい。
太い血管を浮き上がらせて反り返っているそれは、大きい。僕は自分のと思わず比較して居たたまれない気分になった。
それに、果たして挿入できるのか――凶器のように張り詰めた亀頭を見て、僕はゴクリと喉を鳴らした。
あれ? そんなのはいる?
僕、詳しくないけど。そういうのって、もっと日数をかけて専用の器具を使ったりして拡張していったりとか。
裂けちゃわない? 死んじゃわない? 無理じゃない?
ひゅんっと僕の下半身が尻込みするのが感じられる。情けないけど。とっても情けないけど。
「あ、あの。フェイト……」
あっ、すごくやる気満々な顔だ。
到底、今から「やっぱり日を改めない?」なんて言えないような気がする。だめだよね。
「あの、は、は、はいるかな」
「大丈夫だ」
――言い切ったぞ。すごい自信満々に、断言したぞ。
「そ、そ、そう……そう……?」
僕が蒼褪めていると、フェイトは潤滑油で濡れた指先にほわりと神秘的な光を宿した。
「うわわっ?」
それはもしかして、魔法ではないだろうかっ?
僕は状況を忘れてその光に魅入った。この世界には、魔法があるんだ。ファンタジーだ。
ところで、その光ってる魔法で何をする気なんだ?
「え、なに。なに?」
「これで清めたり、痛みを和らげたりできるから」
「すごい。ファンタジー世界すごい」
僕は感動しつつ、神秘的な光が僕の下半身を照らすのを見て、「これは恥ずかしい」と目を逸らした。
さっきまでの盛り上がった気分が、今はどこかにいってしまっている。なんだか、今の気分は病院の診察台でお医者さんに患部を診られている患者みたいだ。
「ゆっくり慣らすから」
「あ、うん」
中の具合を確かめるように香油でぬるみを得た指が少しずつ入ってくる。光が呑み込まれていくのが滑稽だ。光は、内側でじんわりとした謎のあったかさを放っている。変な感じだ。
「うぅ……っ」
覚悟はしていたけれど、異物感は強い。受け入れるためにできていない体なのだと痛感する。というか、とても自然に僕は受け入れる側になっていたけど、こういうのって話し合ったりしないんだな。いや、挿入する側になれと言われても、やり方もわからなかったのだけど。
ぐるぐると思考が取り留めなく巡る中、フェイトは僕のペニスに手を伸ばし、意識を快楽に導くような手つきでゆっくりと竿を扱いた。優しい手付きに快楽の波が立って、撫でられて扱かれるうちに腰から下が蕩けそうになっていく。
「はう、あ、あぁ……っ!?」
快楽に蕩けた甘ったるい声をこぼすと、フェイトのぬるぬるとした指が後孔をまたほぐす動きを再開して、内壁が擦れる感覚に僕は首を振った。
「あ、や、だ。同時にしちゃ……だめ、だめ」
「この方が力が抜けて楽じゃないか」
「や……あ、あ」
フェイトは指を引き、そしてさらに奥へと入って、また途中で引き抜いた。
中の指が一点を掠めた瞬間。ビリッと強烈な快感が脊椎を突き抜けた。
「――――ア!」
思わず背中が反り返り、高い声が漏れる。
甘い痺れ、電流が身体中を這う。腰の奥から何かが込み上げてくる兆しに、僕はおののいた。
「あっ、んああっ、そ、そこっ」
尿意にも似た、洩らしてしまいそうな感覚。
続けられたら我慢できなくなりそうな、強制的に押し出されるような感覚。
「ここ、気持ちいい?」
確認するようにフェイトが言って、執拗にそこをノックする。跳ねる身体に手ごたえを感じたようにコリュコリュと刺激する。
「あ、あ、出ちゃう、なんかもう出ちゃう、だめ、あぁっ!」
だめだと言っているのに、愛撫が止まらない。
未知の感覚に肌が粟立つ。くちゅくちゅ、コリュコリュと刺激されるたび、吐息と嬌声が押し出される。強烈な感覚に声を抑えられない。
刺激されるたびビクンビクンと体が跳ねて、あられもない声が止められない。僕はすっかり余裕をなくしてしまった。
「はぁっ……はぁっ……はぁっ……――」
どれほど喘いだかわからなくなった頃、ちゅぽんっと濡れた音を淫猥に奏でて、指が抜かれた。僕のいやらしくひくついている後孔に、限界までそり返った怒張があてがわれる。
「あ」
――……挿れるんだ。
そう思った瞬間、心臓が止まりそうなほどの緊張が全身を襲った。
「く、ぅ」
……狭い入り口をこじ開け、フェイトがずぷりと潜り込んでくる。
「う、あ」
