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神体複製

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59章

神という存在は存在していない。
それは何故か。
理由は神天使が神と似たような立場にあり、存在しているからだ。
神は1人しか存在できない。
そのためこの世界に神は生まれることなく現在に至る。
しかし創神の固有能力「1」は存在しないはずの神を生み出す。
この世界のルールを捻じ曲げて書き換える。
そんなことができる神を。
創神という名にふさわしい力だ。

右腕を異形の形に変化させ、ちぎった腕を変化させた赤い剣を持った創神が腕の調子を確かめるように腕を回す。
「これを使うのは初めてだ」
創神はそう言う。
存在が生まれてからこの固有能力は持っていたが使用できなかった。
それは創神になっていなかったから。
創神という存在は奏臣真子とメイクという2つの人格が合わさって存在できるもの。
創神になれなかったから能力も使えなかった。
しかし今はもう創神として存在できている。
それだけで世界のルールが崩れている証拠だ。
彼女は剣を構える。
それだけ行った。
瞬間、天川の首が飛んだ。
天川は「零」で再生する。
天川は何が起きたかは理解できていない。
神の力はイメージの力。
思いつくだけでそれを現実世界に引っ張ってくることができる。
天川の首を自分の剣が斬ることをイメージすればそれが現実に起きる。
どんな事象でもイメージするだけで発生させる能力。
それが神の力。
「何が起きたんだ?」
天川は自分の首を確かめながら創神に聞く。
創神はそれを聞いてまたイメージする。
今度は天川が自分の能力について理解することをイメージした。
すると天川が頭を手で抑えて悶絶する。
そして言う。
「そんなんチートだろ…」と。
「まぁチートという認識で間違ってないかもね。この世界というゲームのシステムを改造して普通ならあり得ない事象を引き起こしているから、本質的な意味で言えばチートだ」
と創神は言う。
突然睨んだ天川が零の神間移動によって創神の背後を取った。
そして彼女の肩に触れる。
これは0b11を使用するためだ。
奇跡を抑制してしまえばこんな能力使えなくなる。
そう考えたのだが。
「無駄だよ。これは奇跡とかそんなものじゃない。神という存在の特権だから奇跡を抑制したところで使えなくなるわけじゃない」
と創神に言われ絶望の顔をあらわにする。
すると勝手に創神の肩から腕が外れ、後方に飛ばされる。
これもイメージだ。
「対策なんかできるわけないか…」
天川は呟く。
そもそもの階級が違った。
天使と神は文字通り次元が違う。能力が干渉することすら出来ない。
それを悟った。
その証拠に創神の抑制されていた奇跡が元に戻っていた。
0b11が無効化された今正攻法で戦うしかない。
だが正攻法じゃ勝てることはない。
積みだ。
「そろそろいいかな」
創神が言う。
天川は諦め、武器を捨てる。
「あぁ良いぜ。一思いに殺してくれよ」
と言った。
が創神からは想像と違う答えが帰ってきた。
「いやお前には私の部下になってもらうからな。拒否権はない」
あっけにとられる天川を放ってイメージする。
天川が絶対的な忠誠心で創神に仕えることを。

「はぁぁぁぁぁぁ面白くない面白くない」
天上で神天使が玉座に座って駄々をこねる。
黒山は櫻木に開放されちゃうし、天川は私より強力な支配で寝返っちゃうし。
部下がいなくなっちゃった。
今3箇所で行われている戦いぐらいしか面白いものがない。
でも早く殺してくれなくてじれったいな。
「私が直々に行くことも考えなくちゃか」
私としてはそれは控えたい。
だって私が出たら一瞬で片付いちゃうからね。
それは面白くない。
あくまで私は面白さしか求めていない。
最終的に行き着く目標はこの世の消滅。
その過程をどこまで面白くできるか。
それが重要なんだ。
「あの子の神の覚醒はまだ許容範囲内。だけど部下がなぁ」
結果は変わらないがおもろさが欠けてきた。
ここからどう巻き返すか。
「それはそれで考えるの面白いかもね♡」

