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初めて気付いた異世界マジック

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少々お待ち下さい。

と受付のお姉さんが奥へと商品を持っていったため、椅子に腰掛け待機しようとすると、またすぐに呼ばれた。

「申し訳ありません、こちらの商品ですが用途が不明ですのでお聞きしてもよろしいでしょうか。」

予想通りあみぐるみ以外の商品が並べられている。


「それはこの子が付けてるやつですね。」


酷く腰の低いお姉さんの前にピアンを連れてくる。

「後ろの紐を縛れば髪を上げたり出来ます。
そちらの紐はミサンガといって手や足に結んだりして…そちらはオシャレアイテムですね。」


まぁ、と声を発して嬉しそうにするお姉さん。

「どれも新しいものですので商品登録も必要ですね。こちらに御記入頂いてお待ち下さい。」

「えっ、あみぐるみもですか…?」

「あみぐるみ…?あぁ、先程の人形でしょうか?
あちらは従来の人形とはまた変わった技法で作られているようですので登録しておいた方がよろしいでしょう。」


わかりました、と今度こそ椅子に腰掛け待つ。
何枚か書類を書き2人で待つも、ふと、あれ…何で言葉が読めているの…?ついでに言えば書けているの…と今更ながら気付き呆然とした。

「異世界マジック…」

「どうしたの?」

「ううん、あ!呼ばれたみたいだから行こっか!」

不意に出た言葉に、ピアンに声を掛けられて焦るも丁度受付から呼ばれて慌てて向かう。


「まず、こちらなのですが…」

と受付のお姉さんの話が始まる。


結局従来の編み物商品には無かったものなので値をつけるのが中々難しく、ヘアバンドとミサンガは大銅貨1枚。
今後の売れ行きによって上がっていくだろうとの事だが今はこのぐらいの値段になってしまうそうだ。

「私は欲しいんですがねぇ…」

と受付のお姉さんから聞けただけでも充分です。
あみぐるみはと言うと、大銅貨8枚。
元来の人形と比べて安めに設定したようだ。
こちらも売れ行き次第であがるだろうとの事。

そこで、うーんと考え込む。

「露店の場合ってどのくらいお金がかかりますか?」

「場所にもよりますが1日あたり銀貨3枚~5枚で出店出来ます。他には、店舗そのものを借りる方法もありますし、こちらは月に大銀貨6~10枚。
商会にツテがあるならそちらと直接契約する手もありますよ。」


お姉さんはこちらの意図を読んでくれ、他の方法も提案してくれる。
大体あみぐるみを5個あたり売れば露店の出店料は払える。
売れなくても初日は赤字でも仕方ないだろう。


商会と聞けば、最初に出会ったメディスの事を思い出した。
彼はユーリ商会と言っていたが、まだこの地に居るのだろうか。

出会ったのは最近の事なのに、酷く遠い過去に感じられた。




振り返り、ピアンに問いかける。


「一緒にお店出してみる?」


とても良い笑顔が返ってきた。


「すいません、露店でお願いします。」

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