魔女家の公子は暴君に「義兄と恋愛しろ」と命令されています。

浅草ゆうひ

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五章、眠れる火竜と獅子王の剣

97、事故防止薬で事故ってどうするんだ(☆)

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「……で、殿下……っ」

 怖い。
 ロザニイルに目もくれず、扉を施錠したノウファムは、キューイをサイドテーブルに無言で置いて近付いてくる。
 耳飾りにキューイを返して、僕は俯せのまま声を震わせた。

「ひ、避妊のお薬を挿れて貰ったんです、魔術で……奥に届かせないといけなくて……ふぁっ……!?」
「奥に?」
 普段の数倍は獰猛な眼差しが、恐ろしい。
 掛け布を剥ぎ取って夜着越しに僕の尻を撫で上げる手は、ひんやりとしていた。

「ん、ぁ……っ」
 先程の快感に疼いていた身体は、素直に反応を示してしまった。
 ノウファムに性的な刺激を送られて、聖杯器官がきゅうきゅうと悦んで震える。付近に届いた薬の殻が熱で溶けて、中から薬剤が溢れ出すのが感じられた。

「高まっているようだな、エーテル?」 
「あ、あっ、ち、違っ……だ、だめ」
 シーツに押し付けていた陰茎を探るように、ノウファムの手が僕の身体の下に潜り込む。
 触れられた下肢は欲の膨らみをみせていて、先走りに夜着の布を湿らせていた。
 ノウファムは僕のお腹を持ち上げて膝を立たせ、四つん這いの姿勢を取らせて夜着を濡らす染みを濃くするように指先を擦りつけた。

「あ、殿下、ん、ンン……ッ」
 濡れた布越しの刺激が、鈴口のあたりをなぞっている。僕の身体はそれに善がり、じんじんと全身に欲情の熱を巡らせて痙攣した。
「布がびしょびしょだ、エーテル。お前は濡れやすいな。前も、後ろも」
 ノウファムは怖い気配を少し柔らかくして、上から覆いかぶさるように僕に乗っかってきた。
「俺は、ロザニイルを信じて……」
 少年みたいな声色が小さく呟くのが、僕の胸をずきりとさせた。
 背中に体温を感じる。すこし速い胸の鼓動を感じる。うなじに吐息を感じる。熱い。

 先端の部分が擦られて、どんどん染みが広がっていく。
 脈動する欲求を煽られるみたいに、指先が布と一緒になって敏感な部分を擽ってくる。
 
「あ、あ、でちゃ、でちゃう……――」 
「ああ、構わない」 
 動物がするみたいにすりすりと頭がこすりつけられて、首筋に舌が這わせられる。ビクッと敏感に反応を示せば、可愛がるみたいに唇が皮膚を吸い上げて、痕を刻んだ。
 
「エーテルは悪くない……エーテルは悪くない……」
 呪文のように呟きながら、痕が増やされていく。 
 僕は情緒をぐしゃぐしゃにされて、泣きそうになった。

「お、お兄様も、ロ、ロザニイルも、悪くなぃっ……」
 必死に言えば、ノウファムは頷いてくれた。
「ああ――ああ」
   
 夜着が脱がされて性器を直接扱かれると、濡れた音がより鮮明に室内に響いて、液体で滑りのよくなった手がリズミカルに僕を追い上げる。

「あ、あんっ、あ、あ、」 
 追い詰められて、促されて、高められて――もう我慢ができない。
 
「あ、あッ――!!」
 
 眼の端に涙を浮かべて、僕は両手でシャツを余裕なくかき乱し、甘く啼いてノウファムの手の中で呆気なく達してしまった。
 後孔がぱくぱくとひくついて、お腹の奥で薬剤に濡れる器官が甘い欲を渦巻かせて、落ち着かない。

「はぁっ……」
 熱くてぬるりとしたノウファムの舌が震えるうなじを舐め上げて、身体が魔術で清められる。
 身体を弛緩させる僕をもどかしそうに後ろから抱きしめて、ノウファムが鼓膜を震わせた。

「最初の世界の俺は、お前が俺のものでなくてもよかったんだ」
 そう言って僕を放し、ベッドに座るノウファムは軽く頭を押さえている。
「なのに、今は……」
 それが罪であるかのように、切なく呟くではないか。

 掠れる声に、僕はふわふわとした。
 もしかして、これ。
 もしかして、この人。
 
「し――嫉妬してくださったんですか……?」
 ドキドキと問えば、ノウファムの眉がきゅっと寄せられる。その脚の間で彼自身の陰茎が昂りの兆しを見せているのに気づいて、僕は堪らない気分になった。


 ロザニイル、ごめん。
 ロザニイル、本当にごめん!