指を比べ物にならない質量は、怖かった。熱い。内壁がずりゅっと引き攣り、内部が拡げられる。押し入ってくる亀頭が、圧倒的な存在感で僕の意識を支配する。
「う……――、んん……、ふっ……ぅ、う」
僕はシーツを指でぎゅっと握って、必死に呼吸を繰り返した。息はしないと。けれど、呼吸の仕方も忘れてしまいそうなくらい、衝撃が強い。こんなの、初めてだ。
「くっ……きつ」
フェイトが掠れた声で呟くのが聞こえる。
僕の胸に、申し訳なさが湧いた。
「ご、ごめ」
フェイトも辛いんじゃないか。気持ちよくなれないんじゃないか、僕を抱いても。
そんな不安がグッと込み上げてきて目が熱くなる。
「ン……ソラ、大丈夫か」
気遣ってくれる声が、優しい。
僕は必死に頷いた。泣いてしまいそうだ。
「顔を、見て」
切々と願うように言われてフェイトの顔を見ると、汗が浮いたフェイトの顔は、込み上げる何かを堪えるみたいに辛そうに眉を寄せながら、泣きそうな笑顔をたたえていた。
――そんな顔、初めて見た。
僕は自分の眦から透明な熱い雫が一条零れて頬を伝うのを感じながら、唇を震わせた。
「ソラ。君と繋がることができて、嬉しい」
甘く囁く声は、幸せそうだった。僕はそれを聞いて胸がいっぱいになった。
「ぼ、……僕も。僕も――……うれ、しい……!!」
ほろほろと泣きながら言えば、内部でグッとフェイトのものが質量を増したのがわかる。
「もう少し奥に進んでも、いいか」
見れば、まだ半分くらいしか挿入できていない。
けれど、僕はもう恐れる気持ちはなかった。
「うん。うん……っ、きて……!」
全部、受け入れたい。
気持ちよくなってほしい……!
「ありがとう、ソラ」
嬉しそうな声を聞くと僕の心に甘ったるい幸福感が湧いて、下半身が熱を増していく。必死に力を抜いて呼吸を繰り返す中、うわごとのようにフェイトが僕の名前と愛を囁いて、それに悦ぶみたいに僕の中がびくびくと蠕動する。熱く蕩けた粘膜が入り込んでくる怒張をきつく締め付けると、辛そうな声をこぼして、フェイトが耐えるように眉を寄せている。僕も、息を詰めて耐えることしかできなくなっている。
次第に快感が全ての感覚を支配して快楽一色で塗り替えるみたいに、強く、濃厚になってきた。
「ああ――――っ……」
最奥を穿たれて、ゆっくりと抽挿が始まると、ブワッと快感が湧く。なんだ、これ。すごい。こんなのは、初めてだ。すごく――怖いくらい、強い快感だ。
「あ……っ、あ……っ、あ……っ」
僕は言葉にならない声を洩らしながら、なすすべもなく快楽に溶かされていった。
汗と情交の匂いがする。彼の匂いと、僕の匂いと。混ざり合った二人の匂いだ。そう思うと、愛しくなった。
蕩け切った声を漏らす僕を慈しむように、フェイトはゆっくりゆっくり、ズプンっと怒張を引いて、ズチュッと戻した。接合部で潤滑油と先走りが混ざって泡立っている様子で、濡れた音をたてている。
ゆったりとした抽挿は、焦れったくなるくらい続いた。
「きもちい……フェイト、だいじょうぶ、だから、もっと」
もっと激しく動いてもいいのに、もっと激しくしてほしい――僕がそう思い始めた頃。
「はぁっ……、オレも、気持ちいい」
フェイトが情欲にぎらぎらとした眼を見せて呟いた。
「フェイト……」
僕は嬉しくなった。
「……僕、嬉しい」
僕の中で気持ちよくなってくれて、嬉しい。
僕が気持ちよくさせることができて、嬉しい。
「大好き、フェイト……あっ!」
嬉しさをありったけ籠めて愛を伝えた直後、荒々しくフェイトに奥を突き上げられて、僕は悲鳴をあげた。
「あ! あ! ああっ、ああ、ああぁっ!」
フェイトはそのまま何度も奥を捏ねるようにさらに突いてくる。すごい。すさまじい快感の波が寄せて、寄せて――僕はただ嬌声をあげるだけになってしまった。
「ふぇいと、……ふぇいとぉ……っ」
「かわ、いい――――かわいい、……ソラ。ごめん、止まらない……っ」
上気したフェイトの顔が凄絶な色香を放っていて、動きに合わせて汗に濡れた逞しい腕や胸筋が雄々しく隆起している。
余裕をなくした彼が愛しくて、僕は必死に頷いた。
「いい。いい、フェイト――……いいっ……」
「……!!」
ぐっ、とまるで心臓まで穿つように強く最奥に打ち込まれて。
ぐ、ぐ、と繰り返される。それが気持ちよくてたまらないって顔でフェイトが唇を引き結んで眉をギュッと寄せている。
フェイト、気持ちいいんだ?