カカカカと金属がぶつかり合う音がする。
そして戦いを繰り広げる2人の姿。
迎者と牙忍だ。
お互いに一歩も譲らず、お互いに同じ急所を狙って攻撃しあっている。
そのせいで武器がぶつかるばかりで直接ダメージは与えられてない。
しかし牙忍の方が武器を振るう威力が大きく、武器がぶつかるたびに迎者のサーベルが嫌な音を立てている。
そのうちバキンと折れてしまいそうだ。
が「武器を変えてる暇もないんだよねっと!」
一秒手を止めればその間に100回は攻撃を叩き込まれる。片手でしのげる数じゃない。
攻め続けなければ守れない。
攻めることによって相手の武器の1つを防御に回させることができる。
今はギリギリそれでしのいでいるため、武器が壊れそうでも守りに入るわけにはいかない。
だが勝機はある。
仕込んではいるがまだ効果が見られない。
効果が現れるまで戦い続けるしかない。
すると
ピシ。
と迎者のサーベルからそんな音が聞こえた。
多分右手のサーベルにヒビが入った。
それであと耐えられるのはどれくらいかだいたい予想がつく。
あと10秒。
たったそれだけだ。
10秒ラッシュを耐えたらこのサーベルは壊れる。
そうすればがら空きになった右側に攻撃が叩き込まれそのまま死ぬ。
命のタイムリミットだ。
頼む発動してくれ!
心の中でそう叫ぶ。
迎者の顔がどんどん険しくなっていく。
あと9秒。
ピシピシと音が多くなる。
あと8秒。
今度は左手のサーベルにもヒビが入った。
そしてよく見て見ると牙忍が迎者から奪ったサーベルもヒビが入り始めていた。
あと7秒。
しのぎきれなくなり切り傷が体に増えていく。
あと6秒。
心臓の鼓動が早くなっているのを感じる。
少し焦り始めた。
あと5秒。
ヒビが入った箇所からカキンと細かい破片が飛んでいった。
あと4秒。
まだ衰えない牙忍の攻撃。
無意識的に迎者は防御に回ってきている。
あと3秒。
もうダメかと思い始めた。
あと2秒。
だがまだ諦めない。
最期まで。
あと1秒。
サーベルが変な方向に曲がり、原型から離れる。
左手のサーベルから飛んだ破片によって迎者の頬に傷が出来る。
そして。
パキン
右手のサーベルがついに壊れた。
しかも刃の部分が粉々に壊れ、牙忍の攻撃を防げなくなる。
がら空きになった右側に牙忍の攻撃が飛ぶ。

倒れている人の数は数え切れない。
しかしその全員はスタンガンによって動きを止められているだけで怪我は一切していない。
その倒れている人の真ん中に追人は立つ。
スタンガンを持って。
「はぁ…はぁ…これで全員だね」
息を切らして彼は言う。
ゾンビのように襲ってくる一般人を傷つけないように攻撃を避けながらスタンガンを打ち込む。
その作業を全員分したのだ。疲れないわけがない。
あとは人爽だけ。
追人が奥にいる人爽を見る。
すると人爽は足で地面を蹴った。
何をしているかと思ったがそれはすぐにわかる。
蹴った地面に魔法陣が現れたからだ。
そしてその魔法陣は追人の足元にも。
「何だこれ」
追人は疑問の声を上げる。
しかしもう一度人爽が地面を蹴ると追人の方の魔法陣はパッと消えた。
「一体何をしたんだ」
追人が人爽に向かって言う。
人爽は答えない。
突然、魔法陣が紫に怪しく光る。
そしてそこから人型の何かが召喚されている。
頭が出てきた。
追人はそれでもう何が出てきているかわかった。
自分自身が一番知っているものだからだ。
「ありえない」
思わずそう呟いてしまうほどにありえない。
それは
召喚されたのが追人自身だったからだ。
驚くほどに瓜二つの顔。変わらない背丈。何もかもが同じだった。
そしてそいつは完全に召喚された。
追人もどきは顔を上げて周りをきょろきょろ見渡す。
もどきは追人を見つけると指を指してこう言った。
「僕はお前でお前は僕だ」
これがどういう能力かわからない。
だけどこれだけはわかる。
こいつはやばいと。
それをこの言葉だけで悟った。
そう思うと動くまでは早かった。
本を開いてこのもどきに能力を使用する。
これが能力によって作られたものなら消滅するはず。
本から溢れてきた白い霧がもどきを包む。
しかし霧が晴れてももどきは消えなかった。
「これは…!?」
追人が驚愕する。
その様子の追人にもどきは言う。
「お前の能力じゃ僕は消えないよ。僕はお前なんだから」
そう言ったもどきは追人の直ぐ側まで近づいていた。
とっさに追人は後ろにステップし、しおりを掴んでコピーした能力を使う。
変換。
足元のコンクリの形を強引に変換し、引き抜く。
そして引き抜いたコンクリをもどきに向かって飛ばす。
絶対に当たる。
しかしもどきは驚く行動をした。
懐から物を取り出した。
それは本だった。
本を開いてページをなぞる。
するともどきへ向かっていったコンクリートは何事もなかったかのように元の場所に戻った。
「これは僕の能力!?何故お前が!」
追人は叫んだ。
それにもどきはまた答える。
「僕はお前だ。僕の能力が使えないはずない」
と。
ここで追人は悟った。
こいつは自分と全く同じ存在であり、そのままの自分であることを。
そっくりさんでもなんでもない。
自分だ。
「さてどっちが本物か決めよう」
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