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⑥少女恋をする ※R18

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 転がる肉塊の中で高笑う中年の女性、その先に歳は私ぐらいだろうか…美しい白金の髪が顔にかかり良く見えない。
青年が転がる肉塊の中ので何かを見つけ驚愕し膝から崩れる。

 女性が青年を抱きしめ何かを囁く。
彼は女性の腕を振り払いその場から去ろうと立ち上がるが血を吸いこんだ絨毯や肉脂で足を滑らし転倒する。
全身にそれらを浴びて真っ赤になった彼は極度の恐怖と緊張で動けなくなり…。
悍ましい空間の中で獣の様に吠える女性に青年は愛を喰われ絶望を知る。


 胸に走る痛みで悍ましい夢から目覚めると、脈打つ赤黒い壁に包まれていた。
壁は漢方薬の様な独特な臭いを放つ液体が滴り、足先から膝へどんどん充満していく。
体を動かそうにも胎児の様に丸まった姿でも精一杯の狭さで身動きが取れない。

 考えたくないのは此処が胃とか消化管だと私は溶けちゃうかもしれないし、その前に顔より上にこの液体が満ちれば窒息死するだろう。

 ゴムの様に伸縮する壁を精一杯手を使い押してみるが伸びるだけで破裂するとか痛がるとか変化はない。
変化し続けるのは液体が膝から腰へと上がってきている事。

 『死』が頭をよぎる。
私が死ぬ時は80歳ぐらいで良く晴れた日に日向ぼっこしながらバルコニーでぽっくり逝く事なんだからっ。
こんな湿気たところで死ねるかっと…叫びたいが状況を打破するような名案が浮かばない。
万事休す…。

 せまりくる粘液に目を落としていたらももの部分のジャージが焦げているのに気付く。
一瞬粘液で溶かされたのかと思ったが左胸の刻印部分のジャージもブラジャーも焼け焦げている。
人差し指で刻印それに触れてみると皮膚の燃える匂いと共に指先は火ぶくれる。

 迷ってられない、イチかバチか!
狭い空間の中でもがきながら胎児の体勢から正座に変え背中をそらせ胸を壁に押し当てる。
胸が接した部分の壁の粘液がぶくぶく音をたて泡立ち、壁は口にできた口内炎のように潰瘍になる。

 潰瘍が大きくなり赤黒い壁が拳一つほど穴があくと、どぼどぼ漏れ出す粘液とどこからか聞こえてくる絶叫。
穴が貫通すると刻印の熱が止まる、この壁の中は次元でも違うのだろうか?
ぐりぐり腕をねじ込んで壁の外に手を出し上下に振ってみる。

「風と土の精霊よ我の言葉に耳を貸せ。代価は紅玉と労働、我と契約せし者をハラワタから引きずり出せ」

 オジサンの声が聞こえる…。
幾度か振動が走ると私の腕はごつごつした物に引っ張られる。

「痛いっ肩外れるっ」

 水風船を針で刺すような破裂音がすると仔馬が誕生する時の様にずるりと落下する私。
粘液をぬぐい振り返るとヴィオラの足に見えたものは擬態で彼女の下半身はカマキリと食虫植物を足した様な姿だった。

 夢に出そう…ちょうグロい。
カマキリ腹は切り刻まれた痕が幾重にもあり私が這い出た部分にけっこうな穴が空いている。

「それではしばらく子は産めませんねヴィオラ嬢」

「娘を食せば私はより輝きをましますのにっ何故ですか!愛しい人」

 納得がいかないと言う面持ちで彼の腕にしがみつくヴィオラ。
運命だとか、どれだけ愛してるかを説くが彼の耳には届かない。

 こう言う展開ってアニメとか映画とかラストって殺し合いとかに発展するよねぇ。
死にそうにはなったけどそう言うのは見たくないし、彼にそんな事させたくない。
おばさんには腹立つけど私が招かなければこう言う事故も起きなかったのだから、うーん。

