子守を引き受けただけなのに、その保護者から不審者扱いされています

四葉るり猫

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急な帰城

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「ええ?ダリルさん?」
「ダリルさん、どうしたんですか?」

 自分よりも少し年上の黒髪の青年の姿に、二人は驚きの声を上げた。ルイの護衛役のダリルは、今日はルイや辺境伯と一緒に出掛けていたからだ。彼は二十歳を少し過ぎたくらいの青緑色の瞳を持つ好青年で、エリーや理緒とは年が近い事もあって割と親しく会話する仲だった。いつも笑顔で人懐っこい性格だが、今日は珍しく表情がさえなかった。

「あ~リオ…すまないが、直ぐに玄関ホールに行ってくれないか。ルイ様が戻ってきたんだ」
「え?」
「は?」

 母親に会いに行って数日は戻らないと聞いていただけに、理緒もエリーも驚きを隠せなかった。出ていったのはほんの数刻前で、あれからさほども時間は経っていない。母親のいる屋敷の場所は知らないが、馬車で半刻ほどと聞く。これではほぼとんぼ返りではないだろうか…

「戻ってきたって…出て行ったばっかりじゃ…」

 さすがの理緒も想定外の事に驚きを隠せなかった。だって久しぶりの実の母親との面会なのだ。これが帰りたくないと言って駄々をこねたと言うのなら分かるし、天気が悪くて中止ならまだしも、今日は文句なしの晴天だ。帰ってくる理由がわからなかった…

「それが…まぁ、色々あって…とにかくルイ様がリオを呼んでるからすぐ来てくれ」

 さすがに雇い主が呼んでいるとあれば、否やと言える筈もない。理緒は渋々ながらもダリルの後を追って屋敷に向かった。



 食べかけだったお昼ご飯に未練を残しながらも理緒が玄関ホールに行くと、そこには出かけたはずの辺境伯とその腕に抱かれたルイ、マシューやメイド頭のネリー、その他使用人や護衛が集まっていた。ルイは辺境伯に抱っこされたまま大泣きししていた。今朝は母親に会えると機嫌よく出かけたと言うのに、この状況の理由が理緒には全く理解出来なかった。

「ああ、リオ!」

 リオに気が付いたマシューがリオの名を呼ぶと、みんなの視線が一斉に自分の方に向いた。注目を集めて居心地の悪さを感じながらもリオが近づくと、理緒に気付いたルイが、リオ!リオ!と呼んで辺境伯の腕の中で暴れ出した。慌てた辺境伯が落とさないようにとルイを下ろすと、ルイはダッシュして理緒に抱き付いてきた。

「リオォ!」

 その姿を視界に入れて理緒が身をかがめてルイを迎えると、ルイは理緒の予想通りに理緒に抱き付いてきた。真っ赤な顔の様子から、随分泣いたのだろう。最近は落ち着いていて、こんな風に泣くのは久しぶりだった。理緒は何が起きたのかと気になったが、まずはルイを落ち着かせようと抱き上げて背中をトントンと叩いてやった。

「え~っと…この状況はいったい…」

 さすがにどういう事かと思い、理緒は近くにいたマシューに尋ねると、マシューも同じ事を思ったのだろう、辺境伯の方に視線を移したため、理緒もそれに倣った。辺境伯は相変わらずの美男子っぷりだが、今はそれどころではない。ルイが泣いた理由を聞いて落ち着かせてやりたかった。

「旦那様、何があったのでしょう?」

 人々の視線が辺境伯に集まる中、メイド頭のネリーが表情を一ミリも変えずに主に尋ねた。こういう時の空気の読めなさというか、果敢な態度は天晴とも言えるだろう。
 もっとも、この屋敷では彼女に勝てる者はおらず、それは辺境伯も例外ではなかった。彼女は役職上も、急な予定変更に対しての修正をかけねばならない立場にある。数泊する予定で出かけていった領主とその子のための食事等の世話を、早急に手配しなければいけないのだ。

「それが…」

 苦虫を噛み潰したような表情の辺境伯だったが、これまでにあった事を渋々ながらも話し始めた。

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