 ――僕、今すごく嬉しくなっちゃってる……っ!


 僕は脳内でロザニイルに詫びつつ、ノウファムに抱き着いた。
 
「ノウファム様……ぼ、僕が、……してさしあげます」
「……お前が?」
 
 明日、ロザニイルと話そう。
 そう思いつつ、僕はノウファムの夜着に手をかけて、いそいそと脱がせた。
 
 露わになった陰茎は、雄の匂いがする。
 強い生命力を感じる。良い匂いだ。
 嗅いでいるだけで、僕の興奮を煽る匂いだ。
 
 耳に自分の鼓動が煩いほど聞こえる。
 すごく、ドキドキする。触っていいんだ。僕が育てるんだ。僕が気持ちよくさせるんだ――手を伸ばして撫でると、ノウファムが気持ちよさそうに吐息を零して、僕は頭が爆発しそうなほど興奮した。
 
「き、もち、いいですか……お兄様……」
「はぁっ……あぁ……気持ちいい」 

 ――うわあぁぁぁっ!
 艶っぽい吐息と表情に、僕の頭がくらくらする。刺激が強い。すごい!
 
「気持ちよくなって……もっとお兄様、気持ちよくなって……」
 自分を慰めるときを思い出しながら、僕は両手で一生懸命愛しい欲望を育てた。
 芯を持ち、どんどん硬くなる陰茎は、逞しくて羨ましくなる。
 脈打ち震える熱は愛しくて、僕をうずうずさせるのだ。
 
 ああ、欲しい。
 ――理性が溶けていく。

 籠った吐息が、熱い。
「僕にこれを――」
 声が震える。欲望が我慢できない。
「――ください、殿下。お願い……っ」
 

 僕の身体が、求めている。
 下半身が熱くて、疼いて、仕方ない。
 

「ああ……エーテル……!」
 ノウファムの鋭い隻眼に、飢えた肉食獣みたいな欲が剥きだしになっている。
 それを見て、僕は自分から股を開いてしまっていた。
 はしたない――そんな羞恥心が一拍遅れて湧いて、けれど時間は戻らない。

 後ろは、すっかり待ち詫びて蕩けている。
 けれど、ノウファムはもどかしいほど丹念に指でそこをほぐして、僕を焦らしてから挿入した。
  
「んっ、ふ、ふっ……」 
 尻肉を広げるようにして、後孔に陰茎がぬぷりと挿入される。

「んっ、おおきぃ……っ」
「辛くは、ないか?」
「ん、ん……っ、へい、き」
  
 圧迫感や苦しさがないわけではないけれど、それよりも圧倒的に嬉しくて、幸せな感覚が勝っている。
 中に進まれる感覚は甘美で、僕は全身に鳥肌をたてながら幸福感に酩酊した。

 ――これが欲しかったんだ。
 僕、今満たしてもらっているんだ。

 そんな喜びで、胸がいっぱいになる。
 
「中がうねって、絡みついてくるみたいだ」
「は、恥ずかし、ぃ、言わないで……っ、ぁ、あ……っ」 

 きゅうっと中を締めてしまうと、ノウファムが苦しそうな吐息を紡いだ。
「クッ……」
 感じている色っぽい声が耳を濡らして、僕の興奮が高まる。
「あ……、あっ……」
 腰を揺らして善がると、獣みたいに腰を使われて、抽挿に内壁が擦られてしまう。

 甘く痺れる感覚が、ビリビリと迸る。
 それが、止まらない。ずっと齎されて、どんどん僕を高めていく。
 僕だけじゃなくて、ノウファムも高まっていくのが感じられるのが、嬉しくて堪らない――気持ちいい。すごく、幸せだ。
 
「いい……ぃい……っ」
 うっとりとノウファムを感じていると、愛し気に髪が撫でられる。
「エーテル……エーテル……」
「ふぁっ……あぁ……と、とけちゃいそう……っ」
 名前を呼ばれるたびに幸福な感覚が降ってきて、僕のお腹がきゅんきゅんしてしまう。

