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6章、幸せのかたち
74、「僕はマゾなのだろうか」★
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74、「僕はマゾなのだろうか」★
抱きかかえられて、部屋に戻る。
ふわふわと寝台に身を沈まされて、のしかかってくる伴侶の匂いを感じれば、腹の奥で悦び、騒ぎだす熱が吐息の温度をあげていく。
布越しに優しく肩のラインを撫でさすられて、胸に甘やかな欲望の灯が点る。
もっと触れてほしい。
激しく愛して欲しい。
そんな想いが、クレイの身の内に湧きあがる。
シルエットを重ねてひとつになるように肌がくっついて擦られると、くすぶる熱が内側でどんどん育っていく。
「クレイ」
艶っぽく名前を呼ばれると、腰を押し付けるようにして応えてしまう。
「可愛い、俺のクレイ……」
唇に濡れた優しい感触が降ってくる。
触れて、離れて、また触れあって。
角度を変えて吐息の温度を高めるようにしながら繰り返すにつれ、情欲がゆらゆらと波打って、心地よい熱が全身に広がっていく。
「ぁっ……んん、ふ……」
求め合う唇の間からぬるりと入り込む舌が、ぴちゃ、ぴちゃとはしたない音を奏で始める。
柑橘系の香りがふわふわと脳を支配する――美味しい。
「ン、ん……美味しい。もっと――」
クレイは両腕を離れかける体温を繋ぎ止めるようにニュクスフォスの首にまわして、ねだるように舌を突き出した。
「っ、なんて可愛くおねだりなさるのでしょう……」
渇望を抑えるように呟くニュクスフォスの声が熱っぽい。
後頭部を包み込むように手のひらが滑りこんで、また深く口付けが続く。濃く、甘く。
「ん、……」
溶かすようにやわらかい部分をくすぐる舌に高められて、下半身が甘く疼いて、脚をじっとさせていられない。
肌がほわほわと火照ってたまらない。
(ほ、欲しぃ……)
クレイは舌の腹でねだるようにそれを伝えた。
(ちょうだい。ちょうだい、僕、もう、ほしい……っ)
身体が、心が、どうしようもなく雄を欲しがっている。
はやく、はやくと焦燥に似た切ない感じが、つらい。
「ハァッ、は、ふ、ン……ッ」
甘い吐息を紡ぎ、舌を絡ませながら、下への刺激を待ち焦がれてしまう。
優しく髪を梳く指が心地よい――焦れったい。
夜着を乱す手がふわふわと肌を掠めていく刺激が、もどかしい。
ぜんぜん激しくないのに、少し触れただけの柔らかに掠めるような感触がたまらない。
……気持ちよくてたまらない。
「……っん……!」
赤く色づく胸粒のまわりを焦らすように擽られれば、クレイは目に涙を浮かべて悶えた。
ゆるゆると身を捩って甘い吐息を繰り返し、縋る手に力が籠る。
「ん、ンふ、んぅ……っ」
口の中の柔らかい部分をニュクスフォスの舌が這いまわると、クレイの喉奥からくぐもった悲鳴みたいな引き攣った声が零れた。
「んっく、ぅんっ……!」
脚の内側がむずむずして、股間が熱い。
左右の肩を順に前後に揺らして、全身で欲情を溢れさせてしまう。
ぴんと勃ちあがった胸の突起を可愛がるようにふにふにと弄られて、ゾクリと肌が粟立って自分の内部が官能の波を立てる。
痺れるような快感が全身をどんどん浸して、ぐずぐずと蕩けさせていく。
「んぁ、んんふ……、っふぁッ」
唾液の糸を引きながら唇が解放されて、上気した頬が舐められる。
キスがそのまま、下へと降りていく。
首筋をしっとりと吸い付きながら舐められると、つくんとした疼きが起きて、じわっと悦びに変わっていく。
そんな悦楽が緩慢に優しく、鎖骨へ胸へと降りていく。
「あ、は――ニュクス、にゅくす……」
熱い舌がねっとりと身体を這いまわる感覚はゆったりとした恍惚の海のようで、ゆらめく甘い波を逃そうとして、手が落ち着きなく目の前の身体に縋ってしまう。
「はぁっ、は、は――っ」
翻弄されるがまま、どんどんと呑み込まれていってしまいそう。
止まることのない刺激は、じんじんと甘く緩く快楽を誘っていく。
ぞくぞくと何かが這い上がってくる感覚がある。
身体の内側がどんどん昂っていく――。
「あ、あ、ダメ――なんか、もう、だめ」
感じすぎてしまう。
クレイはめくるめく官能を持て余して音をあげた。
「ここは、ダメ?」
舌先で胸の尖りをちろちろと苛められて、唇で食むようにして吸い上げられる。
「ひゃ、ぁぅ……っ」
ゆるく萌していた股間にずんずんと響くような官能に、クレイは首を振って喘ぐことしかできなかった。
反対側の胸も指の腹で揉まれて、愉悦を教え込むようにされる。
「ぁ、ぁ――、だ、だめ……っ……」
「ここが、ダメなんですね」
確認するように舐められて、クレイは胸を反らして善がってしまった。