僕も。僕も、それ、すごくいい――――、
僕は高く嬌声をあげながら必死で彼にすがりついた。言葉にならない想いを全身で伝えるように。
接合部が奏でる濡れた音と、肌がぶつかる音と、ベッドが軋む音と。
お互いの荒い呼吸の音と、声が。満ちている。
僕たち二人だけの空間に、二人で奏でる音がいっぱい溢れている。
内臓が押し上げられる度に、声があがる。口から出てくるのは自分のものとは到底思えない甘い声ばかりだ。
痙攣する媚肉を激しい抽挿で擦り立てられて、もう、快感しかわからない。
「あ、あ……やっ! も、もうっ……――っ」
ぐちゅぐちゅと最奥を捏ね回されて、何かを言いかける。もう、だめだ。
「イくっ、いっちゃ……」
声に「うん」と頷いて、わかってると言うようにフェイトががつがつと奥を穿つ。追い詰めるみたいに、追い立てるみたいに、僕を苛む。
「あっ……! あっ、あ――――――……っ!!」
チカチカと目の前に星が瞬くような、強い刺激が襲ってくる。
「く、くる、くる、あっあっあっ」
止まらない。フェイトによりもたらされる強烈な快感が、ずちゅずちゅと激しさを増すばかりで。
絶頂が、もうすぐそこだ。
もう、なすすべもなく目の前の相手にすがることしかできない。
「く……っ!」
フェイトが息を詰める声が聞こえる。
絶頂が近いのか、余裕のない律動で、小刻みな動きが繰り返される。その小刻みに与えられる刺激が、たまらない。
気持ちいい。
……気持ちいい!
「あぁぁっ――」
視界が揺れる。
生理的に滲む涙で歪んで、体の動きによって揺れる視界でも、自分を抱くフェイトの情欲に滾る目はよく見えた。
僕に欲情する目だ。僕に悦ぶ目だ。僕と一緒に気持ちよくなっている目だ。
ああ――――好き。大好き。
僕は、この人が、好きだ。
「い、い、いく。いく。僕、いっちゃう、い――――――」
止め処なく襲い来る甘い熱の波に、追い詰められていく。
甘やかな波が次から次へと押し寄せ、どうしようもなくなっていく。
ゾクゾクと這い上がってくるものが、あふれて、止まらない。
「…………ああ、あぁああっ、」
波が。
限界が。
絶頂に至る階を一息に登らされて――――頭がスパークする。
目の前が、白くなる。身体が浮くみたい。
「あっ、あっ、――――……っ、~~~っ!!」
全身を愉悦に染め上げられて、僕は絶頂に至った。
快感が腰から全身に走り抜けて。シーツに投げ出された足の指がきゅっと震えて、丸まって。
――精が勢いよく弾けて、熱いしぶきが腹を濡らす。
僕がビュクビュクと思い切り射精して白い蜜を弾けさせるのと同時に、クッと息を詰めたフェイトが僕をぎゅうっと抱きしめて。
「っ、……」
「あ、あっ」
敏感すぎる内部で、最奥にどくどくと脈打つ熱を感じる。
彼もまた極めたのだ、と感じると僕の中に言いようのない多幸感が湧いた。
「はぁっ……はぁっ……」
「は……、ん……んっ」
達したばかりで感じやすくなっている火照った肉体を、境界が曖昧になるほど密着させて。
僕たちは愛情を伝え合うように抱きしめ合って、キスをした。舌を絡めながら、果てない情欲のおもむくまま腰を揺らした。
どちらからともなく求め合うように肌を擦り合わせる。繋がったままの秘部がぐずぐずに溶けていくみたいだ。気持ちいい。気持ちいい――。
抱き合ったままで夢中で交わしたキスは、トロトロのチョコレートみたいに甘かった。
「好き」
「……愛してる」
繰り返し愛を囁き合えば、胸の奥がジンジン、ぽかぽかして――――幸せで、いっぱいになった。
――――HAPPY END!
* * *
最後まで読んでくださって、ありがとうございました!