「取りあえず、私を風呂にいれさせてぇぇぇー!」

 這いつくばったまま叫ぶ。
こちらに目を向ける二人。

「おばさん私はただの居候、それに愛だの恋だのなくてもエッチな事するじゃない?だから…匂うのはそう言う事っ!だからおばさんの占いは外れて無いんだよ!(適当)」

「そう言う偽善的な行為はいつか身を滅ぼしますよ」

「うるさいっ」

 小さくため息をつき手にする魔法書をポケットにしまう彼。
彼のまわりで小躍りしていた私を救出した精霊たちも姿を消す。

 ヴィオラは花壇の黄色い花を手折たおると呪文を唱えはじめる。
5枚の花弁は大きくなり彼女の体を包むとそれらは黄金に輝くドレスになる。

「そうですわよね、私の占いは一度と違えた事はありませんの」

 思い込みの激しさから、外れるよりも何も実力行使で成就してきたんだろうな…。
恋愛の力って恐すぎっ。
ヴィオラはドレスをつまみ会釈をし蜃気楼のゲートを通った先で姿を消す。


 体を清めていたら左の方だけ髪の毛が短くなっているのに気付く。
外壁を焼くぐらいだもの髪の毛も焼けちゃうよね…。

 椅子にあぐらをかきくぼみに布を一枚かける。
髪きりハサミはこの世界に無いので非常に切りにくい。
ハサミをあて長さを整える。

 五年ほどか、伸ばしていたの。
初恋の男の子が髪が長い女の子が好きと聞いて伸ばし始めたんだよね。
懐かしいなぁ、今あの人はどうしてるだろうか…。
無邪気に恋していた甘酸っぱい思い出を懐かしむ。

 布の上に落ちていく思い出の産物。
毛束を人差し指と中指でつまんで肩あたりで切りそろえるが真後ろが見えないのでどうしたものかと悩んでいたら視界に赤い影が見える。

「オジサーン、後ろそろえて」

 ハサミを受け取る赤の魔術師。

「手先が不器用なので可笑しくなるかもしれませんよ?」

「だいたいでいいよ、誰も私の事なんて見ないし」



 自分で言っておきながら妙に悲しくなるものだ。
鼻の奥がツーンと痛くなる、涙を作り出そうと体が反応している。

 涙を落とさぬよう笑顔をつくる、平気なふり。

 向こうに帰れば私は誰の目にも映っていない事になる。
関われば兄の機嫌を損ね何をされるか分からないからだ。

「貴女はたまに心とは真逆の顔をなさるのですね」

 切り終えたのかハサミをテーブルに置くと彼は私の首筋についている落ちそこなった毛を指で払う。
おっと確信をついたねオジサン、ダムが決壊しそうじゃないか。

「ありがとう…おじさん…ごめん少し外してくれる?」

 彼が踵を返し数歩進むのを確認してから膝を抱える。
布につつまれたまま下に落ちる切られた髪。
唇を噛む。

 視界が少し暗くなる。
体は優しい温もりに包まれる。

「美しい貴女が目に留まらない訳がないでしょう、私の足を止めたぐらいなのですから」

「うっさい、ロリコン!外してって言ったじゃない。バカ…バカっ!」

 椅子からすべり床に崩れる私をかいなにおさめる。
髪の先をもつと頭をなでる彼。

「貴女は私を惹きつけるのですよ不思議とね」

 心に湧き上がる感情。
封印してきた甘い、痛み。

「オジサンが…悪いんだからね…知らないからね」

 止められない感情を今伝えたらきっと距離を取られる。
彼と私は住む世界が違うもの…。
ええいっ今はあれこれ考える時間がもったいない!