「やっ――」
「……ではどこなら良いんですか?」
反らされた上半身をやさしく宥めるように撫でさすり、胸の中央に痕を散らしながら吐息が囁く。
「クレイ。貴方の触ってほしいところは、どちら? 俺にきかせて……」
「~~ッ!!」
クレイは真っ赤になってぎゅっと目を閉じた。
恥ずかしい。こんなの、羞恥プレイだ。
でも――触れて欲しい。
……我慢できない。
「ふ、……触れてほしぃっ……」
自ら股を開くようにして、腰を揺らしてそこを教える。
「どちらに?」
「……!!」
悪戯っぽい紅色の瞳が、顔を覗き込む。
「う、うぅ――」
意地悪をされているではないか。
……こんなの、屈辱だ。
クレイは視線を逸らして唇を噛んだ。
「シーツがこんなにびしょびしょに濡れていますよ……」
片手をつかまれて、気付かせるようにシーツに導かれる。
「貴方のここが、悦んで濡らしてしまったのですね」
先走りでそこを濡らすクレイの雄蕊につづいて導かれて、触れるか触れないかで止められる。
「興奮しますねクレイ、昂りますね」
あやすように言いながら、そこ以外への愛撫が続く。
時間をかけて、ひたすら蕩けさせられる。
丁寧に、丹念に、いたぶるように焦らされる。
「も、もぅ、出したい、……っ」
「出したいですね……ちゃんと出させてあげますからね」
「い、い、今、もう。今」
「今から。ええ、今から」
――香油の水音を立てながらほわほわと微笑むニュクスフォスの気配が優しくて、怖い。
「ふ、あ……っ」
触れられるのは、前ではなくて後ろだった。
さらけ出し、求めてひくつく秘部を濡らされて、じっくりゆっくり、後ろの蕾を愛でられる。
身体に力が入らない。
ゆるゆる、ぐずぐずに蕩けてしまって、どこを触れられても感じてしまう。
ふしだらに色めく声が、抑えられない。
顔を覆って乱れていれば、咎めるように手が退けられる。
「クレイ、隠さないで。貴方の感じてる顔を俺によく見せて」
「……っ」
情欲の気配を濃くのぼらせて、獲物を弄ぶ肉食の獣みたいな眼をしたニュクスフォスがうっとりしている。
さりげなく手に香油を足しながら。
「いいこ、いいこ――偉い、偉い。可愛くて偉い……」
「な、なんだそれ……っ」
「ここも薄紅に濡れていて、とても綺麗ですよ」
「あっ」
気を取られた一瞬で、ニュクスフォスはゆっくりと指を後孔に埋めてくる。
「本日の具合はいかが。診てみましょうね――」
「……っ」
「あったかいですね、俺の指が今ここにいますよ」
クレイはふるふると震えて、おしゃべりに囀るニュクスフォスを黙らせたくなった。
「お、お前、お前――っそれ、あんまりやったら、僕怒る……っ」
「俺は殿下に怒られたいのかもしれません……」
「……! ……!!」
――こいつときたら、悪びれない!
「も、もう――」
「欲しがっていらっしゃる」
「く、ぅ……っ」
指摘通り、ほぐされる中は熱く熟れているようで、積極的に奥へ奥へと指を呑み込もうとするようにひくついていた。
それが、クレイ自身にはどうしようもない。
「う、うう。うぅ……っ」
「悔しがる貴方は最高に可愛らしいですね……こちらは悦んでいらして――やはりマゾ……」
「だ、だまれ、あ、あっ!」
――煽られて、好いところを刺激され、首を反らして悶えてしまう自分が悔しい。
「可愛い俺の殿下を苛めるのは本当に心苦しいのですが……」
ニュクスフォスが何か言っている。
「それで悦ぶなら俺はがんばりましょうッ」
「が、がんばらなくて、よろしいっ……!?」
ぬちゅぬちゅと指が動くたび、身体がびくびくと淫らに反応してしまう。
熱をため込む身体への絶え間ない刺激に、はしたなく腰が悦んでしまう。
陰茎が頭を持ち上げて、快楽にぽたぽたと透明な蜜を溢れさせて泣いている。
つらくてたまらない。
出したくて我慢できない。
「ふっ、ま、前。前、触ってほし――ぅうっ……」
クレイが自分で前を慰めようと手を伸ばせば、両手に光の蔦がしゅるりと絡んで、自由を奪われる。
「ああ、や、やだぁっ、それやだぁ!! お、お願い」
「なんて可愛らしくおねだりなさるんでしょう……本当は心苦しいのですが。本当は心苦しいのですが、いや本当に」
熱っぽく吐息をつないで笑むニュクスフォスの顔が凄艶な色を浮かべている。
ぎらぎらとした瞳には、紛れもない嗜虐心がちら見えしていた。
「前を、前を触って……っ」
後ろへの愛撫が続くと、おかしいくらい取り乱して、指をきゅうきゅうと締めつけてしまう。
涙の溢れる眦に、ついばむようなキスをされる。
ひとりで乱れている自分が恥ずかしい――けれど余裕がないのだ。
「代わりにお好きなところを可愛がってあげましょうね」
「ぁ、ん、やだ、やだ……っ、おかしくなっちゃう、ッあ!!」
