抱きたい。抱かれたい。

Lopeared

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赤く染まる耳

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「セ……ト、まっ、ちょっ、あっ、んん……」

 薄暗がりの中に浮かぶ白い肌の男と女。
ルーシーのウエストに馬なりになったセトはルーシーの唇や頬、首筋に強く口づけてゆき白い肌に赤い痕を残す。
恐怖と快楽を同時に受けるルーシー。

『セト……、苦しんでた……、来るなって……、それなのに……』

 ルーシーの太ももに当たるセトの勃起したそれの大きさが彼女の恐怖心を煽るがそれよりも、セトの苦しみをどうすれば取り除けるのか……自身の操を捧げれば落ち着くのか……。
与えられる初めての刺激の中でぐるぐる思考をめぐらし続ける。

『もし、ここで私が抵抗したら……他の誰かが……そんなの……そんなの……!! セトが一番後で悔いる』

 唇から胸へと移動した口づけの嵐。
貪りつく彼の頭を抱えるルーシー。

「どんな事を……されても……私は……あっ、あん、セトが大好きよ」

 ルーシーの声に反応してセトの動きが止まる。
彼は雄叫びをあげてから立ち上がり、テーブルに置かれた燭台に手を伸ばすと蝋燭を振り払い左手に燭台の針を突き刺した。

「ぐ……あっ……」

 痛みで崩れ落ちるセトに駆け寄る裸体のルーシー。

「何してるの!」

 燭台を左手から抜こうとするルーシーの手を止めるセト。
鼻につく皮膚や肉の焦げた臭い。
セトの手を見ると刺さっている箇所がジュウジュウ音をたてて焼けただれている。
普通燭台の針が刺さったからといってこんな事にはならない。
何が起きているのか困惑するルーシー。
うずくまり、痛みに耐えながらも視線を彼女に向け懇願するセト。

「……抜かないで、俺の意識が飛ぶまで」

 ルーシーはセトの頭を持ち上げ太ももに乗せる。
額に張り付く銀色の髪を払い優しく髪を撫でて彼の顔を覗き込む。
悲痛にゆがむ表情。
時折セトの頬に温かい雫がたれて伝う。

「ごめんなさい……ごめんなさい……セト」

 意識が薄れる中、セトの耳に何度も何度もこだました。



「じゃぁ~、明日の日暮れに迎えにくるぜ!」
「地獄の絨毯で転げる無様な姿を見てあげるわ!」
「ひでぇ~、成人式のために俺鍛えてたから! 全然余裕だから!」

 店の方で響く威勢の良い男の声とルーシーの笑い声。
セトは体を起こそうと手をつくと左手に痛みが走る。

「親子ごっこもお仕舞いか……」

 ため息まじりにポツリと呟く。
介抱してくれている包帯が仰々しいので巻き直そうとほどいて傷を見る。
皮膚は焼けただれ火傷を負ってはいるが突き刺した燭台の針の痕は消えていた。

「回復力も似るのか、あれに」

 汗ばんだ寝間着を脱ぎ捨てシンプルなシャツに着替えようとするがボタンが片手ではとめにくい。
足に突き刺せば良かったな……などとセトが考えているとルーシーが彼の部屋に入って来て着替えを手伝う。

 互いにかける言葉が見つから無いのか無言のまま。
シャツの最後のボタンがとまる時にセトが静寂を破った。

「ケガは無かったか……すまない……」

 シャツの襟元をぐいっと引っ張ってセトの顔を引き寄せ口づけるルーシー。
勢いつきすぎたのかゴチッと音を鳴らし互いの歯がぶつかる。
ルーシーの突拍子も無い行動に面食らうセト。

「あっ、あんなの……ママので沢山見てるから平気だし……もっと、もっと凄い事だって知ってるから! 子供じゃないんだから。セトとの事なんて犬に噛まれたみたいなもんだし……キスなんていっぱい祭りでしちゃうかもだし!」

 ルーシーの精一杯の強がりが愛しく胸が締め付けられる。
愛しい……、愛しい……、愛しい……。
そればかりが心に浮かぶセト。

「客は待たせて無いのかい?」
「あ~、ディノが祭り様に火傷の薬買いに来たぐらい。街の人達祭りの準備で忙しいんじゃないかなぁ~」
「そうか……」
  
 セトはルーシーの耳に触れ彼女を見つめる。
視線をそらすルーシー。
再びはじまる静寂。

「ルーシー、こっちを見て視線を合わせて背伸びをして」

 腰を引き寄せゆっくりルーシーの顔に顔を近づける。
口づけをされる! っとぎゅっと瞳を閉じるルーシーのおでこにふっと息を吹き掛けるセト。

「まだまだだねぇ~、お嬢さん。口づけ1つで緊張して……祭りで心臓はもつのかい?」

 魚のように口をパクパクさせて顔を真っ赤にするルーシーの姿に笑い吹き出すセト。
『クールな父親役』はどこにも見えない。

「ルーシーも成人する、一人でも十分生きていけるだろう……昨夜のあれの事を話しておこうと思うんだ……夕食の時にでも。いいかい?」

 セトを見つめ静かに頷くルーシー。
静寂を割る店のドアベルの音に数人の賑やかな若い声。
祭りようの火傷の軟膏か、男を引き寄せる匂い袋を買い求めに来た若者達だろう。

 店に足を向けるセトの腕をつかみ引き留め、彼の唇を奪うルーシー。
三度ほど舌をからめ離れる。

「良くできました?」

 下から見上げしたり顔のルーシーとは裏腹に、長い耳まで赤く染めるセト。
硬直するセトを部屋に残して足早に店に戻るルーシーの耳も赤かった。

「反則だよ……ルーシー……」

 ベッドに腰掛け頭を抱えるセト。
欲情とは違う胸の動悸に、今日何度目かのため息をついた彼だった。
 
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