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しおりを挟む父さんから家族会議の連絡を正式にもらったのは、池内の百箇日法要の前日だった。
僕だけは野明未散も池内大気も知っているから、正直あまり詳しい話は聞きたくなかった。
二人が愛し合っていたのは、子供ながらにわかっていたし、母が嫌がっているそぶりも無かった。
だけど、お祖父様が二人を結婚させなかったということだけはよくわかっていた。
そして、いつの間にかいなくなった野明の後に、池内という驚くほど柔らかい雰囲気を持った秘書がやって来た。
大人は全員知らぬふりをしていた。でも、僕はそれが出来なかった。
一度だけ、池内に尋ねたことがある。
澪斗「ねえ、あなたは野明でしょう? どうしてそんな格好で働いているの? 今までどこに行っていたの?」
すると、池内はフッと妖艶に微笑んで僕の頭を撫でてくれた。
そして、とても優しい笑顔で僕に言い聞かせた。
池内「澪斗ぼっちゃん、今日から私のことは池内とお呼びください。池内からのお願いです」
澪斗「どうして? そう呼ばないとお祖父様に叱られるの?」
池内「さすが澪斗ぼっちゃん、その通りなんです。池内とお呼びくださらないと、すぐに追い出されてしまいます。お願いできますか?」
澪斗「うん! わかったよ。僕、父さんが幸せそうに笑ってる方がいいから。池内がいなかった間、父さんとても悲しそうだったよ」
すると、池内は少し涙ぐんでいた。 ズズっと鼻を啜ると、涙を溜めた目でにこりと笑った。そして、口元に人差し指を当てて言った。
池内「澪斗ぼっちゃん、コレ、内緒にしてくださいね。私が池内になったことも、今泣いてしまったことも。誰にも内緒ですよ?」
澪斗「うん。わかった! 絶対守るからね。安心しててね」
それは、33年前の約束。
僕はそれを守った。
弟にもその秘密を明かさず、父にも問いたださず、ひたすら一人で抱え続けた。
池内が亡くなった後、父から呼び出された。
照史「澪斗。未散との約束をずっと守ってくれていたんだそうだな。ありがとう。辛かっただろう? すまなかった」
澪斗「いいえ、父さん。あなたが笑っていてくれるのでしたら、それで構いませんでした。そうすれば、弟たちも幸せそうでしたから」
照史「でも、咲人は色々と誤解したままだったな。あの子には悪いことをした」
澪斗「僕と晴翔と野本で慰めますから。心配しないでください」
照史「ああ、わかったよ。澪斗。お前も、伴侶を探しなさい」
澪斗「……結婚しなさいとは言われないのですか?」
照史「ああ、わかっているからね。愛している人と、幸せになりなさい」
そう言って、父は梧桐のもとへと向かった。
日々、木に抱きついてはメッセージを送っている。
周囲からは「永心本家は終わったな」と言われ始めた。
父は、僕の恋人の存在に気がついている。
色々片付いたら、もう一度探しにいこう。
そう遠くには行かないはずだから。
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