僕は少しずつ彼の世界に慣れた。そこは、いわゆる「ファンタジー」な世界だった。
高層ビルはないし、ネットもないし、車もない。
王侯貴族が暮らすお城があって、馬車が行き来していて、ドラゴンが空を飛んでいたりする。
不便も多かったけれど、慣れれば居心地がいい。
そして、初々しく手を繋いだり、街を散策したり、ソファに座ってお互いの過去を語り合ったりしていた僕たちの仲は、少しずつ進展していった。
具体的に言うと、夜にひとつのベッドで眠るようになったり。眠るだけではなく、恋人としての軽いスキンシップをしてみたり。そして、ある日フェイトは「今日は最後までしていいか」と僕に尋ねたのだった。
「う……うん」
僕が頷くと、フェイトは嬉しそうに微笑んであっという間に僕をその腕に抱え上げた。
そして、厚い胸板に顔をつけて真っ赤になる僕をぎゅっと抱き締めたまま、ベッドに倒れ込んだ。
押し倒されるような姿勢で、ベッドに縫い付けるように抱きすくめられて。
どくん、と鼓動が跳ねる。
「……っ」
――ついに、ついに。
頭の中にフワフワとした思いが巡る。
そういうことをするのか、と。
緊張している僕の頬に人懐こい小鳥がたわむれかかるみたいにキスをして、フェイトは僕を安心させるように言った。
「優しくする」
切羽詰まった表情で愛しげに言われると、それだけで僕の腰はたまらずに揺れていた。
「……うん」
もっとマシな言葉が言えたらいいのに、僕ときたら、言葉を忘れたみたいに頷くばかりだった。
ギシ、とベッドが軋む音が、生々しい。
鼓動が高鳴る――心臓の音が騒がしい。はっ、と熱い息が漏れる。
唇が寄せられて、……唇が離れる時には想いをあふれさせるように息を吐き出す。
気付けば、僕たちはお互いに服を脱いで生まれたままの姿をさらけ出していた。いつ脱いだのか、記憶が飛んでいる。それくらい、緊張していた。
――見られてる。
他の誰にも見せたことがない恥ずかしい部分が無防備に晒されていて、隠したくなる。
でも、きっと大丈夫なんだという気持ちも強くて、僕はグッと羞恥心をこらえてフェイトを見た。
フェイトは僕を隅々まで見て、「綺麗だ」と言ってくれた。
「あ、……ありがと……」
文化の違い、みたいなものがあるのかもしれない。フェイトは恥ずかしがる様子もなく、いつも「誉めなければ損」とばかりに「日頃からよく手入れされているのがわかる」とか「傷ひとつなくて滑らか」とか「きっと大切に育てられてきたんだね」とか、賞賛してくれるのだ。
「僕は自分の体が貧相だと思うけどな。フェイトの逞しい体に憧れるよ。傷とかもあって、……」
そう。フェイトの体は筋骨隆々としていて、傷もいくつもあるのだ。
痛々しいと思う一方で、格好良いと憧れてしまうような、そんな体だ。
「……フェイトは、格好良い」
引き締まったフェイトの体をチラチラと見ていると、耳の下側から首筋にかけて手のひらで包み込むようにされて、顔が近づいてくる。
吐息を奪うようにキスをされると、蕩けてしまいそうだった。
――言葉よりも雄弁に、キスが気持ちを物語る。
ちゅ、ちゅ、と啄むようなキスが続いて、回数を重ねるごとに深めていく。
下唇に濡れた感触を覚えて、舌でぬるりと舐められたのだと気づいて。僕は恍惚と口を開いた。
口を開けると、舌が入ってきた。ぬるりと濡れた熱いフェイトの舌先が僕の舌先に挨拶するみたいに絡みついて、びくりと首筋が震える。
ディープキスだ。こんなことを誰かにされるのは、初めてだ。
「……んっ……」
僕の口の中でフェイトの舌があちこちを探って、濡れた音をぴちゃぴちゃと奏でる。
無防備で柔らかな粘膜をくすぐられて、ゾクゾクと僕の背筋に未知の感覚が走った。
――気持ち、いい。
口の中がこんなに気持ちいいなんて、知らなかった。
「ふぇ、ぃ……ん、んぅ……」
巧みな舌で翻弄されながら、僕は泣いてしまいそうになった。
嬉しくて。幸せで。緊張で。未知への不安で。
フェイトはそんな僕の首筋を優しく撫でさすり、ゆっくりとキスを繰り返しながら身体の線を確かめるみたいに手のひらを移動させていく。撫でられる感覚が、すごく心地よい。何もしないで感じていていいよって言ってもらっているみたいで、僕はつい甘えてしまった。
というより、自分からするとしても、何をすればいいのか、わからない。僕は元の世界にいたころ、草食系男子だったのだ。
「はぁっ、ン……んン……」
ぴちゃぴちゃと奏でられる水音が、いやらしい気分を煽っていく。
吐息が乱れて、じっとしていられなくなるような感じだ。体温が上がって、下半身に熱が集まる感じだ。
「……ソラ」
精悍な眉を寄せて、名前を呼ばれる。何度も、何度も。
切羽詰まったように眇められた彼の眦は赤く上気していて、凄絶な色香を放っている。
「君を、気持ちよくさせたい」
濡れた唇が動く。甘く囁く声が僕をときめかせる。