 ノースリーブの肌着を勢いよく脱ぎ捨て彼のローブの紐を外し押し倒す。

「したい、今めちゃくちゃオジサンとエッチな事したい。嫌だっていっても絶対にしちゃう!」

「陽はまだ高いのに淫らな事言うのですね」

 はじめて出会った日の様に何度も彼の唇を奪う。
彼の服を脱がしたいのだが仕組みがよく分からなくてしどろもどろしていたら彼がクスっと笑った。
ああ、この人でも笑う事があるんだな~へへへ、なんか得した気分。

「これを脱ぐと、もう止まりませんよ」

 私が頷くと彼が自ら服を脱ぐ。
体勢が変わり私が下になる、目に留まる火傷の治療の痕にそっと触れる彼。

「薬がよく効いてる、大丈夫」

 息もつかせぬほど再び激しく舌をからめ互いの下半身を手で愛する。
彼が欲しくて堪らないと私の蜜壺がビチャビチャ音を鳴らし始めると彼のペニスをあてがいクリトリスと入り口を往復させる。

「せっかちですね…」

 彼が耳元でつぶやく。

「だって陽がくれちゃうと嫌だもの…欲しいの」

 彼はもう少し前戯を楽しみたい様子だったが私の欲望を優先してくれる。
私の体に侵入してくる彼の一部。
彼のペニスが私の膣におさまるのを見つめる。

 体は処女ではないが、心は今日が処女だ。
今日の事は何があっても忘れない、これから先また『あの日が』続いても。

 彼が動き始める、彼の全てが熱い。

「いっぱい見て…今だけでいいの、いっぱい、私だけ…あっあ、あん」

「可愛い声をそんなに出しては…もたないではありませんか」

 打ち付けるスピードが速くなりだす、彼の眉間のしわで吐きだしたい快楽と戦っているのが見て取れる。

「オジサン、オジサンの膣で大きく…あ、大きくなって、出るの?出ちゃうの?私もっ私も…んん…ぁあっ出ちゃうっあぁっっ」

 膣から伝わる痙攣と飛び出した生暖かい愛液が私の腿と彼の根元に伝わると彼は私の膣からペニスを抜くと私の腹の上に快楽の痕を残した。
点々と腹と胸に飛び散る精液。

 ごろんと私の横にころがり息を整えようと深呼吸する彼の頬にキスをする。
彼は私の口に返す。

「久々だったもので乱暴にしてしまい、すみません」

 かぶりをふる。
好き…と言いかけそうになって口を紡ぐ。
私を見つめる彼。

「おや、貴女左右で目の色が違うのですね」

 本来左右とも茶色なのだが兄の暴力で失った視力を治療してから左は青色に変化してしまった。
医者も原因が分からないらしいが視力に影響は無いようなのでこのままなのだ。
両親は完璧を求めるのでこの違いを嫌いカラーコンタクトを必ず付ける様に義務つけた。

 私のあごを持ちまじまじ凝視する。
『見て』とはいったが、綺麗な顔がそんな近いと照れる。
頭から蒸気機関車の汽笛の様に湯気が出そう。

「ん、あっコンタクト取れてる?…あれで最後だったのに…エッチ激しすぎて落ちちゃったのかなぁ」

 あたりを見渡すが無い、探し回ると彼の髪からのぞく茶色く丸い膜。

「あった…けど、もう使えないなぁ。色が近かったらまだ良かったんだけど違い過ぎるからキモいよねぇ」

 私の肩口に赤いローブを羽織らせる彼。
彼は脱がすのに手間取った装飾の多い服を拾い上げ羽織る。

「目の色が違おうが貴女は貴女、何も変わりませんよ。それも個性で美しいではないですか」

「もっもう…そんな嬉しい事ばかり言ってまた襲っちゃうぞっ!」

 ローブの帽子をかぶり顔を隠す。
この人はさら~と歯の浮くセリフを言えるもんだ…ある意味天然なんだろうな。

「さぁオジサンお風呂入りながらアフターエッチするよっ」

「それは…洗う事になるんですかね?」

 彼の腕を引きバスルームに向かう。
聞こえるか、聞こえないかの声で『ありがとう』とつぶやく。

 彼の手のひらがそっと一回私の頭を撫でた。


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