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はじめての想い

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家の戸を開ければ辺りは静まり返った。

先程までは、アイーリ怖がりすぎだよ、と笑い声を上げていた皆の声もいつの間にか止んでいた。


家の中に、ぽつんとラークが座って居たからだ。

ウィンスに目配せをすれば頷いて、買い物に行ってくると言う彼等にお金を持たせて夕食と足りない糸等を買ってきて貰うようにお願いした。


家の中に入れば私は座るラークの対角線上に腰を降ろした。

戸惑ったように目線を左右させ幾ばくかの沈黙が流れた。




「突然…悪かった。
でも、やっぱり俺は一緒に露店には出れない。」


その言葉を皮切りにぽつぽつと話し出す。




「俺は、昔、盗みをやっていた。」





____________



俺は当時、ウィンスと二人で路地裏に暮らしていた。

何もない状態からの生活は苦しく、ゴミを漁って生きているような生活だった。



それに耐えれなく、直接スリをした事もあれば、食べ物を店から盗んでバレた事もある。

ウィンスはそんな俺をいつも止めていたが、俺は辞めなかった。
段々と痩せていくウィンスを見れば、稼ぐ手段を知らない俺は辞められないと思っていた。



そんな事を続けているとどうなるか。


次第に顔を覚えられてしまったのだ。



2年前との事とは言え、俺はたいして成長していない。
顔を見れば思い出す人もいるだろう。



アイーリが来てから皆は笑顔が更に増えた。
ピアンとキャメルの年下組は特に楽しそうで、いつも何かを作っていた。

俺は不器用かつ集中力がなさ過ぎて合わないと感じた。



だからアイーリに先行投資、と色々貰っても俺は何も返す事が出来ない。


それに…冒険者になりたかった。



何より、露店で顔を出して万が一当時の事を覚えている人が現れれば、迷惑がかかると思った。


アイツらの笑顔を思い出してはそれを崩してはいけない。
でも俺は貰ってばかりで何も出来ない。


その葛藤に苛まれて家を飛び出した。




時折顔は出しているが、久々に孤児院の子供達の顔を見たくなった。
全く関係のない子供達と一緒に居れば一時でも忘れられると無意識に思っていたのかもしれない。


いざ孤児院に着けば、以前と変わらず此処も中々酷かった。
まだ食事は自家菜園や資金で何とかなっているようだがそれでも服を賄える程ではない。

それを見ればあの時孤児院を飛び出した時点から、間違って居たのかもしれないと感じ始めた。


俺の顔を見ればよってくる子供達を構って時間を忘れる中、ウィンスがやってきてそれは終わりを告げた。















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