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はじめましての石鹸

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炒めた種子をぎゅっと絞っていく。
油がぽたぽたと器に流れると、そこに灰汁を徐々に加えていく。
よく混ぜて暫く置くと、完成だ。

これで成功すれば、恐らく石鹸が出来る。
ただ現代と同じエゴマ油だと、直ぐに使わないと酸化してしまうのでどうなるか分からない。
そもそもエゴマ油で作った事がない。
ましてや異世界。
よく知るシソとは似ていたが、どうなる事かと少し緊張をしつつ様子を見た。



「ピアン、おいで。」

既に髪飾りを見よう見真似で作り始めているピアンに感心しながら手招きをした。

「どうしたの?」

「ここに横になって。」

不思議そうにするピアンに、椅子を2つ並べたところに横になってもらう。
木で出来た椅子で、少々身体が痛そうで申し訳ないがそっと髪を椅子から垂れさせた。

水を釜戸でぬるま湯に温め、あらかじめ桶に貯めておいた。
そこにそっと髪を浸からせて髪を濡らしていく。

「わっ!温かいね!」

花が咲くように笑うピアンは非常に可愛らしく、こちらまで笑みが溢れ出た。

髪を充分に濡らせばそっと鍋の液体を手に取り、髪にのせて泡立てた。

そう、無事に石鹸が出来たのだ。
生憎固形ではないが泡は充分に出るし、問題なく使えるようだった。

成功の嬉しさから真っ先にピアンを呼び今に至る。
何度か水で流し、泡立てを繰り返して仕上げに布で水分を取っていく。

リンスは今は作れないが、これは及第点《きゅうだいてん》ではなかろうか。

「終わったよ。」

ピアンを起き上がらせれば薄らと姿が見える窓ガラスにと両肩に手を添えて移動させた。
横目に他の男連中が目を目開き見ており、私の口元は弧を描く。


窓ガラスでもしっかりとわかる程、キラキラ光る金の髪が今目の前にはあるのだから。


「…?」

ところが、ピアンは無言で窓ガラスを見る。
無言の中もしかして気に入らなかったのかと焦り始めたところに、こてん、と首を傾げてまたじっと窓ガラスを見る。
顔を近ずけ覗き込むと目を見開き、それを皮切りに様々な角度から自分の姿を見てピアンがくるくると回り始めた。

「お、おいピアン…?」

後方からラークが声を掛ければピアンはハッとし両頬を抑えて茹でダコのように真っ赤になった。

「あ、あの…ありがとう…」

おずおずと俯き加減でお礼を言いつつも、耳は真っ赤だった。

キャメルが僕も、と髪を

髪が完全に乾いた頃には昨日作ったヘアバンドを付けて笑うピアンが、髪よりも輝いて見えた。










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