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七章 間章 目を覚ませば、そこは見慣れた。
五話 間章 長い昼と、魔法と、狼と。
しおりを挟む温かなものが寄り添い、ひどく安心して眠った翌日。二日目の朝を巣穴で迎える。
「また、なの……」
伊都は不審がる。
初めの訪れの時は別として、こんなに長期に夢の中に居る事は、この一年というものありえないものだった。
現実では、夏の事件もあってか戻り調子だった体重がまた下がり気味で、相変わらず体力のない伊都だ。
そんな体調である事は新しい職場、つまりは故郷のメンバーも留意していて、二階の鵜飼夫妻のリビングを借り、体力を補うための午睡を欠かさずしている。
そんな毎日の為、昼間に渡った記憶もなくはないが……。
(でも、こんなに長くなんていつもは居ないもの)
昼に見る夢は、その始まりも終わりも唐突で、友人の魔女と会ってる場面や、染色してる時や、あるいは何故か、昼間から彼に押し倒されている場面であるとか……。
ふと、日常の中の場面を切り取ったように、森での魔女の日常をかいま見る事が多い。
明晰夢とは違い、伊都に都合がいいようで、言うことを聞いてくれない夢。
それが、この童話の世界の不思議なところ。
白銀と共に見ているからか、他に原因があるからか。
楽しく見ている夢だけれど、一筋縄でいかない、現実にも似たこの世界。
そこで過ごす事は、伊都にとっても楽しい事であったけれど……。
いつもなら楽しい夢を見たな、と思って、午睡からすっきり起きるのに。
(何か、現実で問題でも起きているのかしら)
巣穴暮らしも二日目となった伊都は、状況が分からず、ベッドの上で首を傾げるばかり。
(ううん。まあ発想が貧困な私が考えてもどうにもならないわよね……白銀さん……いやジルバーか。彼に夜にでも聞いてみましょうか)
朝起きた時には居なかったが、確かに隣に感じた気配。
彼はちゃんと、この夢に通ってきているようだから……外の事情に通じているだろう人に聞くしかないだろう、と伊都は結論づける。
(うん、じゃあちょっとお昼寝でもして夜に備えよう。それで起きられたらラッキーということで)
とはいえ。
夢の中で起きてしまったのだから、伊都がやる事は一つである。
「今日こそ仕上げるわ……春物を」
フルーツや備蓄の品で軽く食事を摂った後、伊都はベッドの上に編みかけのハーフパンツを取り出して、早速仕上げに掛かる。
レシピ通りに合わせ形を作っていくのもいいが、おおよそのサイズでざっくりと、裾まで一気に編んでいける輪編みで編み上げていくのも達成感があって好きだ。
今回のハーフパンツは、輪編みで作っている。
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