「あ……も、もう、きもち、いい……よ……」
「ははっ……もっと、気持ちよくさせたい」
くしゃりと屈託なく笑って、フェイトは僕に優しく触れた。丁寧に丁寧に、壊れものを扱うみたいに、まるで羽で触れるように、緩く優しく、体の線が撫でられる。あえかに欲を煽る指先の動きが、気持ちいい。触れられたところから生まれた微弱な快感がじんわりと全身に広がっていって。快楽を生むぬるま湯に浸されるみたいに少しずつ少しずつ、快感を教えられる。広がった快楽の熱が身体の内部に溜められていくみたいで、息があがる。
「あ――……、あぁ……っ」
僕が陶然と喘いでいると、コンプレックスである胸元に視線を感じた。
「あ! そ、そこは」
陥没してるんだ。気にしてるんだ。まじまじと見られるとやっぱり恥ずかしい。
僕が自分の手で胸元を隠すと、フェイトは「隠さないで」と手を退かして、震える胸元に唇を寄せた。
「奥ゆかしいんだな。可愛い」
「……!!」
片方をちゅくちゅくとついばまれながら逆側の乳輪を指先でくるくると擽るようにされると、火照った体はどんどん敏感になっていく。
「あ、フェイト……っ、それ、ちょっと。つら、い、」
意思に反して体がわななく。ちょっと刺激が強い気がする。
「感じるみたいだな」
フェイトはそう言って、いっそう丹念に乳首を愛でた。舌先を尖らせるようにして、くぼんだ先端にぬりぬりと刺激を送られると、感じたことのないような未知の感覚がザワリと湧く。
「ひ、ひっこんでるとこに舌を突っ込んじゃ、だめ」
「ん……」
先端でくりくりと擦られて、乳首を捏ねられて、甘い痺れが走る。じんじんとした熱い感覚が、強くなる。
「……!」
ビクッと肩が揺れる――ぞくぞくと身体の芯からこみ上げる何かが、僕の腰を落ち着きなくぴくんぴくんと揺らす。
あ、あ、やばい。
なんか、すごく感じている。
これだけで達してしまいそうだ。
「あ、……ああ、……ああ」
動揺が胸に湧く。
どうしてこんなに感じてしまうんだ、僕は。
おかしいんじゃないか。胸だぞ。感じるのか、自慰でも弄った事がないのに。
「う、うう~~っ」
ちゅくちゅくと舐められる音に、耳までも犯されているみたいだ。
羞恥心が煽られて、僕の足先がシーツを絡め取り暴れる。
指先は溺れかけみたいにシーツを乱したり、フェイトの身体に縋りついたりして。余裕がないのが、バレバレだ。
「大丈夫か、ソラ?」
「だ、だ、だいじょ、……じゃ、ないかも」
「気持ちよくて、つらい?」
「~~っ!!」
言葉に困る僕を宥めるようにフェイトは指の腹で胸粒を擦った。ちるちるとしゃぶられて吸われて、甘く痺れるような快楽の感覚がどんどん強くなる。
「……ほら、勃ってきた」
慈しむように爪の先でひっかかれると、ぷっくりと膨らんだ乳首がジンジンとした。
「勃っ……ほ、ほんとだ……」
達成感みたいなものを見せて笑うフェイトが突起に軽く歯を立てる。
「ア!」
油断していた僕がビクリと背を反らして喘ぐと、舌でよしよしと宥めるように舐められる。なんだか、弄ばれている気分だ。
舌で責められていない側の乳首を指先でふにふにと揉まれると、声が止まらなくなる。
腰が抜けてしまいそうなほど、下半身に甘い快楽の感があふれる。
「っ、ふぅぅ、あ、なんか、だめ」
おかしくなりそうだ。
「ああ――嬉しいな。そんなに気持ちよさそうにしてくれて」
心底嬉しそうにフェイトが言って、性感に慣れない体に覚えさせるみたいに逆側の乳首に舌の愛撫を移す。
粒を舌先で転がすようにして、飴を味わうみたいにされると、じんじんとした気持ちよさがどんどん敏感に感じられるようになっていって、体の奥がとろとろになっていくようだった。
いつの間にか、僕の性器は硬く勃起して、たらたらと先走りの透明な蜜を滴らせていた。
濡れた感触が幹を伝い落ちる刺激さえ敏感に感じ取ってしまって、僕は背筋を震わせた。
溺れるような快楽に腰砕けになった僕にキスを落として、フェイトはベッド脇の小さなテーブルから小瓶を取った。
「……我慢できなくなってしまいそうだ。君が……、可愛すぎて。ソラ、後ろを準備してもいいか?」
蓋をあけて手のひらに垂らし、あたためるようにするフェイトからは、甘ったるい匂いが漂ってくる。潤滑油という名前らしい。滑りをよくするためのオイルだ。
「じゅ、じゅんび」
「初めてなんだよな。……大丈夫、そんな顔をするな。じっくりほぐすから」
僕はカクカクと頷きつつ、視線をフェイトの下半身へと移した。
フェイトのペニスはガチガチにいきり勃っていた。大きい。
太い血管を浮き上がらせて反り返っているそれは、大きい。僕は自分のと思わず比較して居たたまれない気分になった。
それに、果たして挿入できるのか――凶器のように張り詰めた亀頭を見て、僕はゴクリと喉を鳴らした。
あれ? そんなのはいる?
