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第三章~帝都へ~
第15話『闘商ハンデル』
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「へへへへッ。じゃあ、頂きまーす。」
ルォーは、手下によって大きく股を開かせられたアキラに覆い被さろうとしたが、何故か動きを止めた。
ルォーの後ろに
身長180cmくらいの細身の引き締ま
った身体つき
上半身に革製の鎧。下半身には乗馬ズ
ボンとブーツで軽武装した
年齢30歳くらい
茶色くせ毛短髪
茶色の瞳
の男が立っていた。
アソゥ団の者ではない。
アソゥ団の連中にとっては謎の男だ。
その謎の男は右手にやや細身の両刃の長剣を握っていた。
その剣先がルォーの背の中央に埋まっている。
謎の男は、ルォーの背に刺した剣を引き抜くと同時にルォーの上衣の襟首を左手で掴み、無造作に左の片腕だけでルォーを後方に放り投げた。
ルォーの巨躯が遥か後方に吹っ飛んでいった。この男、細身に見えるが、とんでもない膂力である。
次にその謎の男は、アキラの足を抱えている2人の男の喉を突き、更にアキラの腕を押さえていた2人の男の胸を素早く刺した。
瞬く間に頭目のルォーを含む5人のアソゥ団の者達の命が消えた。
「てめえーっ!何者だー!!」
「よくもお頭を!!」
アソゥ団の連中が、アキラに対しては抜かなかった剣を次々に抜いて構えた。
「俺かい?俺はヘルト商会のハンデル。
闘商ハンデルとは、俺の事さ。」
と、その謎の男は名乗った。
「闘商…闘商ってぇと、通常の商売の他にモンスターや盗賊の討伐も請け負う武装商人の事か!?」
「闘商は、部隊を組んでるもんだ。たった一人で闘商なんて、吹いてんじゃねえっ!」
「いや、闘商ハンデル…聞いたことがあるぞ。単独で討伐を請け負う闘商がいるって。そいつがハンデルって名だって。」
「ああ、オレも聞いたことがある。
ドワーフが鍛えた剣を振るって、どんな凶悪なモンスターも、強大な盗賊団も、たった一人で片付ける凄腕の…それがコイツか!?」
「そのとおり。俺がその闘商ハンデルさ。
お前らだろ?近頃この辺りで行き交う人達に大迷惑かけてるゴミ共は?
お前達を処理しに来てやったぜ!」
アソゥ団の連中は、明らかに怯んだが、それでも
「ええーいっ!相手は一人だ。不意を突かれなければビビることはない!やっちまえーっ!!」
と誰かが合図すると、一斉にそのハンデルと名乗った男に襲い掛かっていった。
しかし、そこからはハンデルと名乗った男の独壇場だった。
ハンデルが剣を振るうたび、アソゥ団の団員達の血飛沫が上がった。
或る者は首を斬り飛ばされ、また或る者は胴を大きく薙ぎ払われ、上半身と下半身を斬り分けられた者すらいた。
そうやって、襲い掛かってきたアソゥ団員を倒しつつ、アキラに杖の棒で打たれて倒れたいた者に対しても、丁寧にとどめを刺していった。
ハンデルの恐ろしいまでの剣の冴えに、アソゥ団は、あっという間に当初の半数以下に数を減らした。
「わ、わ、わああぁーーーっ!!」
残るアソゥ団の生き残り達は、皆、恐慌をきたした。
一斉にハンデルに対して背を向け、一目散に逃げ出そうとした。
が、ハンデルはそれを許さない。この男、剣の腕だけでなく、走るのも速い。
瞬きするより速く、逃げ出すアソゥ団員達の背に追いつき、その切れ味抜群の剣で、背を割り、首を刎ね飛ばし続けた。
アソゥ団は、とうとう最後の一人となった。
最後の一人はホビットと呼ばれる種族の者だった。
森の中の湖近くにいた一団から、伝令として来て、本集団に加わっていた者で、足が速いため伝令を務めていたようだ。
見るからに戦闘力は低そうで、放っておいても、さほど害は無さそうだが、ハンデルには、そのつもりは無いようだ。
「ゆ、許してくれ!頼む!い…命だけは!」
ホビットの男は、地に両膝をつき命乞いをした。
「そうやって命乞いをする人達を何人も殺してきたんだろうが!?