こりこりと弱い場所を愛でられる。
その瞬間、鋭い快感が突き抜けて、クレイは背をのけ反らして悲鳴をあげた。
甲高い声が自分のものではないみたい――身体を突き抜ける快感が執拗に繰り返されて、クレイは破廉恥な声をあげつづけた。
「ひっ、ひァっ、ああ、ンぅ、も、やめ、ッ」
「あぁ――可愛い……っ」
たまらない、といった声でニュクスフォスがとろりと息を吐く。
「俺のクレイ。俺の。俺の……俺だけの!」
抑えきれない渇望が情熱的に声を震わせる。
舌なめずりして艶美に微笑み、ニュクスフォスは自身の雄をあらわにした。
雄の色香にあてられて、クレイはくらくらとした。
「あ、あ、そのまま――」
「……このまま? よろしいですか?」
「よ、よ、よい――いい……」
勃ちあがった怒張は脈打っていて雄々しく、欲をそそる。
欲しいという熱がクレイの奥に渦巻いて、たまらなくなる。
「はぁっ、はぁ、は――」
無意識に喉を鳴らしてクレイが手を半端に彷徨わせていると、ニュクスフォスの熱い手がそれを包んで導くように触れさせる。
「俺ですよ、クレイ。クレイ様」
熱を昂らせる男根が、欲望をたぎらせている。
「貴方を悦ばせるのは、俺ですよ――う、……っ」
愛しく摩ると快楽の吐息を零すのが感じられて、ぞくぞくした。
硬く反り返った張りを感じると、これが貰えるのだという期待に心臓が速まり、後ろが震えてしまう。
クレイはうっとりと吐息を濡らした。
「ほ――欲しい」
「ええ、ええ」
「は……はやく」
「参ります」
「きて……っ」
濡れそぼった蕾に押し入る猛りが、大きくて熱い。
待ち焦がれた征服者は、ゆっくりゆっくりと侵略してくる。
その質量に全身の肌が粟立ち、がくがくと震える。
だらしなく開いた口が意味をなさない嬌声をこぼして、抑えられない、閉じられない。
「ぁ……は、あっぁっ……! あつ、おおきぃ……」
「ふ……ッ」
快楽に耐えるような凄艶の表情で睫毛を伏せて、ニュクスフォスが動きを止めて呼吸を寄り添わせている。
「……ふ、ふーっ、ふ……」
呼吸が落ち着くのを待つように、腰骨のあたりが撫でられる。
反り返ったクレイの陰茎がぎちぎちに限界を訴えているのを愛し気に見つめられれば、視線だけで達してしまいそうだった。
「っ、う――動いて、ニュクス……」
ねだるように言えば、潮が引くように浅く引き上げられて、浅瀬に戯れるようにゆっくりと攻められる。
奥が欲しがるようにひくひくと震えて、反り返った前が揺れながらはしたなく涙を滴らせ、濡れている。
「クレイ――クレイ」
呻くように名前を呼ばれ、繰り返されて、身体の芯からこみ上げる何かに吐息が震える。
悦楽の波にさらされ、揺らされて、心も身体も多幸感に蕩けてしまいそう。
ぐちゅぐちゅと淫猥な濡れた音がする。
とろとろに潤む敏感な内壁を擦られて、ぶるぶると身震いして泣いてしまう。
「俺の劣情が貴方の中を犯していますよ」
ハァッと興奮の吐息を紡いで、支配者の顔でそんなことを言われる。
情交の匂いが甘ったるくて、息をするたびに淫欲を煽られて、腰に淫らな熱が溜まるよう。
「っ、……っ」
ニュクスフォスの余裕のなさそうな声がいつもより低く掠れて鼓膜を刺激する。心がときめいて、嬉しくなる。
――僕の中で感じてくれている――……
律動を速めるそれが奥に奥にと押し入って、貫かれる感覚に裏返った余裕のない悲鳴があがる。
「あ、あっ! こわいい!」
裂けちゃう。
壊れちゃう。
おかしくされちゃう!
そんな恐怖と強い官能が脳を揺さぶり、クレイの視界をちかちかと明滅させた。
「あ、あっ、あっ! あ! は、あ、んああぁっ!」
「――クレイ、クレイ……っ」
「ま、って、ひ、だめっ!」
ぐりぐりと奥に押し付けられるようにすれば、眩暈がするような悦楽におかしくなりそうだった。
口の端から唾液を垂らして蕩けた声で啼いてしまうクレイを上気した顔で見下ろして、ニュクスフォスは興奮したように腰を震わせた。
「もっと……いっぱい、気持ちよくさせてあげたい――俺がっ」
滾った熱が奥に穿たれて、クレイの全身がびくびくと跳ねる。
「もっと、もっと――」
「ひぁ、ン! そこ、やっ、あぁあっ!」
寝台が軋む音がする。
つながった個所からひっきりなしに卑猥な濡れた音が聴覚を犯すようだった。
激しく肌がぶつかって、視界が揺れる。
腰を前後に大きく回転させるように強弱をつけてグラインドされると、快楽に神経が犯されて、クレイはすすり泣くように善がってしまう。
弾む吐息が濡れて乱れて、自分で自分をコントロールできない。
腰が勝手に揺れてしまう――、
「は、はぁ……ん、っきもちい、」
――そうだ。気持ちいい――……、
「ああっ、いっ……んぅ、ッ」
……頭がおかしくなりそうなほど、気持ちいい!
