抱きたい。抱かれたい。

Lopeared

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金色の瞳

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 街のはずれにある薬草屋。
以前ここはハーフエルフが営んでいた薬屋だったのだが、妻を老衰で亡くしてから職業を引退すると言うのでセトが買い取った。

 森の住人と言われるだけ、エルフは植物や自然のものの扱いに長けている。
薬草屋はうってつけの職業だ。
人間では手に入れれない植物もエルフなら入手も可能なので貴族のお得意様もいる。

 一つ面倒だとすれば、以前の店主はエルフにしては人当たりが良く人望があり話し上手だったそうで……暇をもてあそんでいる街の住人が現在も世間話にやってくる。

 セトは一人暮らしを始めるまで静寂を好むエルフの里で暮らしていたので騒がしい人間が苦手だ。
食っていくためには我慢も必要……そう自分に言い聞かせてはいるものの、顔にすぐ出てしまう。
少々の時間なら耐えられるようになったが数時間居座る輩もいて煩わしい。

『隣の性行為の音が激しいとか、姑がうるさいとか……どうでも良くないか?』

 頭痛がする……うるさい。
人間の主婦は鈍感なのか話しに夢中すぎるのかセトの仏頂面に気づかない。

「奥さーん、イライラする時は東方から伝わったこのお薬オススメですよ! 血色も良くなるからセクシー度アップ! 旦那さんと~夜……むふふふ~で、お隣にも奥さん達の熱々ぶりを見せつけてあげたら?」
「それ、いただくわっ!」

 ルーシーはセトの機嫌を見計らって客の相手をする。
苦手な分野を補ってくれるルーシーの存在は偉大だ。
二人だからこそまわる薬草屋。

 だが、それもいつまでも続かない……ルーシーは年頃の娘。
恋をして、結婚して親元から巣立つ日が来る。
……そう遠くない未来に。



「ごめんなさい~、刺繍に夢中になってたら夜更かししちゃって……。ちょこっとセトの顔みてから寝ようと思ったらそのまま寝ちゃったの~」

 昼飯時に起床したルーシーが祭りに着るドレスに刺繍をほどこしながら今朝の醜態をわびる。

「『セト』じゃない! 『父さん』と呼びなさい」
「わかったよぉ~、パパーン」
「それではパトロンみたいじゃないかっ! 美しい言葉を使えと教育しただろ!」

 ルーシーを継父から金貨10枚と銀水晶の花と交換して以来、セトは自分の娘としてルーシーを慈しんだ。
貧しい育ちで教育をまともに受けていなかったので文字に最低限の教育、どこに嫁いでも恥ずかしくない礼儀作法を彼は教えた。

 ルーシーは見目麗しく、愛嬌も良い。
街の若い男性を持つ親御は『是非、うちの家の嫁に』と薬を買いに来てはルーシーに耳打つ。
それが最近気に入らないセト。
その度に『自分は父親だ』と何度も心で暗示をかけるのであった。


 ダイニングでセトは読書、ルーシーはおはりこ。
高かった陽が傾きかけて赤く染まる頃に破られる静寂。

「できた~! 間に合ったよ~!」

 自身の青い瞳と同等の色のドレスに金とルビー色の細かい刺繍がデコルテや袖口、裾に細やかに彩られている。

「明後日のお祭りに間に合わなかったらどうしようかって思ってた! これで成人できる~」

 この街の風習で春にあるお祭りに男は火がくすぶる灰を敷き詰めた小道、別名『地獄の絨毯』の上を走らず歩いて度胸試しをする。
女は自身で作ったドレスで度胸試しを終えた男性とダンスを踊り、気持ちが昂れば一夜を共に。
そうして夫婦になる事も多いので、年頃の娘たちは浮かれるのだ。


「無事終えたと言う事は夜更かしも無いし、寝ぼけて俺のベッドに来る事もないな。今夜は一人でゆっくりしたい……絶対に部屋には来るな」
「え~、セトの長いまつ毛見るの趣味なのに~」
「どんな趣味だよ……」

 祭りに受かれてる様子のルーシー。
ドレスを体にあててはクルクル風に舞う木葉のようにまわり、ドレスの裾の刺繍の煌めきを楽しむ。
その姿が可愛らしくてつい微笑みそうになるが、セトはそれを悟られまいと背伸びをしてあくびのふりをした。
セトはルーシーの前ではクールな父親でいたいのだ。


 夕飯を終え、月が高く上がる前にセトは自身の部屋に戻る。
いつもならダイニングで客から注文が多い頭痛止めの薬草を調剤したり、前代の店主が残した薬草の記録などを読んで夜更かしをし、ルーシーに小言を言われるのだが。

「最近いつもに増して仏頂面だよね……体調悪いのかなぁ……セト」

 寝間着に着替え、戸締まりや火の元を確認していたらセトの部屋から何かが落ちる鈍い音がした。
ルーシーが彼の部屋の扉に耳をそばだてると荒い息づかいが聴こえる。

『やっぱりどこか体調悪くて、私に隠してるんだ!』

「セト! ねぇ、大丈夫? 入るからね!」
「ダ、ダメだ……ルー」

 彼女の名前を呼ぶ前に扉を開け放つルーシー。
ベッドの下でうずくまるセト。
目を凝らして良く見たら手首を布で縛っていた。

「何してるの! 体調悪い時にこんな事したらケガするよっ」

 手首の布をほどこうとするルーシー。
もがいてルーシーから離れようとするセト。

「ダメだ、ダメだよ、ルーシー……俺から離れるんだ」

 そうセトが言い終えるのと、手首の布がほどかれるのは同時だった。
手枷が無くなったセトは勢い良く起き上がったと思えばルーシーを冷たい床に押し倒し彼女の寝間着を乱暴に引きちぎって両の乳房をあらわにさせた。
鼓動で上下する柔胸を鷲掴み親指で胸の先端を撫でる。

「セ……ト、んん……」

 蝋燭の明かりだけの薄暗い部屋に怪しく輝くいつもと違うセトの金色の瞳。
何が起きているのか思考が付いていかないルーシー……。

「だから……来るなっていったのに……」

 セトはルーシーの薄紅色の唇に自身の舌を這わせてから奥深くまで唇を味わっっていった。
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