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10.学校に通わないと一日中一緒に居られない問題発覚
しおりを挟むミレーユさんは進学を止めたと言ったけれど、正確には学園へ通学させる事を諦めただけでね。
権力と財力に物を言わせ、特別に学園側から融通してもらった教材を使い、彼女は僕等と同じ内容を家庭で学習をしていた。
両家ともその辺りが妥協点だと思ったのだろう。
あの時は三年前にその案を出してくれ、僕を使う前に頭を使え!とも思ったけれど、結果的には失敗だったわけだから何ともね…。
この計画はリチャードとミレーユさんを大人しくさせるという面では、完全に逆効果だった。
理由は以前少し溢してしまったミレーユさんのお世話したがり欲求だ。
ミレーユさんはリチャードの世話を焼くことに人生をかけている。
そういう訳で自主学習中のミレーユさんは一応学園に籍を置いていた。
学園との橋渡し役をもぎ取っていたリチャードは毎日足繁くミレーユさんの下へ通い、毎日ミレーユさんを構い倒していたが、ミレーユさんの優秀な頭脳はリチャードが居ない日中だけで高等部の学習を二年も早く修了してしまった。
暇を持て余し始めたミレーユさんの関心が何処へ向かうかといえば自ずと一つしか無い。
リチャードの生活だ。
「あの…レイモンド様…、またあの方らしきお姿をお見かけしまして…」
「あー……、うん、報告ありがとう。何処に居た?」
「中庭への渡り廊下付近に」
「分かった、中庭だね」
「知っているかリチャード。中庭のアザレアが見頃らしい」
「何故急に花の話を」
「お前の家にやたらと植わっていたろう。好きなのかと思ってな」
「ああ、あれか。ミレーユが好きだと言っていたから増やしたんだ。白がお気に入りらしくてな、毎年春には庭を歩きながら共に愛でているのだが、花よりも可憐に私へ微笑み掛けてくるミレーユが可愛くて可愛くて」
「白もあるらしいぞ」
「ふむ…少し見てみるか。良いものなら挿し木を譲ってもらえないか交渉してみよう」
「なっ、ミレーユ!また抜け出してきたのか!」
「まあリチャード様、お会い出来て良かったですわ。今そちらへ向かっておりましたの。あら、肩にお髪が」
「おおすまない、制服と同色だから気付かなかったよ。ありがとうミレーユ。さすが、ミレーユは細部にまで心を配るのが得意だね……と、そうではない!」
二人を日中に引き離し続けた結果、リチャードの世話がしたくてしたくて堪らないミレーユさんは度々家を脱走するようになってしまった。
生徒であるミレーユさんは、学園との規約上は学園を訪れても問題は無い。
しかし状況を重く見た学園長と両家の御両所に泣き付かれてしまった僕が、安全な逢い引きの手引きをする羽目に………
だから何故いつも僕なんだ!
友人ではないと常々言っているだろう。
学友などと言葉を濁しても騙されないからな。
どいつもこいつも僕を生け贄のようにして、少しは年長者が責を負ってくれ。
いつもの事だと言うなら尚更…………!
あ、ああ、いきなり怒鳴ってすまない。
思い出が幼少期に比べ新しいものなってきたものだから、つい怒りがぶり返し熱くなってしまった。
そうだな、冷たい水を貰えるかい?
いや、ちゃんと分かってはいるんだ。
奴等自身がどうなろうと知らないが、偶然居合わせただけの、罪の無い学生の安全は守るべきだと。
だが僕もその学生の一人だった筈だろう?
僕はそこが納得いかない。
確かに、学園内でリチャードと会話らしい会話が出来るのは僕しか居なかったが、あいつは意外と単純馬鹿だからコツを掴めばどうってことない。
教師なり警備員なり、一人くらいは共に思考の誘導を試みてほしかった。
もしそれでリチャードの逆鱗に触れ職を追われたのなら、健闘を称えうちでの再雇用くらいはしたのに。
そもそもミレーユさんが学園へ潜入してくるのは、あの侍女が仕事をサボっていたからに他ならない。
そうは思わないか?
万全の警備を敷く僕の家へ警邏を昏倒させて忍び込める侍女が、少女一人抑えられない筈がないだろう?
怠慢でクビにすべきだと幾度となく進言しているのだがね。
奴は今もミレーユさんの家でのうのうと働いているよ。
もうミレーユさん付きではないけれど。
はあ…。
過ぎた事の不満を溢すというのも、案外疲れるものだな。
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