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はじめての本音

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「だから、俺はお前等と一緒に居られない。
冒険者になって出ていく。」



話を締めくくるその言葉に、私は目が点になった。

「はぁ…」

余程酷い顔をしていたのだろう。
おまけに他人事のようにしか返事が出来なかった。
真面目に話していたラークは予想とは違う反応だった私に気が緩んだようだった。

「お前なぁ…」


バァン

ラークの言葉を遮って戸が開かれた。
と思えばウィンスがずかずかと入ってきてラークの胸ぐらを掴んだ。


「僕は…一緒に行くからな。
冒険者になるなんて聞いてない!」


「ちょ、盗み聞きしてたのか!?」


どういう事だろう。
昨日話し合ったのでは無かったのだろうか。


「僕等は二人で1番辛い時期を過ごしただろう!
僕はお前の事を1番理解しているつもりだ。
良いところも、悪いところも!!
だから…1人で決めるな!!」


熱くラークに怒鳴りつけるウィンスの目からはポロポロと涙が出ている。





「あのー…水を差すようで悪いけど、ラークは冒険者登録するお金、持ってるの?」



「…一応、ある。」


「じゃあ登録した後の生活費は?」


「…」


口ごもったラークにウィンスも次第に冷静になったようだった。


「…ほら、だから、そう言うのは僕に任せてよ。後先考えず突っ走るんだから…。」


そう言われればバツの悪い顔をラークはした。


「とりあえず、色々誤解しているようだから言うけど、先行投資って別に物作りに限った事じゃないし、私は冒険者になるのも反対してないよ。」


そう告げればウィンスまでも、えっと声を上げた。

「当たり前でしょ?人それぞれやりたい事は違うんだから。
でも好きな事をするにもお金は必要でしょ?」


だからそれまでお金を貯める程度に思ってくれればいいのだ。

「きっと私の言葉が重荷に感じさせたんだよね。ごめん。」


二人は言葉に詰まったようで立ち尽くしていたが私はすかさず仁王立ちした。

「でもね!?いくら何でも資金も用意してない死にに行くような冒険者になるなら私は止めるよ!?せめて後1年は此処に居なさい!!」


机叩きつければビクッと肩を震わせる二人。


「それにあんたらはお互い気遣いあって大事な事は話さないんだから1度じっくり話しなさい!!」



二人の勢いは先程どうって代わって、萎れたように返事をした。


    
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