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指定大都市アクア7

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「次は、アレンさんの家?」
「あぁ。所で、ヨハンとアルフレッドを待機させてダニエル様同行って...。」
「なんだ、構わんだろう?」

アクアの都市に来て二日目。
大体俺達の郵便局は一つの都市につき約一週間ほど掛けて配達を行っている。他の局はどうしているかは知らないが。
毎度毎度それだけの配達物を持ち込んでいる。今回もまた同様だ。いや、指定大都市アクアだから普段よりも多い。
本日で二日目だ。まだまだ俺達が持ってきた郵便物は大量に残っている。

そして通常であれば配達は当然ながら郵便局員が行うのだが...。
何故か本日は俺と涼ちゃん、そしてダニエル様だった。一応護衛の兵士も数人。ヨハン達は事前に予約しておいた宿に待機兼仕分け作業をしてもらっている。
因みにメンバー決めは全てダニエル様である。

「...王子というのはよく分からないな。」
「あ、このお家かな?」
「可能であれば対面で手渡ししたいが、留守であればポストに投函でいいよ。」
「はーい。ごめんくださーい!郵便局です!」
「ふふっ、可愛らしいなぁ。」

ほぼ全ての家が景観保全の為に白い家であるので、見分けがつかない。その為に番地、屋号をあちらこちらに掲示してある。特に家主の名前は玄関の扉にプレートが貼り付けられている。どの家も同様であることから、恐らく義務付けられているのだろう。

「はーい、あら可愛らしい方......え、せせせ聖女様?!」
「あー...昨日の大鐘台のところに来てくれた方ですか?」
「え、えぇ勿論ですとも。行かない事は有り得ないわ。聖女様が直々にお手紙を下さるだなんて...こんなにも喜ばしい事は無いわ...。」
「私からの手紙じゃなくて...郵便です。アレンさんはいますか?」
「アレン...?あの子の手紙なのね。その...まだ学校ね。」
「あらら、それじゃぁお母様?ですよね。預けてしまおうか。」
「それでも構いませんよ。」
「スズ?」
「...いえ、私直接渡したいです!第一号ですから。」
「えぇ...。」

涼ちゃんの熱意は伝わったけれども、結局の所こういった配達業務は効率重視なのだ。この様にひとつにつき全力を出してしまってはこちらの身がもたない。まだその事について理解していないらしい。

「そういう事だ、カナタ。」
「マジか...しょうがないなぁ。」
「ごめんね...でも、折角直接渡せるんだって思ったらやってみたくて。」
「これだけだからね。...それじゃぁ、学校までの道程を確認して、それまでの経路に配達先があれば配達していく形にするよ。何事も効率よく、だよ。」
「ありがとうお兄ちゃん!わかった!」

全く元気なのはいい事だけども、一回り近く年が離れてると眩しくて仕方ない。

「えーっと、学校はここだね。どうやって入る?」
「それならば私の出番だな。」
「おぉ、ダニエル様かっこいいな。」
「スズに言われたかった。」

学校の警備の方に一言二言話をすると、すぐさま門が開かれてしまった。これが所謂顔パスとやらなのだろう。初めて見た。警備員さんもド肝を抜いたような表情をしていた、そりゃそうだろうまさか王子殿下が来るだなんて夢にも思わない。ちょっと申し訳ないな。

「さ、行くぞ。警備の者が言うには教員室に行けば見つかるだろう、との事だ。」
「そこまで聞いてくれたとは、有難いです。」
「スズに、言われたかった!!」
「あはは...。」

涼ちゃんはお手紙を届ける事しか頭に無いみたいである。
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