「クレイ、気持ちいいですか」
「うん、うん……っ」
「俺も、気持ちいいですよ……っ」
「ん……!!」
クレイの濡れた瞳が快楽に涙を溢れさせ、きらきら煌めいている。
色づいた唇はだらしなくひらいて、欲情の吐息に濡れた赤い舌を覗かせる。
口の端からは透明な唾液がたらたらとこぼれて、真っ赤に火照ってぐしゃぐしゃの蕩け切った顔は、繋がる雄を大いに煽った。
「ぼ、僕、前を触ってほしぃ、っ」
ひくひくと鈴口が震えて、とめどなく先走りの涎を垂らしている。
濡れそぼる雄蕊がつらい――触れられていないのに、爆ぜてしまいそう。
「こんなにお育ちになられて。触れたらすぐに放ってしまいそうですね」
「は、放ちたいっ……して……」
後ろが荒々しく突き上げられる。
「触れないでも今の貴方なら、イけるのでは」
怖いことを言っている。
とても良いことを思い付いたみたいな顔で、それを決めてしまったというように。
この王様は、皇帝は、笑うではないか。
「う、嘘――」
「頑張ってみましょうか、俺の殿下?」
両手を絡め取られて、縋ることもできない。逃れられない。
「あっ、あ、ああァァっ……!?」
ねっとり、じっくりと攻めたてられる。追い上げられる。
あられもない声を絶叫するようにあげて悦んで、動物になったみたいに欲望一色に染まってしまう。
背がのけぞり、獣めいた嬌声を上擦らせて、おかしいくらい腰を揺らして後ろを締め付けてしまう。
「イけそうですか、クレイ?」
「む、むり――触ってくれなきゃ、僕……あっァッ!?」
クレイの手を放し解放した光の蔦が、代わりとばかりに胸をくすぐって刺激を重ねる。
「ひゃんぅっ!?」
犬のように甲高く泣いて、クレイは唐突に加わった恐ろしい悦楽に悲鳴をあげた。
何かが来る――きてしまう。
「大丈夫ですよ、ちゃんと出せますからね」
「くぁっ……や――ぁ、ぁっ」
右と左と乳輪を交互に撫でて、乳頭をくにくにと押されて、刺激される。
びりびりと快感がそこから奔る。
悶えていると、内部をひときわ強く突き上げられて、全身が総毛立つ。
がつがつと狂おしく後ろから突き上げられて、胸を弄られて、あり得ないほどの官能が同時に襲ってくる。
それが続いて、気持ちよくてたまらない。
拷問のようなおぞましい愉悦に、おかしくなる。
「っ、う゛、や、やらぁっ!」
クレイの股間は滾りきっていて、奥からどんどんと押し付けられた煮えたぎる淫欲の湯圧がもう限界だ。
「で、出る、出させて、触れて、お願い……ッ、おかしくなるッ、あ、あ、ダメ! やぁあ!」
目の奥がチカチカして、視界が認識できない。
ただ、イきたくて仕方ない。
「やっ、や、らぁ、は、っやっ――やらっ、やら゛ぁぁ!」
触れて、お願い、出させて。狂ってしまいそう――、
善がり狂う腰奥にねだるように楔が押し付けられ、ノックされる。
両脚がぶるぶる痙攣して、首と背がのけぞって限界に震える。
ぼたぼたと反り返った陰茎の先が震えながら先走りを溢れさせていて、熱くてつらくて、壊れてしまいそう。
――頭がスパークする。
「アァ!! もう刺激しないでぇッ――ひ、ぎっ……!」
止め処なく襲い来る甘い熱の波が、残酷なまでに容赦なくクレイを追い詰め、追い上げる。
甘やかな波が次から次へと押し寄せ、どうしようもなくなっていく。
地に足もつかず、溺れて、激しい波に浚われて、渦に巻かれて――弾ける。
耳がぺろりと舐め上げられて、傲然と命じられる。
「お出し」
「……!!」
耳の周辺がぞわぞわとなる。
信じられないほどの愉悦が腹の底から暴れ狂って、背筋をぞくぞく駆け上がって、クレイを絶頂に押し上げた。
「ひ、ひ! あ゛……ッ!」
触れられていない陰茎の先端から、勢いよく白蜜の液体が噴きだす――
「あぁあぁぁぁあ――ッ!!」
絶叫しながら、クレイはその頂きに達していた。
「……っ、クレイ……ッ」
絶頂に痙攣する後ろに、自分を支配する雄が興奮に熱く波打つかたちを強く感じる。
貫かれ、熱い液体が迸るのを奥に感じる。
逃さないというように腰を抑えられ、流し込まれる。
「ッ――ひぃ……っ」
中に出されたのだと感じた瞬間に、ありえないほどの高揚と興奮がクレイの心を惑わした。
(あ、あ、中――、中に……っ、なに、この、なに……っ?)
