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【1】痴漢に狙われたから
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谷珠莉、高校三年生。
(な……なんか、おしりに何かあたってるっ……)
満員電車の中で色白の頬は桜色に染まり、艶のある唇を軽く噛みしめながら両手で鞄を抱き抱えて乗車口に立っていた。背後からは荒い息遣いがし、自身の臀部に他人の硬い何かが当て擦られているのは気のせいではない。
珠莉は思う。制服のスカートもそんなに短くしているわけではないし派手な生徒ではない。髪も染めていないし、思い当たる校則違反と言えば、色付きリップを少し塗っている程度だ。
なのになぜ、こんな目に遭うのか――。
背後の男が珠莉の耳元で荒く呼吸をする。
「はあ……はあっ、はあっ……ううっ……」
最後に短く呻き声をあげ、臀部に擦られていた異物が離れ、代わりに手のひらのようなものがぷりんと張りのある珠莉の尻を撫で回す。
珠莉はひどく驚いたが後ろを振り向く勇気などない。ひたすら恐怖を押し殺しながら次の駅に着くのを待っていると、誰かに指先でトントンと鞄を叩かれ、びくりと体を震わせた。
「大丈夫か? 顔色悪いけど……」
心配そうな声がし、珠莉の心臓がドクンドクンと波打つ中、背後の存在に怯えながら、優しい指先と声の先を探す。
すると鞄を叩いていた手の主が素早く珠莉の肩を引っ張り、抱き寄せた。
温かく包まれるような感触に珠莉は安心感を覚える。自分を守ろうとしているのがわかるからだ。その男性は珠莉もよく知っている人物だった。
(先生……!)
珠莉の通う高校の数学教師、村瀬智生だった。瞳に涙をためている珠莉と目が合うと、村瀬の顔が険しくなった。
(助けてっ、て言いたいけど、言えない……)
珠莉は何も言えない代わりに村瀬の腰に腕を回しぎゅうっと抱き着いた。村瀬の使っている柔軟剤の匂いが珠莉の鼻腔を擽る。
犯人は、車内で珠莉に若い男の知り合いがいるとは思っていなかったのだろう。珠莉の臀部からすぐに手が離れた。
珠莉は人目も憚らず村瀬にしがみついて離れない。
村瀬はその様子を見て、今珠莉が辱めに遭っていたことは容易に想像がついた。犯人は巧みに離れて逃れていき、次の駅に着いた時にはもうその場にはいなかった。
震えながら村瀬の体躯につかまっていた珠莉が、足の力をなくしてへたり込む。
「だ……大丈夫か?」
「す、すみません……立てません……」
「わかった。次で降りよう」
村瀬は、必死に縋りつく生徒の肩を抱いて、車内の電光板を見上げた。
(な……なんか、おしりに何かあたってるっ……)
満員電車の中で色白の頬は桜色に染まり、艶のある唇を軽く噛みしめながら両手で鞄を抱き抱えて乗車口に立っていた。背後からは荒い息遣いがし、自身の臀部に他人の硬い何かが当て擦られているのは気のせいではない。
珠莉は思う。制服のスカートもそんなに短くしているわけではないし派手な生徒ではない。髪も染めていないし、思い当たる校則違反と言えば、色付きリップを少し塗っている程度だ。
なのになぜ、こんな目に遭うのか――。
背後の男が珠莉の耳元で荒く呼吸をする。
「はあ……はあっ、はあっ……ううっ……」
最後に短く呻き声をあげ、臀部に擦られていた異物が離れ、代わりに手のひらのようなものがぷりんと張りのある珠莉の尻を撫で回す。
珠莉はひどく驚いたが後ろを振り向く勇気などない。ひたすら恐怖を押し殺しながら次の駅に着くのを待っていると、誰かに指先でトントンと鞄を叩かれ、びくりと体を震わせた。
「大丈夫か? 顔色悪いけど……」
心配そうな声がし、珠莉の心臓がドクンドクンと波打つ中、背後の存在に怯えながら、優しい指先と声の先を探す。
すると鞄を叩いていた手の主が素早く珠莉の肩を引っ張り、抱き寄せた。
温かく包まれるような感触に珠莉は安心感を覚える。自分を守ろうとしているのがわかるからだ。その男性は珠莉もよく知っている人物だった。
(先生……!)
珠莉の通う高校の数学教師、村瀬智生だった。瞳に涙をためている珠莉と目が合うと、村瀬の顔が険しくなった。
(助けてっ、て言いたいけど、言えない……)
珠莉は何も言えない代わりに村瀬の腰に腕を回しぎゅうっと抱き着いた。村瀬の使っている柔軟剤の匂いが珠莉の鼻腔を擽る。
犯人は、車内で珠莉に若い男の知り合いがいるとは思っていなかったのだろう。珠莉の臀部からすぐに手が離れた。
珠莉は人目も憚らず村瀬にしがみついて離れない。
村瀬はその様子を見て、今珠莉が辱めに遭っていたことは容易に想像がついた。犯人は巧みに離れて逃れていき、次の駅に着いた時にはもうその場にはいなかった。
震えながら村瀬の体躯につかまっていた珠莉が、足の力をなくしてへたり込む。
「だ……大丈夫か?」
「す、すみません……立てません……」
「わかった。次で降りよう」
村瀬は、必死に縋りつく生徒の肩を抱いて、車内の電光板を見上げた。
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