僕、詳しくないけど。そういうのって、もっと日数をかけて専用の器具を使ったりして拡張していったりとか。
裂けちゃわない? 死んじゃわない? 無理じゃない?
ひゅんっと僕の下半身が尻込みするのが感じられる。情けないけど。とっても情けないけど。
「あ、あの。フェイト……」
あっ、すごくやる気満々な顔だ。
到底、今から「やっぱり日を改めない?」なんて言えないような気がする。だめだよね。
「あの、は、は、はいるかな」
「大丈夫だ」
――言い切ったぞ。すごい自信満々に、断言したぞ。
「そ、そ、そう……そう……?」
僕が蒼褪めていると、フェイトは潤滑油で濡れた指先にほわりと神秘的な光を宿した。
「うわわっ?」
それはもしかして、魔法ではないだろうかっ?
僕は状況を忘れてその光に魅入った。この世界には、魔法があるんだ。ファンタジーだ。
ところで、その光ってる魔法で何をする気なんだ?
「え、なに。なに?」
「これで清めたり、痛みを和らげたりできるから」
「すごい。ファンタジー世界すごい」
僕は感動しつつ、神秘的な光が僕の下半身を照らすのを見て、「これは恥ずかしい」と目を逸らした。
さっきまでの盛り上がった気分が、今はどこかにいってしまっている。なんだか、今の気分は病院の診察台でお医者さんに患部を診られている患者みたいだ。
「ゆっくり慣らすから」
「あ、うん」
中の具合を確かめるように香油でぬるみを得た指が少しずつ入ってくる。光が呑み込まれていくのが滑稽だ。光は、内側でじんわりとした謎のあったかさを放っている。変な感じだ。
「うぅ……っ」
覚悟はしていたけれど、異物感は強い。受け入れるためにできていない体なのだと痛感する。というか、とても自然に僕は受け入れる側になっていたけど、こういうのって話し合ったりしないんだな。いや、挿入する側になれと言われても、やり方もわからなかったのだけど。
ぐるぐると思考が取り留めなく巡る中、フェイトは僕のペニスに手を伸ばし、意識を快楽に導くような手つきでゆっくりと竿を扱いた。優しい手付きに快楽の波が立って、撫でられて扱かれるうちに腰から下が蕩けそうになっていく。
「はう、あ、あぁ……っ!?」
快楽に蕩けた甘ったるい声をこぼすと、フェイトのぬるぬるとした指が後孔をまたほぐす動きを再開して、内壁が擦れる感覚に僕は首を振った。
「あ、や、だ。同時にしちゃ……だめ、だめ」
「この方が力が抜けて楽じゃないか」
「や……あ、あ」
フェイトは指を引き、そしてさらに奥へと入って、また途中で引き抜いた。
中の指が一点を掠めた瞬間。ビリッと強烈な快感が脊椎を突き抜けた。
「――――ア!」
思わず背中が反り返り、高い声が漏れる。
甘い痺れ、電流が身体中を這う。腰の奥から何かが込み上げてくる兆しに、僕はおののいた。
「あっ、んああっ、そ、そこっ」
尿意にも似た、洩らしてしまいそうな感覚。
続けられたら我慢できなくなりそうな、強制的に押し出されるような感覚。
「ここ、気持ちいい?」
確認するようにフェイトが言って、執拗にそこをノックする。跳ねる身体に手ごたえを感じたようにコリュコリュと刺激する。
「あ、あ、出ちゃう、なんかもう出ちゃう、だめ、あぁっ!」
だめだと言っているのに、愛撫が止まらない。
未知の感覚に肌が粟立つ。くちゅくちゅ、コリュコリュと刺激されるたび、吐息と嬌声が押し出される。強烈な感覚に声を抑えられない。
刺激されるたびビクンビクンと体が跳ねて、あられもない声が止められない。僕はすっかり余裕をなくしてしまった。
「はぁっ……はぁっ……はぁっ……――」
どれほど喘いだかわからなくなった頃、ちゅぽんっと濡れた音を淫猥に奏でて、指が抜かれた。僕のいやらしくひくついている後孔に、限界までそり返った怒張があてがわれる。
「あ」
――……挿れるんだ。
そう思った瞬間、心臓が止まりそうなほどの緊張が全身を襲った。
「く、ぅ」
……狭い入り口をこじ開け、フェイトがずぷりと潜り込んでくる。
「う、あ」
指を比べ物にならない質量は、怖かった。熱い。内壁がずりゅっと引き攣り、内部が拡げられる。押し入ってくる亀頭が、圧倒的な存在感で僕の意識を支配する。
「う……――、んん……、ふっ……ぅ、う」