自分が犯されたのだという感覚が強くて、幸せでたまらない。
中に注いでもらったのだ。僕だけに、それがなされたのだ。
僕だけが、この皇帝にそれをしてもらったのだ――
「ぅン……っ」
ニュクスフォスの掠れた吐息が、耳を蕩かすように熱くくすぐる。
気持ちよさそうに唸るような吐息を紡ぎ、精を擦るように腰がちいさく揺らされる。
達したばかりのクレイはそれに過剰なほど動揺して、身悶えした。
「あ、ッ今、だめ、だめぇっ……っ」
暴れる体を抑えるようにして腰を押し付けられる。
奥に意識が集中させてびくんびくんと反応しながら、クレイは顔をくしゃくしゃにして涙をこぼして快楽にすすり泣いた。
「――よくできました……、」
「ひ、ひっ……あぁ……っ」
余韻を逃すようにあやすように前が撫でられると、勢いのない白濁がとろりと手を汚した。
「気持ちよかったですか、クレイ」
ふわふわとした声が体温を寄せて、所有欲をあらわに首筋に痕を刻んでいく。
「……ハァッ、は――」
「よかったですか殿下――足りない? もっと……?」
「っ、よ、よかったっ……よかったです、陛下……っ!?」
必死に応えれば、満足そうに頭が撫でられる。
「貴方の好みに、できましたでしょうか?」
「……」
すっかりマゾだと思われている気がする。
いや、僕は実はマゾなのだろうか……? クレイは自分の性癖を思い、悩ましく眉を寄せた。
「僕はマゾなのだろうか」
「俺が拝見する限り、そうではないかと」
「そ、そう……? そう……なのかなぁ……?」
……幸せな気分で抱かれていると、そんな疑問も少しずつどうでもよくなっていく。
つながったままキスを繰り返すと、身も心もひとつに溶けあっていくようだった。
抱きかかえられて、部屋に戻る。
ふわふわと寝台に身を沈まされて、のしかかってくる伴侶の匂いを感じれば、腹の奥で悦び、騒ぎだす熱が吐息の温度をあげていく。
布越しに優しく肩のラインを撫でさすられて、胸に甘やかな欲望の灯が点る。
もっと触れてほしい。
激しく愛して欲しい。
そんな想いが、クレイの身の内に湧きあがる。
シルエットを重ねてひとつになるように肌がくっついて擦られると、くすぶる熱が内側でどんどん育っていく。
「クレイ」
艶っぽく名前を呼ばれると、腰を押し付けるようにして応えてしまう。
「可愛い、俺のクレイ……」
唇に濡れた優しい感触が降ってくる。
触れて、離れて、また触れあって。
角度を変えて吐息の温度を高めるようにしながら繰り返すにつれ、情欲がゆらゆらと波打って、心地よい熱が全身に広がっていく。
「ぁっ……んん、ふ……」
求め合う唇の間からぬるりと入り込む舌が、ぴちゃ、ぴちゃとはしたない音を奏で始める。
柑橘系の香りがふわふわと脳を支配する――美味しい。
「ン、ん……美味しい。もっと――」
クレイは両腕を離れかける体温を繋ぎ止めるようにニュクスフォスの首にまわして、ねだるように舌を突き出した。
「っ、なんて可愛くおねだりなさるのでしょう……」
渇望を抑えるように呟くニュクスフォスの声が熱っぽい。
後頭部を包み込むように手のひらが滑りこんで、また深く口付けが続く。濃く、甘く。
「ん、……」
溶かすようにやわらかい部分をくすぐる舌に高められて、下半身が甘く疼いて、脚をじっとさせていられない。
肌がほわほわと火照ってたまらない。
(ほ、欲しぃ……)
クレイは舌の腹でねだるようにそれを伝えた。
(ちょうだい。ちょうだい、僕、もう、ほしい……っ)
身体が、心が、どうしようもなく雄を欲しがっている。
はやく、はやくと焦燥に似た切ない感じが、つらい。
「ハァッ、は、ふ、ン……ッ」
甘い吐息を紡ぎ、舌を絡ませながら、下への刺激を待ち焦がれてしまう。
優しく髪を梳く指が心地よい――焦れったい。
夜着を乱す手がふわふわと肌を掠めていく刺激が、もどかしい。
ぜんぜん激しくないのに、少し触れただけの柔らかに掠めるような感触がたまらない。
……気持ちよくてたまらない。
「……っん……!」
赤く色づく胸粒のまわりを焦らすように擽られれば、クレイは目に涙を浮かべて悶えた。
ゆるゆると身を捩って甘い吐息を繰り返し、縋る手に力が籠る。
「ん、ンふ、んぅ……っ」
口の中の柔らかい部分をニュクスフォスの舌が這いまわると、クレイの喉奥からくぐもった悲鳴みたいな引き攣った声が零れた。
「んっく、ぅんっ……!」
脚の内側がむずむずして、股間が熱い。
左右の肩を順に前後に揺らして、全身で欲情を溢れさせてしまう。
ぴんと勃ちあがった胸の突起を可愛がるようにふにふにと弄られて、ゾクリと肌が粟立って自分の内部が官能の波を立てる。
痺れるような快感が全身をどんどん浸して、ぐずぐずと蕩けさせていく。
「んぁ、んんふ……、っふぁッ」
唾液の糸を引きながら唇が解放されて、上気した頬が舐められる。
キスがそのまま、下へと降りていく。
首筋をしっとりと吸い付きながら舐められると、つくんとした疼きが起きて、じわっと悦びに変わっていく。
そんな悦楽が緩慢に優しく、鎖骨へ胸へと降りていく。
「あ、は――ニュクス、にゅくす……」
