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【5】放課後の補習

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補習は滞りなく進んでゆき、結局他の二人は来ることなく終わった。
古典や現国はもともと苦手なのだが、マンツーマンで教えてもらうととても分かりやすい。
藤原先生ってあんまり声通らないし、教室だとぼそぼそしてるけど、このぐらいの距離なら聞こえる。
手を伸ばせば届きそうな距離なら。

「明日はミニテストをして、明後日はその解説をします。補習はそれで終わりです」
「はい」

終わったー、と帰り支度をしようとすると、先生がホワイトボードに書いた文字を消そうとしていた。

「私消しますよ」

席を立って先生が持っているホワイトボード消しをもらおうと手を伸ばしたら、「いいよ」と遠慮されてしまった。
藤原先生のタメ口は初めて聞いた気がする。

「早く帰って寝た方がいいよ。授業中、あくびばっかりしてるでしょ」

先生は指でメガネを上げながら、私に背中を向けてボードを消し続ける。
授業中には何にも言われなかったけどバレてたのだと思うと少し恥ずかしい。

「ごめんなさい。でも先生、よく見てるんですね」
「そりゃあみんな見えてるよ。いちいち言わないだけで……。言っても君たち聞いてないでしょ」

いつもと違う先生のため口が可愛らしくて、もう少し話したくなった。自然と帰り支度の手が止まっていた。
年齢はどのくらいだったっけ。授業以外接点がなかったから何も知らない。

「明日からちゃんと授業受けますね。あくびしないように頑張ります」
「点数も上げてね」

と、先生はボード消しを置きながら微かに笑みを見せた。
なんだ、藤原先生って意外と親しみやすいんだな。
今まで知らないだけだったんだ。


思いのほか補習は楽しかった。
藤原先生と少し打ち解けられたからかもしれない。
そして、絶対今夜は寝ないとと決意した。

直くんが毎日来ることはないし、今日は母も家にいるはずで。
先生に言われたとおり今日は早く寝よう。
明日の放課後が楽しみだ。

登校時の最悪な気分はいつの間にか薄れて、ちょっと楽しい気分で下校した。
先生のお陰かもしれない。
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