僕の愚痴を聞いてほしい。

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4.第一次学校通わせたくない騒動勃発

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二人にもかつては友人が居た。
何処と無く距離はあったけれど、一応はね。

え?
そうだね、僕は決して友人ではないけれど、少し例外かな。
でも僕がミレーユさんとまともに会話したのは六歳のあれが最後だし、リチャードの居ない所で会うなんて冗談でも出来ないよ。
伝言くらいは許されているが、リチャードからの限定だ。
僕は二人の仲人らしくてね。
違うのに。
どう見てもあの二人は勝手に恋に落ちた。
強いて言うなら妹の方では?と長らく腑に落ちない思いを抱えているのだが、あの二人に妹を身代わりとして差し出すのは兄として忍びない気持ちがあって……うん、この話は止めようか。


ある日からミレーユさんが連日学校を休むようになった。
最初は体調不良かと思っていたけれど、それにしてはリチャードが元気だ。
これはおかしい。
だって考えてもみてくれよ。
もしミレーユさんの調子が悪いのだとしたら、リチャードが取り乱さない筈がないだろう?
国内外から医者を呼びつけ奔走しているに違いない。
そうなると次に考えられるのは家の都合だ。
ミレーユさんの家は代々優秀な外交官でね、勉強も兼ねて国外へ家族で出張することもあるんだ。
しかしそれならばリチャードがあからさまに落ち込むなり苛立つなりしている筈だから、やはり違う。
ミレーユさんが傍に居ないのにリチャードが平常心、これは奇妙だ。気味が悪い。
ああ、破局説は無いよ。
リチャードが生きているだろう?

教師を含め、皆が不思議には思っていたけれどそれを直接訊ねる者は居なかった。
そもそもこの頃にはリチャードに話し掛けるのは僕くらいしか居なかったし。
いやね、僕も特別親しいわけではなかったけれど、グループ分けで常にあぶれる二人と仕方なく組んでいたら、何かしらの連絡事項がある度に伝達役が回ってくるようになってしまって。
幼馴染というのも損な役回りだよ。

そんな中、ミレーユさん欠席の理由が分かってしまった。
リーク元はミレーユさんの所の侍女だ。

「お嬢様は、リチャード様の憂いを晴らそうとお部屋に閉じ籠っておられるのです」
「……それ、何で僕に話すの? 先生方では駄目かい?」
「リチャード様は愛らしいミレーユ様を他の方の目に晒したくないと」
「ああ、うん。いつものやつだね」
「このままではお嬢様はお部屋から出てきませんわ。健康にも宜しくありません。私、どうしたら良いか…!」
「君の雇い主に相談してはどうかな?」
「レイモンド様、どうか我々に手を貸してはいただけないでしょうか!」
「だから何故僕に言うんだ」

本当に困ったものだよ。
この侍女に限らず、みんなして面倒事を僕に押し付けてさ。
そう、昔からこうなんだ。
リチャードとミレーユさんの事で何かあると、どういう訳か真っ先に僕へ報告が来る。
おかしいだろう!
保護者はどうした!教師はどうした!
彼らは確かに人の話を聞かないが、彼らと対話する事を先に放棄したのはそっちだろう!
リチャードだって、ラインさえ踏み越えなければ会話出来るから!
ミレーユさんと話し合うなら女性の方が適任だから!

………はぁ。
すまない、少々気が立ってしまった。
折角話を聞いてもらっているのに悪いな。
リチャードもさ、ちょっと気が狂ってるだけで悪い奴では無いんだよ。
ミレーユさんの話さえ振らなければ些事でも解決へ向け真面目に悩んでくれるし、頭は良いから頼りにもなる。

そうだ、これだけは覚えておいて。
リチャードを爆発させない為には、向こうが言い出さない限りミレーユさんの話題を出さなければいい。
間違えても機嫌を取ろうと思って「お似合いだね」などと言ってはいけないよ。
リチャードの世界以外にはミレーユさんは存在しない、してはいけないと考えれば分かりやすいかな。
当然ミレーユさんを見てもいけない。
目を潰される。
向こうから話し出した時は……そうだな、慣れていないと何処までが許されるのか分からないよな。
とりあえず、逃げろ。


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