「ぼ、僕、好き……あぁ……、好き……あ、あっ!」
 少しずつ中を拓いて、やがて猛る剛直が深部に至ると、ブワッと強すぎる快感が奔って、全身が痺れるように官能の波にさらわれた。
「んぁあっ! ぁあっ、ああ、あぁ!!」

「我を忘れて乱暴にしてしまいそうになる……っ」
 必死に堪えるように言って、ノウファムは僕のお腹に手を滑らせた。
「エーテル。ここに届いているんだ。感じるか?」
「あ、う、うん……っ、ん……っ」
 労わるように優しく撫でられると、中がぐずぐずに蕩けてしまいそうだった。
 
「可愛い声……気持ちがいいって声だな、エーテル」
 ノウファムが熱く囁いて、僕の腰をグッと掴んで引き寄せる。
「ん、きもちぃ、ぃ……っ!」
 ぐちゅぐちゅと大きな水音を奏でながらピストンを繰り返されて、腰がぶるぶると震えて、動きに連動するみたいに身悶えして泣いてしまう。
「っ、く、ぅんっ……! あっ、ああっ……」
 
 僕があられもなく声をあげる中、ノウファムは大きく腰をグラインドして更なる快感の波をたて、律動を速めた。
 僕の中は精を欲しがるみたいにひくついて、ぐずぐずに蕩けている。
 敏感な部分をぐちぐちとノックされて、全体を大きく擦るようにずぱんっ、と抜き差しされると、おかしくなってしまいそうなほど快楽が続いて、怖くなる。
 
「あ、ふぁ、あ! こわ、ぃ!」
「……っ、こわくない……こわくない……」
 
 あやすような声が優しくて、僕はカクカクと必死になって頷いた。 
 
 頷く間も、上擦る甲高い声が都度、口から溢れて止まらない。
 腰を掴んで叩きつけるみたいに突き上げられると、ブワブワッと快感が吹きあがった。
 あまりの快感に、口がだらしなく開いたままになって唾液を零してしまう。
 
「あッあッああぁッ! あッあぁッ!」
  
 太くて硬くて、今にも爆ぜそうな亀頭が、ぐ、ぐ、と奥を抉る。ビリビリと強い快感が脊椎を奔って、僕は達してしまいそうになった。
 野生の獣みたいな、孕ませようとする動きに僕の肚が期待して、疼いて、悶えて。気がおかしくなりそうだ。

「エーテル、エーテル……ッ」
 
 激しく求めるノウファムの声に、限界が近いのが感じられて、僕の中が悦んだ。
 繋がる部分が蕩けそうで、境界がわからなくなる。
 甘ったるい発情した声が、濡れた声が、自分ではないみたいに聞こえる。
 
「あっ、あっ、もぅっ、ぐちゃぐちゃになるぅっ……」 

 気持ちいい。
 気持ちいい。
 もう、呼吸の仕方もわからなくなっちゃった――、

 余裕のないノウファムの声が鼓膜をじんと震わせる。
「っ、……出る……ッ」 
 
 ひときわ激しく突き上げられて、中で剛直がドクドク脈打つのが感じられる。
 熱い。
 熱い。
 ああ、中が満たされる――同時に、僕も射精に達していた。
 
「――ああああぁっ!!」
 脳裏で快感がバチッと爆ぜる。
 凄まじい開放感――見開いた視界で、ちかちかと星が弾ける。

 どぷどぷと精液が身体の中に出されている感覚が、甘くて熱くて、蕩けてしまう。

「……ハァッ……」
  
 びゅくびゅくと甘イキしながら、僕ははぁはぁと息を乱して微笑んだ。

「いっぱい、で……たぁ……っ」

 いっぱい。いっぱいだ。
 僕の語彙力が死んでいる。もう、だめだ。

「ぼ、僕の中、貴方でいっぱい……」

 幸せに呟けば、ノウファムは宝物を扱うように僕を撫でて、汗で張り付いた髪を優しく梳いて、うなじに甘噛みしてからキスをしてくれた。
 
 
「愛してる……」
 夢のような響きが、脳を甘く痺れさせる。
 
  
 倦怠感がふわふわと全身を弛緩させてくる。

「僕――僕も……」 

 僕はくったりとベッドに身を沈めながら、とろとろに蕩けた顔で微睡みに誘われていった。
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