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おかえり。
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アイーリは夕食の準備をしている。
正直腰に手を当ててカマドの前で仁王立ちしていて怖い。
「ラークは盗みをした事、後悔してる?」
「……してねぇ。
悪い事をしたとは思ってるが…あん時はそれしか思い浮かばなかった。」
ラークは思い吹けるようにテーブルを見つめていた。
「僕…ずっと謝りたかったんだよね。
…いつも、何も出来なかったからさ。」
だから、次は僕の番。
ラークと言うのは、実は人情深い奴なのだ。
最近で言えば、まだまだ自分も十分ではない食生活と言うのに朝早く、木の実をとって孤児院の前に置いてくる…そんな奴なのだ。
そんな人情深くもあり、不器用な奴なのだ。
1人では余りにも無謀過ぎるし、細かい事は僕に任せてくれればいい。
「気にすんな。」
そんな苦笑い混じりの言葉で、その話題は終わりを告げた。
____________
「さぁ、やるわよ。」
腕まくりをして鍋と見つめ合う。
私はこの世界に来て、いよいよ料理をするのだ。
ウィンスが買ってきてくれたモーイと言うじゃがいもらしき物に、赤ねぎと言う玉ねぎ。
それにいつものパン。
『何を作ろうかなぁ…』
頬に手を当てて考え込む。
ピアンとキャメルまだ手芸用品を選んでおり、ウィンスは一足先に帰って来たらしい。
ラークが冒険者になると言われた時は驚いたが、そんな予感はしていた。
ウィンスまでとは更に驚いたが。
「そうとなれば、もりもり食べて貰わなくちゃね」
彼等は年齢に似つかわしくなく、小さ過ぎ、細すぎるのだ。
まずは栄養をとって貰わなければ。
少し考えてみてもメニューは思いつかなかった。
異世界の材料と言う事で不安もあり、とりあえずはモーイだけを煮た。
煮た後は皮がするする剥けるそれを1口つまみ食い。
「…うん、じゃがいもだ。」
しかし材料はあっても調味料はないのは困りものだ。
赤ネギを切ってかじればほのかに甘みがあり、みじん切りにしたそれを潰したモーイに混ぜた。
パサついたパンもあるのだし、コロッケでも作りたいところだが油は買ってきていないので今回は素材の味しかしないポテトサラダで我慢して貰おう。
簡単に切っただけの赤ネギと自家製トマトのサラダとポテトサラダにパンが本日の夕食だ。
「た、ただいまー」
お皿を並べている最中に、ピアンとキャメルは帰宅した。
戸をほんの少し開けておどおどと中を覗き込むピアンとキャメルに私達3人は笑みがこぼれて夕食はとても暖かいものとなった。
「ん。買ってきた。」
夕食を食べ終えればキャメルが買い物カゴを抱えて中身を見せる。
中にはいくつかの毛糸と糸に、布が入っていた。
「ありがとう。次の露店に向けてまた頑張ろうね。」
「次はもっと売れるの作る。」
そう告げればキャメルはテーブルの所定の位置に戻り、早速毛糸を編み始めた。
今日の課題を生かしてどうしようかとキャメルのくせっ毛を見ては、この世界にクシはないのか、とか季節に似つかわしくなく麦わら帽子は?
と考えては纏まらず、ヘアバンドを作り上げて尚も突き刺さる視線を気にしたキャメルに、何?と言われるまでそれは続いた。
少しでも稼げる物を。
私の中にじわじわと、焦りがあった。
正直腰に手を当ててカマドの前で仁王立ちしていて怖い。
「ラークは盗みをした事、後悔してる?」
「……してねぇ。
悪い事をしたとは思ってるが…あん時はそれしか思い浮かばなかった。」
ラークは思い吹けるようにテーブルを見つめていた。
「僕…ずっと謝りたかったんだよね。
…いつも、何も出来なかったからさ。」
だから、次は僕の番。
ラークと言うのは、実は人情深い奴なのだ。
最近で言えば、まだまだ自分も十分ではない食生活と言うのに朝早く、木の実をとって孤児院の前に置いてくる…そんな奴なのだ。
そんな人情深くもあり、不器用な奴なのだ。
1人では余りにも無謀過ぎるし、細かい事は僕に任せてくれればいい。
「気にすんな。」
そんな苦笑い混じりの言葉で、その話題は終わりを告げた。
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「さぁ、やるわよ。」
腕まくりをして鍋と見つめ合う。
私はこの世界に来て、いよいよ料理をするのだ。
ウィンスが買ってきてくれたモーイと言うじゃがいもらしき物に、赤ねぎと言う玉ねぎ。
それにいつものパン。
『何を作ろうかなぁ…』
頬に手を当てて考え込む。
ピアンとキャメルまだ手芸用品を選んでおり、ウィンスは一足先に帰って来たらしい。
ラークが冒険者になると言われた時は驚いたが、そんな予感はしていた。
ウィンスまでとは更に驚いたが。
「そうとなれば、もりもり食べて貰わなくちゃね」
彼等は年齢に似つかわしくなく、小さ過ぎ、細すぎるのだ。
まずは栄養をとって貰わなければ。
少し考えてみてもメニューは思いつかなかった。
異世界の材料と言う事で不安もあり、とりあえずはモーイだけを煮た。
煮た後は皮がするする剥けるそれを1口つまみ食い。
「…うん、じゃがいもだ。」
しかし材料はあっても調味料はないのは困りものだ。
赤ネギを切ってかじればほのかに甘みがあり、みじん切りにしたそれを潰したモーイに混ぜた。
パサついたパンもあるのだし、コロッケでも作りたいところだが油は買ってきていないので今回は素材の味しかしないポテトサラダで我慢して貰おう。
簡単に切っただけの赤ネギと自家製トマトのサラダとポテトサラダにパンが本日の夕食だ。
「た、ただいまー」
お皿を並べている最中に、ピアンとキャメルは帰宅した。
戸をほんの少し開けておどおどと中を覗き込むピアンとキャメルに私達3人は笑みがこぼれて夕食はとても暖かいものとなった。
「ん。買ってきた。」
夕食を食べ終えればキャメルが買い物カゴを抱えて中身を見せる。
中にはいくつかの毛糸と糸に、布が入っていた。
「ありがとう。次の露店に向けてまた頑張ろうね。」
「次はもっと売れるの作る。」
そう告げればキャメルはテーブルの所定の位置に戻り、早速毛糸を編み始めた。
今日の課題を生かしてどうしようかとキャメルのくせっ毛を見ては、この世界にクシはないのか、とか季節に似つかわしくなく麦わら帽子は?
と考えては纏まらず、ヘアバンドを作り上げて尚も突き刺さる視線を気にしたキャメルに、何?と言われるまでそれは続いた。
少しでも稼げる物を。
私の中にじわじわと、焦りがあった。
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