お前達は、ここで俺が殺さなくても、盗賊は串刺しの刑か火あぶりにされる。
それよりも、俺に斬られる方がマシだろう?」
「くっ!」
ホビットの男は、懸命に命乞いをしていると見せかけて、手に砂を握っていた。
それをハンデルの顔を目掛けて投げつけた。目眩ましのつもりだったのだろう。
その際に俊足を生かして逃げるつもりのようだった。砂を投げつけてから、直ぐにハンデルに背を向けて駆け出した。
しかし、後ろにいる筈のハンデルが、何故か前にいる。
ハンデルは、ホビットの男が投げつけた砂を躱し、瞬間的に回り込んでいたのだ。
絶望の表情を浮かべるホビットの男の眼に、ハンデルが剣を振り下ろす姿が映った。
街道脇に、仰向けに大の字になってアキラは気を失っている。
ワンピースの衣の裾は胸の下辺りまで捲り上がって、あられもない姿だ。
そのワンピースの衣の下には何も身に付けていないアキラの姿を見て
「…エルフってぇのは、何処もかしこも美しく出来てるんだな。」
そうハンデルは呟き、衣の裾を直してやった。
「さて…と。ここに着く少し前に森の中でも騒ぎ声がしていたな。」
ハンデルは、血の滴る抜き身の剣を右手に持ったまま森の中に入っていった。
第15話(終)
※エルデカ捜査メモ⑮
元々、行商人達は行商をおこなう際、道中の危険に対処するために武装し、集団で隊列を組んで移動していたのだが、帝国においては、先帝ヨゼフィーネが各関所を撤廃し、街道を整備したことで、気軽に行商をおこなうことが出来るようになり、少人数、または単独で行商をおこなう者が増えていった。
街道を整備したといっても、やはり不逞の輩の出没はあるもので、その対策として、行商人組合が武技に秀でている者達に盗賊やモンスターらの討伐を依頼するようになり、請け負う者達を、本業は商人であるため「闘商」と呼ぶようになった。
「闘商」は普通、数名から多い時には数十名単位で部隊を組んで行動し、単独で行動する「闘商」は、ハンデルのみである。
行商人組合からの依頼の他にも、時折、各地の領主や、帝国政府からも依頼されることもある。
ルォーは、手下によって大きく股を開かせられたアキラに覆い被さろうとしたが、何故か動きを止めた。
ルォーの後ろに
身長180cmくらいの細身の引き締ま
った身体つき
上半身に革製の鎧。下半身には乗馬ズ
ボンとブーツで軽武装した
年齢30歳くらい
茶色くせ毛短髪
茶色の瞳
の男が立っていた。
アソゥ団の者ではない。
アソゥ団の連中にとっては謎の男だ。
その謎の男は右手にやや細身の両刃の長剣を握っていた。
その剣先がルォーの背の中央に埋まっている。
謎の男は、ルォーの背に刺した剣を引き抜くと同時にルォーの上衣の襟首を左手で掴み、無造作に左の片腕だけでルォーを後方に放り投げた。
ルォーの巨躯が遥か後方に吹っ飛んでいった。この男、細身に見えるが、とんでもない膂力である。
次にその謎の男は、アキラの足を抱えている2人の男の喉を突き、更にアキラの腕を押さえていた2人の男の胸を素早く刺した。
瞬く間に頭目のルォーを含む5人のアソゥ団の者達の命が消えた。
「てめえーっ!何者だー!!」
「よくもお頭を!!」
アソゥ団の連中が、アキラに対しては抜かなかった剣を次々に抜いて構えた。
「俺かい?俺はヘルト商会のハンデル。
闘商ハンデルとは、俺の事さ。」
と、その謎の男は名乗った。
「闘商…闘商ってぇと、通常の商売の他にモンスターや盗賊の討伐も請け負う武装商人の事か!?」
「闘商は、部隊を組んでるもんだ。たった一人で闘商なんて、吹いてんじゃねえっ!」
「いや、闘商ハンデル…聞いたことがあるぞ。単独で討伐を請け負う闘商がいるって。そいつがハンデルって名だって。」
「ああ、オレも聞いたことがある。
ドワーフが鍛えた剣を振るって、どんな凶悪なモンスターも、強大な盗賊団も、たった一人で片付ける凄腕の…それがコイツか!?」
「そのとおり。俺がその闘商ハンデルさ。
お前らだろ?近頃この辺りで行き交う人達に大迷惑かけてるゴミ共は?