熱い舌がねっとりと身体を這いまわる感覚はゆったりとした恍惚の海のようで、ゆらめく甘い波を逃そうとして、手が落ち着きなく目の前の身体に縋ってしまう。
「はぁっ、は、は――っ」
翻弄されるがまま、どんどんと呑み込まれていってしまいそう。
止まることのない刺激は、じんじんと甘く緩く快楽を誘っていく。
ぞくぞくと何かが這い上がってくる感覚がある。
身体の内側がどんどん昂っていく――。
「あ、あ、ダメ――なんか、もう、だめ」
感じすぎてしまう。
クレイはめくるめく官能を持て余して音をあげた。
「ここは、ダメ?」
舌先で胸の尖りをちろちろと苛められて、唇で食むようにして吸い上げられる。
「ひゃ、ぁぅ……っ」
ゆるく萌していた股間にずんずんと響くような官能に、クレイは首を振って喘ぐことしかできなかった。
反対側の胸も指の腹で揉まれて、愉悦を教え込むようにされる。
「ぁ、ぁ――、だ、だめ……っ……」
「ここが、ダメなんですね」
確認するように舐められて、クレイは胸を反らして善がってしまった。
「やっ――」
「……ではどこなら良いんですか?」
反らされた上半身をやさしく宥めるように撫でさすり、胸の中央に痕を散らしながら吐息が囁く。
「クレイ。貴方の触ってほしいところは、どちら? 俺にきかせて……」
「~~ッ!!」
クレイは真っ赤になってぎゅっと目を閉じた。
恥ずかしい。こんなの、羞恥プレイだ。
でも――触れて欲しい。
……我慢できない。
「ふ、……触れてほしぃっ……」
自ら股を開くようにして、腰を揺らしてそこを教える。
「どちらに?」
「……!!」
悪戯っぽい紅色の瞳が、顔を覗き込む。
「う、うぅ――」
意地悪をされているではないか。
……こんなの、屈辱だ。
クレイは視線を逸らして唇を噛んだ。
「シーツがこんなにびしょびしょに濡れていますよ……」
片手をつかまれて、気付かせるようにシーツに導かれる。
「貴方のここが、悦んで濡らしてしまったのですね」
先走りでそこを濡らすクレイの雄蕊につづいて導かれて、触れるか触れないかで止められる。
「興奮しますねクレイ、昂りますね」
あやすように言いながら、そこ以外への愛撫が続く。
時間をかけて、ひたすら蕩けさせられる。
丁寧に、丹念に、いたぶるように焦らされる。
「も、もぅ、出したい、……っ」
「出したいですね……ちゃんと出させてあげますからね」
「い、い、今、もう。今」
「今から。ええ、今から」
――香油の水音を立てながらほわほわと微笑むニュクスフォスの気配が優しくて、怖い。
「ふ、あ……っ」
触れられるのは、前ではなくて後ろだった。
さらけ出し、求めてひくつく秘部を濡らされて、じっくりゆっくり、後ろの蕾を愛でられる。
身体に力が入らない。
ゆるゆる、ぐずぐずに蕩けてしまって、どこを触れられても感じてしまう。
ふしだらに色めく声が、抑えられない。
顔を覆って乱れていれば、咎めるように手が退けられる。
「クレイ、隠さないで。貴方の感じてる顔を俺によく見せて」
「……っ」
情欲の気配を濃くのぼらせて、獲物を弄ぶ肉食の獣みたいな眼をしたニュクスフォスがうっとりしている。
さりげなく手に香油を足しながら。
「いいこ、いいこ――偉い、偉い。可愛くて偉い……」
「な、なんだそれ……っ」
「ここも薄紅に濡れていて、とても綺麗ですよ」
「あっ」
気を取られた一瞬で、ニュクスフォスはゆっくりと指を後孔に埋めてくる。
「本日の具合はいかが。診てみましょうね――」
「……っ」
「あったかいですね、俺の指が今ここにいますよ」
クレイはふるふると震えて、おしゃべりに囀るニュクスフォスを黙らせたくなった。
「お、お前、お前――っそれ、あんまりやったら、僕怒る……っ」
「俺は殿下に怒られたいのかもしれません……」
「……! ……!!」
――こいつときたら、悪びれない!
「も、もう――」
「欲しがっていらっしゃる」
「く、ぅ……っ」
指摘通り、ほぐされる中は熱く熟れているようで、積極的に奥へ奥へと指を呑み込もうとするようにひくついていた。
それが、クレイ自身にはどうしようもない。
「う、うう。うぅ……っ」
「悔しがる貴方は最高に可愛らしいですね……こちらは悦んでいらして――やはりマゾ……」
「だ、だまれ、あ、あっ!」
――煽られて、好いところを刺激され、首を反らして悶えてしまう自分が悔しい。
「可愛い俺の殿下を苛めるのは本当に心苦しいのですが……」
ニュクスフォスが何か言っている。
「それで悦ぶなら俺はがんばりましょうッ」
「が、がんばらなくて、よろしいっ……!?」
ぬちゅぬちゅと指が動くたび、身体がびくびくと淫らに反応してしまう。
熱をため込む身体への絶え間ない刺激に、はしたなく腰が悦んでしまう。
陰茎が頭を持ち上げて、快楽にぽたぽたと透明な蜜を溢れさせて泣いている。
つらくてたまらない。
出したくて我慢できない。
「ふっ、ま、前。前、触ってほし――ぅうっ……」
クレイが自分で前を慰めようと手を伸ばせば、両手に光の蔦がしゅるりと絡んで、自由を奪われる。
「ああ、や、やだぁっ、それやだぁ!! お、お願い」