僕はシーツを指でぎゅっと握って、必死に呼吸を繰り返した。息はしないと。けれど、呼吸の仕方も忘れてしまいそうなくらい、衝撃が強い。こんなの、初めてだ。
「くっ……きつ」
フェイトが掠れた声で呟くのが聞こえる。
僕の胸に、申し訳なさが湧いた。
「ご、ごめ」
フェイトも辛いんじゃないか。気持ちよくなれないんじゃないか、僕を抱いても。
そんな不安がグッと込み上げてきて目が熱くなる。
「ン……ソラ、大丈夫か」
気遣ってくれる声が、優しい。
僕は必死に頷いた。泣いてしまいそうだ。
「顔を、見て」
切々と願うように言われてフェイトの顔を見ると、汗が浮いたフェイトの顔は、込み上げる何かを堪えるみたいに辛そうに眉を寄せながら、泣きそうな笑顔をたたえていた。
――そんな顔、初めて見た。
僕は自分の眦から透明な熱い雫が一条零れて頬を伝うのを感じながら、唇を震わせた。
「ソラ。君と繋がることができて、嬉しい」
甘く囁く声は、幸せそうだった。僕はそれを聞いて胸がいっぱいになった。
「ぼ、……僕も。僕も――……うれ、しい……!!」
ほろほろと泣きながら言えば、内部でグッとフェイトのものが質量を増したのがわかる。
「もう少し奥に進んでも、いいか」
見れば、まだ半分くらいしか挿入できていない。
けれど、僕はもう恐れる気持ちはなかった。
「うん。うん……っ、きて……!」
全部、受け入れたい。
気持ちよくなってほしい……!
「ありがとう、ソラ」
嬉しそうな声を聞くと僕の心に甘ったるい幸福感が湧いて、下半身が熱を増していく。必死に力を抜いて呼吸を繰り返す中、うわごとのようにフェイトが僕の名前と愛を囁いて、それに悦ぶみたいに僕の中がびくびくと蠕動する。熱く蕩けた粘膜が入り込んでくる怒張をきつく締め付けると、辛そうな声をこぼして、フェイトが耐えるように眉を寄せている。僕も、息を詰めて耐えることしかできなくなっている。
次第に快感が全ての感覚を支配して快楽一色で塗り替えるみたいに、強く、濃厚になってきた。
「ああ――――っ……」
最奥を穿たれて、ゆっくりと抽挿が始まると、ブワッと快感が湧く。なんだ、これ。すごい。こんなのは、初めてだ。すごく――怖いくらい、強い快感だ。
「あ……っ、あ……っ、あ……っ」
僕は言葉にならない声を洩らしながら、なすすべもなく快楽に溶かされていった。
汗と情交の匂いがする。彼の匂いと、僕の匂いと。混ざり合った二人の匂いだ。そう思うと、愛しくなった。
蕩け切った声を漏らす僕を慈しむように、フェイトはゆっくりゆっくり、ズプンっと怒張を引いて、ズチュッと戻した。接合部で潤滑油と先走りが混ざって泡立っている様子で、濡れた音をたてている。
ゆったりとした抽挿は、焦れったくなるくらい続いた。
「きもちい……フェイト、だいじょうぶ、だから、もっと」
もっと激しく動いてもいいのに、もっと激しくしてほしい――僕がそう思い始めた頃。
「はぁっ……、オレも、気持ちいい」
フェイトが情欲にぎらぎらとした眼を見せて呟いた。
「フェイト……」
僕は嬉しくなった。
「……僕、嬉しい」
僕の中で気持ちよくなってくれて、嬉しい。
僕が気持ちよくさせることができて、嬉しい。
「大好き、フェイト……あっ!」
嬉しさをありったけ籠めて愛を伝えた直後、荒々しくフェイトに奥を突き上げられて、僕は悲鳴をあげた。
「あ! あ! ああっ、ああ、ああぁっ!」
フェイトはそのまま何度も奥を捏ねるようにさらに突いてくる。すごい。すさまじい快感の波が寄せて、寄せて――僕はただ嬌声をあげるだけになってしまった。
「ふぇいと、……ふぇいとぉ……っ」
「かわ、いい――――かわいい、……ソラ。ごめん、止まらない……っ」
上気したフェイトの顔が凄絶な色香を放っていて、動きに合わせて汗に濡れた逞しい腕や胸筋が雄々しく隆起している。
余裕をなくした彼が愛しくて、僕は必死に頷いた。
「いい。いい、フェイト――……いいっ……」
「……!!」
ぐっ、とまるで心臓まで穿つように強く最奥に打ち込まれて。
ぐ、ぐ、と繰り返される。それが気持ちよくてたまらないって顔でフェイトが唇を引き結んで眉をギュッと寄せている。
フェイト、気持ちいいんだ?
