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【2】日曜日

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性に対して人並みに興味はあったものの、突然の卑猥な体験に優愛は戸惑っていた。
その相手はかねてから尊敬していたコーチ。薄く筋肉がついてはいるがすらりとした痩躯。癖のない黒髪に意志の強いはっきりとした眼差しで端正な顔立ちをしている。
そんないわゆるイケメンの部類である鍛冶が、自分の肉襞を舐め啜っていたことを思い出し、優愛は頬を染めながら溜息をついた。

(きっと、コーチにとっては、遊び……だったんだよね。キスもなかったし、胸も触られてないし、好きだ……なんて、一言もなかったし……。私、なんで流されちゃったんだろう……。コーチは、誰にでもあんなことしてるのかな……みんな、言わないだけで……。私も大勢のうちの一人……?)

鍛冶を想うと胸が切なく締め付けられる。あの体験まではただの憧れだけだったのに――。
はあ、ともう一度溜息をついた時LINEが鳴った。優愛はスマホを手に取り確認すると、酷く驚いた。
「暇なら会おう」と鍛冶からの連絡だった。


優愛は二つ返事でOKした。鍛冶が家の近くまで車で迎えに来てくれると言う。会いたいのは自分だけじゃなかったのだという喜びで優愛は夢見心地で支度した。
お気に入りのショート丈のサロペットを着て指示された場所で鍛冶の車を待つ優愛。
しばらくすると黒い外国車がやってきて助手席に乗り込む。緊張でシートベルトをつける手が震えていた。

「急に連絡して悪かったな。今日は予定なかったのか?」

そう言いながら鍛冶が優愛のベルトをつける。キスできそうなほど顔が近くなるが優愛は俯くばかりだった。

「……はい、大丈夫です。今日は親も出かけていたので……コーチから連絡くださって、嬉しかったです」
「嬉しいのか? どうして?」
「えっと……それは……」

理由を聞かれると思っていなかった優愛は、顔を真っ赤にしながら言葉を濁した。鍛冶はそんな優愛を追及するでもなく黙って運転を続ける。

(コーチは、会えて嬉しいって思ってないのかな……?)

口数の少ない鍛冶の気持ちが読み取れず、優愛は下ろしてきた髪を耳に掛けて俯いた。
信号待ちの最中、突然鍛冶がその髪に触れた。指通りのいい優愛の黒髪は、桜色に染まった頬と白い鎖骨にさらさらと落ちる。骨ばった指が少しだけ優愛の頬に触れ、鍛冶はゆっくりと微笑んだ。

「三上が髪を下ろしているのは珍しいな」
「は、はい……お休みの日なので……。ずっとポニーテールしていると頭が痛くなっちゃうから……」

優愛は自分だけに向けられた微笑みに胸を高鳴らせる。
信号が青に変わり車は高速に乗った。どこに行くのか不思議そうに外を眺める優愛に鍛冶が質問をする。

「今から、どこに行くと思う?」

全く見当のつかない優愛は、一生懸命外を確かめるがやはりわからない。

「わ、わかりません……」
「じゃあ、これから二人で何すると思う?」
「え…………」
「昨日の続きをするんだよ」

優愛の胸がどきりと拍動する。サロペットから出た太腿の上で握り合わせていた両手に、さらに強く力が籠った。鍛冶は落ち着いた表情で運転を続ける。

「三上が嫌だったらしないよ」

優愛は選択肢を渡してくる鍛冶の顔を見た。まっすぐ前を向いたままの鍛冶の横顔は何を考えているのかわからない。

(もう高速道路に乗っているのに……私が昨日、続けてほしいと思ってたことも知ってるくせに、コーチはずるい……)

やがて車は海沿いのラブホテルに着いた。優愛はこんな場所に入るのは初めてで怖気づいていたが、慣れた様子で歩き出す鍛冶の後ろについていき、ようやく一室へと辿りついた。
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