「なんて可愛らしくおねだりなさるんでしょう……本当は心苦しいのですが。本当は心苦しいのですが、いや本当に」
熱っぽく吐息をつないで笑むニュクスフォスの顔が凄艶な色を浮かべている。
ぎらぎらとした瞳には、紛れもない嗜虐心がちら見えしていた。
「前を、前を触って……っ」
後ろへの愛撫が続くと、おかしいくらい取り乱して、指をきゅうきゅうと締めつけてしまう。
涙の溢れる眦に、ついばむようなキスをされる。
ひとりで乱れている自分が恥ずかしい――けれど余裕がないのだ。
「代わりにお好きなところを可愛がってあげましょうね」
「ぁ、ん、やだ、やだ……っ、おかしくなっちゃう、ッあ!!」
こりこりと弱い場所を愛でられる。
その瞬間、鋭い快感が突き抜けて、クレイは背をのけ反らして悲鳴をあげた。
甲高い声が自分のものではないみたい――身体を突き抜ける快感が執拗に繰り返されて、クレイは破廉恥な声をあげつづけた。
「ひっ、ひァっ、ああ、ンぅ、も、やめ、ッ」
「あぁ――可愛い……っ」
たまらない、といった声でニュクスフォスがとろりと息を吐く。
「俺のクレイ。俺の。俺の……俺だけの!」
抑えきれない渇望が情熱的に声を震わせる。
舌なめずりして艶美に微笑み、ニュクスフォスは自身の雄をあらわにした。
雄の色香にあてられて、クレイはくらくらとした。
「あ、あ、そのまま――」
「……このまま? よろしいですか?」
「よ、よ、よい――いい……」
勃ちあがった怒張は脈打っていて雄々しく、欲をそそる。
欲しいという熱がクレイの奥に渦巻いて、たまらなくなる。
「はぁっ、はぁ、は――」
無意識に喉を鳴らしてクレイが手を半端に彷徨わせていると、ニュクスフォスの熱い手がそれを包んで導くように触れさせる。
「俺ですよ、クレイ。クレイ様」
熱を昂らせる男根が、欲望をたぎらせている。
「貴方を悦ばせるのは、俺ですよ――う、……っ」
愛しく摩ると快楽の吐息を零すのが感じられて、ぞくぞくした。
硬く反り返った張りを感じると、これが貰えるのだという期待に心臓が速まり、後ろが震えてしまう。
クレイはうっとりと吐息を濡らした。
「ほ――欲しい」
「ええ、ええ」
「は……はやく」
「参ります」
「きて……っ」
濡れそぼった蕾に押し入る猛りが、大きくて熱い。
待ち焦がれた征服者は、ゆっくりゆっくりと侵略してくる。
その質量に全身の肌が粟立ち、がくがくと震える。
だらしなく開いた口が意味をなさない嬌声をこぼして、抑えられない、閉じられない。
「ぁ……は、あっぁっ……! あつ、おおきぃ……」
「ふ……ッ」
快楽に耐えるような凄艶の表情で睫毛を伏せて、ニュクスフォスが動きを止めて呼吸を寄り添わせている。
「……ふ、ふーっ、ふ……」
呼吸が落ち着くのを待つように、腰骨のあたりが撫でられる。
反り返ったクレイの陰茎がぎちぎちに限界を訴えているのを愛し気に見つめられれば、視線だけで達してしまいそうだった。
「っ、う――動いて、ニュクス……」
ねだるように言えば、潮が引くように浅く引き上げられて、浅瀬に戯れるようにゆっくりと攻められる。
奥が欲しがるようにひくひくと震えて、反り返った前が揺れながらはしたなく涙を滴らせ、濡れている。
「クレイ――クレイ」
呻くように名前を呼ばれ、繰り返されて、身体の芯からこみ上げる何かに吐息が震える。
悦楽の波にさらされ、揺らされて、心も身体も多幸感に蕩けてしまいそう。
ぐちゅぐちゅと淫猥な濡れた音がする。
とろとろに潤む敏感な内壁を擦られて、ぶるぶると身震いして泣いてしまう。
「俺の劣情が貴方の中を犯していますよ」
ハァッと興奮の吐息を紡いで、支配者の顔でそんなことを言われる。
情交の匂いが甘ったるくて、息をするたびに淫欲を煽られて、腰に淫らな熱が溜まるよう。
「っ、……っ」
ニュクスフォスの余裕のなさそうな声がいつもより低く掠れて鼓膜を刺激する。心がときめいて、嬉しくなる。
――僕の中で感じてくれている――……
律動を速めるそれが奥に奥にと押し入って、貫かれる感覚に裏返った余裕のない悲鳴があがる。
「あ、あっ! こわいい!」
裂けちゃう。
壊れちゃう。
おかしくされちゃう!
そんな恐怖と強い官能が脳を揺さぶり、クレイの視界をちかちかと明滅させた。
「あ、あっ、あっ! あ! は、あ、んああぁっ!」
「――クレイ、クレイ……っ」
「ま、って、ひ、だめっ!」
ぐりぐりと奥に押し付けられるようにすれば、眩暈がするような悦楽におかしくなりそうだった。
口の端から唾液を垂らして蕩けた声で啼いてしまうクレイを上気した顔で見下ろして、ニュクスフォスは興奮したように腰を震わせた。
「もっと……いっぱい、気持ちよくさせてあげたい――俺がっ」
滾った熱が奥に穿たれて、クレイの全身がびくびくと跳ねる。
「もっと、もっと――」
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腰が勝手に揺れてしまう――、
「は、はぁ……ん、っきもちい、」
――そうだ。気持ちいい――……、
「ああっ、いっ……んぅ、ッ」
……頭がおかしくなりそうなほど、気持ちいい!
