魔女家の公子は暴君に「義兄と恋愛しろ」と命令されています。

浅草ゆうひ

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二章、未熟な聖杯と終末の予言

30、「お前は本当にちいさくなったな」(軽☆)

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「終末の預言を知っているな、エーテル」
 ノウファムが真剣な顔で僕を見つめる。

「はい、殿下――」
 実は僕もそれっぽい夢をみました、貴方が出てきました、と言ったらどんな顔をするだろう。
 言ってみたいという誘惑を振り切り、僕は大人しく相槌を打った。
 
「この遺跡は、ひとつの原因といえる」
「そうなのですか」

 僕はちょっと驚いた。
 ノウファムは、終末の原因を知っているのか。
 それ、他の人に教えてあげたほうがいいんじゃないだろうか。すごく大事なことだと思うのだけど。

「殿下は皆が知りたくて仕方ない貴重な情報をお持ちなのですね。他の方に共有はなさっていますか」 
「こほん、あー、ともかく」
 
 あっ、誤魔化した。
 僕は半眼になった。
 
「た、大切な事ですよ殿下。世界が危機だというのに……」
「それは聞き飽きた」
「えっ」
「あ、いや。なんでもない」

 ノウファムは取り繕うように咳払いをして、僕の手を取った。
 指先をやんわりと撫でられると、何故だか胸の奥がドキドキした。

「皆を解放する。終末を遠ざける。その二つの目的のために、俺たちはこの部屋の仕掛けギミックをクリアしなければならない」

 切実な目がじっと僕を見つめる。
 何を言わんとしているか理解して、僕の頬がふわふわと紅潮した。

「き、キスをするんですね」
「……」

 その微妙な沈黙はちょっと怖いぞ。

「……するんですか」
「そうだな……構わないか?」
「……ど、どうぞ」

 ――初めてでもないのだし。

 ちょっと緊張はするけれど――僕はそわそわとした。
 
 ノウファムが立ち上がる。
 背が高い。見上げる高さで、かがんだ顔が近くなる。

「お前は本当にちいさくなったな」

 子供時代の身長差と比べているんだろうか?
 ――ノウファムが大きくなったんだ。
 僕はコンプレックスを刺激され、眉を寄せた。

「ああ、……気にしていたか。悪い」
 詫びる吐息が唇にかかる。
 柔らかな接触のあと、確認するように唇が舐められて、僕は背筋を震わせた。

「ンぅ……」
 
 むず痒さみたいなものに耐えかねて唇を薄くひらくと、そこから舌が挿しこまれた。
 内側に相手を感じると、一気に身体が熱を上げる。

 腰を引き寄せるみたいに手が後ろにまわされて、体が密着する。
 ぞくりと首の後ろが甘く痺れて、心拍数が上昇する。
 
「ふ……、ぅ……」

 ノウファムの舌が、熱い。
 敏感な粘膜からその熱さを伝えて、あやしげな動きでこちらの熱を甘く掻き立てるみたいだ。
 
 口腔を蹂躙されながら皮膚の上からゆったりと甘い痺れを与えて内部の熱を誘導するみたいに腰がさすられると、腿の内側がじんじんとしてくる。
 息が乱れて、頭がくらくらする。

 ぴちゃり、くちゅりと唾液の奏でる音がして、口の端から溢れて零れる感覚が――いやらしい気分をどうしようもなく高めていく。
 
「は……っ」

 口が離れて、二人の間に垂れた透明な唾液の架け橋が重力に引かれるまま形を崩して垂れていく。
 
 視線をちらっと祭壇に向ける――ああ、変化がない。
 ……そんな気がしていた。僕、そんな気がしてた!

「んっ……ふ、ぁ……っ」
 ノウファムが体勢を変えて、僕の背中側にまわる。
 そして、明確な意思をもった手がお腹から下へと降りて……止まった。

「以前、俺がここに来た時は……」
「い、今、語るんですか……」

 僕は力なく呟いた。
 片手で諦めたように自らベルトを外し、スラックスを下にずらした。

「ち、ちなみに……ど……どこまで……? 僕、先日された以上の経験がありませんが……」
 
 僕はふるふると声を震わせた。
 
「像が手に持つ器を視た感じ、そして聖杯の性質を鑑みるに……つまり、えー……、せ、精……」

「お前は察しがいいな」
 ノウファムが後ろから顔を寄せて、頬にキスをする。

「以前、俺がここに来た時は、精液を注ぐのではないかと考察した者がいた」

 ――ああ、やっぱりそういう。

 僕は像と器と、露出しかけた自分の雄の証ペニスを視た。

 
 そして思った。
「この遺跡の仕掛けをつくった奴は、ド変態だ」

 怒気をこめて呟けば、ノウファムが肩を揺らす振動が背中側から伝わった。
「俺もそう思う」
 返ってきた声には、共感の感情が深く籠められていた。
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