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前線基地7
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『こっちはおわったぞ…どうした?』
「「なんでもない!!!」」
『おぉぅ…。』
俺と涼がいる場所以外の他の瘴気沼周辺の魔獣を討伐してきてくれたらしい、アトラが舞い戻って来た。
彼が地に降り立つと同時に周囲の温度が上がった気がした。いや、間違いなく上がったようだ。目の前の彼の赤黒い髪が轟々と炎が燃え盛っているみたいに、煌めいていた。
息も討伐して息が上がったのか、興奮しているからなのか解らないが、口から蒸気が噴出されている。
アトラはそれを自覚していないのか、ススッと俺の横に腰掛けて上目遣いで視線を合わせてきた。あざといと思ってしまうのは何故だ。
『奏多、おねがいをきいてくれるか?』
「ん?」
『おまえの血をくれ。』
「えぇ?!?!なんで!!!!」
『…なぜおまえがおどろくんだ?』
「だ、だっていきなりそんな…お兄ちゃんの血をアトラに…。」
『よくわからない。それにおまえももらってるだろ。そのキラキラしてるやつ。奏多のだろ?それを僕にわけてくれるならそれでかまわないけども。』
「駄目!」
『なら、奏多からちょくせつもらうしかないな。しつれいするぞ。』
「うぉっ?!?!」
締めたばかりの首元のホックを手際よく外され、中のワイシャツの釦も数個解かれた。ブラッドドラゴン達もこういう服を着ることがあるのか?妙にこなれている気がする。
「首から、吸うのか?」
『あぁ、雄同士だしもんだいないだろう?』
「…なるほど、それもそうか。だけど、あまり飲みすぎるなよ貧血は困る。」
『承知した。』
俺よりも小柄な彼は胡座をかいた俺の脚の上に対面式に座り込んできた。そのお陰で未だ下がらない体温が直に触れるから、サウナにいるみたいでじんわりと全身に汗が滲んでくる。アトラは澄まし顔、という訳では無いが特に問題なさそうにしていた。
そのまま、口を開き端からチラリと鋭過ぎる犬歯が見えた。それが蛇のようである。
そして。
「…ってー。」
『がふぁんしふぇくれ(がまんしてくれ)。』
「んっ、分かってる。」
「お、お兄ちゃん?」
「へーき、じゃないけど。大丈夫だから。涼はそれ飲みきってくれ、な。」
「…は、はぃぃ。」
何故に敬語。
アトラが嚥下しているのが振動で伝わってくる。上手く補給出来ているようだ。全て吸いきれないものらしく、ツゥッと血が漏れているのを感じる。首からこんなにも血液を流したことが無いので、変に意識してしまう。
あぁ…異世界って凄いなぁとか馬鹿みたいに耽ってしまう。特に飲まれていること以外やる事も無いので、彼の腰に腕を回して長い三つ編みを弄ることに専念した。
その姿を涼がじっくり見ているとは知らずに。
『ぷはぁ…うまかった。めいわくをかけたな、奏多。ここからのいどうは僕がになおう。』
「いやもうマジでそうしてくれ、身体中気怠過ぎる。飲みすぎるなって言ったろうが。」
『美味すぎて、つい。』
ほんの数分しか経っていないが、需要が供給を上回っていたらしく見事に貧血となっていた。地べたに倒れ込むとそのまま起き上がれる自信がなかったので、アトラに凭れ掛かっている。一種の八つ当たりだと捉えて欲しい。理解しているのか、今はアトラが俺の腰に腕を回して支えてくれていた。これは八つ当たり成功なのか不安になってきた。
『つぎの瘴気沼はわりとちかい、このままかかえてとんでいくぞ。』
「絶対に俺を落とさないと誓ってくれ。」
『あぁ、もちろん誓う。』
「あと、優しく飛んでくれ頭がグワングワンする。」
『承知した。』
「なら、私が…。」
「涼は浄化のことだけ考えていて。涼だけが今は頼りなんだから。」
「…………ん。」
?
