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~絶対の主神と科学と魔術~
13伝
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目を覚ますと、そこは暗闇だった。
「こっちだ。」
紳士の声を認知すると手を引かれた。
重たい鉄の扉が開いた音と同時にまぶしい光を認知する。
その先は、真っ赤な実験室だった。
「こ、ここは?」
「ラウンドリット黒魔術実験場。通称『白いユウガオ』。その最深部 『劣等人類 』」
天井に張り付いていた一つの淡いLED電球が、冷たいコンクリートの箱の中を細々と照らす。
目の前のは黒い鉄格子。中には誰も無く、無の空間がそこにはあった。
その光の粒子が反射し、壁にびっしりついた鉄臭い赤黒いざらざらした個体を俺の目にまざまざと見せつける。
「ここで、どんな実験を?」
「錬金術。科学と魔術の境目に存在している学問。だからここに来た。」
紳士は鉄格子の先を悲しそうに見て答えた。
「え、でも錬金術って金を錬成するための学問ですよね。」
「いや、それはもう西暦2000年に確立されている。もっと言うのであれば、西暦1947年、湯川秀樹が原理上の可能を証明している。」
「じゃあ、この赤黒いものは…」
「錬金術はそれだけじゃぁない。人体錬成。試験ガラスの中の最凶を生成することを目標とした学問へと発展した。」
「ホムンクルス?」
「まぁ、最初は人の生成だけで終わってたんだがな。徐々に最強の人類を生成し、政治や戦争に使用しようという考えに至った。」
『だが、失敗した。
細胞分裂による不老不死の生成。がん細胞の応用。神経伝達の高速化。心理干渉。強制転生。毒の適応。ヘモグロビンの基礎構成物質を鉄じゃ無くてマグネシウムにする。抗体の全種適応。声帯模範。生体模範。生態模範。完全記憶能力。全知全能。時間旅行。
全てに失敗した。
細胞暴走による免疫細胞の攻撃により懐死。がん細胞の増殖によるエネルギー不足で餓死。高電圧に耐えられず感電死。干渉による精神的攻撃を逆に受け、発狂死。テレポーテーション原理のブラックホールの特異円を透化出来ず変死。名前の無い怪物により毒死。血液透析の不能により病死。呼吸器不全により窒息死。生体死。生態死。脳の電子回路の暴走により精神異常死。未来を知ることによる世界平均化による運命死。時間を旅行することによる親殺しの矛盾によって暗殺され出血死。
失敗した。
失敗して死んだ。
何回も死んだ。
痛みが蓄積さえ、摩耗し、浪費し、麻痺した。
能力をインプットされるごとに必ず。
不死身だ。不死身故に、意識の消失は時間の消失を意味する。』
声が聞こえた。
何も無いはずの牢屋から。
何も無いはずの空間から。
何かがいた。
「すまんな。人じゃないな。もう不死身とか言う時点で人じゃないな。」
俺は紳士の顔を見た。
そこに紳士は居ず、黒い鉄格子の扉が開いていた。
「君の試練はホムンクルスの殺害。過去であり今の私の成れの果て。史上最強の人間。この消失こそが、この戦争を終わらせることになる。」
上から、紳士の声が聞こえ、人ならざる物は舌を出し狂気的に笑っていた。
「こっちだ。」
紳士の声を認知すると手を引かれた。
重たい鉄の扉が開いた音と同時にまぶしい光を認知する。
その先は、真っ赤な実験室だった。
「こ、ここは?」
「ラウンドリット黒魔術実験場。通称『白いユウガオ』。その最深部 『劣等人類 』」
天井に張り付いていた一つの淡いLED電球が、冷たいコンクリートの箱の中を細々と照らす。
目の前のは黒い鉄格子。中には誰も無く、無の空間がそこにはあった。
その光の粒子が反射し、壁にびっしりついた鉄臭い赤黒いざらざらした個体を俺の目にまざまざと見せつける。
「ここで、どんな実験を?」
「錬金術。科学と魔術の境目に存在している学問。だからここに来た。」
紳士は鉄格子の先を悲しそうに見て答えた。
「え、でも錬金術って金を錬成するための学問ですよね。」
「いや、それはもう西暦2000年に確立されている。もっと言うのであれば、西暦1947年、湯川秀樹が原理上の可能を証明している。」
「じゃあ、この赤黒いものは…」
「錬金術はそれだけじゃぁない。人体錬成。試験ガラスの中の最凶を生成することを目標とした学問へと発展した。」
「ホムンクルス?」
「まぁ、最初は人の生成だけで終わってたんだがな。徐々に最強の人類を生成し、政治や戦争に使用しようという考えに至った。」
『だが、失敗した。
細胞分裂による不老不死の生成。がん細胞の応用。神経伝達の高速化。心理干渉。強制転生。毒の適応。ヘモグロビンの基礎構成物質を鉄じゃ無くてマグネシウムにする。抗体の全種適応。声帯模範。生体模範。生態模範。完全記憶能力。全知全能。時間旅行。
全てに失敗した。
細胞暴走による免疫細胞の攻撃により懐死。がん細胞の増殖によるエネルギー不足で餓死。高電圧に耐えられず感電死。干渉による精神的攻撃を逆に受け、発狂死。テレポーテーション原理のブラックホールの特異円を透化出来ず変死。名前の無い怪物により毒死。血液透析の不能により病死。呼吸器不全により窒息死。生体死。生態死。脳の電子回路の暴走により精神異常死。未来を知ることによる世界平均化による運命死。時間を旅行することによる親殺しの矛盾によって暗殺され出血死。
失敗した。
失敗して死んだ。
何回も死んだ。
痛みが蓄積さえ、摩耗し、浪費し、麻痺した。
能力をインプットされるごとに必ず。
不死身だ。不死身故に、意識の消失は時間の消失を意味する。』
声が聞こえた。
何も無いはずの牢屋から。
何も無いはずの空間から。
何かがいた。
「すまんな。人じゃないな。もう不死身とか言う時点で人じゃないな。」
俺は紳士の顔を見た。
そこに紳士は居ず、黒い鉄格子の扉が開いていた。
「君の試練はホムンクルスの殺害。過去であり今の私の成れの果て。史上最強の人間。この消失こそが、この戦争を終わらせることになる。」
上から、紳士の声が聞こえ、人ならざる物は舌を出し狂気的に笑っていた。
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