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おかあさんにないしょ
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「……大丈夫そう、だな」
無事を確認すると、先生の体はすぐに離れた。
そうして、結局隣同士じゃなくて、向かい合わせで勉強することになった。
コケてなかったら、隣同士だったかもしれないのに。
あれ?私、先生と隣がよかったの?
先生のこと、好きかどうかはわからない。
でも、会えたら嬉しいし、合間に少しだけ雑談するようにもなってきた。
えりちゃんの話も多かった。
そりゃ共通の人物はえりちゃんだから、仕方ないんだけど。
先生によると、私とえりちゃんは似てるらしい。
かわいくて優しいえりちゃん。子供のころからずっと好きだったけど、先生が話すたびに、少しいやな気持ちになっていった。
聞きたくなくて話題を変えたりもした。
そんな心を知るはずのない先生は、ずっとえりちゃんのことを褒めていた。
週3回、90分ずつの勉強。
夏休みが半分過ぎるころには、軽口も叩けるようになってきた。
先生と会えるのは、夏休みだけ。
夏休みが終わったら、もう会えない。
勉強の進捗は先生とママでやってるし、私は先生の連絡先だって知らない。
「なんか今日元気ないね」
先生に指摘されても、何も答えられなかった。
だってまた、えりちゃんの話が出たんだもん。
「今日は早めに終わろうか?」
えっ。早く終わっちゃったら、先生と一緒にいられる時間が減っちゃう。
先生はちょっと悲しい目で私を見ていた。
違う、やだ、帰らないで。
先生に言おうとしたその時、外から「ドン」と重い爆発音が鳴った。
ーー花火だ。
「あっ、今日お祭りだ!」
私がくま柄のカーテンを開けながら言うと、先生も立ち上がって歩いてきた。
ドン、ドン、と花火が上がって、歓声も聞こえてくる。
「結構大きい花火だね」
「そうなの! ここでは有名なんだよ。……えりちゃんに聞いてない?」
先生は、大学進学のためにここで一人暮らしをしているから、地元の人間ではなかった。
物珍しそうに空を見上げていた先生が、ふと私に目線を落とした。
「聞いてたよ」
「やっぱりー」
「……めぐみちゃん誘ってもいいかなって、えりに話したよ」
「えっ」
「勉強の息抜きに……どうかな。お母さんにも話すから」
その時の先生の言葉の温度が、どうにも、ただお祭りに誘われているだけではないような熱があるような気がして。
私の頬は、焼けそうなぐらい赤く、熱くなってしまった。
頷いたら、先生もうんって言った。
顔を上げたら、先生の瞳に私が映っている。
くま柄のカーテンを引いたら、先生に腕を引き寄せられた。
そのまま胸に顔を埋めたら、力いっぱい抱きしめてくれた。
無事を確認すると、先生の体はすぐに離れた。
そうして、結局隣同士じゃなくて、向かい合わせで勉強することになった。
コケてなかったら、隣同士だったかもしれないのに。
あれ?私、先生と隣がよかったの?
先生のこと、好きかどうかはわからない。
でも、会えたら嬉しいし、合間に少しだけ雑談するようにもなってきた。
えりちゃんの話も多かった。
そりゃ共通の人物はえりちゃんだから、仕方ないんだけど。
先生によると、私とえりちゃんは似てるらしい。
かわいくて優しいえりちゃん。子供のころからずっと好きだったけど、先生が話すたびに、少しいやな気持ちになっていった。
聞きたくなくて話題を変えたりもした。
そんな心を知るはずのない先生は、ずっとえりちゃんのことを褒めていた。
週3回、90分ずつの勉強。
夏休みが半分過ぎるころには、軽口も叩けるようになってきた。
先生と会えるのは、夏休みだけ。
夏休みが終わったら、もう会えない。
勉強の進捗は先生とママでやってるし、私は先生の連絡先だって知らない。
「なんか今日元気ないね」
先生に指摘されても、何も答えられなかった。
だってまた、えりちゃんの話が出たんだもん。
「今日は早めに終わろうか?」
えっ。早く終わっちゃったら、先生と一緒にいられる時間が減っちゃう。
先生はちょっと悲しい目で私を見ていた。
違う、やだ、帰らないで。
先生に言おうとしたその時、外から「ドン」と重い爆発音が鳴った。
ーー花火だ。
「あっ、今日お祭りだ!」
私がくま柄のカーテンを開けながら言うと、先生も立ち上がって歩いてきた。
ドン、ドン、と花火が上がって、歓声も聞こえてくる。
「結構大きい花火だね」
「そうなの! ここでは有名なんだよ。……えりちゃんに聞いてない?」
先生は、大学進学のためにここで一人暮らしをしているから、地元の人間ではなかった。
物珍しそうに空を見上げていた先生が、ふと私に目線を落とした。
「聞いてたよ」
「やっぱりー」
「……めぐみちゃん誘ってもいいかなって、えりに話したよ」
「えっ」
「勉強の息抜きに……どうかな。お母さんにも話すから」
その時の先生の言葉の温度が、どうにも、ただお祭りに誘われているだけではないような熱があるような気がして。
私の頬は、焼けそうなぐらい赤く、熱くなってしまった。
頷いたら、先生もうんって言った。
顔を上げたら、先生の瞳に私が映っている。
くま柄のカーテンを引いたら、先生に腕を引き寄せられた。
そのまま胸に顔を埋めたら、力いっぱい抱きしめてくれた。
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