「クレイ、気持ちいいですか」
「うん、うん……っ」
「俺も、気持ちいいですよ……っ」
「ん……!!」
クレイの濡れた瞳が快楽に涙を溢れさせ、きらきら煌めいている。
色づいた唇はだらしなくひらいて、欲情の吐息に濡れた赤い舌を覗かせる。
口の端からは透明な唾液がたらたらとこぼれて、真っ赤に火照ってぐしゃぐしゃの蕩け切った顔は、繋がる雄を大いに煽った。
「ぼ、僕、前を触ってほしぃ、っ」
ひくひくと鈴口が震えて、とめどなく先走りの涎を垂らしている。
濡れそぼる雄蕊がつらい――触れられていないのに、爆ぜてしまいそう。
「こんなにお育ちになられて。触れたらすぐに放ってしまいそうですね」
「は、放ちたいっ……して……」
後ろが荒々しく突き上げられる。
「触れないでも今の貴方なら、イけるのでは」
怖いことを言っている。
とても良いことを思い付いたみたいな顔で、それを決めてしまったというように。
この王様は、皇帝は、笑うではないか。
「う、嘘――」
「頑張ってみましょうか、俺の殿下?」
両手を絡め取られて、縋ることもできない。逃れられない。
「あっ、あ、ああァァっ……!?」
ねっとり、じっくりと攻めたてられる。追い上げられる。
あられもない声を絶叫するようにあげて悦んで、動物になったみたいに欲望一色に染まってしまう。
背がのけぞり、獣めいた嬌声を上擦らせて、おかしいくらい腰を揺らして後ろを締め付けてしまう。
「イけそうですか、クレイ?」
「む、むり――触ってくれなきゃ、僕……あっァッ!?」
クレイの手を放し解放した光の蔦が、代わりとばかりに胸をくすぐって刺激を重ねる。
「ひゃんぅっ!?」
犬のように甲高く泣いて、クレイは唐突に加わった恐ろしい悦楽に悲鳴をあげた。
何かが来る――きてしまう。
「大丈夫ですよ、ちゃんと出せますからね」
「くぁっ……や――ぁ、ぁっ」
右と左と乳輪を交互に撫でて、乳頭をくにくにと押されて、刺激される。
びりびりと快感がそこから奔る。
悶えていると、内部をひときわ強く突き上げられて、全身が総毛立つ。
がつがつと狂おしく後ろから突き上げられて、胸を弄られて、あり得ないほどの官能が同時に襲ってくる。
それが続いて、気持ちよくてたまらない。
拷問のようなおぞましい愉悦に、おかしくなる。
「っ、う゛、や、やらぁっ!」
クレイの股間は滾りきっていて、奥からどんどんと押し付けられた煮えたぎる淫欲の湯圧がもう限界だ。
「で、出る、出させて、触れて、お願い……ッ、おかしくなるッ、あ、あ、ダメ! やぁあ!」
目の奥がチカチカして、視界が認識できない。
ただ、イきたくて仕方ない。
「やっ、や、らぁ、は、っやっ――やらっ、やら゛ぁぁ!」
触れて、お願い、出させて。狂ってしまいそう――、
善がり狂う腰奥にねだるように楔が押し付けられ、ノックされる。
両脚がぶるぶる痙攣して、首と背がのけぞって限界に震える。
ぼたぼたと反り返った陰茎の先が震えながら先走りを溢れさせていて、熱くてつらくて、壊れてしまいそう。
――頭がスパークする。
「アァ!! もう刺激しないでぇッ――ひ、ぎっ……!」
止め処なく襲い来る甘い熱の波が、残酷なまでに容赦なくクレイを追い詰め、追い上げる。
甘やかな波が次から次へと押し寄せ、どうしようもなくなっていく。
地に足もつかず、溺れて、激しい波に浚われて、渦に巻かれて――弾ける。
耳がぺろりと舐め上げられて、傲然と命じられる。
「お出し」
「……!!」
耳の周辺がぞわぞわとなる。
信じられないほどの愉悦が腹の底から暴れ狂って、背筋をぞくぞく駆け上がって、クレイを絶頂に押し上げた。
「ひ、ひ! あ゛……ッ!」
触れられていない陰茎の先端から、勢いよく白蜜の液体が噴きだす――
「あぁあぁぁぁあ――ッ!!」
絶叫しながら、クレイはその頂きに達していた。
「……っ、クレイ……ッ」
絶頂に痙攣する後ろに、自分を支配する雄が興奮に熱く波打つかたちを強く感じる。
貫かれ、熱い液体が迸るのを奥に感じる。
逃さないというように腰を抑えられ、流し込まれる。
「ッ――ひぃ……っ」
中に出されたのだと感じた瞬間に、ありえないほどの高揚と興奮がクレイの心を惑わした。
(あ、あ、中――、中に……っ、なに、この、なに……っ?)
自分が犯されたのだという感覚が強くて、幸せでたまらない。
中に注いでもらったのだ。僕だけに、それがなされたのだ。
僕だけが、この皇帝にそれをしてもらったのだ――
「ぅン……っ」
ニュクスフォスの掠れた吐息が、耳を蕩かすように熱くくすぐる。
気持ちよさそうに唸るような吐息を紡ぎ、精を擦るように腰がちいさく揺らされる。
達したばかりのクレイはそれに過剰なほど動揺して、身悶えした。
「あ、ッ今、だめ、だめぇっ……っ」
暴れる体を抑えるようにして腰を押し付けられる。
奥に意識が集中させてびくんびくんと反応しながら、クレイは顔をくしゃくしゃにして涙をこぼして快楽にすすり泣いた。
「――よくできました……、」
「ひ、ひっ……あぁ……っ」
余韻を逃すようにあやすように前が撫でられると、勢いのない白濁がとろりと手を汚した。
「気持ちよかったですか、クレイ」
ふわふわとした声が体温を寄せて、所有欲をあらわに首筋に痕を刻んでいく。
「……ハァッ、は――」
「よかったですか殿下――足りない? もっと……?」
「っ、よ、よかったっ……よかったです、陛下……っ!?」
必死に応えれば、満足そうに頭が撫でられる。
「貴方の好みに、できましたでしょうか?」
「……」
すっかりマゾだと思われている気がする。
いや、僕は実はマゾなのだろうか……? クレイは自分の性癖を思い、悩ましく眉を寄せた。
「僕はマゾなのだろうか」
「俺が拝見する限り、そうではないかと」
「そ、そう……? そう……なのかなぁ……?」
……幸せな気分で抱かれていると、そんな疑問も少しずつどうでもよくなっていく。
つながったままキスを繰り返すと、身も心もひとつに溶けあっていくようだった。
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