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14.僕の愚痴を聞いてほしい
しおりを挟むおや?
何を帰ろうとしているんだい
今からが僕の聞いてほしい愚痴だと言うのに。
いや、今までの話はただの予備知識だよ。
…そうだね、途中でも少し不満を溢してしまったが、それは不可抗力であって本題ではないのだ。
すまないね。
まあ座って、もう少し聞いてくれよ。
実はね、その自給自足生活を謳歌している危険極まりない奴等、リチャードとミレーユさんがあろうことか僕の妹に会いたがっているんだ。
僕は知らなかったのだけれど、ミレーユさんと妹は今でも手紙のやり取りをする程度には仲が良いらしくて。
だよな!
初耳だよな!
ミレーユさんにまだ友人が残っていたなんて思わないし、しかもそれが僕の妹だなんて。
前回の訪問時にリチャードが言い出すまで知らなかったよ!
レイチェルはいつの間にあんな危険人物と知り合いに……あ、いや、僕と同じタイミングで会ってはいたか。
しかしあれ以降は我が身を犠牲にしてまで会わせないようにしていたと言うのに!
あんな奇天烈な人間の何処に仲良くなる要素があると言うのだ。
何て事だ…。
いや、うん……ミレーユさんの気持ちは嬉しいよ。
身重の妹に栄養があるものを食べてほしいと野菜やら果物やらをね、持っていきたいと言ってくれていて。
子どもが無事に産まれたら肌に優しいおくるみを作る約束までしているそうで、縫製にかかる時間もあるから打ち合わせをしておきたいと、いつの間にか綿花畑も拡張していて…何だか……もう…僕の知らぬ内に断れない所まで話が進んでいて…。
妹を気遣ってくれるのはありがたい。
ありがたいが、ただ、作物に使われる「新作」という単語の響きに得体の知れない品種改良の気配を感じて怖いし、ミレーユさんが赴くなら先方の人払いしろと言い出すリチャードがとにかく面倒臭いしで、もう、どうしたら良いか。
ミレーユさんだけならまだしも、当然のようにリチャードもついてくる気みたいでな。
あいつは来なくていいのに。
というか、レイチェルは妊娠したんだね?
お兄ちゃん聞いてないよ?
リチャードの口から知るとか吃驚だよ?
何で教えてくれないの???
僕もお祝いしたいのに…。
今月は帰省してきてくれないし、先週も先々週も会いに行ったら忙しいと義弟殿に門前で断られたのは、そういう事だったんだ?
やはり体調が悪いのだろうか。
心配だ。
心配だ。
心配だ。
ああ後でもう一度家まで行ってみよう。
また義弟殿とは拳を交えなければいけないかもしれないな。
念のため腹に鉄板でも仕込んでおこうか。
なあに、義弟殿は妹を守るに相応しい、実に頼もしい男だよ。
鉄板くらい僕の肋骨ごと砕くだろう。
え?
…うるさそう?
何が?
………僕が?
そ………そんな、騒いだりは……しない、よ?
多少泣くとは思うが。
う、うん。
それでね、今日はこれから奴等と会いに行かねばならないと言ったろう?
正直僕は奴等を妹に会わせたくない。
だって身重だよ?
ストレスは良くない。
安静にすべきだ。
胎教にも絶対に良くない。
しかしもう妹とミレーユさんの間では決定事項だという。
妹には嫌われたくない。
でも会わせたくない。
今からでも話を潰したい。
僕はどうしたら良いのだろうか…。
ねえ、君はどう思う?
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