お前達を処理しに来てやったぜ!」
アソゥ団の連中は、明らかに怯んだが、それでも
「ええーいっ!相手は一人だ。不意を突かれなければビビることはない!やっちまえーっ!!」
と誰かが合図すると、一斉にそのハンデルと名乗った男に襲い掛かっていった。
しかし、そこからはハンデルと名乗った男の独壇場だった。
ハンデルが剣を振るうたび、アソゥ団の団員達の血飛沫が上がった。
或る者は首を斬り飛ばされ、また或る者は胴を大きく薙ぎ払われ、上半身と下半身を斬り分けられた者すらいた。
そうやって、襲い掛かってきたアソゥ団員を倒しつつ、アキラに杖の棒で打たれて倒れたいた者に対しても、丁寧にとどめを刺していった。
ハンデルの恐ろしいまでの剣の冴えに、アソゥ団は、あっという間に当初の半数以下に数を減らした。
「わ、わ、わああぁーーーっ!!」
残るアソゥ団の生き残り達は、皆、恐慌をきたした。
一斉にハンデルに対して背を向け、一目散に逃げ出そうとした。
が、ハンデルはそれを許さない。この男、剣の腕だけでなく、走るのも速い。
瞬きするより速く、逃げ出すアソゥ団員達の背に追いつき、その切れ味抜群の剣で、背を割り、首を刎ね飛ばし続けた。
アソゥ団は、とうとう最後の一人となった。
最後の一人はホビットと呼ばれる種族の者だった。
森の中の湖近くにいた一団から、伝令として来て、本集団に加わっていた者で、足が速いため伝令を務めていたようだ。
見るからに戦闘力は低そうで、放っておいても、さほど害は無さそうだが、ハンデルには、そのつもりは無いようだ。
「ゆ、許してくれ!頼む!い…命だけは!」
ホビットの男は、地に両膝をつき命乞いをした。
「そうやって命乞いをする人達を何人も殺してきたんだろうが!?
お前達は、ここで俺が殺さなくても、盗賊は串刺しの刑か火あぶりにされる。
それよりも、俺に斬られる方がマシだろう?」
「くっ!」
ホビットの男は、懸命に命乞いをしていると見せかけて、手に砂を握っていた。
それをハンデルの顔を目掛けて投げつけた。目眩ましのつもりだったのだろう。
その際に俊足を生かして逃げるつもりのようだった。砂を投げつけてから、直ぐにハンデルに背を向けて駆け出した。
しかし、後ろにいる筈のハンデルが、何故か前にいる。
ハンデルは、ホビットの男が投げつけた砂を躱し、瞬間的に回り込んでいたのだ。
絶望の表情を浮かべるホビットの男の眼に、ハンデルが剣を振り下ろす姿が映った。
街道脇に、仰向けに大の字になってアキラは気を失っている。
ワンピースの衣の裾は胸の下辺りまで捲り上がって、あられもない姿だ。
そのワンピースの衣の下には何も身に付けていないアキラの姿を見て
「…エルフってぇのは、何処もかしこも美しく出来てるんだな。」
そうハンデルは呟き、衣の裾を直してやった。
「さて…と。ここに着く少し前に森の中でも騒ぎ声がしていたな。」
ハンデルは、血の滴る抜き身の剣を右手に持ったまま森の中に入っていった。
第15話(終)
※エルデカ捜査メモ⑮
元々、行商人達は行商をおこなう際、道中の危険に対処するために武装し、集団で隊列を組んで移動していたのだが、帝国においては、先帝ヨゼフィーネが各関所を撤廃し、街道を整備したことで、気軽に行商をおこなうことが出来るようになり、少人数、または単独で行商をおこなう者が増えていった。
街道を整備したといっても、やはり不逞の輩の出没はあるもので、その対策として、行商人組合が武技に秀でている者達に盗賊やモンスターらの討伐を依頼するようになり、請け負う者達を、本業は商人であるため「闘商」と呼ぶようになった。
「闘商」は普通、数名から多い時には数十名単位で部隊を組んで行動し、単独で行動する「闘商」は、ハンデルのみである。
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