僕も。僕も、それ、すごくいい――――、
僕は高く嬌声をあげながら必死で彼にすがりついた。言葉にならない想いを全身で伝えるように。
接合部が奏でる濡れた音と、肌がぶつかる音と、ベッドが軋む音と。
お互いの荒い呼吸の音と、声が。満ちている。
僕たち二人だけの空間に、二人で奏でる音がいっぱい溢れている。
内臓が押し上げられる度に、声があがる。口から出てくるのは自分のものとは到底思えない甘い声ばかりだ。
痙攣する媚肉を激しい抽挿で擦り立てられて、もう、快感しかわからない。
「あ、あ……やっ! も、もうっ……――っ」
ぐちゅぐちゅと最奥を捏ね回されて、何かを言いかける。もう、だめだ。
「イくっ、いっちゃ……」
声に「うん」と頷いて、わかってると言うようにフェイトががつがつと奥を穿つ。追い詰めるみたいに、追い立てるみたいに、僕を苛む。
「あっ……! あっ、あ――――――……っ!!」
チカチカと目の前に星が瞬くような、強い刺激が襲ってくる。
「く、くる、くる、あっあっあっ」
止まらない。フェイトによりもたらされる強烈な快感が、ずちゅずちゅと激しさを増すばかりで。
絶頂が、もうすぐそこだ。
もう、なすすべもなく目の前の相手にすがることしかできない。
「く……っ!」
フェイトが息を詰める声が聞こえる。
絶頂が近いのか、余裕のない律動で、小刻みな動きが繰り返される。その小刻みに与えられる刺激が、たまらない。
気持ちいい。
……気持ちいい!
「あぁぁっ――」
視界が揺れる。
生理的に滲む涙で歪んで、体の動きによって揺れる視界でも、自分を抱くフェイトの情欲に滾る目はよく見えた。
僕に欲情する目だ。僕に悦ぶ目だ。僕と一緒に気持ちよくなっている目だ。
ああ――――好き。大好き。
僕は、この人が、好きだ。
「い、い、いく。いく。僕、いっちゃう、い――――――」
止め処なく襲い来る甘い熱の波に、追い詰められていく。
甘やかな波が次から次へと押し寄せ、どうしようもなくなっていく。
ゾクゾクと這い上がってくるものが、あふれて、止まらない。
「…………ああ、あぁああっ、」
波が。
限界が。
絶頂に至る階を一息に登らされて――――頭がスパークする。
目の前が、白くなる。身体が浮くみたい。
「あっ、あっ、――――……っ、~~~っ!!」
全身を愉悦に染め上げられて、僕は絶頂に至った。
快感が腰から全身に走り抜けて。シーツに投げ出された足の指がきゅっと震えて、丸まって。
――精が勢いよく弾けて、熱いしぶきが腹を濡らす。
僕がビュクビュクと思い切り射精して白い蜜を弾けさせるのと同時に、クッと息を詰めたフェイトが僕をぎゅうっと抱きしめて。
「っ、……」
「あ、あっ」
敏感すぎる内部で、最奥にどくどくと脈打つ熱を感じる。
彼もまた極めたのだ、と感じると僕の中に言いようのない多幸感が湧いた。
「はぁっ……はぁっ……」
「は……、ん……んっ」
達したばかりで感じやすくなっている火照った肉体を、境界が曖昧になるほど密着させて。
僕たちは愛情を伝え合うように抱きしめ合って、キスをした。舌を絡めながら、果てない情欲のおもむくまま腰を揺らした。
どちらからともなく求め合うように肌を擦り合わせる。繋がったままの秘部がぐずぐずに溶けていくみたいだ。気持ちいい。気持ちいい――。
抱き合ったままで夢中で交わしたキスは、トロトロのチョコレートみたいに甘かった。
「好き」
「……愛してる」
繰り返し愛を囁き合えば、胸の奥がジンジン、ぽかぽかして――――幸せで、いっぱいになった。
――――HAPPY END!
* * *
最後まで読んでくださって、ありがとうございました!
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読ませていただき感謝感謝でございます…!!
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ありがとうございますっ
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読んでくださりありがとうございますっ、キュンキュンエモエモを目指しましたっ
陥没乳首は流行ってるみたいだったから…
さっき飲んだココアより甘いィイイ
とりあえず尊い_:(´ཀ`」 ∠):
ロモさま
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