涼が、ちょっと不機嫌そう…な気がする。気がするだけで、実際はどうなのか分からないけれど。ムスッとしている気がしないでもない。
なんでだろう、原因はなんだろう…と考えている内に体全身が浮遊感に襲われた。アトラが地を蹴り天高く、とまでは行かないが鳥の目線と同じくらいの高度まで一気に舞い上がったらしい。
ボードとはまるで勝手が違うから一瞬恐怖してしまった。本当に怖がると身体が縮こまるのか、声帯が使い物にならなかった。
『奏多、へいきか?』
「ぅぁあ…へ、へいきぃぃー。」
『へいき、じゃないことはわかった。まだまわりがみれないだろうから、とにかくあばれないでくれればすぐにつく。』
「…すまん。」
『きにするな。』
小さなアトラにしがみついている状態なので、見るに堪えないほどの醜態晒しているにも関わらず彼は男前であった。涙が二重の意味で零れそうである。恥ずかしさと感動で。
「あーっと、その。」
『…なんだコイツ。』
「…………………んんんんー!!!」
次なる瘴気沼に到着したのは良かった。なんなら、再び湧き始めていた魔獣達もすんなりと二人が討伐してくれた。そして浄化もできた。
涼が俺の前で両手を広げて動かなくなってしまった。語弊があるので敢えて言うが、魔法にかけられて固まったとかそういうのでは無い。行動をそのままキープしているという意味である。
ずっとムスッとした顔で激しく不満そうである。
さて、どうしたものか。
「「なんでもない!!!」」
『おぉぅ…。』
俺と涼がいる場所以外の他の瘴気沼周辺の魔獣を討伐してきてくれたらしい、アトラが舞い戻って来た。
彼が地に降り立つと同時に周囲の温度が上がった気がした。いや、間違いなく上がったようだ。目の前の彼の赤黒い髪が轟々と炎が燃え盛っているみたいに、煌めいていた。
息も討伐して息が上がったのか、興奮しているからなのか解らないが、口から蒸気が噴出されている。
アトラはそれを自覚していないのか、ススッと俺の横に腰掛けて上目遣いで視線を合わせてきた。あざといと思ってしまうのは何故だ。
『奏多、おねがいをきいてくれるか?』
「ん?」
『おまえの血をくれ。』
「えぇ?!?!なんで!!!!」
『…なぜおまえがおどろくんだ?』
「だ、だっていきなりそんな…お兄ちゃんの血をアトラに…。」
『よくわからない。それにおまえももらってるだろ。そのキラキラしてるやつ。奏多のだろ?それを僕にわけてくれるならそれでかまわないけども。』
「駄目!」
『なら、奏多からちょくせつもらうしかないな。しつれいするぞ。』
「うぉっ?!?!」
締めたばかりの首元のホックを手際よく外され、中のワイシャツの釦も数個解かれた。ブラッドドラゴン達もこういう服を着ることがあるのか?妙にこなれている気がする。
「首から、吸うのか?」
『あぁ、雄同士だしもんだいないだろう?』
「…なるほど、それもそうか。だけど、あまり飲みすぎるなよ貧血は困る。」
『承知した。』
俺よりも小柄な彼は胡座をかいた俺の脚の上に対面式に座り込んできた。そのお陰で未だ下がらない体温が直に触れるから、サウナにいるみたいでじんわりと全身に汗が滲んでくる。アトラは澄まし顔、という訳では無いが特に問題なさそうにしていた。
そのまま、口を開き端からチラリと鋭過ぎる犬歯が見えた。それが蛇のようである。
そして。
「…ってー。」
『がふぁんしふぇくれ(がまんしてくれ)。』
「んっ、分かってる。」
「お、お兄ちゃん?」
「へーき、じゃないけど。大丈夫だから。涼はそれ飲みきってくれ、な。」
「…は、はぃぃ。」
何故に敬語。
アトラが嚥下しているのが振動で伝わってくる。上手く補給出来ているようだ。全て吸いきれないものらしく、ツゥッと血が漏れているのを感じる。首からこんなにも血液を流したことが無いので、変に意識してしまう。
あぁ…異世界って凄いなぁとか馬鹿みたいに耽ってしまう。特に飲まれていること以外やる事も無いので、彼の腰に腕を回して長い三つ編みを弄ることに専念した。
その姿を涼がじっくり見ているとは知らずに。
『ぷはぁ…うまかった。めいわくをかけたな、奏多。ここからのいどうは僕がになおう。』
「いやもうマジでそうしてくれ、身体中気怠過ぎる。飲みすぎるなって言ったろうが。」
『美味すぎて、つい。』
ほんの数分しか経っていないが、需要が供給を上回っていたらしく見事に貧血となっていた。地べたに倒れ込むとそのまま起き上がれる自信がなかったので、アトラに凭れ掛かっている。一種の八つ当たりだと捉えて欲しい。理解しているのか、今はアトラが俺の腰に腕を回して支えてくれていた。これは八つ当たり成功なのか不安になってきた。
『つぎの瘴気沼はわりとちかい、このままかかえてとんでいくぞ。』
「絶対に俺を落とさないと誓ってくれ。」
『あぁ、もちろん誓う。』
「あと、優しく飛んでくれ頭がグワングワンする。」
『承知した。』
「なら、私が…。」
「涼は浄化のことだけ考えていて。涼だけが今は頼りなんだから。」
「…………ん。」
?
涼が、ちょっと不機嫌そう…な気がする。気がするだけで、実際はどうなのか分からないけれど。ムスッとしている気がしないでもない。
なんでだろう、原因はなんだろう…と考えている内に体全身が浮遊感に襲われた。アトラが地を蹴り天高く、とまでは行かないが鳥の目線と同じくらいの高度まで一気に舞い上がったらしい。
ボードとはまるで勝手が違うから一瞬恐怖してしまった。本当に怖がると身体が縮こまるのか、声帯が使い物にならなかった。
『奏多、へいきか?』
「ぅぁあ…へ、へいきぃぃー。」
『へいき、じゃないことはわかった。まだまわりがみれないだろうから、とにかくあばれないでくれればすぐにつく。』
「…すまん。」
『きにするな。』
小さなアトラにしがみついている状態なので、見るに堪えないほどの醜態晒しているにも関わらず彼は男前であった。涙が二重の意味で零れそうである。恥ずかしさと感動で。
「あーっと、その。」
『…なんだコイツ。』
「…………………んんんんー!!!」
次なる瘴気沼に到着したのは良かった。なんなら、再び湧き始めていた魔獣達もすんなりと二人が討伐してくれた。そして浄化もできた。
涼が俺の前で両手を広げて動かなくなってしまった。語弊があるので敢えて言うが、魔法にかけられて固まったとかそういうのでは無い。行動をそのままキープしているという意味である。
ずっとムスッとした顔で激しく不満そうである。
さて、どうしたものか。
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